同時多発テロ
あれから数週間が経ち、ビーストファングによる同時多発テロが発生した。都内の様々な建物が爆破され、その残骸が路上へと散らばっていく。逃げ惑う人々はビーストファングの戦闘員たちに襲われ、次々と命を落としている現状だ。
この様を眺めていたのは、三人のバーサーカーだ。一人は叢雲ゆかり、もう一人は氷室壮介、そしてもう一人は謎の青年である。彼女たちがまだ一般市民に手を出していないことには、当然理由がある。
テロが行われている現場に、ジャッカル隊の三人が到着した。春樹たちの姿を確認し、ゆかりたちはすぐにその目の前に現れた。壮介は高圧電力をまとったワイヤーを張り巡らせ、宣戦布告をする。
「俺は……君たちを殺さなければならない!」
その言葉に息を呑み、春樹は剣を生み出した。一方で、和希はいつもと戦法を変えざるを得ない状況だ。
「金属のメリケンサックなんか使ったら、間違いなく電流の餌食だよな……」
彼はメリケンサックの使用を諦め、己の手元にハンマーを作り出した。春樹は剣を振り、和希はハンマーを振る。両者ともに、ワイヤーの破壊を試みている。しかしその横から、何本もの矢が飛来してきた。二人は盾を作り、矢から身を守った。彼らが目を向けた先には、弓矢を構えたゆかりの姿があった。
春樹たちは、この少女に見覚えがある。
「君は……あの時の……」
「……ふざけんな。こんな展開、誰が望んだんだよ」
彼らは未だに、彼女の両親を殺したことを後ろめたく思っている様子だ。一方で、弓矢を構えているゆかりは、二人に対して酷く怯えている。
その傍らで、謎の青年は霞海の前に立っていた。唖然とする彼女に微笑みかけ、彼は話を切り出す。
「まったく嫌になるね。ボクたちが戦わなければならないなんて……」
「刀真……!」
「こんな形でなければ、キミに会いたかったよ……霞海」
どうやら二人は、何らかの形で面識があるらしい。
「……御託は結構。さあ、始めよう」
霞海は銃を構え、光弾を乱射し始めた。刀真は何本ものナイフを作り、それを次々と投げつけていく。その全てが鋭い切れ味を持っているのか、霞海の体には数多の切り傷や刺し傷が刻まれていった。
一方、春樹はゆかりと戦っていた。
「僕は……君と戦いたくない」
「それでも、ゆかり、アナタたち……ゆ、ゆるさない」
彼は迫りくる矢から身を守るのが精一杯で、防戦一方である。ゆかりは金色に輝く弓矢を生み出し、矢を放った。矢は鋼鉄の盾を貫通し、春樹のみぞおちに突き刺さった。
和希は何度もハンマーを作り直した。その節度、彼の生み出したハンマーはワイヤーに絡め取られ、宙に固定されてしまう。高圧電流を帯びたワイヤーはみるみるうちに辺り一帯に張り巡らされ、和希は身動きの取れない状態だ。一本、また一本とワイヤーを増やしつつ、壮介は語る。
「俺はこの国に、無実の罪を着せられた。杯水成だけじゃない。司法も、警察も、俺を独房にぶち込むことに積極的だったからな」
「無実の罪……だと?」
「この国が俺の人生を狂わせたんだ! 誰も彼も、自ら望んでバーサーカーになるわけじゃないのにだ!」
水成の陰謀によってバーサーカーと化した彼の怒りは尋常ではない。ワイヤーは和希の体をしめつけ、電流を放出する。
「くっ……」
彼には抵抗の術などない。否、今はジャッカル隊の三人が全員揃って危機的状況だ。
そんな中、何本もの医療用メスが飛んできた。
メスはワイヤーを切り落とし、飛来する矢や刃物を弾き飛ばした。直後、周囲は煙幕に覆われ、その場にいる全員の姿が見えなくなった。
やがて煙が収まった時、そこにはジャッカル隊の姿などなかった。
「逃したか……クソ!」
壮介はワイヤーを消し、すぐ真横の壁を殴った。




