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狂乱の失楽園  作者: やばくない奴
復讐心
11/43

バーサーカーの家族

 あれから数日が経ち、ジャッカル隊のもとにはいつものように通報が入った。

「家族ぐるみでバーサーカーと化した一家……ね。行くよ、春樹(はるき)和希(かずき)

 霞海(かすみ)は二人に指示を出し、すぐに現場へと向かった。



 今回の標的の家族構成は、核家族だ。霞海は銃を構え、先ずは成人した男女の命を狙った。その光景を前に、一人の少女が叫ぶ。

「殺さないで! お母さんとお父さんを殺さないで!」

 無論、彼女の声は霞海には届かない。霞海は春樹たちの方へと目を遣り、容赦ない指示を下す。

「何をしているの? 二人とも、ちゃんと戦って!」

 彼女はそう言ったが、春樹たちには迷いがある。

「罪のない女の子から、家庭を奪うことなんて……僕にはできない」

「ああ、オレもお断りだ」

 ジャッカル隊に入隊してからまだ日の浅い彼らは、まだ温情を捨てきれていない。霞海は光の球体を乱射しつつ、怒りの籠った声を張り上げる。

「惑わされるな! この家庭を守ることで、より多くの家庭が失われることになるんだぞ!」

 もっともな言い分だ。春樹は深いため息をつき、手元に剣を作り出した。彼は成人女性の方へと詰め寄り、剣を振り下ろした。

「やめて!」

 少女の叫びもむなしく、彼女の父親は深い切り傷を負った。続いて、和希は金色のメリケンサックを装備し、彼女の母親に殴りかかった。

「ねえ! やめてったら!」

 無論、ジャッカル隊の三人は、少女の言いなりにはならない。霞海は銃を乱射し、春樹は剣を振り、和希は標的を殴り続ける。その光景を前にして、少女は息を呑んだ。このままでは、彼女自身の命も危ない。

「お母さん、お父さん……ごめん……」

 彼女はそう言い残し、その場から逃げ去ろうとした。

「逃がさない!」

 霞海は即座に彼女に銃を向け、光弾を放った。少女は盾を生み出し、己の身を守る。同時に、彼女は煙幕を生み出し、己の姿を煙の中に隠した。

「なっ……!」

 霞海が驚いたのも束の間、少女は一瞬にしてその場から姿を消した。



 あれから数時間後、少女は自宅のあった場所へと引き返した。そこは瓦礫の山と化しており、その付近には二つの死体が転がっている。片方は彼女の母親、もう片方は父親である。

「お母さん! お父さん!」

 彼女は両親の体を順番に揺すった。しかし、二人が動き出す様子はない。

「うっ……」

 少女は己の口元を押さえた。彼女の胃から口にかけて、酸っぱい匂いが込み上げてくる。そして彼女は、その場で嘔吐した。それから彼女は口元を拭い、涙した。彼女の両親は、ジャッカル隊に殺されたのだ。


「憎いかね? お嬢さん。ジャッカル隊の連中が……」


 突如、少女の背後から声がした。彼女はすぐに振り向き、ダンディーな中年男性の姿を目にした。

「アナタは……?」

「おじさんは天寺巧(あまでらたくみ)――――ビーストファングのボスだ。このままだと、お嬢さんが連中に殺されてしまうのも時間の問題だろう。気の毒なものだ」

「うぅ……ゆかり、なにも、わるいこと……してないのに……」

 少女は何度も己の目元を拭った。しかし、溢れ出る涙が止まることはない。そればかりか、彼女の喋り方はいささかぎこちなくなっていた。


 そこで巧は、彼女に提案する。

「おじさんと一緒に来ないか? えっと、名前は……」

叢雲(むらくも)ゆかり……」

「ゆかりちゃんか。是非我々ビーストファングの一員になって欲しい」

「それは、なに?」

「テロリズムだ。我々はバーサーカーが安心して生きていける世の中を作るため、国家に一矢を報いる……そういう組織なんだよ」

 もはやバーサーカーに、手段を選ぶ余裕などないのだろう。現に巧は今、年端もいかない少女をビーストファングに加えようとしている。ゆかりは暫し迷い、それから答えを出す。

「ゆかりも、戦う」

 こうしてビーストファングは、新たな戦力を確保した。

挿絵(By みてみん)

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