円盤
宇宙から飛来してきたいくつもの円盤が、世界各地に降り立った。円盤は小型で、少なくとも地球人が乗れるような大きさではない。
謎の円盤は日本にも着陸していた。
「宇宙人か? 妙に小さいな」
「すげぇ! 本物のUFOだ!」
「誰かがいたずらで飛ばしたドローンか? いや、だったらプロペラがついているはずだよな?」
目撃者たちは興奮気味に、一斉に円盤の方へと駆け込んだ。未知との遭遇を前にして、彼らは鼻息を荒くしていた。
直後、円盤の上部からはスプリンクラーのようなものが出てきた。
その先端から霧が噴出され、その場に不穏な空気が漂う。
「なんだったんだ……? 今の……」
「さあ。それより、中に誰か乗ってないのか?」
「分解してみようぜ!」
一人の男が、円盤を持ち上げた。彼はそれを岩石に叩きつけたり、投げつけたりしていった。しかし円盤は頑丈で、傷一つつく様子もない。
「地球上には存在しない物質で出来ているのか? 少なくとも、素手で触っても問題のない素材であることは確かみたいだが」
「お前は警戒心が無さすぎるだろ! これが核エネルギーを動力とする機体だったらどうするつもりだったんだ?」
「はは、それもそうか」
好奇心は猫をも殺す――とはよく言ったものだ。しかし幸いにも、今のところ彼らに異変は無いように見える。
現場にはすぐに取材班が押し寄せ、円盤の撮影を始めた。そこには専門家も居合わせていたが、この円盤がどのような素材でできているのかはわからずじまいだった。
人類は、この円盤について調査を進めることとなった。
歴史が動き始めたのは、その数日後のことである。
あの円盤に近づいた者の大半が、まるで何かに取り憑かれたように人を殺し始めた。それも常識的な手段ではない。彼らは奇妙な力により、何もない所から様々な武器を作り出し、周囲の人間を無差別に殺し始めたのだ。数多の生物学者や名医が総力をもって、この現象の解明を試みた。こともあろうに、あの円盤から放たれた霧はウィルスであることが明らかとなった。そのウィルスに感染した者は脳神経の一部を汚染され、殺人衝動を抑えられなくなる。その上、感染者は人を殺すたびに、脳内で大量のベータ・エンドルフィンやドーパミンが分泌されることも明らかとなった。
人類はこのウィルスをバーサーカーウィルスと呼び、症状の出た感染者をバーサーカーと呼ぶようになった。
更に、世界中に散らばったそれぞれの円盤に、同じ言語が使われていることも解明された。それは地球上では使われていない未知の言語であった。人々は今も、この事件を地球外生命体による犯行として信じている。
*
あれから五年後、二人の少年がバーサーカーから逃げ回っていた。
「このままじゃまずいね、和希。二手に分かれる?」
「ふざけんな! はぐれたら洒落にならねぇだろ! オレたちは必ず、二人で生き残らないといけないんだ!」
一人は東春樹、もう一人は山代和希という名だ。彼らは今、繁華街の片隅にて、殺人犯に追われている。殺人犯は銃や剣を作り出し、警官相手にも無双している現状だ。
そんな中、春樹たちは行き止まりに差し当たった。二人が振り向くと、そこには興奮気味に息を荒げたバーサーカーの姿があった。
「ここまでか……」
「ふざけんな……オレたちが、こんなところで……」
二人は絶望した。こちらが丸腰であるのに対し、相手はどんな武器も揃えられる立場である。つまるところ、春樹たちに勝算などないのだ。そんな彼らの方へと、バーサーカーはじりじりと詰め寄っていく。
「殺させて。殺させてよ。さあ、俺を楽しませてくれないか?」
絶体絶命だ。春樹は酷く怯え、和希は相手を睨みつけた。
バーサーカーは大きな太刀を構え、それを春樹の方へと振り下ろした。




