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嘘人  作者: 兎屋
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嘘人 第一章

  

         

           『嘘吐き』

  

   

     人生において嘘をついた事がない人はいない

        皆、己を偽り生きているのだ。

           


          2022年某月某日

 

             パパ

    おしごと、たくさんがんばってくれてありがとう

            だいすき


上の子が、たまに幼稚園で書いてくれる手紙だ。3枚目になる。会社のロッカーには愛で溢れている子供の手紙、家族写真などが貼り付けられている。これが今の紛れもない自分の姿だ。


マイホームに妻、二人の子供にも恵まれ。周りから見れば平凡でどこにでもある家族の形である。しかし私には誰にも言えない愚かで壮絶な秘密があるのだ。



           1994年某月某日  


     「お兄ちゃんはスーパー〇〇で買ってきた。

       お前は〇〇橋の下で拾ってきた。」


親父は、酔って私に説教をする時決まってこの言葉を言うのだ。素面でも言うのだが、酒が入ると凶暴性を増し、次第に手が出てくるようになった。最初はタバコの箱。次に灰皿などが私めがけて飛んでくる。毎回絶対に身体のどこかに当たるので痛かったし、怖かった。説教の時間は最短で2〜3時間。最長で8時間と常軌を逸していた。

母は説教が始まると決まってテレビのボリュームを上げる。親父と私の泣き声がうるさいと直接言われた事があるので覚えている。私が親父にビンタされたり、尻を叩かれたり、灰皿が顔面に当たり鼻血が出ても見て見ぬふりだった。見たい番組があったのだろう。

     

       「お兄ちゃんみたくやんなさい!

         アンタが悪いんだからね!

       帰ってきたらお父ちゃんに言うね!」


このフレーズが、いつも母から言われていた言葉である。母は直接手は出してこないが怒ると私を外に締め出そうとしてくる。昔、お風呂に私が浸かっている時に説教が始まり、ヒートアップしてしまい髪の毛を掴まれ、全裸で外に閉め出されたこともあった。真冬だった。子供だてらに本当に凍え死ぬかもしれないと思った。


    「何故自分だけこんな仕打ちを受けるのだろう?

     兄が親父に殴られたり母に閉め出される姿を

        一度だって見た事がない。

        あぁ神様なんて嘘っぱちだな」


小学生ながら私は早々に神に見切りをつけ本当に怖いのは人間なんだと。まざまざと思い知らされていた。当時は門限があり17時だった。過ぎると親父が帰ってくるまで家に入れてもらえないか、もしくは、親父が帰ってくるまでご飯抜きだった。親父が帰ってくると報告されるので、そこからの親父の説教がただただ辛かった。

    

      「ママー?私がこんな事してるよー

       ママー?今日、私がコレ壊したよー」


3つ歳の離れた兄はスパイ活動が秀逸だった。頭が良くいつも両親に可愛がられていた。腑が煮え繰り返る思いをしたが、悲しみと絶望が瞬時に私を襲うので、逆に明るく振る舞っていた。この流れは中学を卒業するまで続いた。小学4年生の頃だったか?


  「私?土日、じいちゃんの店手伝い来てくれないか?」


私の家にはお小遣いという概念がなく。私達兄弟は、実家から車で30分ほどの場所にある祖父母の営む小さなタバコ屋兼弁当屋さんのお手伝いをして、朝早くの仕入れから19時の閉店までみっちり働き祖父から千円貰う。そんな金銭状況だった。今考えれば何かに引っ掛かると思うが、私はこの時間が大好きだった。祖父母だけは私に優しかったのだ。祖父は昔気質で厳しかったが優しく。将棋のやり方を教えてくれた。滅多に怒らないし、絶対に手をあげない。祖母は泊まりに行くと不安で暗い夜に抱きしめて寝てくれたし、内緒でおひねりもくれた。当時は早く土日にならないかと指折り数えた。


兄「ママー?私がバアバにお金もらってたよー!」


母「何〜?いくらもらったか教えな!」


母「またもらって!ガメツいヤツだねホントに」

     

母「金もらいたいからいくんだろ?」


私『そんな事ない!好きで言ってる!』


兄・母「本当は貰ってるんだろ?この『嘘吐き』」


悪いが私の家族は私の気持ちなど一ミリも理解していなかったと思う。が、お小遣い目当てなのは事実である。最終的には祖父母と連携して見つからない様に裏でサッと渡してもらったりしていた。今にして思えば、裏でコソコソ何かをしたり、密かに段取りを組んだりと、小細工をする様になったのはこの事が発端かもしれない。皮肉にも兄と、母から言われた。この『嘘吐き』という言葉が、非常に悲しくもあり。同時に、次はもっと上手くやろう。絶対にバレない様に。怒られない様に。と私を焚きつけた。


         2000年某月某日  


私『バアバ、欲しい漫画があってね。』


祖母「そうなの?これで足りる?」


私『後ちょっと、大きいのがあれば足りるかも』


祖母「ちょっと待ってな」


そういうと、テーブルの引き出しから、小さな巾着を取り出して中にある千円札を何枚かくれるのだ。祖父から貰う千円と祖母から貰う何枚かの千円。この二重のお小遣いのおかげで当時、私はゲームや漫画と子供だてらに欲しい物は何でも買っていた。小学生にしては小金持ちだったと思う。駄菓子屋で友達に奢ったりもしていた。


      「牡蠣食べなきゃ祭りに行かせない」


今でも覚えている親父の言葉だ。私は牡蠣が大の苦手である。しかし、お皿に盛られた牡蠣の量はどう見ても五個は軽くあった。丁度、世の中にDVという言葉が広まってきていた。そんな時代の中でも我が家は相変わらずだった。私は覚悟を決めて次々と味噌汁で牡蠣を流し込み。ご馳走様!そう言って立ちあがろうとした瞬間にゲップをしたら全て吐き出してしまった。


      「このバカモンが!全部食べろ!」


相当怖かった。吐き気と緊張が同時に私を襲った。めちゃくちゃ怒られたが泣きながら掃除をして、祭りには何とか行けた。町内会の年一の祭りというだけあり屋台が川沿いに何処までも続いていた。今は見る影もないが。当時は本当に雅だった。親友のレイジを始め友達5人と意気揚々と繰り出したが祭りの日の門限は20時で、祭り会場に着いたのは19時。私はわずか1時間で友達と遊び、両親から頼まれた出店の品を買って帰らなければならなかった。


レイジ「もう帰んの?奥の方に射的あるぞ!行こうぜ!」


私「やりたいけど門限があるからごめん!」


レイジ「お前いつも帰るの早いよな。縛られ過ぎじゃね?」


私「縛られ過ぎ?」


レイジ「うん。お前だけだぞ17時帰るのも」


私「…じゃあ、うん。ごめん!今日は帰るね!」


レイジ「いつもそうじゃんw今どき門限なんてねーぞ?」


私「良いよな。レイジんとこは。マジで家に入れなくなるし鍵開けて入っても閉め出されるからね。じゃあね!」

 

私は複雑な心境で家路についた。レイジは私と同じ末っ子だったが兄が3人いて全員気合いが入っていた。両親共に帰りが遅く門限がなかった。そのせいかレイジは小学生にしては自立していた。何より、腕っ節が強く豪快なヤツだった。そんなヤツが何故自分を親友認定してくれたかは今でも分からないが。本人曰く、転校してきて一番最初に喋りかけてくれたのが自分だったらしい。中学に上がり部活動が始まると同時にレイジとは疎遠になっていった。運動部と帰宅部では時間帯が何もかも違うのだ。


        「他所は他所!家は家!」


母から常日頃から言われていた言葉だ。意味はもちろん理解してるが家の場合はハードだった。レイジに言われた言葉を思い出し。また、自分を奮い立たせ、母からの説教中に初めて意見をした。


私「家って縛られすぎじゃない?」


母「何それ?は?意味わかんないんだけど」


母「そんなに遅くまで遊びたいならもう帰ってこなくて良いから。どーぞ!」


私「そんな事言ってない」


母「この『嘘吐き』!遊びたいだけだろ?本当は。大体縛るってどういう意味だかわかってんのアンタ?他所は他所は家は家!言う事聞かないなら戸塚ヨットスクールに入れるからね」


もう、無駄だなと思った。私と母の初めてのディベートは開始、僅か2秒で決っした。更に、その日の自分の立場まで悪くしてしまったのだ。親父には言わないでくれと懇願したが無駄だった。ちなみに誤解しないで聞いてほしいが、当時、テレビ番組で戸塚ヨットスクールのVTRが流れていてヨットに乗る訓練がかなり厳しく見えたのだ。母は恐らくそれを出汁に使ったんだと思う。その日の夜、寝室の扉が勢いよく開くと、親父が立っていた。


父「こい」


と私は居間で正座。親父はタバコをふかしコチラを見ている。母はテレビ。今日も長くなるんだろうな。そんな事を考えていたと思う。正直に言うが物心ついた時からの長い親父の説教のおかげで私は、ついに親父が怖くなくなっていた。殴られても。罵声を浴びせられても。代わりに演技が上手くなっていった。泣きそうな顔を、はじめ。急な立ちくらみなど。さまざまな説教のニーズに合わせて、私も演技力を磨いた。説教の時間は30分にまで縮んだのだ。


父「大体ママの話聞いてんのか?言うこと聞かないなら、

  また橋の下に戻してきてやろうか?」


私「ごめ゛んなざい゛」


父「……もう行け!」


私「ばい゛」


チョロかった。私は『嘘吐き』としてのレベルが上がった。未だかつてこんなに早く終わった説教はない。親父には悪いが私の頭の中では第九が流れていた。なるほど。殴られたら立ち上がるんじゃなく痛いフリ。怒鳴られたら泣くフリ。意見を聞かれたらオウム返しでうつむくフリ。心の中で完全に『嘘人』が産声を上げた瞬間である。ありがとう親父。さんざん殴ってくれて。


      「あそこのスーパー取り放題だぞ」


小6にもなると、幼いながらに善悪の区別がついてきた。そんなある日、友達の一人が思いもよらない事を言ってきた。ナオトだ。ナオトとは、よくサッカーをして遊んでいたが、足が早く、追いつくのが精一杯だった。クラブチームに所属していて、顔も良かったので女子からモテていた。小6にして、なんと3人の女子から告白されていたのだ。


ナオト「坂の上のスーパーあんじゃん?あそこ取り放題だぞ!学校終わったら皆で行こうぜ!奢るよ!」


私「取り放題ってどういう事?」


ナオト「来ればわかる、とにかくお前も来いよ」


私「母さんが働いてるとこだから行きたくない」


ナオト「マジ?お前の母ちゃんあそこで働いてるの?どこ?」


私「魚屋って言ってた」


ナオト「ふーん。じゃあ大丈夫だな」


正直に言おう。ナオトから声をかけられた瞬間に私は全てを理解していた。しかし私にはその選択だけは絶対に出来なかった。


ナオト「〇〇も来るし、〇〇も来るぞ?来ないの多分お前だけだよ」


私「………わかったよ」


精神的にハブられる辛さは、家で毎日の様に体感していたのでビビってしまい、かなり悩んだが、渋々行く事にした。自分には関係のない事だ。見ていれば良い。そんな心境だったと思う。


      「お前上手いな!才能あんじゃね?」


小学校から坂の上のスーパーまでは自転車で10分。一度、学校から家に帰り再度集まる事にした。私とナオトを含め合計で5人集まった。私以外、いつもは持っていないカバンやポーチを持参していた。ナオトだけは一際大きなリュックサックを背負ってきていたのをよく覚えている。これから始まる何かを予感せずにはいられなかった。


ナオト「よし、全員集まったな。30分くらいしたらまたここに戻ってくるぞ。私は俺と来い」


私「本当にやるの?捕まったらどうすんの?母さんにバレたら殺されるよ」


ナオト「へーき、へーき!俺、何回もやってるけど一度もバレた事ないぞ」


私「マジかよ。すごいね」


何が凄いのだろうか?私の予感は的中した。友達だと思っていたナオトは小学生にして犯罪者になっていたのだ。それでも、もう引き返せないところまで私も着いてきてしまっていた。スーパーの自動ドアが私の退路を塞ぐ様に静かに閉まった。


ナオト「行くぞ、着いてこい。あんまキョロキョロすんなよ。店員の動きに注意しろ」


私「わかった」


経験者特有の余裕とでも言うのだろうか?サッカーで同じチームになった時の自信に満ちたナオトの横顔はそこにあった。


慣れた足取りで菓子、雑貨コーナーへと向かう。私は気が気じゃなかった。いつ母と、はちあうか。内心はかなりビビっていた。


ナオト「そっち見とけ。あんま意識すんなよ」


私「わかった」


ナオト「お、新しい色あんじゃん!よっしゃ!…おい!見ろ!」


私「どうしたの?」


振り返った私は驚愕した。ナオトが背負っているリュックサックの中は菓子と、当時、仲間内で流行っていたゴムで引っ張り飛ばす。薄い発泡スチロールでできた飛行機がパンパンに入っていたのだ。ヒリついた。あまりにも大胆なナオトの手腕にある種の感動すら覚えていた。


ナオト「よし!俺はもう良いや!私、見張ってるからいけよ」


私「いや、やっぱ良いよホント」


ナオト「根性ねーな。お前。こんな事もできねーの?早くやれよ!時間がないんだぞ!!!」


焦り、ヒリつき、緊張、迫るタイムリミット、更に、友達に怒られてしまった事から私は親父から説教を受けてる感覚に陥ってしまい。言う事を聞かなければならない。殴られる前に上手くやろうと考えた。良心が、吹っ切れてしまう音が聞こえた気がした。


私「バック貸して」


ナオト「よし。ん!」


私「ナオト。さっき見張ってた時に店員が隣の調味料コーナーに向かってた。今はまだやるべきじゃない。私に考えがある。一度、皆と合流しよう。」


ナオト「んだよソレ!」


私「大丈夫。私もやるよ。」


ナオト「ほんとにやるんだな?おし、わかった。一旦皆と合流しよう」


ナオトからリュックサックを奪ったのはギリギリ残った良心の呵責がそうさせた。これ以上ナオトが「万引き」をしないように。しかしもう反面で恐ろしい計画も練っていた。計画には空のリュックサックが絶対に必要だったのだ。


ナオトと無事にスーパーを後にした私は、安堵するより先に、この後の計画の段取りで頭がいっぱいだった。友達3人は先に出てきていて、それぞれ戦利品を自慢しあっていた。良かった。皆と顔を合わせることができて。この時に初めてホッとした。


ナオト「おい、皆集まったぞ。どうすんだ?」


小学校の校門の片隅でひっそりと作戦会議が行われた。


私『うん。まず、雑貨コーナーのオモチャ付きの菓子を狙って、その後、反対側の菓子コーナーのカード付きのポテチを狙う。見張りは大丈夫。』


ナオト「見張りいらないってバレたら終わりだぞ!」


私「大丈夫。バレない様にやるから。皆は外で待ってて。」


ナオト「え?マジで捕まっても知らないからな一人じゃ無理だよ。もしバレても俺たちの名前ぜってぇ〜出すなよ?」


私「わかった。行ってくる。」


私の計画において多人数で動くのはうまくなかった。一人で行動したかったのだ。友達には話してなかったが、私は小4の頃から家の台所に立ち母の手伝いを強制的にやらされていたのだ。


母「私、お金渡すから坂の上のスーパーのヤグチさんって人にお魚もらってきてもらえる?」


私「さっき買って来ればよかったのに」


母「早く帰らないとご飯の支度間に合わなかったの。ヤグチサンが魚さばいてるの待ってたら遅くなる!アンタもわかってるでしょ?いいから行ってきな!」


私「はい」


こんなやり取りが日常茶飯事だったので、スーパーの間取りを暗記するのに時間は掛からなかったし、何より早く買い物を済ませて帰らなければ母から八つ当たりを受けるのをよく知っていた。まさか、こんな形で役に立つ時が来るとは思いもしなかった。私は足早にスーパーのバックヤードに向かった。


普通、バックヤードに子供が一人でいたら不審に思われるはずだが、私の場合は違っていた。母は坂の上のスーパーにおいて顔が効いたのだ。ヤグチさんから魚をいただいていたのもバックヤードだった。そのかいあって私が一人でいても、


店員「またおつかい?本当に偉いね。お母さんいるけど呼んでこようか?」


私「んーん。大丈夫。母さんに来たこと内緒で。あ、ヤグチさん、いますか?」


店員「何?恥ずかしがってるの?ちょっと待ってて。呼んでくるね」


店員が歩き去り完全に見えなくなるまで時間はかからなかった。私はバックヤードを素早く駆け巡り製菓の棚までくると、お目当ての商品を入るだけリュックサックに詰め込んだ。ポテチはかさばるのでオマケのカードだけを何枚か剥がし取っていった。そして先程自分がいた場所に何食わぬ顔をして戻っていったのだ。少ししたらヤグチさんが来た。


ヤグチさん「私君、どうした?俺に用あんの?」


私「あ、ヤグチさん、この前貰った魚ってなんて魚だったの?」


ヤグチさん「あぁ。あれは赤魚っていうお魚だよ。煮つけにすると美味いんだよ。この前お母さんが作ってたでしょ?あれ俺が教えたんだよ」


私「ふーん。そうなんだ。めっちゃ美味しかったよ」


ヤグチさん「でしょ?美味いんだよ。アレは。話ってそれ?」


私『うん。そう。今度家で作ろうと思ってレシピ聞きに来た』


ヤグチさん「お母さん人使い荒いからねぇ〜。私君、いつも、頑張って偉いねホント。ちょっと待ってな今書いてやる」


私「ありがとう!ヤグチさん優しい〜。あ、母さん喜ばせたいから二人だけの秘密にしてもらえない?」


ヤグチさん「わかった!男の約束だな!」


私『男の約束!』


男の約束など、私にはどうでも良かった。ヤグチサンはレシピを私に渡すと、リュックサックにも目もくれず、いそいそと、店内に消えて行った。私はついにやり遂げたのだ。足早に皆の元に戻ると戦利品をひけらかし、皆に配った。


ナオト「はぁ?!なんだこの量?!お前上手いな!才能あんじゃね?」


ハッキリ言って全く嬉しくなかったが、自分の書いた絵に人が乗り思い通りに動いてくれる事に。とてつもない快感を見出してしまった瞬間だった。ヤグチサンからもらったレシピは、その後遊んでいるうちにどこかになくしまった。


その後も何回か万引きを繰り返したが友達の一人がある日、一人で事を行いとうとう捕まった。近所のコンビニでエロ本をくすねた所、現行犯で取り押さえられたらしい。父親を呼ばれ恥ずかしくて死にたいと言っていたのを良く覚えている。私はもう2度と万引きはしないと心に誓った。


        「サンタさん仕事やめたから

      今年からクリスマスプレゼントなしね」


万引きはグループはどうやら自分達の他にもいたらしく、その年の学年便りでおふれが回ってくるほどだった。坂の上のスーパーや、近所のコンビニに監視カメラが増えたと母が教えてくれた。まさか身内にその犯行グループの一人がいるとは思ってもいなかったのだろう。この時期くらいから私はハッキリと「自分」と『嘘人』を切り替えて使えるようになっていた。


母「あんた、万引きなんてしてないだろうね?もし、してたら殺すからね」


私『万引きなんてした事ないよ。死にたくないしね』


母「ふーん、なら良いけど。そうだ、サンタさん仕事やめたから今年からクリスマスプレゼントなしね」


私「え、嫌だよ。何でよ!意味わかんない」


母「ゴチャゴチャうるさいね!お兄ちゃんも来年から高校生になるんだから、アンタも大人になんなさい」


私「はい」


小学生最後の12月。母から言われた衝撃の一言である。親父は昔から仕事が長続きしない人間だった。しかも、やめてから次の就職先を見つけるまでまぁまぁ時間がかるので、必然的に親父が家にいる時間が長くなる。地獄の窯の蓋が開いたのだ。


             後書き


        初めて書き物をする者です。

        稚拙な文でお目汚し失礼します。


       『この物語はフィクションです』

 




        

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