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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第四章 カルー少佐
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89話 会談

一瞬の暗転の後、俺は部屋に立っていた。

壁に設えられた棚に数本の武器が飾られた、武器屋といった感じの部屋だ。

足元に魔方陣が描かれている。


「いらっしゃいませ。」

俺に声を掛けてきたのは銀髪に黒い目をした細身の男だ。

特徴的な耳と高く突き出た鼻と口。

猫のカッツェ族とはやや違う。

第二大陸に住む犬との混血、ハウンド族か。

俺は探知を行った。

どうやら彼一人だけの様だ。


「剣士の方ですか?」

「そうだ。こちらで魔法の剣を売っているという話を聞いてな。」

「ええ。売っております。ですが、どなたにでもお売りできる物ではありません。」

「ほう。剣を買うのに試験でも受けさせられるのか?」

「いいえ、少し、あなたの適正を調べさせていただきます。」

「適正?」

「そうです。魔石に光、火、水、風、土、とあるように、人にもあります。それを調べさせていただきます。」

そういって、彼はテーブルの上に置かれた石版を示した。

これは、エの国で見たステータス判定機か。

「こちらに右手を広げて置いていただけますか。」

俺がテーブルに近付いた時、背後に人の気配が感じられた。


「その必要はない。」

若い男の声だ。

検知に反応は無かった!

俺と銀髪の男は同時に振り返る。


男が立っていた。

不思議な感じだ。人が居るのは確かだが、その存在が希薄というか、視線を外すと見失ってしまいそうだ。

顔は40歳とも20歳とも、いや仮面だ、文様が描かれた仮面を被っている。

間違いない、カルーだ。

俺がそう確信した時、もやが晴れる様に男の姿がはっきりと認識できた。

文様が描かれた仮面を被った男。

オの国の丈の長い白い服を纏っている。


「イシュターハル、こちらのお客様と話がある。さがっていなさい。」

銀髪の男は一礼して部屋を出て行った。



「まさか、このような形で(マミ)えることになるとは。座るかね。」

「ああ。」

俺とカルーはテーブルを挟んで椅子に座った。


「ファルス=カン少佐だ。カルー少佐、と呼んでいいかな。」

「カルーでいい。」

「では、カルー。会談の申し入れをしたが返事をいただけていなくてね。聞きたいことがいくつもあるんだ。」

「だろうな。」

「まず、"ドラゴンが倒れる時、この世界は救われる。"というメッセージを受け取った。これは貴方からのメッセージか?」

「そうだ。」

「つまり、ドラゴンを倒し、リセットを発動し、世界に混乱をもたらせ、と。」

「混乱だと!?なぜ、そこまで判っていながら最後の結論を間違えるのだ。

ドラゴンを倒せば、この馬鹿げた世界の繰り返しは収まる。

世界は正しく進化し、再び科学が世界の基盤となる。

私は!その為に私は!強い者を求めているのだ!!」

「だが、我々の輸送艦の中央管理コンピューターの解析では、ドラゴンを倒した大陸以外の6大陸の人類はゴブリン達に滅ぼされてしまう。」

「その通りだ。だが、安心しろ。フォース族は滅びない。」

「フォース族以外は?」

「滅びるかもしれん。だが、奴らはしょせん紛い物だ。

惑星開発初期の自然環境に適応するため、とか理由を付けて馬鹿な奴らが作り上げたおもちゃだよ。

最近では人間性を失い野生化している者が多数いるはずだ。

奴ら自身がすでに滅びの道を歩んでいる。」

「そう言うが、身の回りには彼らがいるようだが。」

「優秀なサンプルは取得済みだ。」


つまり、カルーにとってフォース族以外は単なる生物でしかないわけだ。


「カルー、俺たちは、そう考えなかった。フォース族以外も我々と同じ人類だ。我々は彼らも救いたい。」

「なんだと。」

「ドラゴンを倒さなければ、2000年ごとのリセットが起こる。

ドラゴンを倒せば、ゴブリン達に永続モードのリセットが命令される。

俺達は、どちらも止めたい。

カルー、方法はないか。」


カルーは口を閉じ、しばし俺の顔を見た。

「ファルス=カン。貴様は歴史を学んだか?」

「幼年学校の時に。」

「では、よいか?

我々人類の歴史は戦争の歴史だ。

常に争い、平和な時代は短い。

争いとは人類同士の争いだ。

人と人が争う。

理由は様々だ。食料、土地、資源。これらの奪い合いは、わかる。我々レギウス軍も、そうだからな。

だが、かつて人類は、考え方や肌の色の違いでも争いをしていた。

理由は簡単だ、自分達と違う他者を排除するためだ。

だからこそ、我々の祖先は銀河連盟からレギウス星系を独立させ、雑多な環境から抜け出し、人類同士の争いから距離を置いたのだ。」

「そうだな。」

「独立初期は周辺の星系国家群との諍いもあったが、それも精強なるレギウス軍の活躍で排除した。

その後、我々レギウスは他星系との大規模な戦闘は行っていない。

1000年だ。レギウス本星独立以来1000年もの長きに渡り平和な時代があったのだ。

それもレギウスの統一された人類環境だからこそ、なせた成果なのだ。」

「統一された?」

「そう、我々は優秀なる祖先のクローンとして生まれ、統一された教育を受け、レギウスの繁栄という同一目標の為に職務に就いていた。

そうでなければ、1000年もの平和な時代は生まれなかったのだ。

しかし、あの馬鹿者どもは多様性こそが求められる進化の姿、などと言うではないか。

そして生まれたのが、あの紛い物たちだ。

ファルス=カンよ。お前は想像できるか?

全ての大陸がつながり、全ての人類がこの惑星上に雑多な環境を構築した未来が。

その時、世界は平和ではないぞ。醜い争いが起こるのだ。

理由は簡単だ。そして実にくだらない。自分達と他者が違うからだ。

ファルス=カン。貴様が望むのは、その様な未来だぞ。」

「だから、フォース族以外は滅んでも良い、と。」

「そうだ。生かしておけば、いずれ諍いの種になる。」

「だが、フォース族の間でも争いは起こっている。」

「ふん。国家が乱立しているからな。統一国家が誕生すれば争いはなくなる。私はその為に動いているのだ。」


カルーの考えはわかった。話題を変えるか。

「ミリア中尉の、その計画での担当は何だ?」

「ミリアか、彼女は自由だ。私の計画には関与していない。

そうか、あのメッセージを見たのだな。」


ん?カルーの城に行った事は伝わっていないのか?


「ファルス=カン。忠告しておいてやろう。ミリア、彼女には近付くな。」

「なぜだ。」

「彼女は異能だ。そして、レギウス星人でもない。」

「なに?」

「たしかに、彼女の身体はレギウス星人のクローン体だ。過去にDNAを調べたからな。

しかし、中身は別物だ。彼女は自らを"転生者"と言っている。」

「転生者?なんだ、それは。」

「詳しくは私も聞いていない。

だが、彼女は最初から不思議な存在だった。

今でも覚えている。

惑星開発部隊ナノマシンチームにあって、彼女だけが真にナノマシンを理解し、命令コマンドを操り、誰もが驚嘆するアイデアでこの惑星を作り上げたのだ。」

「神話、か。」

「違う!あれは愚かな馬鹿者共の自己満足、虚栄心を飾るために作った物だ。

彼女、ミリアは世界のルールと仕組みを作り上げ、ナノマシンにその運営と保守を任せたのだ。

そして人々に魔法という形でナノマシンの利用権を授けた。

それは、素晴らしい物であった。当初はな。

まさか、人類から科学を奪ってしまうとは。」


カルーはそこで言葉を区切って一息ついた。

声は若い男の声だが、仮面に隠された顔は見えない。

今のカルーの姿は年老いた老人のようだ。


「私は考え違いをしていた。

私は若かった。

私を、私の研究を、私のチームを、あの馬鹿どもは愚弄した。

それでいて、私の研究成果であるクローン体に依存してきた。

だから、私は罠を張った。

思いついたのだ。奴らを電子の牢獄に閉じ込めることを。

くっくっくっ、成功した。それは見事に成功した。

愚かな奴らは何の疑いも無く、己が肉体を捨て、電子の牢獄に入っていったわ。

だが、彼女は違った。

彼女、ミリアは私のクローン体を必要としなかった。

判るか?ファルス=カン。彼女は異能だ。彼女は不死者であり、その身体は1万2千年経っても若いままなのだ。」

「なんだと!?」


「彼女はこの世界を作り、この世界を楽しんでいる。彼女の邪魔をしなければ、貴様も楽しく生きていけるだろう。」

「カルー。俺たちはリセットを止める。

お前がそれに反対だというならば、俺たちは彼女に会わなければならない。」

「それが馬鹿な望みだということは、先ほど説明したはずだが。」

「聞いた。それでも、だ。」

「そうか。では去るがよい。もう話すことは無い。」


会談は終わりのようだ。

奴は立ち上がり、俺も席を立った。


「最後に一つ、聞きたい。」

「なんだ?」

「俺たちを襲ったジャンプゲートでの爆発事故。2番艦を爆破したのは誰だ?」

「んん~~。ふ、ふっふっふっ、あーはっはっはぁ。

言っただろう、この世界を作ったのは彼女だ。

彼女がこの世界を作るのに、ジャンプゲートがあっては邪魔が入るだろう。」

「ミリアがやったのか。」

「そうだ。方法は知らんがな。

覚えているぞ。爆発事故を観測し、絶望に沈む我々に彼女はこう言ったのだ。

"私たちはもう帰ることはできません。この第四惑星を改造し、私達の楽園を作りましょう。"とな。

できあがったのは、彼女にとっての楽園だったという訳さ。」



剣を収め、俺はカルーの元を立ち去った。


今回のラストはアガサ・クリスティー著「アクロイド殺人事件」へのオマージュという事で。未読の方はぜひご一読を。


次回90話「審議」

ファルス、謹慎です。


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