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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第四章 カルー少佐
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86話 果たし状

レギウス村にも雪が舞い始めた。

まだ積もる程ではないが、村の運営会議で村人から雪が積もった時の対応要望があがったそうだ。

ホークの要請で村人から除雪方法について聞き取る為にジェリー=エルラド第一班副長とノエル=デルー一等兵が出かけていった。


ホーキンス生産部管理官は不在だ。

6日前からレイチェルと西の山脈へ外出している。

他にも第二班10人が外出中だ。

リンダはしばらく前から村長補佐として生産部から出向している。

つまり生産部員22名の半分が不在だ。


甲板に残っているのは9人だけだ。

第一班

 班長、アレクサンデル(アレク)=シャトフ

 副長 ジェリー=エルラド曹長(村内に外出中)

 サラ=スール伍長

 マルビン=ナルティア兵長

 ベンソン一等兵

 ノエル=デルー一等兵(村内に外出中)

 ロッテ=ビスト一等兵

 シャーリー=ローゼンガー一等兵

 スティーブン(ステフ)=ボーア二等兵

 ダニエル=ヴィッツエル二等兵

第二班

 サイモン=ロバーツ二等兵


サイモンはリサと魔道具の開発中。

そして、残りは昼の休憩中。

俺とアレクとマルビンとベンソンはテーブルを囲んで協議中だ。


「ファルス。お前いつまで遊んでいるんだ?」

「ん?王都ミラルダへはまだ行けないからな。新年の宴まで後11日か。

物資のやり取りは商人任せ、その管理はルーカス達がしっかりやっている。

麦なんかの大物の取引が落ち着いたからな。俺の出番はないんだよ。」

「貴族からの招待状があったと聞いていますが。」

「ベンソン、それはもう無い。」

「良いのか、それで。」

「ああ、ザーリ領の農地回復や移民受け入れの話を聞いた連中は、それぞれが抱えている問題を解決してくれと言ってくるだろうし、ユーリ第一王子の派閥の連中は騎士団長の件や派閥への取り込みを狙っているだろう。相手にしてられん。」

「なるほど。あまり有益な相手はいないのか。」

「招待状は知らない名前ばかりだったからな。

ああ、ザーリ辺境伯とは新年の宴の後に会う事にした。

あとは、その新年の宴で実際に会ってからだな。」

「そうか。」


「新年といえば、アレク、皆の役職の件は決めたのか。」

「考えたが、このままでいく。

職人達に聞いても(カシラ)と見習いぐらいしか呼び分けていないし、オの国の兵士達も隊長、副隊長だけで他は横並びだ。

俺達の中の区別だけだし、新兵が来ることもないからな。

ステフ達を一等兵として後は現状維持だ。」

「そうか。」

「ただ、ホーク建設管理官からは兵長教育プログラムを全員に受けさせる様に言われている。

これは順次実施している。」

「ああ、村の自警団の件だな。」

「そうだ。村人達を指揮する場面が今後出てくるだろう、とのことだからな。」

「そうなると、合同訓練も必要かな。」

「そうだな。集会所でできるか?」

「大丈夫だろう。その時はマーカス村長代理に申請しろよ。」

「わかった。」


「さて、そろそろ休憩も終わる。これが最終ラウンドだ。」

「そうですね。」

「待て。それでは俺に逆転の可能性が無いぞ。」

「あきらめろ、ファルス。」

「カードの弱さは変わりませんね。カン外政官。」

「くっ。」


最終ラウンドも負けた。



冬の寒さ対策で、カッシーニ81の外されていた外殻装甲は元に戻されている。

工作機の出入口は開閉式の扉となり、今は閉ざされている。

俺は人間用の出入口を抜けて外政官の館に向かった。


館の前の道で前方から村人との打ち合わせに行っていたホーク達と会う。

ホークの隣にはパメラも一緒だ。

「村人との打ち合わせは問題なかったか?」

「はい、順調にいきました。」

「そうか。ん?パメラ、その背嚢は。」

「あ、これですか?これは魔道具の貸し借りに使ってます。リサとサイモン君が作っている魔道具を借りて、家で使っているんですよ。」

「試験運用してるのか?大丈夫なのか?」

「ええ、村の人たちにも好評ですし、いくつかの魔道具は量産するべきですよ。」

「そうか。」


順調に成果を出しているな。



外政官の館。

2階の俺の執務室へ上がると、ドアに"起こせ"とのメモ紙が挟まれていた。

俺は廊下を進み、休憩室のドアを開ける。

「クリス、起きてるか?」

「ん~~。寝てるぅ。」

「もう昼だぞ、オの都でもとっくに朝だ。起きろよ。」

「う~。」


「帰りが遅かったら個人ポッドで寝たほうが休まるんじゃないか。」

「それはそうじゃが、このフカフカマットで寝たいの。」

「しかし、そろそろ寒いだろう。」

「防御フィールドは便利じゃぞ。ファルス。」

「ああ、そうか。」

高高度飛行でも寒くないように防御フィールド内は気温24度を保つように掛ける。


「ふふん。昨夜のパーティーは楽しかったぞ。」

「昨夜は誰のパーティーに行っていたんだ?」

「第一王女クリサリスの婚約者の父親のなんとか公爵のパーティーじゃな。

来年の春訪祭に結婚すると聞いたぞ。」

「ほう。」


収穫祭は秋の終わりだが春訪祭は冬の終わりで春の訪れを祝う祭りだという。

この祭りの後に畑を耕し種を蒔くという。

冬の終わりで物資が乏しいからだろう、春訪祭は祈りが主体で静かに行うそうだ。

そして、結婚の儀も執り行われる。


「ファルス。そのテーブルの上に書状があるじゃろう。あなた宛よ。」

「俺宛?」

満面の笑みに片目をつむる仕草はオの国の淑女の間で流行っているのか?

テーブルの上には確かに一枚の紙が置かれている。何やら書かれているな。

紙の上には緋色のブレスレットが重し代わりに置かれている。

クリスの笑みを浮かべた表情を不審に思いながら、俺はその文面を読んだ。


「果たし状!?クリスティーヌ=サワー嬢の交際相手!誰だこの、イングウェイ=フォン=ディスケルハーへンって?」

「そうそう、そのディスケルなんとか公爵のパーティーじゃった。そいつは次男だそうじゃ。」

「このクリスティーヌってクリスのことか?」

「あいつ、さんざん惚れたと言っておきながら、名前を間違えおって。」

「なんだ、惚れられたのか。」

「ふふん、そうじゃぞ、ファルス。妬けるか。」

「いや、こいつなかなか見る目があるな。」

「そうじゃろう、そうじゃろう。」

「で、本日四の鐘、ディスケルハーヘンの館にて決闘を申し込む、とあるが。」

「うん、ファルス。勝つが良い。」

「決闘で勝つって事は、いいのか?それともオの国では別のルールがあるのか?」

「うん?そうじゃな。命を掛けては色々禍根が残るか。

しかし、あの場には公爵も第一王女クリサリスと第二王女アビーとその取り巻きが大勢いたからな。取り返しがつかないじゃろう。」

「はぁ、四の鐘というと、1500か。今オの都は0730だな。

クリス、決闘前にアビー姫に会えるか?」

「では、朝一で面会を申し込もう。」



「まぁ、クリス様。ようこそいらっしゃいました。

ファルス=カン様も。お久し振りでございますわね。」

「お久し振りです。アビー姫。」

「アビー姫。急に来てすまない。」

「まぁ。クリス様でしたら、いつでも歓迎いたしますわ。それにしても、どうなされたのですか?」

「昨夜の事なのじゃが、この"果たし状"についてなのじゃ。」

「ええ、たしか四の鐘でしたわね。」

「その決闘なのじゃが、このオの国では決闘について、その、何かルールがあるのじゃろうか?」

「まぁ。申し訳ございませんクリス様。私、殿方の作法には疎いものですから。そうですわ。

フィーナ、廊下に衛兵がおられるでしょう。呼んできてくださるかしら。」


アビー姫に声を掛けられた女中が茶室の扉の前に控えている衛兵の一人を連れてきた。

彼はテーブルの前に来ると、その場に跪く。

「お呼びにより参上いたしました。第一連隊第四分隊ブルート=スーデルでございます。姫殿下。」

「ブルート、クリス様が我が国の決闘についてお尋ねです。」

「決闘でございますか。クリス様。」

「うむ。このような果たし状を昨夜受け取ったのじゃ。この国での決闘について、ルールなどがあれば教えてほしい。」

「拝見いたします。」

ブルートが果たし状を一読する。

彼はかつて第11分隊でバレン隊長の部下だった男だ。


「なんと。公爵様の。こちらをお受け取りになったのですね。」

「そうじゃ。そのイングウェイとやらに渡されたのじゃ。」

「そうですか。しかし、失礼ながらクリス様のお名前はクリスティン様で。」

「そうなのじゃ。まったく。」

「決闘相手の名前も書かれていませんし、最後の言葉が"決闘を行う"ではなく"決闘を申し込む"となっております。これでは正式な果たし状とはいえません。」

「まぁ、そうなのですか。」

「そうなのか。」

「そうです。これは"果たし状"ではなく"呼び出し状"です。相手を呼び出し、その場で決闘を申し込み、決闘を行う事になります。」

「そうか。では大差ないな。で、決闘のルールはあるのか?ブルート。」

「通常は決闘の申し入れの時に言い交わされます。

今回は公爵様のお屋敷で行われる様ですので、決闘状が証文として扱われ、立会人も付くと思われます。

武器に関しては、普通は剣同士ですが、これは互いの得意武器の事もあり得ます。

1対1、まれに複数の場合もありますが、当事者以外は手出し無用です。

勝敗は一方が負けを宣言するか、命を落とすまでです。」


「この決闘は回避できるか?」

「それは難しいでしょう。」

「では、決闘の結果、命を奪ってしまった時、対戦相手は処罰されるのか?」

「いいえ、処罰されません。また、相手の身内の者が報復を行えば、報復者が処罰されます。」

「なるほど。他に注意すべき点はあるか?ブルート。」

「はっ。僭越ながら今回の決闘はクリス様とのご交際を巡る諍いと思われます。」

「うむ。その通りじゃ。」

「では、この決闘が成立した後はクリス様のご意思に関わらず、クリス様は勝者と交際なさる事になります。」

「承知している。」

「はっ、では、私からは申し上げることはございません。」

クリスはアビー姫に視線を向けて、質問が終わったことを伝える。

「ブルート。ありがとう。さがりなさい。」

「はっ、失礼いたします。」


「アビー姫。よろしいですか?」

「何でしょう、ファルス=カン様。」

「仮に、このイングウェイ殿が命を落とした場合、この国への影響はございますか?」

「影響ですか?政治的なことはお兄様がお詳しいのですが。

私としましては、殿方の決闘ですので、その結果は尊重されるもの、と教えられております。」

建前はそうだが、息子が死んでしまう公爵はそうは思わないだろう。

親子の愛情とやらはレギウス星人である俺にはよくわからないが、仲間を失う辛さは知っている。

「ファルス。要はこのイングウェイに"負けた"と言わせれば良いのじゃ。」

「そうだな。」

「まぁ!クリス様のお相手はファルス=カン様でしたのね。」


次回87話「真昼の決闘」

ファルス、いざ勝負!


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