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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第四章 カルー少佐
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78話 王都ミラルダの収穫祭

第二班の連中は港に曳航される軍艦を確認した後、港町を抜けて連絡艇に集合した。

空は明るくなり、港周辺に人が現れ始めたので、丁度良い頃合だった。


俺たちは画像データから討伐隊の船の動きなどを図案化して資料を整理していた。

レイチェルは既に生産司令部に移動している。


「おはようございます。」

「おはよう、ホーク。」

「おはよう。」

「おはようございます。」

ホークがこちらに顔を出すのは最近では珍しい。

結婚式の後は、村内の自宅から生産司令部に出勤している。

「どうした、向こうで今朝の偵察任務の話をしていると思っていたが。」

「ええ、エの国の防衛体制が十分でしたので、一方的であった。との総評ですね。」

「そうじゃな。こちらでも同様の意見じゃ。ウの国は作戦開始以前に負けていたようじゃな。ホーク。」

「そうですね。クリス外政補佐官。」

「それにしても、ウの国の兵士の動きがずさん過ぎると思わんか?護衛部隊が何の役にもたっておらんぞ。」

「ウの国ですが、内乱は収まったとはいえ、国内情勢は不安定と思われます。

今回の作戦も物資の略奪が目的ですから、兵の士気は低かったのではないでしょうか。」

「うむ。次はどう動くと思う?」

「今回の作戦が宣戦布告された後の正式な軍事行動であれば、エの国側からの反撃、ウの国側からの追撃や別働隊の動きがあると思われます。

しかし、今回の作戦行動は連動性のない、単独行動に見えます。

もしかしたら、軍の一部が独断で動いたのでしょうか。」

「そうじゃな。ファルス?」

「その可能性が大きいな。戦争は噂話として囁かれ、実際に軍の衝突はあったが、小規模だ。」

「では、今回はこれで終わりか。ファルス。」

「そうかもしれんな。」


クリスとの話が一区切りし、ホークは俺の顔を見た。

「カン艦長代理、よろしいですか。」

「ん、どうした?」

「はい、実は生産部の人員に離艦希望者が増えています。」

「離艦?」

「はい。」

「と、いうと村内に家を持って生活する。という話ではないな。旅に出るつもりか。」

「そうです。」


「まぁ、私たちが歩き回ってますからねぇ。彼らも世界を廻りたいのは仕方ないですよ。」

「そうじゃな。せっかく新しい世界に来たのじゃ。これから先、ずっと村に留めて置くこともできんじゃろう。ファルス。」

「ああ、俺も基本的には反対はしない。ホーク、生産部の仕事はどうなんだ?人数が減っても大丈夫なのか?」

「ええ、そちらは問題ありません。レギウス村の開発も村内は終了し、冬の間は道路整備ぐらいの予定です。他に生産予定品目がありますが、そちらも問題無いとのホーキンス生産部管理官のご意見です。」

「馬車とクッションはブライアンとレベッカの担当じゃぞ。ホーク。」

「はい、問題なく進行中と聞いています。」

「では、問題は無いな。

そうだな、レギウス軍軍港停泊時の外出申請をそのまま利用しよう。離艦日時と最初の目的地ぐらいの記載でいいだろう。

どうだ?」

「はい。」

「では、”離艦申請手順”としてマクレガー村長に確認してもらった後に公開しよう。」


「ふふふ、艦長代理であった事を思い出したよ。ファルス。」

「ああ、俺もさっき思い出したよ。クリスティン=サワー副艦長殿。」


離艦申請手順をマクレガー村長に送ると”確認中”となった。

おそらくマーカス村長代理とホーキンス生産部管理官と協議するのだろう。

この辺は役職が変わっても体制が変わらない。



俺は軽めの昼食を食べてからエの国、王都ミラルダのレギウスの館に移動した。

2階の部屋でリリアナが用意してくれた服に着替える。

ボディスーツを脱ぎ、布で体を拭く。

さて。

俺はベッドの上に並べられた服を見た。

事情を知っているリリアナが身に着ける順番に服を並べてくれている。

上着は椅子の背に掛けられている。

明るめの茶色の生地。

左前に白生地の太いラインが縦に入るのがエの国のスタイルだ。

そして左胸に各自の紋章を入れる。

俺の上着にはレギウス村の紋章が縫い付けられている。


オの国では全て女中がやってくれた。

なので、俺は服の着方が身に付いていない。

レギウスの館を開いてすぐの頃、俺の服装について話をした時にリリアナたちに驚かれた。

そこで、現地の服を仕立てることになったのだ。

これまでは公式行事の参列なんてなかったので、今回が初である。

もっとも、下着に関しては何度か着る機会があった。

なので、下着は問題なく身に付けられる。

靴は、最後だったな。

次はシャツだ。これはボタンが難しい。首から下に順番に、だ。

手首にもボタンがある。これは無理なので、リリアナに止めてもらおう。

ズボンを履いたところで部屋の外に居るリリアナに声を掛けた。

後は任せよう。



レギウス村からの参加者も外政官の館から転送門経由で王都ミラルダにやってきている。

彼らの受付をワーニャとナタリーに任せて、俺はルーカスとリリアナを伴って中央広場の神の館へ向かった。



中央広場には人々が集まり、祭り屋は出し物の宣伝と準備をしている。

神の館の入り口では教士の女性たちが受付を行っていた。

館の中に入れるのは招待状を持っている者のみのようだ。

ルーカスが受付に招待状を見せると、俺たちは館の中に案内された。


広間にも人が集まっている。

街の商人たちは出入口そばの席だ。

互いに挨拶を交わしている。

農夫らしき良く日焼けをした者たちの姿も見える。

前方の席には着飾った人々。おそらく王都の役人や各ギルドの代表者たちだろう。

後方の人々と比べて、こちらは静かに席に着いている。

「こちらのお席にどうぞ。」

俺たちは前方から5列目の中央通路脇の席に案内された。

「ご存知かと思いますが、後ほどユーリ第一王子殿下がご参列なさいます。」

俺たちを案内した教士はそう言って戻っていった。


その後も人々が案内されて席についていくが、俺たちの様に王子参列のことを言われている人はいなかった。

王族が来る場合の礼儀作法が何かあったか?

周りを見ていれば判るだろう。と思っていたが、隣のルーカスに聞いてみるか。

その時、俺の後列に人々が案内されてきた。

「おっ、今年は6列目かよ。」

「マスターの日頃の行いのお陰ですわね。」

「では、通路側なのは過大評価ですよ。壁側に追い遣られないと正当評価ではないですね。」

「おまえらなぁ。おとなしく座ってろよ。」

前方の数人がこちらを振り返って見ている。

おそらく壁側の人々も良い気はしないだろう。

俺は声に聞き覚えがあった。王都ミラルダの冒険者ギルドのギルドマスター。確かヴィクターといったか。レギウスの館を開いた時に挨拶して以来だ。



「皆様!ユーリ第一王子殿下が参られました。」

入口より教士の声が響く。

広間の人々は立ち上がり、右手を胸に当て、中央通路を向いて頭を下げた。

俺も皆に倣って頭を下げて待つ。

やがて、王子御一行が通路を歩いて来た。

その足が、俺の3m程手前で止まった。

「ユーリ様。」

促すような男の声がして、一行が進み出す。

一行が最前列に付いた後、人々が席に着く雰囲気を感じて、俺も席に座った。


「なんであいつら立ち止まったんだ。」

「判りませんが、もしかすると。」

「ああ、月の人か。」


後ろからヴィクターと連れの会話が聞こえてきた。

なるほど。珍しかったか?

しかし、布の服を着て、頭を下げた状態の俺を見て判ったのか?


神官たちが祭壇前に並び、恵みの神、女神アドニスへの祈りの言葉が始まった。

神官たちの祈りが終わると、前方のユーリ第一王子御一行が立ち上がった。

中央の神官長が頭を下げて場所を譲るとユーリ第一王子が中央に進み出て、こちらを振り返る。

ユーリ第一王子は53歳。

黒地に銀の装飾をあしらった見事な仕立ての服を身に着けているが、それよりも大きな腹周りが見事である。

連れの御一行も振り返って俺たちの方を見ている。

服装は同じく黒地に銀の装飾。左胸の白いラインが強調されている。

侍従らしき白髪長身の男が一人。

他の5人は皆、若い女性だ。

3人が帯剣している。

両端の2人が持っているのは杖か?

なぜだろう、全員と目があったような気がする。


「皆の者、今年も一年を通し、ご苦労であった。

こうして実り多き秋を迎えることが出来たのも、皆の日頃の務めの成果であること、我が父、国王陛下も喜ばれておられる。

昨今では、我が国の実りを狙う隣国の動きもあったようだが、それも我が精強なる国軍兵士諸君の活躍により見事撃退しておる。

我が国は強い。

それは、皆の強さである。

さぁ、皆の者、今年も祭りを楽しもうではないか。」


「「「ユーリ=ニコルフ第一王子殿下!エの国!王都ミラルダに栄光を(モタラ)し者!」」」


ユーリ王子の言葉が終わると、広間に居た者が全員立ち上がり大声で唱和した。

俺たちは一歩出遅れてしまった。

唱和が終わり、皆はまた右手を胸に中央通路を向く。

今度は頭は下げないようだ。

ユーリ第一王子を先頭に一行が通路を歩いて来る。

居並ぶ者の顔を確かめるように左右を見ながらゆっくりと歩いて来る。


「カール=ガルシア王都執政官。」

「はっ、殿下。」

「新しい顔が増えたが、どうだ?」

「はっ、万事問題なく。本日の王都ミラルダの平穏は王子殿下からの賜物でございます。」

「うむ。」


その後も何人かと言葉を交わしつつ一歩一歩近付いて来る。

俺の前に来たが、今回は立ち止まらなかった。


「ヴィクター=フェイズか。久しいな。」

「はっ、王子殿下。」

「ふふ、そなたを見ると冒険の日々が蘇ってきて心躍るな。」


ヴィクターギルドマスターは黙礼し、王子殿下は笑いつつ先へと歩を進める。

その後は周囲に声を掛けることもなく、手を振りながら先へと進んでゆく。

従者の6人も王子の後を進む。

「カン殿。」

従者の最後の一人。杖を持った女の囁き声が俺の耳に届いた。

俺の前を通り過ぎる時に、俺に小さな紙片を手渡してきた。

視線は合わせない。

俺はそれを素早く左手に握り込んだ。



王子一行が神の館を出ると後の者は三々五々といった感じだ。

周囲に人が多い。

「ルーカス、リリアナ、ちょっといいか。」

「はい、何でしょう。」

「ああ、俺はこれから冒険者ギルドの、ええと、」

俺は二人に近付き、二人の体を壁にして左手の紙片を確認する。

"今夜22時。レギウス館"と書かれている。

「そう、ヴィクターギルドマスターに挨拶して来るので、二人は先に館に戻っていてくれ。」

「はい、かしこまりました。」


左手をズボンのポケットに入れて辺りを見渡すと、「俺をお探しかい?」と、背後から声を掛けられた。


まぁ、後ろに座っていたんだ。

そう離れるはずもないか。


次回79話「ミラルダの冒険者ギルド」

忘れがちですがファルスも冒険者としての身分証を持っています。


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