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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第四章 カルー少佐
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77話 食料強奪作戦

0500。

昨夜は第二班の出発を見送ってからカッシーニ81の個人ポッドで休んだ。

食堂でコーヒーを仕入れて生産部司令室に向かう。

俺が入った時には生産部メンバー全員が揃っていた。

彼らが見ているのは増設されたモニター群で、第二班のメンバー毎の映像がそれぞれのモニターに映し出されている。

メインモニターには港町の上空画像、連絡艇が撮影した画像だ、に各員の現在位置が緑の光点で記されている。


「おはよう、アレク。」

「おはよう、ファルス。20分程前に2隻の船が港に入った。」

サブモニターにはバベルのカメラ画像が映されている。

上空に星空と3つの月の明かりがあるとはいえ、深夜の港は闇に包まれている。

暗視カメラによって明るく見える薄闇の港の様子が映し出されていて、船が接岸している様子が見える。

船の周囲には20人ぐらいの人間がいるようだ。


「ずいぶん静かだな。」

「そうなんだ。バベルたちはナノ通信で会話しているが、港に現地人がほとんどいない。

バベルたちが到着時に見つけた者は6人。黒いマント姿で建物の影に隠れていたのでウの国の工作員だろう。ただ、2人は4人とは少し距離をおいて隠れている。

4人が居たのはこの倉庫の横。今は船の連中と合流して倉庫内に入ったようだ。

残る2人は倉庫のはずれ。南側のこの位置だ。

そして、川岸、港の南側に100人ほどの人間が5隻の船に分乗して隠れている。」


戦艦2隻が接岸しているのは東の海岸にある桟橋だ。

陸地側に倉庫らしい大きな建物が数棟ならんでいる。

そこから300mほど南に河口があり、そちらにもいくつかの桟橋と倉庫らしい建物が並んでいる。


アレクがモニターの一つを指し示す。

マルクス=クローネ兵長のモニター画像は川岸に草木でカモフラージュされた船を映している。

この距離と闇の中では戦艦に発見されてはいないだろう。


「つまり、今回の襲撃はエの国側に筒抜けだった、という訳か。」

「うむ、そのようだな。ファルス、お前が情報を流していたのではないのか?」

ホーキンス生産部管理官が俺に問いかけてきた。

「いえ、私も王都ミラルダでの噂話を聞いてから動きましたから。おそらくエの国側の対応が早かったのでしょう。」

ブリント領に駐留していた第3軍第二連隊。

彼らが配備された時点で、既にエの国軍は今日の事を把握していたのだろう。


「だが、事前に分かっていたなら海上で迎え撃てば良くないか?」

「おそらくですが、これは宣戦布告された正式な戦争ではありません。

ウの国側は食料調達のための略奪行為であり犯罪行為にあたります。

エの国としては、その略奪犯を捕らえるという理由が欲しいのでしょう。」

「あー、政治的配慮ってやつか。」


「あっ、荷車が出てきました。」

サラ=スール伍長が示したモニターに荷車とそれを引く人間が映されている。

画像が動いて数台の荷車を順に映していく。

あらかじめ軍艦にも荷車を載せておき、輸送船到着前に食料を積み出しておくのだろう。

「輸送船の姿も見えてきました。」

海上に港に入ってくる3隻の輸送艦の姿も見えてきた。


「おはようございますぅ。」

「おっ、ファルス。もう来ていたのか。」

「おはようございます。」

レイチェル、クリス、リサが生産部司令室に入ってきた。


普段はスペースに余裕のある司令室内だがモニター増設とそれを見るためのモニター前スペースは限られている。

第一班の連中は入ってきた俺たちに遠慮してモニター前から数歩下がってしまった。

「クリス、現在の状況説明は俺からするので、俺たちは中央司令室で見よう。」

「おっ、そうじゃな。」

レイチェルはホーキンス生産部管理官を見ると手を振って廊下に出て行った。

「邪魔したな。」

「すまんな、ファルス。」

俺はアレクとホーキンス生産部管理官に挨拶して中央司令室に向かった。



中央司令室ではメインスクリーンに11人分の画像、指先カメラと首元カメラの22画面、を映し出し、左側面スクリーンに街と人員配置状況、右側面スクリーンに指定した画像を表示するようにメティスに頼んだ。

今はバベルの指先カメラが捉えている輸送船が接岸した桟橋が映し出されている。

荷車を使って食料、おそらく小麦粉袋だろう、の積み込み作業中だ。

輸送船2隻と軍艦1隻が桟橋に着いている。

3隻目の輸送船は後方の海上で待機中。

軍艦1隻は海上で周辺警戒中の様だ。


「あっ、隠れていた船が動き始めましたよぉ。」

「陸側も討伐部隊が来たようですよ。」

エの国側の監視役2人がそれぞれ連絡を入れたようだ。

北側から現れた討伐部隊の100人近い人員が静かに移動している様子がモニターに映し出されている。

「さーて、どうなるかな。」


状況説明の後、俺たちは予想を立てた。

ウの国側は食料強奪が目的だが、あまりに上手く行き過ぎて警戒しているかもしれない。

逆に油断している可能性もある。

この辺は略奪部隊の指揮官と兵士の練度に拠るだろう。


エの国側の目的は何だろう?

追い返す?、全滅させる?

今回の騒乱をウの国の侵略行為とする為に数人の捕虜は必要だろう。

その為には軍艦の1隻は拿捕か撃沈したいはずだ。

輸送船も、できれば拿捕したい。

船は貴重品だ。


俺は軍艦1隻は逃げると見た。今回の目的を考えるなら食料は持ち帰りたいが足の遅い輸送船を守りはしないだろう。

彼らの理屈は、"我々が脱出し部隊を再編し再戦に臨む"、だ。

輸送艦乗りとしては腹立しい意見ではある。


クリスは全滅と予想した。

エの国側の準備が良く、南側の川から船を出し海上封鎖を行えば、エの国側の軍艦にそれを突破して南に逃げることは出来ないだろう。との意見だ。

リサとレイチェルも同意した。

海は広いが、岸から離れれば魚竜が襲ってくる。

船の移動エリアは狭いのだ。



「船が海上に出ましたねぇ。あっ、火を灯しましたぁ。合図かなぁ。」

「はい、陸上部隊が速度を上げました。突入します。」

モニターから一斉に笛の音が聞こえてくる。

討伐部隊の突入の合図だろう。

船の周囲にいた連中が慌て始めた。


荷車をおいて輸送船に駆け込む者たちがいる。

ウの国の略奪部隊の兵士たちは北側から迫るエの国の討伐部隊を迎え撃つようだ。

10人に満たない人数で盾を構えて防御陣を敷く。


その討伐部隊は、闇の利点を捨てて松明を灯して、さらに笛を吹いて存在をアピールしている。

逃げてくれと言っているようなものだが、いいのか?

おっ、弓矢の的にもなっているようだ。軍艦から攻撃されているのだろう。

だが、それを意に介さず盾を前面と上段に構えて一体となった先頭集団が防御陣に突っ込んだ。

肉弾戦だな。

剣戟と叫び声が響く。

海上にいた軍艦と輸送船は移動を始めている。

桟橋にいた輸送船も1隻が動き始めた。

だが防御陣はあっさり突破されたようだ。

無理もない、人数に差がありすぎた。

元々夜間の襲撃を企んでいたのだ。守備側が100人も居るとは想定外だろう。

討伐部隊が素早く輸送船と軍艦に乗り込む。


海上では討伐部隊の船5隻が接近している。

輸送船に1隻、戦艦に4隻が肉薄する。

どうやら2隻ずつ左右に分かれて挟み込むようだ。

距離があるので海上戦闘の様子は分かりにくいか。

そう口にした時だった。

桟橋周辺の戦闘を映していたバベルの映像が上空からの映像になった。


「バベルの奴、飛んだようじゃな。」

「まだ陽が出てないから大丈夫ですよ。」

「バベルは班長だ。おおかた部下の誰かが飛びたいと言って、それに応えたのだろう。」

「そうじゃろうな。」

部下が飛べば部下とバベルの責任になる。

バベルが飛べばバベルだけの責任だ。

まさか、第一班からのリクエストではないだろうな?


バベルのカメラが海上の軍艦と左右に接舷した4隻の船を捉えた。

おそらく鉤爪のような物を使って張り付いたのだろう。

軍艦上で戦いが繰り広げられている。

軍艦は速度を出すためだろう、通常の船より幅が狭い。

その所為もあってか、海上に落下する姿が多くみられた。

戦艦側の兵士は多くても20人。漕ぎ手は40人から60人ぐらいいるだろうが、彼らは戦力にはならない。

対する討伐側は4隻で80人。漕ぎ手であり、兵士だ。

こちらも数の勝利だな。



未明の食料強奪作戦は失敗に終わった。

エの国は作戦阻止の報酬として戦艦2隻と輸送船3隻を手に入れた。大勝利だな。


賭けに負けた俺は何を強請られるのだろうか。



「そうだ、ウの国の情報部員っぽい黒マント4人は逃げたみたいですよ。」

リサが討伐隊の笛の音を聞いてから倉庫の脇道を街中に消える4人の映像を写して言った。

撮影者はレベッカだ。

「ああ、そうか。彼らは逃がされたんだろう。」

「?」

「エの国が事前に情報を得られたのは、おそらく彼らのおかげだ。既に正体がばれていてマークされているか、二重スパイなのだろう。」

「なるほど。」


「つまりぃ、情報戦ではエの国側が上手(ウワテ)だったってことですねぇ。」

「そうだな。」

「アビー姫の時も最初は情報戦じゃった。エの国の得意とする処なのじゃろう。」

「気に入らないか。」

「当然じゃ、ファルス。」

「そうだな。」

俺はクリスの頭をポンポンと撫でる。

「さて、今日は王都ミラルダの収穫祭だ。1300に館に行くが、どうする?」

「行かん。」

「そうか。」

残念。


次回78話「王都ミラルダの収穫祭」

ファルスは第一王子御一行と会います。


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