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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第四章 カルー少佐
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70話 収穫祭の準備

ゴブリン退治の合間に医療センターにリサと共に行くと、サイ族のドラームの治療が終わっていた。

医療ポッドを出て、俺たちに治療の礼を言う。

「いやぁ、天使セリーヌ様は大したお方だ。俺の身体が若返ったぜ。く、く、く、感謝しねぇとな。」

焼けたズボンの代わりのズボンを提供する。ズボン以外は身に付けないそうだ。

その後に食堂に案内する。

既に艦内の皆は食事済みなので、俺たちだけだ。

朝食のトレイをドラームに差し出すが、拒否された。

「すまねぇが、俺たちはこういった物は食べねぇ。外に草原はあるか?上手い草が一番なんだよ。」

なぜか艦の食事は現地人に受け入れられない。

俺たちの今までの食生活を否定されるようで、この事はボディブローの様に効いてくる。

リサは何も感じてないな。

「それなら、馬用の飼料用に良い干し草がありますけど。」

「いいねぇ。案内してくれ。」


干し草にかぶりつくドラームにも神話や言い伝えについて聞いてみたが、子供の頃に先代の族長から聞いた、との事なので新しい情報は無かった。

他の氏族との関わりも無い、との事だ。

「俺たちは生まれた土地から移動する事は無いからな。」

「今回の丘陵地帯への移動は違うのか?」

「あそこも俺たちの土地だぜ。冬は丘で、夏は平原で過ごすのが、ディディ族だ。この干し草旨いな。」

「旨い干し草があるなら、違う土地に移動する気はないか?例えば、この村とかは。」

「ここかぁ。」

ドラームは周囲を見渡した。

カッシーニ81の巨体に、馬小屋。外政官の館に村長の館。遠く神の館と村の家々が見える。

「ここに住む細い人とは暮らせねぇなぁ。俺たちは箱の中には入らねぇよ。」

「そうか。」


その後、丘陵地帯のゾコラ族長の所に連れて行った。

ドラームの所在を聞きに来た時の男達の中にドラームの兄がいたそうだ。

ドラームは早速、兄の場所に駆けて行った。

ゾコラ族長に礼を言われ、俺とリサはクリス達に合流した。


◇


9日間のゴブリン退治を終了し、大レギウス湖北方のゴブリンは掃討できた。

心配していたオーガの飛来も無く、俺たちはレギウス村に戻ってきた。


俺はダニエルを連れてレイチェルの元に向かった。

彼女は第一館の跡地に建てた外政官の館にいた。

「レイチェル、いいか?」

「はい、ファルス外政官。ダニエル君も。」

「羊の方は順調か?」

「はい。羊牧場の転送門を用意しましたので、朝から職人さん達が作業に出ています。

ただ、冬に入る時期なので余り多くは刈れないそうです。羊さんも体調を崩すそうですから。」

「そうか。ところでお願いがあるんだが、今回の北方偵察で新種の火吹き飛竜を倒した。

ダニエルが持っているから、二人でオの都の冒険者ギルドに行ってほしい。

そこで、羊の毛の需要も聞いてみてくれ。」

「了解。では、行きましょうか、ダニエル君。」

「はい。」


◇


畑に行き、マクレガー村長に帰還の報告をした。

その時ふたりの男が話しかけてきた。

元村長で今は農家をしているローゾとトランだ。

「マクレガー村長、お話があります。」

「はい、なんでしょうか。ローゾさん。」

「以前の村では収穫が終わると、収穫祭をやっておりました。」

「はい、うちの村もです。ほとんど全部の村がこの時期に収穫祭をやります。」

「ふむ、収穫祭ですか。それはどのような祭りなんですか?」

「はい、今年の収穫を女神アドニスに感謝するお祭りです。」

「神官様ならご存知かと、あと、祭り屋の手配も。」

「祭り屋?」

「ええ、祭り屋です。村々の祭りにやってきて広場で食べ物を売ったり、音楽や踊りを演じる奴らです。」

「ほぉ、それは楽しそうですね。レイド神官に訊いてみますよ。」

「お願いします。」


「カン外政官、レイド神官からも収穫祭については聞いていたが、祭り屋については聞いていなかったな。ちょっと聞いてきてくれるか。」

「はい、村長。」

という事で、俺は神の館へ向かった。


「収穫祭と祭り屋ですか。」

「はい。神官様がご存じだと聞きましたが。」

「ええ、収穫祭ならば、今も準備中です。

収穫祭は秋の終わり、500日から530日の間に各地で行われる、1年の実りを慶び、翌年の豊穣を祈念する大切なお祭りですからね。

しかし、祭り屋の手配は、私には経験が無いですね。

王都の神の館で確認してみます。」

「お願いします。」

そう言ってから館の内部を見渡す。

祭りの準備と言っていたが、言われれば、いつもより飾り物が増えている。

「あの飾りが、祭りの準備ですか。」

「そうです。花束や果物、作物などを模した紙飾りや木製の飾りを館の内部に飾っています。

結婚の儀もありますからね。」

「結婚の儀?」

「ええ、若い男女が誓いを立てる大切な儀式です。秋は実りの季節。子を授かるにも良い季節ですよ。

月の人にはそういった儀式が無い、とホーク建設管理官がおっしゃっていましたが、本当ですか?」

「ええ、そうです。我々には結婚の概念がありませんでした。」

「それは、残念です。カン外政官。ですが、このレギウス村で共に生きていくのです。

今後は様々な儀式を取り入れて、オイゲン神の加護を感じていただきたいものです。」

「ああ、そうしよう。では祭り屋への手配をお願いします。」


俺は逃げる様に神の館を後にした。


この後は久し振りに"嵐"に乗って騎乗の練習をした。

最近は村の人に世話を任せてばかりだからな。

村の馬も増えて、今は30頭ぐらいいる。

大半が荷馬だが、10頭ぐらいがこのレギウス平原の野生馬だ。

嵐たちが放牧から帰って来た時に付いて来たそうだ。


◇


数日後、祭り屋の手配ができた事をナディア教士から教えてもらった。

「オの都の収穫祭は、いつもは祭り屋が少ないんですよ。商人ギルドが締め出してますからね。

でも今年は祭り屋の参加申し込みが多くて、いつもより多くの祭り屋がオの都に来るそうですよ。」

「そうなんですか。なぜ、今年に限って?」

「それは、月の人のおかげですって、みんな言ってましたよ。」

「私たちの?」

「ええ。オの都で色々と買い物をしていますから、商人たちも喜んでますよ。

それで、今年の収穫祭はいつもより賑やかになるそうですよ。」

「そうですか。」

「ええ。ですので、オの都の収穫祭に申し込まれた祭り屋さん達に”月の人のレギウス村の収穫祭”への参加も聞いてみましたら、皆さん喜んで申し込んでくれました。」

「皆さん!?いや、一体何人の祭り屋がやってくるんですか?」

「ああ、大丈夫ですよ。マーカス村長代理さんからご予算は伺ってましたからね。やって来るのは1組、オールドマッケイ楽団の皆さんです。人数は10人ぐらいかしら?」

「そうですか。オールドマッケイ楽団の方と事前打ち合わせをしたいのですが。」

「はい。今日の四の鐘の後にオの都の神の館でお話する予定です。」

「打ち合わせには、私も参加させていただいてよろしいですか?」

「ええ、もちろんですわ。カン外政官。」


◇


俺は生産管理室にホークを訪ねた。

「ホーク、今いいか。」

「はい。カン外政官。」

「収穫祭で祭り屋を呼ぶ件だが、聞いているか。」

「はい。ナディア教士がオの都で探しているはずです。」

「さっき、オの都から帰ってきてな、オールドマッケイ楽団という所に決まったそうだ。向こうの1500から王都の神の館で打ち合わせをしてくる。」

「そうですか。」

「移民受け入れ以来、最初のフォース族のお客さんだ。もっともオの都からのお客さんだからな、まぎれている可能性は低いと思うが。」

「準備は出来ています。全員のカメラ映像に顔認識を掛けてますからね。でも来ますか?」

「時期の早い遅いはあるだろうが、奴も俺たちの情報は集めるはずだ。

今回は楽団の中にアバンテ男爵が紛れている前提で警戒しよう。」

「以前も検討しましたが、ここに来るならば、目的は通信機器の破壊、ですか。」

「そう考えている。この村の名前から俺たちがレギウス星人である事は分かる。

友好を望むなら王都ミラルダのレギウスの館に来るだろう。だが1万2千年も生きてきているなら可能性は低いな。

奴らは5番艦を去る時に通信機器を破壊し、その修理を禁じている。

このカッシーニ81が生きている事を知り、わざわざここに来るとなれば、破壊を試みる可能性は高い。

なにせ俺たちは、世界のルールの外側の存在だからな。」

「ふう。やっかいな問題です。彼の催眠術の強さが分かりませんからね。

我々の誰かが手駒となって破壊活動をする可能性が否定できません。」

「メティスだけが頼りだな。」


「カン外政官。」

「なんだ。改まって。」

「はい、収穫祭のことですが、パメラとの結婚の儀を行います。」

「おお、そうか。おめでとう。」

「ありがとうございます。」

俺はホークの肩を叩いてやった。

生産管理室の中にはホーキンス生産部管理官と第一班のメンバー数人がいるが、俺と目が合うと頷いてきた。

もうホークから聞いていたようだな。

「そうすると、結婚の儀の後はカッシーニ81を出るのか?」

「はい。北西エリアに家をいただきましたので、そちらでの生活を始めます。」

「そうか。」

もう一度、俺はホークの肩を叩いてやった。


◇


食堂でコーヒーを飲んでいると、トレイを持ったリサが俺の前に座った。

「お疲れ様です。ファルスさん。」

「おう、リサ。昼飯か?クリスは一緒じゃないのか。」

「はい。クリスは昨夜はオの都泊まりです。パーティーに出席でしたから。」

「そうなのか。」

「そうです。オの都は収穫祭前で地方の貴族が集まってきていますからね。

クリスはアビー姫のお誘いで、いろいろな貴族の館で開かれるパーティーに出ています。

クリスに言い寄ってくる貴族もいるそうですよ。」

「そ、そうなのか。」

「はい。」


リサは俺に笑顔を向けるが、笑っていないような気がする。

「ファルスさん。」

「な、なんだ。」

「ちゃんとしてくださいね。どっか行ってしまってからでは、遅いですよ。」

「分かっている。・・・つもりだ。」

「そうですか。」


◇


1500に合わせてオの都の神の館に移動し、1600に開かれたオールドマッケイ楽団との打ち合わせに参加した。なるほど、"四の鐘"が1500、"四の鐘の後"は1600なのか?

こちらはエディ=マーカス村長代理とナディア教士と俺の三人。

楽団側は楽団長と交渉担当の男の二人だ。

オールドマッケイ楽団の所属団員は11人、荷馬車が3台、動物はいない。

宿は取らずに荷馬車で眠るそうだ。

これは朗報だった。レギウス村に宿屋はまだ無いからな。


レギウス村の収穫祭はオの都の収穫祭の翌日に設定している。5日後だ。

楽団にはオの都の収穫祭が終わった夜中に移動してもらい、レギウス村の広場で演じてもらう。

滞在は1日のみだ。

なぜ、夜中の移動になるのかは、時差を説明しないといけなかったが、理解はしてもらえなかった。

俺たちが当日の夜中に彼らの馬車に迎えに行って、彼らを起こす事にした。


金額交渉が終わり契約となった。

ナディア教士は商人の家の生まれだそうだ。

なるほど、交渉術は見習わないといけないな。

外政部に引っ張れないかな。


次回71話「収穫祭」

お祭りです。

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