表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第四章 カルー少佐
65/142

63話 城の地下 前編

エの国王都ミラルダのレギウスの館から戻り、村の中央広場に向う。

最近は夕食を村の酒場で食べるようにしている。

今日は猫じゃらし亭でイノ豚の肉スープと白パンにしようかな。

「いらしゃいませ~。」

店内を見渡すと、半分ほどが埋まっている。

「あっ、ファルスさん。こっち、こっち。」

俺を見つけたリサが手を振っている。

「邪魔じゃないのか。」

俺は彼女のテーブルの席に座った。

テーブルには他にステフとダニエルがいる。

「いえいえ、丁度良いところ、でしたよ。ね。」

「お疲れ様です。カン少佐。」

「お疲れ様です。」

「お、おう。」

何だ、なんか前のめりだな。

「とりあえず、注文しますか。ラズちゃーん、注文お願いしますー。」

「はい、はーい。」


注文を終えると、ステフが俺に顔を寄せてきた。

「カン少佐、俺たち、明日は休みなんですよ。」

「お、そうか。」

「それでですね。俺たち行ってみたい所がありまして、そこへの外出許可をいただきたいのです。」

「ん?ホーキンス管理官の許可があれば良いだろう。なんで俺なんだ。」

「えーと、それはですね。」

ステフがちらりとリサの顔を見ると、リサが頷いた。

隣りのダニエルはずっと俺の顔を見ているな。

ステフが俺に視線を戻す。

「俺たち、城に行きたいんです。」



次の日。

俺とリサ、ステフとダニエルの4人はレギウス山脈の奥にある城に到着した。

クリスはオの都でアビー姫との約束があり、ホーク、パメラ、レイチェルには村の仕事がある。


標高2800m。

風はないが、かなり寒い。

周囲は岩だらけの灰色の世界。

城の城壁も外壁も灰色の石作りだ。

「城壁に門がないな。」

「当時は連絡艇で出入りしていたんでしょうね。空から行きましょう。」


5m程の城壁を越えると中庭があり、その奥に3本の尖塔を持つ石造りの城が建っている。

正面に入口があるが、扉は付いていない。

木製の扉は朽ちてしまったようだ。

俺たちはそのまま玄関ホールと思われる場所に踏み入った。


「がらんどうですね。」

「何もない。」

「まぁ、ここは入口だからな。さて、城内を探索しようか。」

「障害もなさそうですし、散開して探しましょうか。」

「そうだな。」


俺たちは散開し、それぞれが城内を探索した。

しかし、城内に過去の遺物は残されておらず、収穫のないまま玄関ホールに集まった。


「何もなかったですね。」

「綺麗に何もないです。」

「うーん、綺麗すぎます。」

「朽ちたにしても痕跡は残りそうだがな。1万年以上経つが綺麗に無くなるものでもないだろう。」

「という事は、誰かが綺麗に片付けた、ということですか。」

「断定はできないが、そうなんだろうな。」


収穫のないまま、俺たちは中庭に出た。

振り返り、城を眺める。


「かなり広い城だな。ダニエル、この城はレギウス村に持っていけないか。」

「えっ、これですか?」

ダニエルが城を眺める。

ステフも顎に手を当て、考え込む。

「どうする?」

「石造りだからな。パーツ分割できるかな?いろいろ組み合わさっているし。」

「まずは構造分析が必要じゃないか。計測器で測らないと。」

二人で話し込み始めてしまった。


「本当に持っていくんですか?」

「いや、この構造を参考にすれば、ナンドゥールがコピーを作れるかと思っただけだ。」

「なるほど。」

リサも城を眺める。

「これだけ広いと、隠し部屋とか、ありそうですね。」

「隠し部屋か。」

考えていなかった。


「カン少佐。」

ステフの呼び声に顔を向けると、二人は中庭の奥の方へ移動していた。

「どうした。」

「外壁下部に構造物があります。地下がありそうです。」

それは、大発見だな。



城の外壁脇に1m程の高さの塀に隠されて地下への階段があった。

20段ほどの階段を降りると、奥へと続く通路が延びている。

光が差し込まない闇の通路に、光の魔石を持った俺を先頭に入っていく。


やがて、10m四方ほどの部屋が2つあったが、こちらも空き部屋となっている。

ただ、奥側の部屋の壁面に、エレベータの扉がついていた。

つまり、取っ手の無い、金属製の両開きスライドドアだ。

「これ、エレベータの扉ですね。」

「壁面ボタンは反応しません。電源が入ってませんね。」

「扉を壊せば、縦坑内には侵入できるな。他所を確認後に戻ってこよう。」


通路の奥には鉄製の扉があり、大きな音を立てながら開くと、さらに地下へと続く階段があった。


そして、地下からは光が漏れ、草花の香りが漂ってきた。

「どうする?」

「行きましょう。」

ステフとダニエルは乗り気だ。

リサも頷いている。

「よし、先へ進もう。」

俺たちは、階段を降りた。



階段は一段の幅が広いので歩きやすい。


2m程階段を降りると左側が開けた。

階層の壁際に階段が設置されている。

天井高は3m。穴の部分が上下の階層壁と考えると1階層5mか。

壁面は鋼材が使われ、天井は発光パネルで覆われている。

まるでカッシーニ81の船内のようであり、月面基地内部のようだ。


検知を実行するが、動物の反応は無い。

地面は一面の花畑だ。

100m四方。俺たちは南東の角にいる。


「花畑か。暖かいな。」

「きれいですね。なんでしょう、外庭では無理だったので、ここに作ったんでしょうか。」


「少佐、ここは真ん中突っ切りコースですよね。」

「当然。ですよね、少佐。」

「まぁ、この階層は何も無さそうだからな。足元には注意しろよ。」

「了解。」


北西へ向けて歩いて行く。

ほぼ平坦な道中だ。


「光に温度管理に、水も必要だな。」

「はい。ナノマシンによる環境管理ですね。カッシーニ81の艦内庭園のようです。」


「少佐。さらに階段があるようです。」

突き当たり、対角の位置に1m程の高さの石塀があった。

その影に、下に降りる階段がある。



最初に降りてきた階段が南東、次の階段が北西に位置する。

北東と南西の角には階段はなかった。


北西の階段は10段ほど降りたところで、鉄の扉が付いている。

これは静かに開いた。

開いた先には下り階段が続き、光があり、すえた獣の匂いが漂ってくる。

俺は振り返り、皆の顔を見た。


「この下は雰囲気が違うようだな。」

「ええ、この反応は、」

「ゴブリンですか。」

「問題ないですね。行きましょう。」

リサが俺たちの背中を押す。


階段は途中から壁が無くなり、階層を見渡すことができる。

階層の広さは上の花畑と同様に100m四方のようだ。

天井高は3m。

いたる所に土壁があり、草花、低木が生えている。

畑ができていて、畝に沿って野菜が植えられている。

そこには5匹のゴブリンがいた。


一匹と目があった。


ギィー!

いきなり大きな叫び声をあげると、手にした鎌の様な物を振り上げ駆け寄ってきた。

その様子に残りの4匹も続く。


俺たちは素早く階段を降りて、剣を抜いた。

遭遇戦だ。問答無用で戦闘開始となった。


「火炎弾!」

「風切!」

「風切!」

「氷矢!」

リサの氷矢が2匹を仕留める。

俺は火炎弾を浴びた奴がひるんだ隙に詰め寄り、首を落とす。

ステフとダニエルも同様に仕留めている。


「びっくりした。」

「いきなり襲ってきましたね。」

「まだだ、油断するな。」

今の騒動はこの階層にいるゴブリン共に伝わったようだ。

周囲の雰囲気が重い。

ここは、角地だ、包囲される。


「まずいです、囲まれますよ。」

「100匹ぐらいいますよ。カン少佐。」

「100匹以上のゴブリンの巣か。」

周囲からはゴブリン共の叫び声や怒鳴り声が聞こえ、走りまわる足音が聞こえてくる。

「どうしますか、少佐。」

「上に戻りますか?」

ステフとダニエルの顔は強張っているな。

敵対心の向上は抑えているようだ。クールダウンの魔法を使ったか。

リサは、普通だな。


リサが何か言いたそうだが、それを無視して俺は腰に付けた布袋からバッテリーを1個取り出した。

「バッテリー、ですか?」

「そうだ。こういった場所では爆発系の魔法も炎の魔法も使い辛いからな。電撃なら水中を含めた広範囲に有効だ。」

俺は言い終わると、それを掌に載せる。


畑の先に複数のゴブリンの姿が見えてきたのを確認する。

「電撃!」

バッテリー内の電力をナノマシンに解放してもらい、周囲に電撃を撒き散らす。

スタンガンやスタンロッドの電撃は気絶で済むが、こいつはそれより強烈だ。

練習相手のイノ豚は丸焦げになってしまった。

今回も、放たれた電撃は床と天井を這い、空中に稲妻を撒き散らす。

練習より、少し派手だな。


「おお~!」

「すげぇ、周囲のゴブリンが全滅しましたよ、少佐。」

「なるほど。バッテリーを用いた電撃魔法ですか。考えましたね。」

「ああ。土があれば土壁は素早く強固に大きなものができるが、土が無ければ発動すらしない。

魔法の元になる物質が手元にあれば、威力も思いのままだ。

以前、盗賊を捕えるのにスタンの魔法を用いた時に思い付いてね。」


畑の周囲には70匹以上のゴブリンが息絶えていた。

さらにその周囲には30匹程が気絶しているか、痙攣して倒れている。

予想以上の成果だ。

「すげぇ。」

「俺たちも戻ったらバッテリーで試してみようぜ。」

倒れているゴブリンに止めを刺しつつ周囲を警戒する。

反対側の西側に土壁と枯草で作った住処がある。

周囲は花畑と畑の様だ。

北側の壁には池もある。

そして、階段もあった。

ゴブリンの反応は残っていない。



俺はゴブリンの住処を前に、周囲を見渡した。


「どうしたんですか?少佐。」

「いや、このゴブリン共は、なぜここにいたのだろうか、と思ってね。」

「それは、・・・研究用、ですか?」

「だとしたら、この状況をどう考える?」

問われたダニエルが考え込む。


「少佐、ゴブリンの片付けは終わりました。」

「ありがとう、リサ、ステフ。ダニエルも。」


「どうした、ダニエル。何を考えているんだ。」

「いや、カン少佐が、何でここにゴブリンがいるのか、だって。」

「そりゃ、・・・なんでだろう。」

「研究用かと思ったけど、花畑の下に作るかな?」

「研究するなら、機材が必要だけど、ここには無いな。上の部屋にあったのか。」


(リサ、静かだな。)

(えっ、何ですか、それ。いつも騒がしいみたいじゃないですか。)

(すまん。だが、それだよ。リサの声が聞けないと寂しいぞ。)

(いや、なにか、こう。頼られる先輩、的な状況が生まれないな、と。

ステフ君とダニエル君、ずっと二人で話しているし。)

(あー、それはすまん。いい機会だから、二人に状況分析の練習をさせようと思ってな。)

(そんな事だと思いました。)


「ここが研究用だと仮定すると、どうやって観察したり、サンプルの調査をするかな。」

「うーん、生物学者の研究方法なんて、知らないぞ。」


どうやら、考えは停滞しているようだ。

「何かわかったか。」

「すいません、カン少佐。我々には情報不足です。」

「研究用サンプルと仮定して、それがここで生き延びていたのではないか、との予想しかできません。」

「そうだな、その予想はできる。その予想ができたなら、その先の予想もできないか?」

「その先、ですか?」

俺はリサの顔を見た。ここでリサが答えを出せば、良い先輩として・・・。

あー、その表情は駄目ってことだな。


「ここにはゴブリンがいた。逆に言えば、ここにはゴブリンしかいない。他に何かいる可能性のあるものはないか。」

「他に?」

「あっ、ホブゴブリン、オーク、オーガ、トロール。下等種の5種ですね。」

「そうか。そうすると、この下の階層にいくと、そいつらがいるんですね。」

ステフとダニエルが顔を上げた。


「そうだな。俺の予想では、さらに地下があると思われる。

その根拠はこの階層の構造だ。

壁面の鋼材、天井の発光パネル、艦内庭園のような環境管理、天井高3m階層間2mの1階層5mの構造だ。

まるで艦内か、どこかの基地の中のようだろ?」

「そうですね。」

「最初の階層は花畑、次はゴブリン、さらに下の階層はそれぞれの研究対象のフロアになっていると思われる。

それらを移動するなら、階段ではなく、エレベーターだろうな。」

「あっ、上の部屋にあった扉ですね。」

「そうだ。では、壁面を調査してエレベーターの扉を探そう。」



エレベーターの扉はゴブリンの住処の裏側にあった。

だが、操作ボタンは見つからない。


「手動で開けられるか?」

「ここが開けば。」

ステフが扉の上部のパネルに短剣の刃を挿し込み、引き剥がした。

内部に開閉用スイッチがあった。

「やはり、レギウス軍の標準規格通りの作りですね。」

扉が少し動き、合わせ目に隙間が出来る。

「これで、開きます。」


内部は幅3m奥行3mの四角い空洞が上下に伸びている。周囲には配管もある。

ここがエレベーターシャフトだろう。

扉の開閉スイッチが表側に付いていないようなので開閉操作はエレベーター側からの操作で行うと思われる。


これで最下層への直行通路が開いた訳だ。



次回64話「城の地下 後編」

城の最深部です。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ