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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第一章 惑星開発
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5話 来訪者

32分後に艦長からの通信が入った。

月面基地上空に到達するもゲートは開かない。

ゲート付近にクレータ痕があり、どうやらゲートは堆積物の下に埋もれた様だ。

脱出艇をゲート周辺に着陸させたところで連絡を入れたらしい。


0600(マルロクマルマル)までの休息を伝えて通信を切った。

こちらから月面基地施設への遠隔操作はできないし、あちらからも現時点で要望は無いだろう。

甲板長と部員達が何とかしてしまうはずだ。





0550(マルゴ-ゴ-マル)きっかりに目覚めた。

体調は良い。

昨夜の疲労は残っていない。

体内ナノマシンが体調管理もしてくれるからだ。

通常の船体内重力はレギウス本星と同じ1Gに設定されている。

昨日の不時着後は第四惑星の約1.1Gの重力下にあった。

どうやら体内ナノマシンが1.1Gへの適応調整をしてくれた様だ。


俺は、食堂でコーヒーを確保した。

テーブルと椅子は艦内整備マシンによって綺麗に寄せられていた。

彼らにも傾斜による影響は如何ともしがたいらしい。


中央指令室に入るとホークとリサがいた。

「おはよう。早いな。」

「おはようございます。大尉。」

「おはようございます。艦長から伝言が残ってましたよ。

副艦長との合流と月面基地内部に入れたって。」

「いつだ?」

「30分前です。」

ずいぶん苦労した様だ。穴でも掘ったか?

「月面基地に連絡をいれよう。」

「了解。月面基地に繋ぎます。」


「はい、こちら、えーと、ここは月面開発基地、です。」

聞き憶えのある声だ、甲板部員のダニエルだな。

「こちら輸送艦カッシーニ81、第二司令部所属操縦士ファルス=カン大尉だ。

マクレガー艦長はいるか?」

「おう、ファルス。艦長とマーカスは揃って休息中だ。墜落したって聞いたぞ。」

若い声に変わって、野太い声が響いた。

甲板長のホーキンス中佐だ。

彼は平均身長175cmの俺たちレギウス星人の規格を超えた身長190cm体重100kg超の巨漢だ。

部下たちの信頼厚く、頼れる親分である。

「甲板長、下はこすりましたが、見事に着水しましたよ。」


甲板長と現在のお互いの状況を確認する。

月面基地には脱出艇の姿勢制御ノズルを外し、3隻分の推進剤を使って堆積物を吹き飛ばして侵入したそうだ。

その後の500mの階段下りがきつかった、とボヤいた。

エレベーターが動かなかったらしい。

中央制御室は密閉区画だったのが幸いして、ほとんどの設備が使える状態の様だ。

但し、地下空間は半分ほどが土砂に埋まっている。

そして重力制御も働いていない。

未確認だが、大型重力子機関に問題が発生した様だ。

月面基地には大小4基の重力子機関が設置されていた。

大型の1基は宇宙船搭載機と同タイプ、小型3基は脱出艇搭載機と同タイプだ。

それぞれが生活環境保持用に用いられている。

主に小惑星上での1Gの重力確保と電力供給用だ。

月面基地は現在0.1Gもないそうだ。


こちらからは船体の傾斜を伝え甲板制御コンピュータ操作用のアクセス権限を要求した。

さらに月面基地の惑星開発レポートの解析進捗と惑星上に存在するであろう現地知的生命体の存在についても伝える。


ホーキンス中佐は艦長への報告を約して通信を切った。


「大尉、甲板制御コンピュータへのアクセス権限届いてます。」

「現在、甲板制御コンピュータへ工作機の状況確認を指示。それと甲板区画の状況確認レポートを作成中です。」

リサとホークから報告が入る。

「よし、今日ものんびりやりますか。」

「了解。」

いつもの朝の声掛けをして、第四惑星2日目の作業を始めた。





1200(ヒトフタマルマル)になり、俺たちは昼食を摂りながらの報告会を行った。

業務規程違反だが、指令室内での食事だ。

傾いた食堂で壁に寄り掛かるよりはマシだからな。


まずは俺からだ。

「ホークに調べてもらった動作可能工作機は14機。整備中の6機以外の残り全機が稼働可能だ。

まずは1台を格納庫から出して、船外活動可能か試してみよう。

それと、この船体の傾斜問題だが、残された脱出艇6隻を使う。

前面スクリーンを見てくれ。」

俺は前面スクリーンに計画図を表示させた。

輸送艦船体を6隻の脱出艇で吊っている図だ。

「脱出艇6隻が利用可能だ。但し1隻の格納庫外殻が変形しているので、これは工作機で排除する。

この脱出艇の重力子機関を利用して、この船をちょっと浮かす。

そして船体下面の状態を確認し、接地させる。」

ホークが手を上げる。

「陸上へ降ろしますか?」

「リサ、どう思う。」

ホークの問い掛けに対して、リサの意見を聞く。

「陸上生物の脅威や原住民の反応が不明です。さらにこの船の形状を考えると陸上では不安定です。」

「そうだな。ホーク?」

「同意見です。ただし海中では腐食や漏電等の事故の可能性があります。

また気象変化による海水の状態変化の影響を受けます。

短期では問題ないですが、長期的には陸上が良い、と考えます。」

「という訳でだ。これを見てくれ。」

俺は前面スクリーンの図を切り替えた。

砂浜から内陸側に向かって長方形の窪地を掘り、そこにカッシーニ81の船体を収める。

「これは、良いですね。船渠(センキョ)ですか。」

「ああ、古い記録だがレギウス本星の海上船設備情報があった。これを工作機に作らせて船体を入れる。

用地選定作業はこれからだがな。

工作機2機を使用した工期予定は70時間だ。それまでは船は吊るして置くことになるな。」

リサも「うん。うん。」とうなずきながら画面を見ている。

「先程の指摘通り、陸上生物および原住民の反応についての心配はあるが、この方法を採ろうと思う。」

「了解。」


次はホークからだ。

「その工作機の操作についてですが、遠隔操作用のマスターポッドは甲板の操作室に据えられています。

現状ではこれを使用しての操作は困難です。逆さ吊りですからね。

そこで小惑星開発時に使用する司令船を使います。

これを格納庫から出して反転し、乗り込める様にします。

1300(ヒトサンマルマル)から作業に入ります。」

司令船は船外作業時の工作機操作用だ、内部にマスターポッドが複数設置されている。

小惑星での作業の場合、輸送船は30万kmほどの距離で停泊する。

工作機と操作員は司令船を使い3000mまで接近し、工作機による小惑星上での作業を行う。

今回の月面基地設営作業でも使用している。

「マスターポッドでの工作機操作教習が20時間程掛かります。大尉も受けますよね。」

「ああ、もちろんだ。」


最後はリサだ。

「ナノマシンへの惑星開発指令は1061年の開発時より1074年までの14年分を確認しました。

当初の計画より遅れはしましたが、惑星開発プロセスとしては、ほぼ成功しており、大気組成、海と陸地の造成も終了しています。

ただ、この時点では陸上に動植物は発生していません。

1075年以降の惑星開発指令はその後30年程、環境観察命令が続きます。

1109年になって突然、植物の生育プログラムが始まりました。

おそらくこの30年の間に何か変化があったと思われます。

なので、ナノマシンンへの開発指令解析をここで中断して、惑星開発部隊の開発資料の解析に移ろうと思います。」

「了解した。」


「話題は変わりますが、時計について、如何しますか?

現在は船内のレギウス標準時ですが、第四惑星とは大きくずれてますから。

ちなみに、第四惑星は一日28時間45分。1年は588日。ですね。」

「一日28時間!?」

「はい。どうやら自転制御機はうまく作動しなかったか、作動したが効果がなかったようです。」

「そうか。うーん、しばらく保留にしてくれ。月面基地との連絡もあるし、当面は船内作業が続くからな。」

「了解。」

俺は右側面スクリーンに表示している船体外周画像に目をやる。東の空が明るくなり始めている。


宇宙生活でのカレンダーおよび時計はレギウス本星標準日時と同調している。

行動計画や報告に統一性を持たせているからだ。

また、これまで進出した21の恒星系でも同様だ。

進出拠点は月面基地同様に小惑星の内部に穴を掘って作成する。

その為、小惑星の昼夜は我々の生活サイクルに大きな影響を及ぼさないのだ。

これまでは。

だが、月面基地資料の作成日時を見ていると、月面基地、惑星開発部隊はある時点から第四惑星に時計を合わせているようだ。


「リサ、1300(ヒトサンマルマル)になったら月面基地を呼び出してくれ。定時連絡をする。」

「了解。」


昼食を片づけ、食後のコーヒーを飲みつつ過ごしていた。

「大尉、スクリーンに反応があります。」

ホークが船体外周画像を指差す。

東の空は恒星が出てきた。朝日がまぶしい。

赤い三角のマーキングが右側面、北の空に表示されている。

マーキングの意味するところは”要注意飛行物体”だ。

飛行物体自体の姿はまだはっきりと映っていない。

距離は15000m、時速300kmで接近中だ。

「鳥じゃないな?なんだコレは?」

スクリーンに解説文字が表示された。

『種族名:ドラゴン。個体名:ブルードラゴン。危険度:高』


「ドラゴンってなんだよ!?」


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