表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第二章 探索
38/142

37話 山賊と騎兵隊

この第四大陸には5つの国がある。

北西にオの国、北東にエの国、南西にアの国。

エの国の南、アの国の東にウの国。

ウの国の南、アの国の南東にイの国。

いずれも850年から800年前に出来た国だ。

5つの国の中ではオの国が国としては最後にできた。


アの国が大陸第一位の強国だ。動乱の時代、小国乱立の地を英雄王がまとめ上げた。

しかし、現在の王室は弱体化し、11人の領主が互いに次の覇権を狙って牽制しあっているような情勢だという。

オの国とアの国とは国境線になっている湖と川を挟んで長年小競り合いを繰り返している。


東のエの国とは山脈を挟んでいるので大規模戦闘はないそうだが、こちらは鉱山資源の鉄鉱石を巡る争いが続いているという。

エの国は強き王の下、貴族が団結しているが、こちらも老いた王の後継者争いが懸念されている。


ウの国は山脈に囲まれた農業と漁業の国。

大陸の反対側なので、十年に一度くらい訪問団がオの都を訪れる。


イの国はドラゴンの居る国。魔法国という噂だが、その国境は硬く閉ざされているという。


種族名を聞くとフォース族と答えた。

レギウス人の純血と聞いていたが、惑星開発部隊は彼らにレギウスの名は与えなかった様だ。

加護を与えた神はオイゲン神。

神の館はオの都を始め国内の町や村にある。

さらにオの国の現状を聞いた。

王の名はディエゴ=チェイン。

王妃は3人。

第一王妃サスキアスに第一王子イエルテ=チェイン。

第二王妃クリーナに第一王女クリサリス=チェイン。

第三王妃リンジーに第二王子フニオル=チェインと第二王女アビー=チェイン。


第一連隊から第三連隊は王都防衛軍だ。

「連隊といえば聞こえは良いが、軍の本体は国境防衛軍です。私たちは王妃たちのお守りですよ。」とバレン隊長は俺に耳打ちした。

アビー姫は恋の相手が架空の相手である可能性に思い至って横になっている。

直接合ったのは一度だけ、10年前にウの国からの使節団の中にその第三王子がいたそうだ。

その時、彼が16歳、アビー姫は8歳。

そして2年前、アビー姫16歳の時に恋文が届いて以来の文通歴2年。


「それで、今回の企みの実行犯が第一連隊の兵士という事は、裏に居るのは第一王妃、ですか。」

ホークの問いにバレン隊長が頷く。

「しかし、アの国に誘拐される、との情報はどこから?」

バレン隊長は額に手を当て大きく息を吐いた。

「これは内密にしていただきたいのですが、イエルテ様、第一王子付きの兵士からの情報なのです。」

「なるほど、彼らは自分たちでアビー姫を誘拐し、それをアの国の仕業にしたかった。」

「ならば、目的はアの国との開戦だな。」

「恐らく、そうでしょう。」

「しかし、分かりません。権力争いなら第一王子は次の王です。戦争をしなくても良いのでは?」

「それが、王は第二王子のフニオル様がお気に入りでして、最近は政務を手伝わせてもいるのです。」

「それならば分かります。戦争を起こし、敗戦の責任を取らせて王と第二王子を排除するのでしょう。」

「戦死の可能性もあるしな。しかし、敗戦国の王になっても得は少ない。それを分かっていて開戦するか?」

「分かっていない。もしくは得があると思っている。」

「どんな得かは分からんが、その得を教えた奴、今回の騒動をそそのかした奴がいるな。」

「オの国とアの国が戦争になって得をする国ですね。」

「そうだ、エの国の奴が第一王妃の裏で悪知恵を仕込んだんだろう。」

「な、なんと。そんな事が。」

「いや、バレン隊長、これは今聞いた少ない情報での憶測だ。

この話は心に留めて、裏付けの調査をしてから行動してください。」

「いや、分かりました。ご聡明な考察いたみいります。王都に戻りましたら早急に国王陛下に報告いたします。」


「すまんが、当面の問題が片付いていないようだ。」

クリスが後ろから入って来た。

「クリス。」

「ファルスとホークの予想は合っているだろう。

であれば、敵方にとってこの作戦はアビー姫の文通が始まった2年前。いや、それ以上前からの物と考えられる。

で、あれば、今日の誘拐劇の失敗に対する次の手も用意しているはずだ。」

「なるほど、誘拐が失敗したとなると、次の手は。」

「強襲だな。」

「な、なんと。」

「バレン隊長、この道の先、王都までに村はありますか?」

「ああ、2つあります。もうすぐ、その一つ目の村に着く頃です。そこで昼食を取り、迎えの荷馬車を待つ予定です。その荷馬車に囚人達を載せて王都まで行きます。」

「そこだな。」

「バレン隊長。第一連隊は何人だ?」

「4分隊24人です。カン殿。」

1分隊6人と荷役の男たちは捕えた。残りは18人。

誘拐用の舟では漕ぎ手を雇っている。

次の襲撃も人を雇う可能性があるから、18人以上か。


「問題は村の中か外か?」

俺はクリスの顔を見た。

「うちなら、村の中で包囲戦を仕掛けるが、この世界にはこの世界の戦い方がある。

バレン隊長、第一連隊が仕掛けるならどちらかな?」

「第一連隊も騎兵隊です。我々なら、村よりも道を選びます。山賊の仕業に偽装できるし、目撃者もいないでしょう。」

「なるほど。ならば村で待機し、我々の動きを偵察し、ある時点で出てくるな。」

「なんて恐ろしいこと。」

アビー姫は身を起こした。

クリスが隣に座り、その震える肩に手を置く。

「大丈夫、私たちが姫を守るから、安心してくれ。」

「クリス様。」


俺たちレギウス星人は人工授精卵から生まれ、3歳までを生育局で育てられる。

3歳になると、体内へのナノマシン注入処理が施され、3年間の基礎教育プログラムが施される。

そして、ここで体格の適合も行われる。

つまり身長170cmから185cmまでに成長を調整されるのだ。

これはボディスーツや操作席などの統一規格に体を収めるための処置だ。

なのでクリスは身長176cmある。

アビー姫に比べてかなりの長身だ。

いや、いまのアビー姫の目の輝きは俺の勘違いだろう。



道は海岸沿いを離れ内陸に入り、ずいぶん経つ。

小さな丘が起伏を作り木が密生して林を作っている。

「しかし、彼らは誘拐の失敗をどのように知るのか。あっ!」

バレン隊長は自問し、答えを得た様だ。

残念だが、伝令に走った者を最初の村に入る前に捕えて聞き出すのだろう。


(大尉。でました。大勢いますね。)

(そうだな。)

リサの報告に俺も探知を使った。

前方270m、道から逸れた林の中に1人と馬1頭。見張り役だろう。

その後方300mの道の左右に5人づつ。

その5人とやや離れた林の中に騎兵が左に2人、右に3人。

道の先500mに騎兵が6人。

第一連隊の2分隊12人と雇われた10人か。

俺はバレン隊長に隊列を止めてもらい、作戦会議を開いた。


囚人たちを木立に括り付け、作戦会議を行う。

ホークがバレン隊長たちにも判りやすいように地面に道と敵の配置を小石を置いて説明していく。

「どうやって、こんな正確な情報が!?魔法ですか?」

「そうです。」

「おおぉ。」

「間違いないだろうが、これがアビー姫を狙っている襲撃者達だ。」

「そうでしょう。この道の近くに居るのが山賊役の者ですな。

彼らに我々を襲わせ、たまたま通りかかった第一連隊が山賊を退治する。

しかし、一歩間に合わず、姫は山賊の手に落ちる。」

「そんな筋書ですね。ですが、アの国との開戦には使えませんね。」

「ホーク、この作戦に2年を費やしていれば、その間に開戦準備も進めているだろう。

この事件は開戦の口実にすぎん。理由はなんとでも作れる。

たとえば、山賊がアの国の者だったと言えば良い。」


「で、だ。敵は俺たちを知らない。そして幌馬車は外から中が見えない。

アビー姫にはここで待っていてもらおう。リサ、頼む。」

「了解。」

「バレン隊長。相手に姫の幌馬車を襲わせた事実を作りたい。なので最初は防戦になる。」

「無論承知した。」

「幌馬車の中は俺とクリス。ホークたちは廻り込んで後ろを頼む。」

「了解。」

「3人が配置に付いたら、俺たちも動き出す。」

「連絡します。レイチェル中尉は北側の林、パメラ少尉は南側の林、敵の後方100mまで低空飛行で接近してください。

私は道を塞ぎます。」

「了解。」


1分後にホークからの連絡を受け、俺たちは馬車を進めた。


(ファルス、最初の襲撃隊は瞬殺してはダメか?)

(第一連隊が見てるからな。バレン隊長の分隊が山賊と戦闘している様子を見せないとな。)

(じゃあ、第一連隊は瞬殺でいいんだな。)

(もちろんだ。それまで外には出るなよ。)

(分かった。)

幌馬車の中は俺とクリスだけだ。

バレン隊長は馬に乗り馬車を先導している。前に3人、後ろに2人で幌馬車を囲んでいる。


見張り役がこちらを確認したようだ。林の中の2人と合流した。


彼らの陣地の中に入ると早速動きがあった。

バレン隊長の行く手に矢が打ち込まれる。

馬を止める隊列に左右から男たちが前後に分かれて出てきた。

一人だけ離れて、馬車の横、林に近い位置にいる。

「へへへ、馬車の荷物を置いて行けば、命まではとらないぜ。」

「我々はオの国国軍第三連隊第11分隊だ。山賊ふぜいが敵うと思うか!そこをどけ!」

バレン隊長もここは通常の対応をしている。

「へへへ、兵隊さんがわざわざ運んでいる荷物だ。お宝なんだろ!さっさと置いていきな。」

「断る!」

「じゃあ、死にな!」

盗賊たちが剣を抜き襲いかかってきた。


俺は御者のルイスを幌馬車の中に招き入れた。

幌馬車の中から様子を伺う。

盗賊たちは前方に5人、後方に4人。

横の一人は動かない。

「足場崩し!」

俺は地面を広範囲に砂地に変更した。

こちらは馬上で奴らは徒歩だ。足場が悪くなって不利なのは奴らだろう。

「では、うちも、泥化!」

クリスは馬車の周りを泥地にした。馬車の車輪が沈む。これで近付く者も足を取られるな。

そもそもが馬上の騎兵相手に徒歩の片手剣で盾を持っていない。

彼らは最初から捨て駒だ。

だが、横の一人が気になる。


(カン大尉、林の中の6人が動きました。馬車の後方に廻ります。)

(大尉、こちらも動きました。)

(よし、突撃準備しつつ監視を続けろ。)

後方の4人の盗賊の1人が馬車の後方へ迫る。

足元を取られつつ馬車に手を伸ばしたところで、クリスの木槍が突き出され奴の額を強打した。

残りの3人は騎兵2人を馬車から遠ざけている。

その向こうに第一連隊の影が見えた。


ドッバァ!

その時、幌馬車の左側面に衝撃があった。

(ファルス、火だ!)

(消火!は待て、馬車の床をぶち抜け、穴に潜る。)

(ほう、考えたなファルス!)

次の瞬間、馬車の床板の一部が消え、その下の地面に2m程の穴が開けられた。

「ルイスさん、飛び込んでください。」

最初に穴に飛び込んだクリスが下から呼びかけるが、御者のルイスは躊躇っている。

俺はルイスを抱き寄せ穴に飛び込んだ。

(よし、これで第一連隊も参戦してくるな。)

(この火は、あの横に居た奴だな。あの衝撃は火矢では無い。魔法か?ファルス。)

(多分な。)

(大尉、第一連隊が突入します。)

(第三連隊への攻撃確認後に制圧しろ!)

クリスが木槍を構えた。


外からバレン隊長の誰何する声が聞こえる。

(バレン隊長への攻撃確認。制圧します。)

クリスが飛んでいく。

俺は水を霧状に拡散し、馬車の火を消した。

穴から地面に登り、ルイスに手を差し伸ばし、引き上げる。


■■■


はい、リサ=メンフィスです。


お姫様と二人で道路脇に置いて行かれました。

そのお姫様は遠ざかる幌馬車を見つめています。

両手を胸の前で組んで、「皆さん、ご無事で。・・・クリス様も。」

なんて、つぶやいています。


クリスなら、相手の方が心配です。


さて、いつまでも立っていられません。

お姫様ですからね。

この世界の階級ではトップクラスの重要人物です。

つまり、元老院議長の娘ですよ。

あれ?そうすると私達と一緒に戦場に出ているか。

そもそも、私達に親子の関係は無いのです。

うーん、最近感じている親子や家族といった関係性は、ナノマシンによる知識の植え付けのせいかなぁ。


脱線しました。

これはパメラのせいですね。きっと。


私は足元を見ました。

どうやらこの土地は岩石が多いようです。

道路脇の空き地に石造りのテーブルと椅子を作り出しました。

硬い椅子でも、地面に座るよりは良いよね。


「リサ様、これは・・・。」

「魔法です。少し時間が掛かるでしょうから、座って待ちましょう。」

「は、はい。」


時刻はお昼には少し早い時刻です。

背嚢の中からカップとお茶を取り出します。

このお茶は私達の携行食です。

そういえば、この世界にもお茶ってあるよね、ベア族の村でごちそうになったな。

アビー姫に差し出すと、一口飲んで「おいしいですわ。」と言ってくれました。

そのままカップをテーブルの上に置いたね。

お口に合わなかったかしら。


「あの。」

「はい、何でしょう。」

「あの、クリス様は、あの、どのような御方なのですか。その、お年とか。」


あー、クリスね。

同期だけど、幼年学校でも士官学校でも一緒じゃないんだよね。

なんせ、その同期なら1500万人くらいいるし。

カッシーニ81に着任してからは第一司令部と第二司令部で、あまり接点ないからなぁ。

第四惑星に来てからの方が話してるくらいだよ。

こういう時は、教えてパメラ。


次回38話「クリスに任せた」

重大任務です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ