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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第二章 探索
28/142

27話 海を渡る

オウル村は煙噴き山の南西にあった。

山から流れ出る川が沢を作り、その沢の斜面から湯気を立ち昇らせて湧水が流れ出ている。

河原に湯だまりが3つほど並んでいる。

あれが温泉だろう。

ゴンジー村と一緒なら畑作などで村の中は人が少ないはずだ。

俺たちは村の広場と思われる場所に直接降下した。

ベア族の女性が二人、広場の井戸で水汲みをしている。

俺たちを見て固まっているな。

「すみません。村長(ムラオサ)はいらっしゃいますか?」

リサの問い掛けに女性の一人が右手を挙げ、道を指し示す。

「向こうの麦畑におる。」

「ありがとうございます。」

俺たちは麦畑を目指し、斜面を登る道を進んだ。

100mも進まずに左右の緩やかな斜面が麦畑となった。

その一角に5人の男達が集まっている。

こちらに気が付いた様だ。

あぜ道からこちらの道へ出てくる。

空手(カラテ)の中央の男が村長かな?

他の4人は手に鎌のような物を持っている。


「止まれ、何もんだぁおめだじぃ。」

左の1人が声を掛けてきた。他の4人より一回り大きいな。

「俺は月の人ファルス=カンだ。昨日、オウル村のルンギィと会った。俺たちは、」

「はぁぁ?月の人だぁ?」

「ぐわっはっはっはっ、小さい人は嘘つきだっつう言い伝えどおりだなぁ。」

「小さい人がここに何すにきだんだぁ。」

「村長と話したいんだが。」

「うわぁはっはっはっ、村長とはなじがしてえんかぁ。」


(ファルス、頭きた。びびらすぞ。)

(話が進みませんね。)

(もう少し待て。)


「そうだ、飛竜を退治してきた。その報告をしたい。」

「ぐわっはっはっはっ!」

「うわっはっはっはっ!」

「ぐわっぐわっぐわっ、小さい人よ、おめえのぞの小さい体じゃあ、飛竜にはどどかんぜぇ。」

ドスン!

ドスン!

ドスン!

レイチェル、パメラ、リサが背嚢の中から3体の飛竜の胴体を取り出した。

でかいからな。右の畑に2体、左の畑に1体だ。

5人の男たちは大口を開けて固まった。


「村長と話したいんだが。」

「お、おでがむらおざだ。」

やはり中央の男が村長だったか。

「俺は月の人ファルス=カンだ。昨日この村のルンギィと知り合い、飛竜に困っていると聞いた。

そこで我々は煙噴き山の飛竜の巣へ行き、飛竜17頭を退治した。」

「ひ、飛竜を退治って、ほ、ほんどうげ?」

「本当だ。これがその飛竜だ。」

「く、首が付いでねぇ。」

ドン!

リサが飛竜の頭を村長の足元に放り出す。

村長は腰がくだけ、尻餅をついた。

後ろの2人は2歩ほど後じさっている。

「飛竜退治の証拠として、1頭分おいてゆく。それでいいな。」

村長は頭をこくんこくんと動かした。

「それと、飛竜退治の汗を流したい。川辺の温泉に入ってもいいか?」

「お、温泉!?い、いいぞ、はいっでけ。」

「ありがとう。では、我々はこれで失礼する。」

リサとパメラが飛竜の身体を回収し、俺たちはその場で飛び上がり温泉へ向かった。



「うーん、いいですねぇ。」

「まったくですぅ。朝から贅沢ですねぇ。」

「気持ちがゆるみますねぇ。」

「身体がほんわかして、眠くなるなぁ。」


「この土壁、ちゃんと元に戻せるんだろうな。」

「大丈夫ですよ。大尉。」

「しかし、温泉はいいが、ここのベア族の連中はダメだなぁ。」

「最初に出会ったのがママドゥ達ルゥ族の人々で良かったです。」

「全くだ。ベア族の印象がまるで違ったな。」

「彼らが言っていた、小さい人は嘘つき、という言葉が気になりますね。」

「ああ、言い伝えは本当、とか言っていたな。

これはアレだろ、ママドゥが言っていた南から来た小さい人。」

「そうです。ママドゥの話では小さい人の身体的特徴を伝えて終わっていました。」

「言い伝えの今は無くなった南の村。ここは南の土地。言い伝えの内容も違うのかもなぁ。」

ドボーン!

「ファルス。うちらもきっと言い伝えになるぞ。」

「なんだクリス。なんで、こっち入ってくるんだよ。」

「言い伝えになりますか。」

「そうだぞ、ホーク。

身体小さき月の人、空を飛び、飛竜を退治。

この世界は口伝だからな、話は人の口から人の口へ伝わり、世に広まり、子供に語り継がれる。」

「そうかぁ。でも今日の連中の態度じゃ話を広めないか、自分たちの手柄にするんじゃないか。」

「まぁ、それもあるかもな。」

「でも北のルゥ族では話題になってますね。

それに昨日のルンギィさんと子供たちは語ってくれそうです。」

「そうだろう。そうだろう。

さぁ身体があったまったらひとっ飛びして、海を渡って、次は南の大陸だ。

そして月の人の勇名を轟かすぞ。」

「おおぉーー!」

パチパチパチ!

土壁の向こうから拍手が聞こえる。

そういう目的なのか、お前ら。



温泉を後にした俺たちは午後の狩りを省略して南へと急ぐ。

1730には昨日の目的地とした南の海岸に辿り着いた。

この先、ナノマシン発生機のある島まではこの海を4000km渡らなければならない。

リサの最高飛行速度時速300kmでも13時間。

それに時速300kmはリサも全速力で走っている感覚に近いそうなので、数時間も飛び続けるのは無理だろう。

なので、出発前にメティスに調査してもらった結果、俺たちは(イカダ)を作ることになった。

(イカダ)

レギウス本星で運用されている海上輸送用浮船や海上ブイ等の浮遊物を構造解析して、木材を利用しての構成案を仕立てるとは。

メティスの能力(いや、ナンドゥールかな?)は頼りになる。

メティスとナンドゥールもこの惑星での生活に適応してきているな。


まず森に入って直径60cmぐらいのまっすぐ生えている樹を探し、切り倒す。

枝を払い、5mの長さで切る。

これを10本作成する。

そして、側の厚み3cmを残して中身を繰り抜く。

この繰り抜き作業はリサの担当だ。

丸太の両端を切り落として、中身に切れ目を入れる。

最後に全員で丸太を持ち上げ、中身を引きずり出す。

切り落とした両端を元に戻せば、中空の丸太の完成となる。


繰り抜いた中身は板状にして丸太の上に並べる。

つる草を使って、これらをがっちりと固定する。

木の枝を使って手すりを中央と外側に付ける。


海岸から海へと漕ぎ出し、試運転をしたが上々の出来だ。

これで海の上の休憩地が出来上がった。



俺たちは時速110km程で飛行した。

上空から見る海面は美しかった。

光り輝く海面。

様々な海生生物で彩られた海底。

海中を泳ぐ魚たち。

無数の魚によって形成された群れ。

ゆったりと進む巨大な魚竜や水竜。

幸いなことに、あの触手の化け物には遭遇しなかった。


6時間飛んで30分の休憩をとる。

(イカダ)に降りても波があるので、くつろげない。

さらに魚竜の群れがいたるところにいる。

(イカダ)を目掛けて海中から突進してくる大型の奴がうようよしている。

リサとパメラの検知能力も海中に対しては効果が狭い。ほとんど役に立たない。

これはナノマシンの能力によるものだろう。


手早く食事を済ませて、速度を落として空中を飛んでいる方が休まった。

だが、睡眠はできない。

20時間程の後、リサが言い出した。

(全員(イカダ)に、集合です。)

「どうした、リサ。不調か?」

リサの右腕を取って健康チェックパネルを見る。

オールグリーンだ。イエローもオレンジも無し。

「いえいえ、大尉。この揺れを抑えて眠れる環境を作ります。」

そう言うと、リサは(イカダ)の周辺に飛竜の魔石を並べた。


「それでは!(イカダ)ごと防御フィールドに包んで、周囲30mの海水を渦状に回転させつつ海面を時速40kmで南へ進め―!」

(イカダ)の周囲においた魔石が淡い光を放つ。

(イカダ)が進み始めた。

(イカダ)の周囲の海水が渦状に波打っている。これでは魚竜も迂闊に近寄れないだろう。

「じゃあ、皆さん寝てください。」

「リサが不寝番か?」

「そうです。2時間で交代です。」

「じゃあ、俺も付き合おう。皆休憩してくれ。」

「えっ、いいんですか。」

「おう、遠慮すんな。」

こうして、(イカダ)の上での安息を得た俺たちは40時間ほどで海を渡り島に上陸した。


■■■


ナノリサ、ありがとう。

これでゆっくり休めるよ。

魔石はこうやって利用するんだねぇ。

ベア族から聞いていた使い方と違うから思いつかなかったよ。

へぇ、周辺のナノマシンから知識を得たんだ。

肉体を離れた魔石の中のナノマシンはフリーだから使えるんだぁ。

そうだね、空中のナノマシンを集めるよりも大量のナノマシンが揃うから、魔法の実行も楽だね。

ありがとう、ナノリサ。


■■■


はい、ナノリサです。

リサが弱っているので、頑張りました。

人間には休息が必要ですね。

リサからたくさん感謝されました。

これはいい感じです。

もっと頑張りましょう。

リサのために。


次回28話「ゴブリンとの戦い」。

ゴブリンは手足の長い猿のイメージです。


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