26話 飛竜退治
ルンギィの話はこうだ。
オウル村はここから南西へ1000mほど内陸にある。
麦畑と山菜と温泉の村だ。
そう、オウル村は山の麓にある。
俺たちの西側は山地になっている。
標高は高くは無い。1200m程の山の連なりだ。
その山の一つが煙吹き山。つまり火山だ。
だからオウル村では温泉が湧き出る。
1年ほど前にその煙吹き山の中腹にある大きな洞穴の一つに飛竜の群れが棲みついた。
奴らは麓のオウル村とその周辺で狩りをする。
大抵は牛の群れや鹿が狙われる。
獲物が無い時はベア族の子供も狙われる。
だが、狙われるからと言って外に出さない訳にはいかない。
子供たちも狩りを覚えて大人にならなくてはいけないからだ。
ルンギィ親子と別れた俺たちは飛竜の棲みつく煙吹き山に向かった。
◇
(大尉、南2000mに3頭の飛竜、南東1800mに2頭です。)
(前方11時にも3頭いますね。)
(空で追いかけっこは疲れるな。巣を確認して待ち伏せしよう。)
(了解。)
俺たちは高度を上げ煙噴き山の頂上まで飛んだ。
硫黄の匂いが強い。
(リサ、パメラ、巣を探してくれ。)
(了解。)
(ファルス、まだ1540だぞ。やつらが巣に戻るのはまだ先じゃないか?)
(あー、1800までには、と思ったが、そうか。ちょっと時間があるな。)
(カン大尉、巣穴確認しました。奥に2匹います。仔のようです。)
(巣穴に戻ったところでまとめて、と思ったが、どうするかな。)
(そうですね、)
(ファルス、ホーク、作戦会議の前に移動だ。隣の山へ行こう。ここは臭い。)
隣の山の山頂は草木が少なく、岩がごつごつとしている。
俺たちは岩に腰掛けて作戦会議だ。
「相手の総数が不明です。ここは巣穴を押さえるべきです。」
「空中戦だと、他の群れが巣を変えてしまうかもねぇ。」
「巣穴で寝ている処を襲う?」
「夜まで待機ですね。」
「では、麓で狩りの続きだな。ファルス。」
「大尉、飛竜を狩った後はオウル村に行きますよね。報告しに。」
「そうだな。ルンギィに会えれば良いが、会えなくても村長を訪ねるか。」
「飛竜の頭を並べれば信用されますよ。きっと。そしたら、お礼の話になりますよね。」
「なるわねぇ。」
「なりますね。」
「なんだ?お前たち欲しい物でもあるのか。」
「温泉です。温泉ですよ、大尉。レギウス本星でも休暇といえば温泉ですよ。」
「うん、うん、いいですよねぇ。」
「これは逃がせません。」
「そうか。そういえば、さっきの2頭はどうした?放置してきたのか?」
「大丈夫、私とパメラの背嚢に入れましたよ。」
「部族長の村の武器屋で大トカゲの籠手という防具を見たんだ。ファルス。
鱗の固い大型のトカゲの皮と鱗を使っているそうだ。
獲物は肉に皮に骨に角、何でも使えるそうだからな、仕留めたら全部回収だよ。ファルス。」
「じゃあ、この飛竜も良い素材になるな。オウル村で引き取ってもらうか。」
「大尉、良い素材であれば、立ち寄った村々で取り引きに使えます。
オウル村で1頭分を渡して反応を見ましょう。」
「なるほど、そうだな。」
「よし、話はまとまったな。じゃあ狩りに行くぞ。」
颯爽とクリスが飛び出し、俺たちも後に続く。
なんだろう、うちの女性陣からたくましさを感じる。
この生活に馴染んだ。いや、なにかコツの様なものを掴んだのだろうな。
◇
残念ながら今日は戦果なし、だ。
俺たちは剣と槍の練習をして、夕暮れを迎えた。
夕食は携行食で軽くすませ、2時間の仮眠を取った。
夜闇も深まった2700に行動を開始する。
「パメラ、どうだ?」
「17頭確認、他に仔が2頭です。
巣穴2つに別れてますね。4頭が左の穴にいます。」
「同時にやりたいな。クリス、リサ、左を頼めるか。」
「了解。」
「私はパス。パメラ代わってくれ。」
「クリス?」
「真ん中の方が狩りでがあるだろ。」
「じゃあ、リサとパメラで左を頼む。
大穴は前列左がホーク、右にクリス、中央が俺だ。
レイチェルは後ろで全体を見て、俺たちのフォローを頼む。」
「了解。」
「敵は巣穴で動きがとれません。遮音で気配を消し一気に行きましょう。」
「狙いは頭と首の付け根。昼間の感触ではのどが柔いぞ。」
「よし、行くぞ。周辺警戒を怠らず、深追いするなよ。」
「了解。」
◇
(しまった。これでは首が狙えん。)
(丸まって寝てますね。)
(左の4頭もです。)
(しかたない、ざっくり行こう。一撃で仕留めるぞ。)
(最初はタイミングを合わせる、用意は良いか。)
(OK。)
(カウント3,2,1、てぇ!)
俺たちは最初の1匹目の首に切りつけた。
首を切断され飛竜の身体がけいれんする。
他の飛竜が目を覚ました。
俺は首をもたげた2頭目の頭の下に潜り込み、剣を突き上げる。
首に刺さった剣を横に引き、3頭目を視界に捉える。
3頭目は体を起こして俺を見つけた。
その右、4頭目も俺の方に首を伸ばしてくる。
左腰から短剣を抜き4頭目の頭を目掛けて飛ばす。
さらに火炎弾2発を3頭目の大きく開けた口の中に放り込む。
ひるんだ4頭目に駆け寄る。
振り下ろされる右足を躱し、首に切りつけるが、浅い。
右目に短剣が刺さっている。
背後から3頭目がこちらに迫る。
その首が落ちた。
ホークの風切だ。
俺は再度4頭目の首に切りつけ、これを落とす。
ふぅ。
周囲を見るとすでに飛竜退治は終了していた。
「ホーク、ありがとう。」
「いえ、クリス大尉がほとんどやりましたから。」
「ファルスは3頭か?鍛錬が足りんぞ。」
「留守番が多かったんでね。」
「カン大尉、左も無事終わりました。こちらも回収しますね。」
「ああ、頼む。」
「レイチェル、奥から回収しよう。明りを点けるから来てくれ。」
「はい、クリス。」
クリスとレイチェルが穴の奥へと行った。
奥には飛竜の仔がいた。
そうか、だからパメラと代わったのか。
そのパメラは俺が倒した飛竜を背嚢に押し込んでいる。
穴のサイズと合ってないが、どんどん吸い込まれていくな。
飛竜の身体を押し込み終えるとパメラの手元に青く輝く魔石が残っていた。
「パメラ、それは。」
「これは飛竜の魔石です。回収する時に魔石を除外して取り出すんですよ。」
「そうか、オークの魔石より大きく綺麗だな。」
オークの魔石は2cm程の鈍い青銀色だった。
飛竜の魔石は5cmぐらいか。
「動物の身体が大きいとそれだけ他の動物を食べますから。ナノマシンもその分溜まるんですね。」
「オークの魔石が銀貨1枚。これはいくらになるかな。」
女神の館を探すか。
俺たちは体や武器についた汚れを洗い流し、ヘルメットを装着して飛竜の巣穴で朝まで休んだ。
次回27話「海を渡る。」
今回は海を渡ります。
今回は?




