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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第二章 探索
25/142

24話 宴

女官が呼びに来た。

部族長の庭に案内されると木のテーブルがいくつも並べられていた。

時刻は2000、空は夕暮れの赤みを帯び始めている。

庭木の枝には光を発する物が吊るされている。

光の魔石を使ったランプだそうだ。

それはテーブルの上にも置かれ黄色い淡い光を放っている。

俺たちは奥のテーブル、部族長センデローズと同じテーブルに案内された。

高座を背に座る。

左端にママドゥ、部族長センデローズの席、俺、右にクリス達が並ぶ。

「これは、えらい事だ。とても名誉な事だぞ。」

とママドゥが俺に囁いてきた。

俺たちの席の正面は空いている。

左右に奥の方までテーブルが並んでいる。

どうやら、催しがあるようだ。


俺たちが着席すると、左右の席も埋まってきた。

100人ぐらいいるか?

太鼓の音が響き、部族長が席に付く。

十数人の神官や女官が配膳していく。

それが終わると、緑のローブを着た者が俺たちの紹介と歓迎の言葉を述べ、宴の開催を宣言し食事が始まった。

飲み物は果実酒。薄いピンク色で甘味がある。

食事は牛の肉と野菜と果物のサラダ。

量はたっぷりとある。

それらが木皿に載っている。

そしてベア族は男女ともに手掴みで豪快に食べるのだ。

ゴンジー村でもそうだったが、これだけの人数だと、迫力あるなぁ。

「うむ、ふぅ。月の人ファルスカンよ、いかがですか、お食事は。」

「部族長センデローズ。とてもおいしくいただいております。

私たち月の人間は口が小さく、食べるのはゆっくりですがね。」

「あはっはっはっ、楽しい話をたくさん聞かせていただきました。

どんどん召し上がってくださいね。

ダウダルゥ。」


部族長センデローズが奥に控えていた緑のローブの男ダウダルゥに声を掛ける。

すると、大小のタイコを抱えた者たちが正面に出てきた。

その前に5人の女官と1人の神官が並ぶ。

歌のお披露目だ。

女神アドニスを称える豊穣の歌。

女神パトリシュを称えるベア族繁栄の歌。

そして、このルゥ族に伝わる戦士と女の歌。

この歌はストーリー仕立てになっていた。


畑作をして幸せに暮らす男と女。

畑に侵入する獣。

傷つく女。

薬草を求め、山に入る男。

襲い来る獣。

獣に立ち向かう男。

男は傷つきながらも獣を倒し、薬草を手に女の元へ戻る。

回復した女は傷つき倒れている男を目にする。

男の心は月へと旅たち、春に子供が生まれる。


そんな歌だ。

やっぱり、途中からは皆で大合唱だ。


場が盛り上がった所で、今度は守備隊の男が2人出てきた。

剣と槍の演武を見せてくれた。

なるほど、剣のさばき方、体の動きは見事だ。


彼らの演武が終わった時にクリスが手を挙げた。

「部族長センデローズ。私も弓の腕を見せたい。」

「あはっはっはっ、月の人クリス。それは楽しみです。ぜひご披露ください。」

「はい!」

クリスはパメラの背嚢から弓と矢を手にすると、俺たちの前に廻り一礼をする。

弓は普通サイズだが、手に持つ矢はベア族から見ても太い。

クリスは俺たちに背を向ける。やや右寄りにずれて立つのは、部族長センデローズとママドゥに見せる為だろう。

そうか、ママドゥにも実際に見せてはいなかったな。


弓を持ち、構えるクリス。

的はどうするのかな?と、皆が疑問に思った。

「標的土壁!」

クリスが叫ぶと約20m先。食事のテーブルが途切れた先に土壁が地面よりせり出してきた。

その土壁には的となる円が描かれている。

人々が出現した土壁に驚いていると、ドゴォーーーン!!と、その的の中心に棒が突き立った。

「うぉぉぉ!」

どよめきが湧きあがる。

俺の隣からも聞こえて来た。

クリスが一礼をした。

標的土壁は消滅して、棒が地面に落ちる。


「素晴らしいですわ。月の人クリス。見事な力をお持ちですね。」

「お褒めいただき、ありがとうございます。部族長センデローズ。」

「他の皆様はいかがですの。月の人ファルスカン。皆様、弓は得意なのですか?」

「そうですね。まだまだ未熟ではありますが。

実はそちらのママドゥに弓の作り方を教わったばかりでして。」

「まぁ、そうなのですか。ママドゥ。」

「えっ、いや、はい。私が弓と矢の作り方を教えました。

しかし、これは、いや、さすが月の人です。

これほど早く身に付けるとは。驚きました。」

「まぁまぁ、そうですか。

それにあの的。突然現れましたよ。

あれは魔法なのでしょう?月の人クリス。」

「はい。部族長センデローズ。私の得意な土魔法です。」

「まぁ、土魔法。月の人リサさんにも見せていただきましたけど、他にも色々な魔法があるのですか?」


その後は同じように弓を使った魔法のお披露目が続いた。

レイチェルは氷の矢の10本同時撃ちを2連射。

リサも氷の矢の10本同時撃ち。こちらは左右2つの的に5本づつ当てて見せた。

パメラは普通の木の矢を1本。これを頭上に打ち上げた。

皆が不思議に思っていると、パメラは緑のローブの男ダウダルゥに1本の庭木の所を見てくるようにお願いする。

ダウダルゥが言われた木に寄ると足元から射られたキツネの様な小動物を持ち帰ってきた。

ベア族の皆さんからは拍手喝采である。

お前ら、1日で上達しすぎだろ。


宴は大盛り上がりで終了した。



明朝は朝食の後、神官達から神様についてのお話を聞かせていただく約束を交わし、女神の館の11の柱の間に戻ってきた。

さて、これから休む訳だが。

ママドゥは宴の来賓扱いの緊張と酒の精のおかげで、早々に寝息を立てている。

俺たちも女官から大きめの毛布を渡されていた。

(一応確認するが、抜け出すのか?)

(当然だファルス。現在2230。2830まで休み、抜け出すぞ。)

(入口扉は閉ざされましたが、壁の上部は開いてますから出入りに問題はないですね。)

そうだ、外壁と天井の間は明り取りと換気用なのだろう1m程の隙間が空けられている。

(戻りは0400の予定だ。4時間は練習できるな。)

(だが、この広間だ。俺たち以外にいないとはいえ、ママドゥが起きたり、誰かが見廻りに来るかもな。)

(そうです。ですから、大尉、お留守番をお願いします。)

(そうなるのかぁ。)

ホークの言葉に俺は消沈する。まぁ、仕方ないか。

(今夜は私も残ります。今日の情報収集結果の確認と明日の確認もありますので。)

(明日の確認?)

(はい、明日の神官からのお話は大尉と私の二人でお聞きしようかと。)

(クリス達はどうしてるんだ?)

(街でお買い物ですよ。大尉。)

(はい、女官の方においしい食べ物屋さんの場所を聞きましたので。案内していただけるそうです。)

(うふふ、楽しみねぇ、クリス。)

(うちは武器屋も覗いてみたいな。レイチェル。)

(買い物って、お金持ってないだろう。)

(オークの魔石があります。ここでお金に換えて貰えます。)

(あー、そうだったな。それを宴前に相談してたのか。)

(そうですよ。村にお店があれば覗いてみたいじゃないですか。)

(ここの人達のお店ってどんな感じなのかしら。)

(本星や基地の店とは勝手や値段や支払方法なんかも違うだろう。無茶するなよ。)

(はーい。)


俺たちは2830まで休み、クリス達が抜け出した。

宴での剣と槍の演武に刺激を受けたらしく、今夜は組み手をするそうだ。

いいな、打ち合わせが終わったら広間の反対側でホークとやるか。

(大尉、情報の確認をさせていただいてもよろしいですか?)

(ああ、ホーク、いいぞ。早く終わらせて、俺たちも広間の反対側で組み手をやろう。)

(なるほど。ここなら遮音の魔法をしてしまえば、音が漏れることもないですね。

しかし、木剣がありませんが、庭樹を拝借しますか。)

(いや、さすがにそれはできんな。村外れの森までひとっ飛びしよう。)

(では、私が行って参ります。)

(頼む。それで、確認事項はなんだ。)

(はい、まずは月の神とされたカルー少佐達3名ですが、自分たちが死者の神に割り当てられた事への不満があったのでは?という推測です。)

(ああ、それは俺も考えた。)


何らかの理由で3人は月に残った。

神話はナノマシンによって基礎教育に組み込まれた物だろう。

ママドゥ達が詳細を知らず、神官から話を聞かされる事から神官となった者にもたらされる教育なのかもしれない。

ゴメス中佐が大神に当てられている事から、この神話の創造はナノマシングループの主導だろう。

そして、5番艦で降下した者達を神とし、月に残った3人を死者の神にした。

それを知ってか、カルー少佐達は地上に降下した。

そこで何かあったのではないか?

もしかしたら、惑星開発部隊が離散した遠因かも知れない。

カルー少佐達と他のメンバーとの軋轢。

カルー少佐はクローンの担当、いわば一個体に永遠の命をもたらす者だ。

他のメンバーは種の多様性と繁栄を求めた。

これは真逆の思想だ。

その辺りの差、なのだろうか。

だが、仮説だ。

俺とホークは想像と仮説を膨らませ、明日の神話の聞き取りの際のチェックポイントを確認した。


後は木剣と木槍を2本づつ仕立てて、遮音魔法を張って、周辺検知をしつつ、組手だ。

いいな、楽しいぞ。

ただし20分毎に10分休憩だ。


■■■


はい、リサ=メンフィスです。


さて、今夜の訓練は剣と槍による組み手です。

ベア族さんの演舞が格好良かったですからね。


ちょうど良い草地があったので、そこに降り立った私達。

まずは手ごろな樹から木剣と木槍、先が尖ってないから棍になるのかな、を作成します。


クリスは早く身体を動かしたいようなので、パメラに木剣を持たせて相手をさせます。


私とレイチェルさんは二人で槍の動きの確認です。

草の上に座り込んで、左腕の情報パネルに資料動画を映して、っと。

「ねぇ、リサちゃん。」

「何ですか、レイチェルさん。」

「あなた、飛行方法が私達と違うわよねぇ。風魔法、使ってないでしょう。」

「えっ、あー、わかりますぅ?」

「なんとなく、ね。動きがシャープなのよ。」

「そ、そうですかぁ。」

「どうして秘密なの?」


う、視線がこわい。


「えーと、実はですね。私は周囲に重力子球というものを配置しているんですが、

これを体内ナノマシンで実現するには、体内ナノマシンの量を増やす必要があるんですよ。」

「まぁ、そうなの。」

「でも、レイチェルさんもビックリですよ。

私は体内ナノマシンを増やして魔力を高めましたから、氷矢を10本作って操れましたけど、

レイチェルさんは、そのままの状態で同じ事ができますよね。」

「あー、なるほどぉ。そういう事なのかぁ。」


レイチェルさんは私から視線をはずして、クリスとパメラの二人を見た。

今は、クリスの直線的な突っ込みに、パメラはくるくると巧くいなしている。

レイチェルさんが私に視線を戻した。

あ、目が真剣だ。


「私ね。私の両手は義手なのよ。」

「えっ、そうなんですか。」

「6年前に事故でね。両手を義手にした後、カッシーニ81に着任したのよ。

100日毎にメンテナンスしないといけないのが大変なのよぉ。」

「ああ、それでホーキンス甲板長と、その、仲が良いんですか。」

「ふふふ、そうよぉ。で、義手の制御系にはナノマシンが必要だからぁ、きっと私の体内ナノマシンの量も他の人より多いのかもねぇ。」

「なるほど。」


「で、体内ナノマシンを増やせば、身体強化も、さらに強力になるのか?リサ。」

「クリス!?」

背後にクリスが立っている。話、聞こえていたの!?

「リサ。その体内ナノマシンを増やす方法、教えてくれるな?」


えっ、これって、ピンチ?

んー、特に内緒にしていた訳ではないしなぁ。教えても良いよね、ナノリサ。

よし、お教えしましょう。


そうですね、知ったらやりたくなるよね。

では、狩りに行って、魔石を探しましょう。


はい、魔石を入手しましたね。

では、スーツを脱いで、腕を出して、短剣で切って。

大丈夫ですよ。魔法で直せますから。

カッシーニ81の医療管理コンピューターから肉体の構造についての資料を確認するといいですよ。

あら?天使セリーヌ?

名前を付けられたのね。


誰に!?


次回25話「ベア族親子との出会い」。

ファルス達は部族長の村から南の海岸を目指します。


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