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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第二章 探索
21/142

20話 襲撃

シシドゥは浜に遣いに行っていた女性と一緒に戻ってきた。

ママドゥ達が漁から戻るにはまだ時間が掛かるようだ。

俺たちは畑に案内された。

「なぁシシドゥ、君たちは恒星の位置で時間を見ているのかい?」

俺は聞いてみた。この惑星での常識の確認だ。

「ああ、そうだ。一日は29時間だからな。

恒星が昇る6時に起きて、ドラゴンを見るんだ。

そして、恒星がてっぺんに来るのが14時。

恒星が沈むのが22時だ。

月じゃあ、どうなんだ。違うのか?」

「ああ、月でも同じだ。」

「そうかい、そいつは良かったな。

おう、着いたぜ。ここが俺たちの村のイモ畑だ。

罠を仕掛けたのは、あの茂みの先だ。狭いから注意してくれ。」

シシドゥが先を進んでくれる。


時間に関しては季節でのずれや、1日15分の差があるが、時計が無いようなので気にならないのか。

自転制御装置が正常に作動せず、24時間の自転周期にはならなかった。

ただ、自転周期に合わせて一日24時間としなかったのは、惑星開発部隊も時間間隔がずれるのを嫌ったのだろう。

1秒の定義が変われば彼らの研究にも支障が出るだろうからな。


罠についてはホークとパメラが熱心に聞いていた。

レイチェルとリサは畑の観察だ。

畑は広く、多くのベア族の人々が作業をしている。

畑で作業している彼らを見ることで、その映像はカッシーニ81に届く。


畑の見学を終え、食の場に戻り、さらにしばらくしてママドゥ達が漁から戻って来た。

ママドゥは両手で大きな籠を抱えて来た。

俺たちが座ったテーブルの端に籠を置き、中から大きな魚を取り出す。

銀色の魚体が陽光を反射する。

「月の人には、これがお勧めだ。」

そのままテーブルの端を使って魚を捌くママドゥ。

魚の身を切り分け木皿に盛り付け、それに森で獲れた香草の細切れを振り掛ける。


「ああ、これは旨いぞ。がぶっといくんだ。がぶぅっと。」

「今日は良い魚がたくさん獲れた。たっぷりと食べてくれ。」

そう言って籠の中から2匹目の魚を取り出す。

食の場には村長を始め、多くの村人達が集まってきた。

彼らも昼食の時間だ。

一緒に食事をし、話を聞き、少しばかりの魔法のお披露目をした。

ゴンジー村の歌というタイコ演奏と子供たちの歌も聞かせてくれた。

途中からは大人たちも加わって大合唱になった。

ママドゥは部族長の村への案内を快く引き受けてくれた。

ママドゥの旅支度を待って、俺たちはゴンジー村を後にした。



以前、ママドゥ達の1日の旅程を約40kmと見積もったが、違った。

彼らは俺たちの船まで2日で来ていた。

つまり170kmを2日。1日16時間、85kmを徒歩でだ。

脚早き者の二つ名を名乗っていたのを思い出した。

ゴンジー村を1600頃に出て2時間、俺たちは歩き続けた。

これはきつい。

舗装路なら、まだ大丈夫だろう。だが不整地だ。

最初に根を上げたのは俺だ。

「ママドゥ、済まない。休憩しよう。」

「ファルスカン、いいぞ。大丈夫か。」

「ああ、休憩すれば大丈夫だ。」

俺は腰の剣を外して道に座り込む。

「ファルス、日頃の鍛錬不足だな。」

「第二勤務でカードばっかりしてるからですよ。」

「そう責めるなクリス。歳のせいなんだよ。

それにな、カードに誘われたら断れないだろう、リサ。」

「やれやれ、です。」


「ママドゥ、弓の作り方を教えてくれないか?獲物を仕留めたいんだ。」

「ああ、いいぞ。ええと、すまん、名前は何と言ったかな。」

「私はクリスだ。よろしくなママドゥ。」

「クリス、よろしくな。で、弓の作り方か、うーん。」

周囲の木立を見渡すママドゥ。目当ての物を見つけた様だ。

「あの辺りの樹に良い枝がありそうだ。付いて来い。」

「うん。」

「私もご一緒しますねぇ。レイチェルですぅ。よろしくママドゥ。」

「ああ、レイチェル。よろしくな。」

3人は連れだって木立へ向かった。

「大尉、大丈夫ですか。」

ホークがカップの水をくれた。

「ありがとうホーク。堪えてるよ。」

「ママドゥに歩行速度を落とすようにお願いしましょうか。」

「そうだな。いや、俺から頼むよ。」


「大尉、獲物です。」

「なに?」

「後方300m、10体。こちらに向かってきます。」

「10体は一度に相手にできんな。パメラ、相手は判るか。」

「いえ、そこまでは。リサ、判る?」

「はい、見えました。あれは、もしかしてゴブリン?手に剣を持っています。」

(クリス、レイチェル、ゴブリン10体接近中。距離300だ。ママドゥに伝えろ。)

(了解。)

俺は立ち上がって剣を帯びた。

「妙ですね。相手は10体ですが、こちらは7人。戦力差はわずかです。それほど好戦的なのでしょうか?」

「パメラ、別働隊は居るか?」

「いえ、周囲300m以内には奴ら10体だけです。距離220です。」

「距離100で空気銃で狙ってみるか。相手の反応をみたいな。」

「了解。私は先頭を、パメラは右を頼みます。」

「了解。」


後ろから足音が近付く。ママドゥだ。

「ファルスカン。逃げないのか。」

「逃げるのは最後の手段。まずはゴブリンって奴を見てみたい。」

「ゴブリン?、いや違うぞ、この匂いは、奴らはオークだ。めったに村の近くにはでないんだが、あれは強いぞ。」

「そうか、ママドゥ、一足先に逃げてくれ。俺たちは飛んで逃げられるが、あんたは飛べないからな。」

「ああ、そうか。そうだったな。判った、先に距離を取っている。逃げ遅れるなよ。」

クリスとレイチェルも合流した。

ママドゥは道を走り距離を取る。


「オークか。奴ら、どうした。止まったか?」

「はい。距離120で止まりました。こちらを伺ってますね。」

「我々の動きが止まりましたから、警戒されましたか。」

「よし、少し進んで誘ってみよう。」

「背を見せれば、来るな。ファルス。」

「そういうことだ。」

俺たちはママドゥを追って歩を進める。


(動きました。距離120のままです。)

(このまま追ってくるな。いつ襲ってくる?)

(包囲せずに、追随するなら、この先に有利な地形があるのでしょうか。)

(リサ、ちょっと偵察してきてくれ。そうだな500mぐらい。)

(了解。)

リサが一瞬で消えた。

高度100mぐらいまで一瞬で飛び上がったのだ。

(大尉、この先300mぐらいで丘の下を通りますね。

道が右に曲がっていて背後が丘の斜面になりますから、ここで右側面を取られると危ないですね。)

(そうか。ママドゥに合流してその丘の先まで行ってくれ。)

(了解。)

(どうしますか、大尉。)

(ファルス、ここは罠に掛かる手だろ。)

(そうだな。俺たちの強みは空を飛べる事だ。罠に掛かって、逆に奴らの背後を取る。)

(了解。)

(パメラ、周辺警戒を怠るなよ。別働隊の可能性はある。)

(了解。)


俺たちは進み、オーク共は付いてくる。

やがて左手は丘の傾斜を見せ、道は右に曲がり始める。

さらに進むと大きく右に廻る。

左手は丘の斜面、右手の木立はややまばらになり、低木が多くなる。

(ここだな。)

(オークが接近、後方に4、右側面に6、別れました。)

(よし、走るぞ。

曲がり角で反転。オークを捉えたら遠距離魔法。

奴らが突っ込んできたら、上昇、背後に廻り、包囲する。)

(了解。)

(オークも急速接近。距離80!)


曲がり角で俺たちは振り向いた。

後方から迫る4匹が接近している。

木立を通る6匹はやや遅れている。

身長2m程、やや猫背で頭を前に突き出している。

筋肉はたくましく、ベア族並みだ。半裸の腰布だけの服装に鉄の板のような剣を持っている。

口を大きく開けて吠えている。

「じねぇー!!」

「ヴォォー!!」


「水弾!」

「氷結!」

「火炎弾!」

「風切!」

パメラの水弾は先頭の眉間を貫いた。

レイチェルの氷結は相手を氷漬けにして動きを止めた。

俺の火炎弾は相手の胸に命中し、燃え上がった。オークは地面に倒れ転げ廻っている。

ホークの風切はオークの右足を膝下で切り離した。奴も地面でのたうち廻っている。

20mの距離で4匹を倒した。

木立に廻ったオークはその場で立ち留まってしまった。

(あっ、これは逃げそうだな。)

(なに!まて、まって、うちはまだ戦ってないぞ!)

(あ、オークが反転、逃走を開始しました。)

(あら、戻ってきたのに、終わっちゃいました?)

(え~~、うちの出番~。)

(リサ、すまんがママドゥに終わったと伝えてくれ。あと、オークの死体の始末について教えてほしい、と。)

(了解。)


息があった2匹はホークとクリスが止めをさした。

氷漬けは、これは生きているのか?いや、死んだな。


次回21話「魔石」

敵を倒しても自動で現れません。

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