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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
最終章 イの国
137/142

135話 これからの話

「魔人の誘惑、か。それで、今はここに居る訳だな。」

「はい。」

「ふぅ。ある程度の経緯はわかった、と思う。二人はどうだ?クリス。」

「うむ。ミリアが逃げ出したことは分かった。」

「リサは?」

「はい、大丈夫です。」


「それでは、私の相談を聞いてくれますか?」

ミリア中尉がテーブルの上に手を(かざ)すと、テーブル上に文字が表示された。


人口、合計26万3668人。

これは。


「種族別の人口か。フォース族が多い、とは言えないな。」

「うむ。レギウスの総人口は13億人じゃったな。ファルス。」

「これが、今の第四惑星に暮らす人々です。

このままでは、近い将来、滅びます。」

「原因は、リセットなのか?ゴブリン共の襲撃に耐えられなかったのか?」

「それも原因のひとつでしょう。

女神は、魂が疲れているので、神の祝福が必要だと言っています。」

「魂が疲れている?」

「はい。神の祝福を受けずに転生を繰り返した為、だそうです。」


「では、その神の祝福を受けるには、どうすれば良いのじゃ。ミリア。」

「神への信仰を取り戻すことですね。具体的には、今の神話を無くして、叡智の女神メティスを崇める様に人々を導く事です。」

「ふーむ。ナノマシン教育の変更で済むのではないのか。ミリア。」

「そうですね。大雑把には、それで良いです。後は人々が動いてくれて定着します。」

「では、それをやれば良い、とはいかんのか。ミリア。」

「はい。」

ミリア中尉の表情が固いな。


「今。この第四惑星は、魔界からの侵攻を受けていません。

これは、神の祝福を受けていないからです。」

「では、神の祝福を受ければ、魔人がやってくるのじゃな。ミリア。」

「そうです。神界は光。魔界は闇。それは表裏一体なのです。

私がジャンプゲートを破壊したことで、神からも魔からも、この星系は隠れました。

ですが、神の祝福は同時に魔を呼びます。」

「しかし、放っておけば滅びるのじゃ。ミリア。」


「何か、何かありませんか?神の祝福を受けずに、第四惑星が生き延びる方法は、ありませんか?」

「・・・、ファルス。」

ここで振るか。


「ミリア中尉。なぜ、それ程までに魔の侵攻を恐れる。それ程までに強敵なのか?」

「・・・いえ、それ程では。」

「そうなのか?」

「最初にお話しましたように、光と闇はバランスを保っています。

ですので、光の勇者は闇の魔人に対抗できます。」

「だが、他の星系では、闇の勢力が勝ったんだな。」

「そうですね。詳細は私には分かりませんが、恐らくナノマシンの制御を魔人に取られたのでしょう。」

「ナノマシンの制御。そうか!」

「ええ、私が転生者で、ナノマシンの面倒を見ることが使命だったのは、その為です。

人間の社会は過度にナノマシンに依存していました。

その状況では、ナノマシンを光と闇のどちらが握るかで、勢力図が一気に変わります。」

「この世界にナノマシンを持ち込んだのは、魔人だったな。」

「はい。恐らく、別の世界で勝利を収めたので、この世界でも勝利する為に持ち込んだのではないか、と私は考えます。」


「では、神の祝福を受けて、魔の侵攻があったとしても、ナノマシンの制御を手放さなければ、こちらに勝利の可能性はある訳だ。」

「ですが、それも一時です。

この世界は、この星系を残して、全てが闇の勢力になりました。

第四惑星の存在が知られれば、闇の勢力は際限なく襲い掛かってきます。」


「なるほど。座して静かに滅びるか、魔の侵攻を受け止め、蹴散らし、戦い抜くか、じゃな。ファルス。」

「そうだな。戦うか、クリス。」

「当然じゃな。リサはどうじゃ?」

「はい、私も戦いますよ。」

「うむ。ミリアはどうじゃ、戦うか?」

「わたし!?わたしは・・・、」


ミリア中尉は、しばしクリスの顔を見つめた。

その金色の瞳から涙が零れ落ちる。

「はい、私も、戦い、ます。」


それから、彼女は声をあげて泣き出した。

クリスは、彼女の横に座り、肩を抱き、そっと寄り添っていた。



「失礼しました。」

「もう良いか。ミリア。」

「はい、ありがとうございます、クリス。」

「では、これからのことを話すとしよう。ファルス。」

「そうだな。具体的に何をすれば、この第四惑星に神の祝福が得られるんだ?」

「ナノマシンによる神話の刷り込みを停止します。

最初は人々に戸惑いが生まれるでしょうけど、いずれ神の祝福を受ければ、神託を受けた者を中心に宗教がおきますので、問題無いでしょう。」

「あの、魔法関係はどうなりますか。」

「それが問題ですね。人々の間に浸透している魔法は、ほとんどが使用できなくなります。

使用できる魔法も効果が弱まったり、変化するものもあるでしょう。」

「それは、大問題になりそうですね。」

「まぁ、それらもいつか元に戻ったり、別の形で実現したりしますので、大丈夫ですよ。」


「ミリア中尉、リセットの魔法も解除してくれないだろうか。」

「そうですね。あれも人類の発展を阻害する物ですから、廃棄しましょう。」

「ありがとう。」


「では、この国を覆う防御フィールドを解除して、実行しますね。」

「えっ、もう実行するのか。」

驚いた俺の目の前で、ミリア中尉の身体が淡い光に包まれる。


その光は大きく膨れ上がり、俺たちも包み込んだ。



俺は白い空間に浮かんでいる。

俺の周囲は淡い光で満ちている。

暖かく、気持ちが休まる。

この場所は、天使セリーヌの癒しの空間だ。


今回はクリスとリサの姿は無く、俺一人の様だ。

そして、柔らかい笑顔の白い布の服をまとった、女神と天使。


「ファルス=カン。」

メティスが俺の名を呼んだ。


「ミリア=エッシェンバッハが私の元に帰って来ました。

あなたのご尽力に感謝いたします。」

「そうか。」

「その対価として、ひとつ、お望みを叶えて差し上げます。

ファルス=カン、あなたは何を望みますか?」

「望み?」

「はい。」


望み、か。

元の世界、元の時間に戻るか?

最初は、それが望みだった。

だが、今は違う。

あの世界に戻るには、俺はここで、多くの人々との関わりを持ってしまった。

クリス、リサ、ホーク、パメラ、レイチェル、アレク達、カッシーニ81の仲間。

ベア族、カッツェ族、サイ族の友人達。

オの国、エの国、ウの国、イの国、レギウス村の人々。


彼らとの関係を絶つ事は、もう出来ない。

ならば、俺は彼らとここで暮らしていく。

それが、俺の望みだ。


「望みが、決まりましたか。ファルス=カン。」

「ああ、決まった。俺の望みは、この第四惑星で生きる、全ての人々の安全。皆が平和な日々を送れることだ。」

「分かりました。」



周囲の光が薄れ、俺は白いソファに座っていた。

ミリア中尉の身体の光も消えている。

その隣にいるクリスと目があった。


「ファルス。メティスと話したか。」

「ああ、望みを聞かれたよ。」

「それで、何を望んだのじゃ。ファルス。」

「この星で生きる全ての人々の安全と平和だ。」

「ほぉ。リサはどうじゃ。」

「私は、そんな大層なことではないです。」

「ん?」

「闇の勢力の侵攻がありませんようにってお願いしました。」

「ふむ。真っ当じゃな。」

「クリスは何を望んだんだ。」

「うちは、ファルスとリサとミリアの願いが叶う様に、と言ったぞ。ファルス。」

「クリス。」

「それで、ミリアは何を望んだのじゃ。」


「私は、まだ望みを言える立場じゃないのよ。クリス。」

「そうなのか。」

「ええ、私は叡智の女神メティスにレギウス星系の侵略阻止を頼まれているの。それを達成するまでは、私の望みは叶わないのよ。」

「ならば、大丈夫じゃな。ミリア。」

「えっ?」

「うちの願いは、ミリアの望みが叶うこと、じゃ。メティスはそれを、叶える、と言った。

ならば、ミリアは望みを叶える事ができるという事じゃ。レギウス星系を守ってな。」

「クリス。女神って大雑把なのよ。でも、嘘は言わないわね。じゃあ、叶うのかしら。」

「うむ。叶うぞ。ミリア。」

「クリス。・・・。どうして、貴方って男性じゃないのかしら、いえ、女性でも問題ないのかしら。」

「ミリア中尉。」

「そうね。これは叶わぬ望みね、ファルス=カン。

それじゃあ、私はレギウス星系を闇の勢力から取り戻すために行こうかしら。」

「行く?」

「ええ、レギウス星系に帰って、侵入した魔人を倒し、レギウス星系を救ってきます。」

「そんな事ができるのか。」

「私も、そんな事は出来ないと思っていたんだけど、ナノリサに教えてもらったのよ。」

「ナノリサに!?」

「なんて?」


次回136話「旅立ち」

いよいよ最終回です。



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