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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
最終章 イの国
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128話 火竜

「さっきの魔法陣は転送の魔法でしたね。」

「そうなのか?では、この階段は、実際にはつながっていないのか。」

「うーん。扉には魔法陣の枠しかないですね。本体は鍵の中かな。

ファルスさん、次の鍵が手に入ったら、調べさせてください。」

「わかった。」


階段を降りた先には木の扉が付いている。

それを開けると、地下2階の魔窟が広がっている。

木の扉は開ける前にトラップサーチを行った。

しかし、これを毎回するのは面倒だな。

俺は左手の掌に意識を集中して、手の平にトラップサーチの魔法を仕込んだ。

左手で触れば、いつでもトラップサーチが実行できる。

試しに壁を左手で触れてみると、触れた所から淡い光が円状の輪になり広がっていく。

次に床を触れば、同じように光の輪が広がり、光の帯の様になって床を走っていった。

そして、目の前の通路の交差点の中央部が円状に光っている。


「ファルス、何をしておるんじゃ。」

「分かりました。トラップ・サーチを掛けたんですね。」

「む。」

「そうだ。扉ごとに魔法を掛けるのも面倒なんで、左手で触れるとトラップ・サーチの魔法が自動で発動するようにしてみたんだ。

で、見つかったのが、あの床の罠だ。」

「なるほど。さすがじゃな。ファルス。」


この階層には部屋が2つ。

1つは空だが、奥の部屋にゴブリンが10匹いた。

8匹が兵士で、2匹が赤い布を身に纏とい、手にした杖から炎弾を放つ魔法使いだった。

リサが氷壁で炎弾を防いでいる間に、俺とクリスでゴブリンを倒す。


「3階への鍵だな。リサ。」

「はい。ちょっと調べますね。」

リサは鍵を左手の掌に載せ、その上に右手を載せる。

「さーて、鍵の中にはどんな魔法陣が隠れているのかなぁ?」

リサの両手から光が溢れる。

「んん?あら、意外とシンプルですね。次の階層指定だけでした。」

「それならば、普通の鍵と一緒だな。」

「そうですね。・・・。なんで、こんな仕組みにしたんでしょう?」

「ん?何か引っかかるのか?」

「ええ。次の階層へ行くなら普通の鍵で十分です。鍵を入れた時に魔法陣を発動するなら扉側の魔法陣に仕込めば良い。

なんで、鍵の方に次の階層だけ、あっ!」

「うむ。転送門の行き先指定と同じじゃな。リサ。。」

「そうですよ。扉側の魔法陣に汎用性を持たせて、複製可能にしてるんですね。

そして、転送先指定パラメータを鍵にしたのか。うんうん。と、言う事は。」


リサの両手の光に赤や青の光が混ざり強く輝く。

「ここが第3階層の指定になっているから、これを50階層に直して、と。」

光が収まった。

「はい。どうぞ、ファルスさん。」

「これは?」

リサから渡された鍵の持ち手の刻印は3から50に変わっている。

変えたのか?変えたんだろうな。


リサの期待を込めた視線を受けつつ、鉄扉の鍵穴に50の鍵を挿し込んだ。

前回と同じく鍵は鍵穴に吸い込まれ、扉の表面に光の魔法陣が浮き上がる。

ガチャリ

ギギギギ

前回より重々しい音を響かせ、扉が開いた。

下り階段がその先に続いている。



「開けるぞ。」

「うむ。」

「はい。」

リサによる鍵の改変が成功していれば、この木の扉の先は第50階層。

つまり火竜の棲みかだ。


ギィ

扉の先には幅3m程の通路が5m程延びていた。

そして、熱波が襲い掛かる。

リサの改変は成功したようだな。

情報パネルの外気温度を見ると摂氏48度となっている。

防御フィールドがあるとはいえ、暑さを感じて汗が吹き出る。

パタン

俺は木の扉を閉めた。

階段は安全地帯のようだな。

熱かった空気が急速に冷えるの感じる。

「着替えよう。」

「うむ。」

「はい。」



俺たちはマント類を全て背嚢にしまい、ボディスーツ姿となった。

背嚢と腰のベルトだけはしていて、剣と短剣を挿している。

俺のベルトに付いている布袋にはバッテリーが2個入っている。

これが火竜に効けば、戦いは有利になるだろう。

クリスは弓と鉄棍を持っている。

木の矢では火竜に届く前に燃えるだろうというので、初撃に鉄棍を撃ち込むそうだ。

上手く刺されば、それを目標に俺が雷撃を放つ。

リサには氷壁で相手の攻撃を防いでもらう。


「ヘルメットは付けなくて大丈夫か?」

「はい。」

「視界が狭くなるからの。大丈夫じゃ、ファルス。」


ギィ

再び木の扉を開けて、通路を進む。

空気は熱く、湿度も高い。


シュワァァァ

背後から冷気を感じたので、振り向くとリサの身体が白いもやで包まれている。

「リサ?」

「大丈夫です。こうして私の周囲を冷やしておかないと、この環境では氷壁ができないんですよ。」

「準備は上々じゃな。」

「そういう事です。火竜は1匹ですよ。ファルスさん。」

「そうか。リサは通路正面、クリスは左、俺は右だ。」

「了解。」

「行くぞ!」


火竜の棲みかは円形の大部屋で天井が高い。

その火竜は4本の太い脚に背中には大きな翼がある。

これは飛びそうだな。

長くて太い尻尾の先端には2本の角の様な突起があり、尻尾から背中、首にかけて大小の突起が連なっている。

いかつい顔をした頭部にも大小4本の角がある。

その首はクリスに向けて大きな口を開き、口の中には炎が揺らめく。

だが、クリスが目の前の大きな口を見逃すはずが無い。

俺は手の中のバッテリーを意識しながら、右手を火竜の頭部に向ける。


ドシュウ!

ゴッガァァァ

クリスの放った鉄棍が火竜の口に突き刺さる。

頭部が大きく振られ、俺の方を向いた。

「一直線に!出力最大、サンダーボルトー!!」


俺の右手の先から迸った光の奔流が火竜の頭部を飲み込む。

バッシィィィィィ

バリバリバリィ

シュゥゥ

音が轟いているが、目の前は残光と蒸気の白いもやで視界が悪く、火竜の姿を捉えられなくなってしまった。


左手の盾を構え、右手で剣を抜く。

ドサリ

(終了でーす。)

「何?」

リサの声が頭に響いた。

通路の方から風が吹き込み、蒸気のもやを晴らして行くと、床に首を垂らしている火竜の姿があった。

その首の先にあるはずの頭部が失われている。

身体に纏っていた炎も消え、赤く輝いていた鱗は、その輝きを失い、徐々に黒くなっていく。


「一撃とは、さすがファルスじゃな。」

「クリスの弓で頭半分取れていたところにあれだもん。耐えられないよね。」

火竜の身体が淡く光ると、細かい粒子となり、その体積が一気に減ってゆく。


「魔石を取る前に崩れたな。」

「上のトロールとゴブリンと一緒じゃな。魔窟の奴は外と違うようじゃぞ。ファルス。」

「そうですね。ほら、箱がありますよ。大きいですね、この箱。」


箱の中には魔石と剣が一振り入っていた。

クリスが剣を取り鞘から抜く。

「ほう、見事な装飾じゃな。中央に魔石が嵌っておるぞ。ファルス。」

「魔法剣だな。魔力を込めると発動するんじゃないか。」

「ふむ。なるほど。」

クリスは頷くと剣を鞘に戻した。

そして、俺に差し出す。

「試して見ると良いぞ。ファルス。」

「ああ。」


クリスから剣を受け取り、鞘から抜く。

クリスが言うとおり、刃の根元に赤い魔石が埋まり、その周囲から刃先まで装飾が施されている。

クリスの顔を見ると笑顔だ。

先ほどのクリスは、俺が促した後、なるほど、と言った。

つまり、この剣を調べたのか。

俺は剣の魔石を見つめた。

そして、イメージする。

この剣を調べたい。

この魔石を調べたい。

違うな、イメージは細かく正確にする事でナノマシンは応えてくれる。

今の場合のイメージはナノマシンへの要求だ。

俺が知りたいことを、より正確に伝える。


この魔石に込められた魔法の起動方法と性能を知りたい。

”鑑定”という言葉が頭の中に浮かぶ。

なるほど、この魔法を使えばいいのか。


俺は剣と赤い魔石を見つめた。

「鑑定。」

言葉にすると剣と魔石の性能が頭に浮かぶ。

剣の重量は2.6kg、長さは80cm。以下略。

剣の構造。刃は二重構造で硬い芯の部分と柔らかい刃の部分に分かれ、その素材となった金属は、以下略。

鑑定情報は詳細だ。

俺は魔石に込められた魔法の情報を探した。

炎の魔法、レベル2、最高温度1800度。

なるほど、これは炎の剣か。


「鑑定できました?」

「うむ。出来たような顔をしておるぞ。リサ。」

剣から視線を外すと、クリスとリサがこちらを見ていた。

「ああ、鑑定できた。これは炎の剣だ。」

「うむ。上出来じゃな。ファルス。」

「それも探索魔法の一種です。生活魔法にも分類されている珍しい魔法なんですよ。」

「そうなのか。」

「いろいろな物が鑑定できますので、これもどうそ。」

リサが渡してきたのは魔石だ。直径2cm程の内部に赤色の揺らめきを見せる透明な球体。

「この魔石も箱に入っていた魔石です。どうです?」


鑑定した結果、水魔法耐性40%加算、という性能が分かった。

つまり、身に付けていると水魔法から受ける衝撃を減衰できるという事らしい。

「皮の鎧とか、盾に付けるんでしょうね。」

「ファルスの盾に嵌めるのはどうじゃ。」

「いいですね。そうだ地竜の魔石もありますよ。はい。」

リサが背嚢からもう一つの魔石を取り出す。

これは西の北村で地竜から入手した物だ。

「これの性能は、風魔法耐性40%加算、か。」

「次の魔窟は風竜の魔窟ですから、丁度良いですね。」

「うむ。」

「これを薦めるという事は、あの蜘蛛が落とした魔法無効よりも有効なのか?」

「そうです。こちらはファルスさんの魔法耐性を高めてくれますから、魔法のレベルに関係ないですからね。相手がレベル5の魔法でも、きっと耐えられますよ。」

「そうか。」

「では、上に戻って武器屋に相談してみるか。うちも身体強化の魔石を身につけたいのぉ。リサ。」

「その前に服を着ないといけませんよ。」

「そうだったな。」


俺たちは火竜の棲みかから階段へと戻った。

階段を登った先の鉄扉は閉じられていたので、押し開く。

通常なら、そこは第49階層だ。

俺たちは第2階層から来た。

だが、ここは、どうやら地上の魔窟の入口の場所らしい。

そこには、最初に受付した小屋があり、ギルド職員の男が立っていた。


■■■


魔窟の入口扉が開き、3人組みが帰ってきた。


「お帰りなさいませ。冒険者カードをこちらに(かざ)してください。」

3人は順に冒険者カードを登録用の石版に翳していく。

「はい、これで帰還手続きは終了です。素材の引き取りは冒険者ギルド西の街支部で行っておりますので、そちらへお願いします。持ち帰られた魔窟の鍵は無くさないように所持願います。」

「魔窟の鍵は持ち帰らなかったな。」

「そうでしたか。では次回も第1階層からの攻略となります。」

「いや、次は風竜の魔窟に行く。入口はこの上だったな。」

「そうです。この道を登って行けば、受付があります。」

「分かった。ありがとう。」


立ち去る3人の姿は普通そうだった。

30代くらいの男が率いるパーティーが、初めて火竜の魔窟に挑戦して、1時間も経たない内に戻って来たのだ。

おそらく、2階層か3階層の途中であきらめたのだろう。

そして、次は風竜の魔窟に行くと言う。


あえて忠告はしなかったが、風竜の魔窟の難易度は火竜の魔窟より高い。

火竜の魔窟で通用しなかったパーティーが風竜の魔窟で通用するはずがない。


あのパーティーも、自分達の実力を認めて、森の探索に戻るか、引退して畑の街に行くんだろう。

もしかしたら、引退前の記念に魔窟に入ってみたのかもしれないな。


受付小屋のギルド職員の男は、そのように考え、すぐに3人組のパーティーの事を忘れた。


扉が開き、パーティーが戻って来た。

「お帰りなさいませ。」

「おう、今日は調子良かったのに、帰らされちまったぜ。」

「帰らされた?」

「なんだ?俺たちが最初なのか?どっかの勇者様が火竜を倒したんだよ。」

「えっ!」

「お陰で下層への扉は開かず、鍵を持ってお帰りだよ。3日の休みだったよな。」

「ええ、そうです。」

「やれやれ、どこのどいつ様のパーティーが倒したのか。まっ、今夜は街で宴会だな。」


そう言っている彼らの後ろには、次のパーティーが戻ってきていた。。


次回129話「武器屋と魔道具屋」

入手した魔石の加工を依頼します。


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