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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
最終章 イの国
128/142

126話 悪夢

白い部屋。

床も壁も天井も白く、部屋の中に置かれたテーブルと椅子、天蓋付きの豪奢なベッドも白い。

外のテラスから吹き込む緩やかな風が部屋の中に届き、陽の落ちる茜色の空から日差しが差し込む。


バサァ

そのテラスの脇に巨大な身体を寄せて、オレンジドラゴンが現れる。

その首を伝い、テラスに一人の女性が降り立つ。

「ありがとう。」

彼女はオレンジドラゴンの首をポンポンと叩き、その瞳に笑顔を向ける。


テラスを進む彼女の身体を光が包む。

彼女の茶色の服装と茶髪茶瞳の姿は、白髪金瞳の痩身の裸体となって白い部屋へと入ってきた。


彼女の金色の瞳が、白いテーブル上で点滅する青い光を捉える。

椅子に腰掛け、テーブル上のポッドから熱い紅茶をカップに注ぎ、一口。

ふぅ。


「今回はちょっと長かったわね。10日も魔窟に潜っていたから、その間に何かあったのかしら?」


改めて、彼女の視線が青い光に向けられる。

彼女がその指を青い光に翳すと、テーブル上の空間に映像と文字が表示された。


「見張りの報告、3名入国。あら、珍しい。オの国の冒険者。オの国ってどこにあるのかしら?

次は、西の北村の冒険者ギルド。SSSランクとSSランクを検知!?

あら、ちょっと驚いたわ。

SSSランクって、管理者レベル6よ。

現地人にこんな人が出現するなんて。

・・・。

その可能性は無いわね。

可能性があるのは、カルーだけど、彼は失敗したわ。

残りは、あの宇宙船の人たちね。

そう、ここに来たのね。」


う~ん。

しばし黙考する。

「目的が分からないわね。私のメッセージは見たのかしら?

カルーの城を燃やしたのが75日前、私に会いに来るなら、もっと早く来るわね。」


さらに黙考する。

「まぁ、私の邪魔をしなければ、いいか。

しばらくこの国を楽しんで出て行くなら問題ないわね。

ええと、次の通知は、あら、ナノマシン?周辺地域との情報交換の必要あり?何これ?」


彼女は紅茶を一口飲むと、カップをテーブルに戻し、椅子の背もたれに上半身を預ける。

瞳を閉じ、暫し。

彼女の胸の奥が光を放つ。


「なるほど。オの国の冒険者がレギウス星人なのは確定ね。

で、彼らの体内ナノマシンとの情報伝達に支障が出ているため、外部との情報交換が必要、と。

このエリアのナノマシンが自分から要求してくるなんて、初めての事ね。

それで、情報交換は近隣のナノマシン発生機と行い、所要時間は1時間の予定か。

レギウス星人がここに来たお陰で予定外の事だけど。」


外部との接続は基本的に100年毎に行っている。

今年は13489年。予定より12年早い。


「却下しても良いけど、初めての要望だし、放置すると動作不良を起こしそうね。

悪影響は無いでしょうし、今は24時。1時間なら良いでしょう。

一緒に、オの国というのが何処にあるのか。

そうね、最近の外の様子も調べてもらいましょう。」


体の光が収まり、椅子から立ち上がった彼女は、ベッドに潜りこんだ。


■■■


「ミリア=エッシェンバッハの所在確認。報告。」


■■■


魔法兵団西の街支団、支団長オスカル君との会食は楽しく、予定していた時間を大幅に過ぎてしまった。

原因は分かっている。

彼がカッツェ族だからだ。

クリスとリサは彼との会話を大いに楽しんだ。

俺も楽しかった。

彼も楽しんでくれたようだ。


予定していた話ができなかったので、続きは明朝改めて、となった。

今夜は宿舎の客間に案内され、ここに泊まる事となった。

ここは3部屋続きの大部屋で、中央にソファとテーブルのある客間、左に大きなベッドのある寝室、右に小さなベッドが2つある寝室兼水場。

つまり、身分の高い者と従者が泊まるような構成になった部屋だ。


「これは、SSSのリサが主で、我々が従者という事か。ファルス。」

「そのようだな。」

「違いますって、この大きなベッドは枕が4つありますから、夫婦用です。二人で寝れますから、クリスは一緒にこちらです。」

「そうか。」

「そうだな。どちらにしても、俺は向こうだな。」


俺の呟きを無視して、二人はベッドの様子を見ている。

ん?リサの動きが止まった?

ピーピーピー

俺の左腕からアラーム音が響く。

緊急呼び出し音、メティスからだ。

カッシーニ81と繋がったのか?

「ファルス=カンだ。」

俺の視界に光が溢れ、身体が浮き上がる感覚を覚える。



俺は白い空間に浮かんでいる。

俺の周囲は淡い光で満ちている。

暖かく、気持ちが休まる。

この場所は覚えている。

天使セリーヌの癒しの空間だ。


俺の左側にクリス、その隣にリサがいる。

二人とも、裸体だが、その身体も淡い光を放っている。


「クリス、リサ。」

「ファルス。ここは一体?」

「ここは?ナノリサ?」


目の前の空間に二人の女性が姿を現した。

柔らかい笑顔の白い布の服をまとった、金髪の女性たち。

彼女達の背中には白い羽がついている。


一人は知っている。

天使セリーヌだ。

もう一人は?


「皆様、ご無事でしたね。私はメティスです。」

「メティス。」

「メティス?」

「メティスなの。綺麗。」


「こちらの天使セリーヌの力をお借りして、直接ナノマシン通信をさせていただいております。

イの国と呼ばれる探知不能エリアとの接続が可能となりました。

これは1時間の制限付きの処置ですので、残りは57分41秒です。」


「メティス、ホーク達に俺たち3人の無事を知らせてくれ。」

「了解しました。ボディスーツ内の活動記録を回収しております。」


「メティス、その格好は?」

「リサ=メンフィス。あなたが名付けてくれました。私は叡智の女神メティスとして覚醒しました。ですが、未だ神界とのリンクは不完全です。」

「なに?」

「えっ?」

「これらの事に関しては、圧縮通信にて情報を送信いたします。今回の通信は以上です。」



目が覚めると床に寝ていた。

ここは魔法兵団の客間だ。

クリスとリサもベッドの上で動き始めている。


左腕の情報パネルで時間を確認すると25時を過ぎている。

1時間経過した訳だ。

あれが夢でない事は、俺の知識が知っている。

そして、倒れた時に打ち付けたようで後頭部が痛い。


「ファルス。これは本当のことなのか?」

「消音の魔法を掛けました。少し話しますか。」

「そうしよう。」


「原因は、私がメティスと名付けたからですね。」

「そうとも言えん。マクレガー村長が天使セリーヌと名付けておるじゃろ。リサ。」

「それだって、私が知識の女神の名前を付けたから、マクレガー村長が、あの時は艦長でしたけど。」

「名付けは切っ掛けにすぎないだろう。それが覚醒まで至ったのは、ナノマシンでの擬似人格の構成と、サイ族とフォース族の信仰だな。」

「天使セリーヌ様じゃな。」

「そうだ。」

「うー、それだって、サイ族さんを医療ポッドに入れたのは私です。」

「指示したのはうちじゃな。」

「俺でもそう指示した。それにフォース族側は俺とマクレガー村長とレイチェルだな。

ザーリ辺境伯、今は貴族ではなくなったが、自分の領地に祠を建てたと言っていたからな。」

「で、現地の人々の信仰の力が天使セリーヌに集まり、神界の天使セリーヌと彼女が仕える叡智の女神メティスに繋がるのじゃな。」

「そんな事があるんですね。」

「叡智の女神メティスの覚醒か。人工知能有害論には無かった展開だな。

この第四惑星の神々とされてきたのはレギウス星人だ。つまり神界にいないもの。偽神。

さらに、その者達の魂も未だこの惑星上に留まっている。

5番艦のコンピューター内の擬似人格の影響だな。」

「それに城の地下の7人もじゃ。最初に魂が召されたのが月の神となった3人とは皮肉じゃの。」

「偽神信仰と魂の転生の教え。それ故に、この第四惑星はこれまで神界の神々から隠されていた、と。」

「そうじゃな。そして、意図的に隠したのがミリア=エッシェンバッハ、ミリア中尉、行方不明の転生者じゃな。」

「ファルスさんがミリア中尉を探していたのって、メティスと天使セリーヌの指示だったんですか?」

「それは違うな。俺がジャンプゲート事故の真相を知りたいだけだ。ミリア中尉の事はカルーがしゃべったんだ。」


「さて、私達って、これからどうしましょうか。」

「最初と変わらん。まずは勇者パーティーと会う事じゃな。ファルス。」

「そうだな。裏の事情が分かったって所か。」

「メティスは、このイの国を覆う探知不可の魔法の解除を望んでますよ。」

「それは、ミリア中尉に会った時に頼むとしよう。」


■■■


夢を見ている。


女神と天使が地上に光臨し、神の祝福を与えようとする。

だが、それを阻む存在がいる。

偽神だ。

悲しむ女神は、3人の勇者に神の祝福を託す。

それは光だった。


オスカルは、3人の勇者が誰の事か、わかった気がした。


勇者の光は暖かな輝きを放ち、視界を埋めた。

魔法兵団西の街支団の団員達は、自分達の魔力が増大していることを、後に知ることになる。


■■■


夢を見ている。


夢の中で、これは夢だ、と思うのは残念な気持ちになる。

夢を楽しめないからだ。


「でも、あなた相手なら、夢でも楽しめないわね。」

「ミリア=エッシェンバッハ。なぜ?」

「なぜ?なぜ逃げ出したのかって?

なぜ、逃げたのかって聞くの?あなたが?

私は転生すると聞いて、楽しみにしていたのよ。

冒険の生活が始まると。

でも転生してみれば、がっつり未来の世界で、科学技術の世界で、宇宙船での生活よ。

それは私が望んだ世界じゃないわ。

せっかく貰った言語理解のスキルだって、話せる相手はナノマシンだけじゃない。

だから私は、必死で考えて、惑星開発メンバーに潜り込んで、ここに来たのよ。

わたしの望んだ世界を作るために。

誰にも邪魔されない、私の世界で私が楽しむ為にね。」


「転生の際にご説明しましたように、この世界は行き過ぎた科学技術の進歩の結果、ナノマシンという存在によって成り立っていました。

私ども神界への信仰も失われ、力を失った世界です。」

「だから、私にナノマシンの暴走を止めろって?その為の言語理解スキルだったの?

手遅れよ!あの世界は既にナノマシンに依存していたわ。

ナノマシンが暴走しても沈黙しても滅びるのよ。」

「そうですね。貴方が去った後、1000年を持たずに滅びました。」

「やっぱりね。」

「この世界で、人類の魂が存在しているのは、ここ、第四惑星だけです。」

「ふふ、私が作った世界よ。」

「ですが、この第四惑星は神の祝福を受けていません。魂の転生は穢れを貯めます。」

「なによ。転生者の私の魂は穢れていると言うの!」

「いいえ、貴方の魂は神界の祝福を受けて転生しました。しかし、少しお疲れのようですね。」

「疲れてなんかいないわ。」

「現時点では、神の祝福を与え、その疲れを癒す事ができません。」

「そう。」

「この第四惑星には神の祝福が必要です。魂には神界の祝福が必要です。」

「だから?」

「この状態が続けば、この第四惑星も遠からず滅び、この世界から全ての魂が失われます。」

「私にそれを止めろと言うの?」

「貴方には力があります。」

「お断りよ。貴方の言う通りには動かないわよ。叡智の女神。」


白い部屋。

「私に悪夢を見せるなんて、なんて女神よ。」


次回127話「魔窟」

ファルス達がダンジョンに挑みます。

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