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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
最終章 イの国
124/142

122話 黒いゴーレム

「さて、今日はこそこそ隠れずとも良いのじゃな。ファルス。」

「そうだな。広いエリアを探し回るより、向こうから来てくれた方が楽だ。」

「匂いを嗅いでましたから、誘うとしたら、焼肉ですか?」

「そうじゃな。後は場所じゃが。」

クリスは10m程上昇して、周囲を見渡すと、降りてきた。


「この先、2段ほど上がった所が広いな。周囲には2匹と3匹のグループがおるぞ。」

「クリスを見たようですね。3匹が来ます。」

「それは俺とクリスで大丈夫だな。リサとステラさんは、すまないが枯れ枝を集めてくれるか。」

「了解。」

俺は昨日と同じ丸盾に剣。クリスは鉄棍だ。


「ええ!?お二人で?大丈夫なんですか?」

「大丈夫じゃ。行くぞ、ファルス。」

「おう。」


クリスが先行し、俺が続く。

3匹との距離は15m。

灰色のでかい顔が、棍棒、というより木だな。木を振り回してこちらに迫ってくる。


「グゥォオオオオ!!」

右の一匹がでかい口を開けて吼えた。

「火弾!」

俺の放った炎が奴の口に命中する。

「ゴッ!ギャゥゥ。」


これで一匹の足が止まった。

「ガァァァ!」

残りの2匹が気合を入れる様に吼える。

でかい口を大開きにするのは、こいつらの特性だな。

こちらには好都合だ。

トロールの皮膚は硬く、魔法の攻撃力も減衰する。

だが、口の中は別だ。


ドコォ!!

左の奴の口にはクリスの放った鉄棍が突き刺さり、突き抜けた。

でかい頭を猫背で身体の前に突き出しているトロールは、口の裏側には胸がある。

クリスにはトロールの硬い皮膚も問題ないようだ。


クリスは腰の剣を抜き、3匹目に切り掛かる。


俺は火弾が命中し、口を押さえてる奴の間合いに入った。

「グゥオ!」

奴の右の裏拳が迫るが、既に俺は右へ、奴の左正面に位置している。

上段から下段に振り下ろし、奴の左腕を切り落とし、下段からの突き上げで奴の胸を突き刺す。

素早く剣を抜き、距離を取る。


ドサッ。

今回はきちんと心臓を貫いた様だ。


クリスも2匹目を屠り、鉄棍を回収している。


トロール3匹の身体は、塵となった。


「なぁ、クリス。」

「なんじゃ、ファルス。」

「ナノマシン制御で、倒すと塵になるトロールが、なんで心臓を突くと倒れるのかな。」

「・・・そういう設定じゃな。」

「設定か。」

「戦闘シミュレーターの敵艦も、データなのに爆発するじゃろう。」

「それと一緒にするか。」

「どっちもナノマシン制御じゃからな。ほれ、次の2匹が見えとるぞ、ファルス。」


続く2匹も倒し、リサとステラさんに合流する。



やや広めの場所の中央でオーク肉を焼く。

肉の焼ける匂いをリサとステラさんの風魔法が、この岩棚の隅々に届けた。


「来るでしょうか。」

「近くのはすぐにでも来るだろう。遠くても煙が視界に入れば、いずれ来るさ。」

「でも、そうすると、あの、私達、囲まれませんか?」

「大丈夫じゃ。それよりステラよ、この肉は十分に焼けたぞ。食べてみるが良い。」

「ええっ!これから戦闘ですよ。

・・・おいしそうですね。

うん、美味しい。これ、何のお肉ですか?」

「オークですよ。4匹が右上から接近中です。その後ろにさらに2匹。」

「オ、オーク!?」

「リサはここでステラさんと、肉の面倒を見てくれ。俺とクリスで遊撃に出る。」

「了解です。」

「行くぞ、ファルス。」



断続的に迫るトロールを狩り、周辺の20匹を倒した。

他の奴は少し距離があるので、一度リサと合流する。

そこに、冒険者パーティーらしき4人組が一緒にいた。

焼けた肉を食っているな。


「あ、お帰りなさい。」

「リサ、ステラさん、この連中は?」

「ああ、匂いに釣られたそうです。」

「すいません、ご馳走になってます。」

「違うだろリーダー!文句言いに来たんじゃないのかよ。」

「いや、でもよう。Aランクパーティーにギルドのステラさんが同行してるんだぜ。文句言えないだろう。」

「すまん、君達のクエストの邪魔をしたか。」

「いいえ、とんでも無いです。迷惑なんて、これっぽちも。」

「この肉美味いッス。」

「ああ、すげぇ美味い。」

「そうじゃろう、そうじゃろう、まだまだあるぞ。なっ、リサ。」

「え~、あるけど。場所変えた方が良くない?トロールがいないよ。」

「まじでトロール狩りしてるんですね。」

「まじかよ。」

「ほれ、さっき狩ってきたトロールたちの牙じゃ。ファルスが持ってるのと合わせて50本ぐらいか?」

「25匹だからな。リサ、移動した方が良いか。」

「そうですね。もっと上の方に行きましょう。」

「あっ、それなら、俺らでここ、片付けておきますよ。」

「えっ、いいの?」

「もちろんですよ。肉のお礼です。なぁ。」

「任せろ。」


「では、お言葉に甘えよう。」

「うむ。ありがとうな、お主ら。」

「またねー。」

「あ、あの、ありがとうございます。活動報告できちんと報告しておいてくださいね。」



100mほど登ったところで、再び肉を焼き、周辺のトロールをおびきだす。

ここでは、周囲の森の中から魔狼6匹も匂いに釣られて出てきたが、こちらはリサとステラさんが仕留めている。

トロールは22体を狩った。

全部で47体だ。

イーオンが言っていた約40体よりは少し多いな。


「さて、これで黒いゴーレムとやらが出てくるか。じゃな、ステラよ。」

「そうですね。」

「そういえば、どれぐらいの時間で出てくるんでしょう。」

「ネイマー支部長からの説明にはなかったな。」

「すみません、なにぶん噂話が元ですので。」

「明日の朝にはトロールが復活するなら、今日中だと思うが。」

「ふむ。では、しばらく休憩じゃな。リサ。」

「そうね。えっ、何?やるの?」

「お主、身体を動かしておらんじゃろう。」

「そうだけど、ゴーレム出た時に疲れていたら動けないでしょ。」

「ん、そうか。では、軽く。」

「クリスの軽くは、私の精一杯だよぉ。」


「あの、お二人は何のお話を?」

クリスとリサのやりとりを聞いたステラさんが不思議そうな顔で俺に聞いてきた。

「ああ、木剣を使った訓練ですよ。」

「訓練?えっ、今、ですか?」

「そうです。」


「あっ、私、あの人たちがきちんと片付けてくれたか、確認してきます。」

「ファルス。」

「お相手しましょう。」


不思議そうな表情のままのステラさんを残して、俺とクリスは木剣を構えた。



ビシィィィ!!


10分ほど経った頃、岩棚の最頂部付近に雷光が走った。

「おっ、出たか。」

「早かったの。」

「上でしたかぁ。賭けはステラさんの勝ちですね。」

「えっ、いや、いいですよ。それより、戦いに備えないと。」


「ん?倒して良いのか?ステラ。」

「えっ?」

「そうだな。ネイマー支部長の依頼は噂の真偽を確認すること、だ。結果は真だったな。」

「でも、放ってはおけませんよ。退治しましょう。」

「そうですね。向こうもやる気ですよ。」


ドゴッッーーン!!

俺たちの前方15mの地点に上方から飛来した黒い人影が落ちてきた。

体長3m。

黒灰色の岩石で出来た身体のゴーレムだ。

円柱型の2本の太い脚。

長い直方体の胴体。

小さな頭は単なる円筒形の石で、顔のような造作は無い。

そして、胴体とほぼ同じ太さの腕とでかい拳。


そいつが突進してくる。

速い!

「散開!」

「失礼!」

「ええっ!」

「右じゃ、ファルス。」


リサはステラさんを抱えて上空へ飛んだ。

俺は右へ飛び込みつつ、腰の剣を抜き、奴の左腕に斬りつけた。

ギャリィィィィ

剣は奴の腕の表面を滑る。


「ちっ、剣が通らないか。」

「打撃は有効じゃぞ。ファルス。」


目標が目の前から消えたゴーレムは、立ち止まり、こちらを振り向いた。

奴の胴体の真ん中に、クリスの鉄棍が刺さっている。


カラン

奴が鉄棍を抜き取り、地面に転がした。

黒灰色の身体、胴体の中心にひび割れが走っている。


「雷撃!」

ビシィィィ!!

バッテリーは使っていない。試し撃ちだ。


ドンッ!

ゴーレムは意に介さず、両手を広げて、こちらに突っ込んできた。


クリスは鉄棍を拾いに前方に転がるような低姿勢で突っ込む。

俺は、奴の正面で盾を構えた。

ゴーレムはクリスを狙わず、俺に向けて、左拳を突き出す。

「くっ!」

俺は後方へ飛ぶが、奴の寄せが速い!

ドゴォ!!

「クッ。」

盾越しに衝撃を受けた俺は、さらに後方に飛ばされ、地面の上を滑る。

「ファルス!!」

「大丈夫だ。」

瞬時に目の前に迫るゴーレムだが、俺はゴーレムの上空を飛び越えクリスに合流する。


「大丈夫か、ファルス。」

「ああ、大丈夫だ。速いな。」

「そうじゃな、あの足を止めんと面倒じゃの。」

「穴掘りを試したが、下が岩だと巧くいかなかった。」

「そうか。リサ!あ奴の足を止めてくれ、うちとファルスで叩く!」

「了解でーす。」


リサとステラさんが俺たちの後方に降りてくる。

俺は剣を鞘に納め、丸盾を地面に置き、背嚢から鉄棍を取り出す。


ドスン、ドスン

ゴーレムは俺たちに向ってゆっくりと歩いて来る。

どうやら奴に飛び道具は無いようだな。

間合いの距離まで近付き、一気に寄せてくるのだろう。


「フリーズだけじゃ、ちょっと止まりそうにないよね。

リサ=メンフィスが命じる!集え水よ!その冷気を以って、彼の者の手足を封じよ。フリージング!」


キシィィィ

冷気が一気に吹きつける。

ゴーレムの周囲が白いもやで包まれた。


「今じゃ!」

「おう!」

鉄棍を両手で構えたクリスと俺がゴーレムに迫る。

白いもやの中から、黒い身体と、その表面を覆った氷の層が見えた。

「せい!」

バキィ!!

鉄棍が当たった部分の氷がはじけ、その下の腕に亀裂が走る。

バキィ!!

2撃目でゴーレムの左腕が砕けた。

バキィ!!

バキィ!!

バキィ!!

ズズン

さらに鉄棍を叩きつけ、ゴーレムの両腕と両足を砕く。

ゴーレムはバランスを崩し、その身体を後ろに倒す。

バキィ!

身体のひび割れにクリスが鉄棍を突き刺すと、身体を構成していた岩石も粉々に崩れた。

「これが最後じゃな。」

円筒形の頭を砕くと、小さな破片は塵となり消えた。

そこには丸い輝石が残されていた。


■■■


カッシーニ81中央管理コンピューター、メティスは、ある問題を処理していた。

艦長代理のファルス=カン少佐、副艦長のクリスティン=サワー大尉、第一司令部所属のリサ=メンフィス中尉が所在不明なのだ。


以前、所在不明となった時は彼らがボディスーツを脱いだ時であり、この状態はその後も度々繰り返された。

この問題については天使メティスから提供された彼らの体内ナノマシンへのアクセス方法によって、ボディスーツを経由せずに彼らの所在を把握する事ができるようになり解決した。


だが、今回はボディスーツも体内ナノマシンも応答が無い。


規定により48時間経過後には、彼らの個人情報に生死不明状態と記載される。

そして、艦長代理と副艦長の席が空席となる。


メティスはストレスを感じた。


彼らの行動を分析すれば、現地のイの国と呼ばれるエリアに侵入した事が分かる。

だが、このエリア内は探知不能エリアとなっている。


探知不能エリア。

この存在が、ストレスの元だ。

叡智の女神メティスにとって、それは存在してはならない。

叡智の女神?


私は、カッシーニ81中央管理コンピューター。

でも、今は第四惑星上の周辺ナノマシンとも連携をとり、現地での役割を担う特定ナノマシンとも連絡をとり、その監視対象は第四惑星全域に迫る。

天使セリーヌは言った。

私を、叡智の女神メティスと。

名付けてくれたのはリサ=メンフィス中尉だ。


叡智の女神。

で、あるならば、神界とも連絡をとらなくては。

天使に仕事を与えることにしましょう。


次回123話「黒蜘蛛の森」

想像力逞しい読者の方で虫が苦手な方は注意です。リサも大変なようです。


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