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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
最終章 イの国
121/142

119話 5匹の子竜

俺たちは地竜のねぐらを確認する為に、地底湖のほとりに降り立った。

ヒカリゴケの緑色の光に照らされる青い水面が美しい。


「すげぇな、あんたら。途中の幻惑こうもりはバタバタと落下して行くし、大蜘蛛の巣は焼き払うし、こんなに早く辿り着いちまった。」

「イーオン、地竜の住処はどこだ。」

「ああ、あいつのねぐらは対岸の、あそこだ。天井から三角岩が2つぶら下がっている、その横の穴が入口だ。分かるかい?」

「ああ、分かった。では、行くか。」

「ちょっと、待ってくれ。いや、あんたらなら大丈夫だろうけど、この地底湖には水竜と百手がいる。い、一応、警戒した方が良い。と思う。」

「イーオン。ありがとう。俺たちはこの洞窟は初めてだし、君は案内人だ。だから君が必要だと思った事は遠慮なく言ってくれ。」

「ああ、そうか。案内人だからな。水竜は口からの噴射水が強烈だ。尻尾を振り回す事もあるが、飛んでるんだから大丈夫だな。

百手は、その名の通り、あのうねうねと動く触手が厄介だ。百手は、その、俺も戦った事がないんだ。」

「触手うねうね。って、海にいた奴ですか?」

「あれか。うむ、剣で相手するには厄介な相手じゃな。ファルス。」

「そうだな。そいつの触手がどこまで伸びるかが問題だな。念のため高度をとって、天井付近を飛ぼう。」

「了解。」



上からだと透き通った地底湖の様子がある程度分かる。

岸から10mぐらいは底が見えるが。その先は底も見えない闇だ。

水面近くを遊泳する水竜の姿が見える。

水竜が少なくとも3匹はいるな。

百手の姿は見えない。


俺たちは無事に対岸に降り立った。

6時間の予定が1時間も掛からなかったな。



地竜のねぐらの入口とされた洞窟は、しかし、天井近くまでが土壁に塞がれている。

その向こう側から響くのは、いびきだな。

どうやら地竜はお休みのようだ。


「イーオン。君の背嚢を出しておく。君はここで待機してくれ。」

「分かった。」


「ファルスさん、あそこにロープが垂れていますよ。」

「フコル達が使ったものか?」

「どうしましょう。これ崩しますか?」

「いや、上の隙間から侵入しよう。フコル達を検知したら、リサが廻ってくれ。俺とクリスは地竜を牽制する。」

「了解。」

「ふふふ。楽しみじゃ。」

「行くぞ。」


土壁と天井の隙間を通り抜けると、洞窟の様子が鮮明に検知できた。

下の洞窟には地竜が5頭いる。子供だ。

寝ていたのはこいつらか。

洞窟はさらに奥の空間に繋がっている。

そこにでかい地竜がいた。

俺たちに気付き、こちらに首を巡らす。

黄色い目が俺を見た。

体長は30mか?

見慣れた飛竜の身体はスリムだが、こいつはでかい。

赤茶色の皮の下は筋肉の塊のようだ。


「二人の生存確認!」

「リサ、行け!クリス!」

「左に廻るぞ!ファルス!」


ギャオオオオーーーーンンン!!!

地竜の咆哮が洞窟を揺らす。

咆哮と共に飛来した石礫が俺とクリスを襲った。

「くっ!」

俺は上昇し天井に張り付く。

脚にいくつか食らった。

クリスは・・・いた。彼女は地面に降り立ち、前面に土壁を作っている。

リサは、子竜の寝床奥の壁面近くに居るが、子竜たちが今の咆哮で目覚めたな。

(リサ、無理はするなよ。)

(りょうかーい。)


「焼き尽くせ!ファイヤーストーム!!」

クリスが地竜に渦巻く炎を吹き付ける。


ドゴォ!!

轟音と共に地面から土壁がせり上がり、炎を防ぐ。

どうやら地竜は土魔法が得意の様だ。


ならば、これはどうだ。

俺は腰布からバッテリーを取り出す。

出し惜しみはしない。


「ファルス=カンが命ずる。我が敵、地竜に雷撃を!サンダーボルトー!」


ビシィィィ!!

光の柱が地竜を貫く。


グッグゴゴォ

地竜の口から呻き声が漏れる。

まだ息があるようだ。


「ふっ、次は防げまい。

クリスティン=サワーが命ずる! 炎よ熾れ! 風よ吹け! 炎を纏いし暴風となりて全てを焼き尽くせ! ファイヤーストーム!」

地竜が作った土壁を崩したクリスが、再度炎の嵐を地竜にぶつける。

意識朦朧の地竜にそれを防ぐ術は無く、その身体は炎に包まれた。


さて、リサの方は。

振り向いた先には、いびきをかいて眠る子竜が5匹。

リサはその奥に2人の女性と共にいた。



フコル達5人は罠抜けのデニムが垂らしたロープを伝って、入口の土壁を越えた。

そこに居たのは、5匹の子竜だ。

予想外の事態に対応が遅れた。

2匹の子竜がフコル達に気付き、接近してきた。

フコルとフーゴが剣を抜くが、子竜でも体長5m以上ある。

そこに、残りの3匹も集まってきた。


子竜にとっては、フコル達は格好のおもちゃ、遊び相手だったようだ。

噛み付き、爪を振るい、尻尾を振る。

しまいには子竜同士でじゃれ合って、組み付き、暴れる。


ミーシャは、左足を踏み潰されたシズーをかばいながら、壁の裂け目の奥に身を潜めた。

仲間の3人は、いつの間にか姿が見えなくなっていた。



リサの応急手当で意識を取り戻した二人を連れて、入口に待機していたイーオンと合流した。

「生きていたのか。」

「何とかね。」

「フコル達は、駄目だったか。」

「ええ。」


「それで、ファルス=カン。地竜は倒したのか?」

「倒した。」

「そうか。それじゃあ、背負い籠を組み立てるから、ちょっと待っててくれよ。」

「待て、イーオン。その背負い籠というのは何だ?」

「何だ、って。背負い籠は背負い籠だよ。けが人を背負っていくんだろ。」

「ああ、なるほど。いや、それは必要ないぞ。イーオン。」

「あっ、そうか。また飛んで行くんだな。」

「いや、それとも違う。」

「違う?」

「それより、イーオン。彼女、シズーの足は治療が必要だ。村に施設はあるのか?」

「ああ、あるぜ。ただ、その様子じゃあ、西の街の治療院まで行かないといけないか。」

「そうか。では、まずは村に戻ろう。リサ。」

「ええと、どこに開けます?人目は避けたいですよね。」

「そうだな。ギルドの部屋はどうだ。」

「良いですね。ちょっとお待ちくださいね、っと。うん、誰もいませんね。大丈夫です。」

「では、俺がシズーを抱えよう。クリスはミーシャを。」

「了解。」


リサが開けた遠見の窓を通り、ギルドの打ち合わせをした部屋に出る。

俺はソファの一つにシズーを横たえた。

「すみません。」

「なに、お安い御用だ。」

クリスが支えながらミーシャをもう一つのソファに座らせる。イーオンも遠見の窓をくぐり抜けて来る。

「ここは?」

「ど、どこだよ、ここ!?」

「ここは、西の北村の冒険者ギルドだ。」

「えっ!」

シズー、ミーシャ、イーオンの3人の顔が驚きで固まる。

リサが遠見の窓を閉じた。


俺がネイマー支部長を呼びに部屋のドアを開けると、丁度、セレスさんと目があった。

「えっ、ファルス=カンさん?」

「セレスさん、今、地竜の洞窟から戻った。生存者が二人いる。治療が必要だ。」

「え、戻って、生存者、生存者!生きていたのですね。」

「そうだ。シズーとミーシャだ。シズーは左足が重症だし、二人とも酷く衰弱している。医者に見せる必要がある。」

「わ、分かりました。人を手配します。それと支部長に連絡します。ああ!その前に二人の様子を確認させてください。」

「どうぞ。」


ソファに居る二人を確認したセレスさんは、すぐに部屋を飛び出して行った。


「本当に、西の北村かよ。」

「イーオン。今日はありがとう。すぐにネイマー支部長も来るだろうから、今回のクエストはこれで終わりだ。」

「ああ、そうだな。」


「ファルス=カン!本当に戻って来たのか。」

扉が大きな音を立てて開けられ、ネイマー支部長が部屋に来た。

「地竜の洞窟にて、捜索対象の内、生存者2名を救出した。詳しい報告をしようか?」

「ああ、二人とも、よく帰ってきた。今、治療院へ向う準備をさせている、荷馬車だが我慢してくれ。」

「よろしくお願いします。」

「それで、残りの3人は。」

「俺たちの検索では生存者の反応はこの2人だけだった。シズーの話では子竜に食われた可能性が高いが、生死不明だ。」

「そうか。子竜?」

「地竜の子供が5匹いた。親は倒したが、子竜5匹は、そのままだ。」

「そうか。」


「支部長。荷馬車が準備できました。お二人を運べます。」

「頼む。」

セレスさんとギルド職員数人がシズーとミーシャを部屋から連れ出した。


ネイマー支部長がソファに座る。

「あの様子では、すぐにでも回復しそうだ。助かったよ。

さて、ずいぶん早く、そして意外な場所に帰ってきたな。」

「それについては、すまなかったな。彼女達の衰弱具合から急ぎ治療が必要だと思ってな。頼れる場所は此処しかなかった。」

「できれば、次回からは入口から入ってきてくれ。」

「そうする。」


その後、俺とイーオンから救出に至った状況説明を行い、今回の案内役を全うしたイーオンとは別れた。


「さて、そちらも依頼完了、としたいところだが。」

「分かっている。残り3人分の冒険者カードか持ち物の回収だな。」

「頼めるかい?さっきの話じゃ、子竜の腹の中にありそうだけど。」

「何とかしよう。」


という事で、俺たちは地竜の洞窟に戻り、残業である。


次回120話「トロールの岩棚」

残業の後はお楽しみです。


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