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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
最終章 イの国
120/142

118話 地竜の洞窟

翌朝。

宿には3泊の延泊を申し込んだ。

今日の話と指名依頼次第で、いつまで居る事になるか不明だからだ。


目的はミリア中尉だが、こちらからの接触は難しいと思われる。

なので、冒険者として活躍して、注目を集めて、彼女から接触してくるようにしよう。というのが、クリスの案だ。有名になれば勇者パーティーとも接触しやすいだろう。

他に妙案も無いので、当面の俺たちの活動方針に採用した。

但し、俺たちが月の人だと分かると警戒されてしまう。

ここでの活躍は、オの国から来た冒険者、という事にしたい。

なので、飛行魔法や遠見の窓での転移は原則として使用禁止だ。

ボディスーツは見られると厄介だが、魔法の鎧で通そう。


冒険者ランクSSとSSSの3人組みだ。

注目されて、話題になるだろう。

その為には、今日の指名依頼を問題なく成功する事が重要だ。

そして、勇者パーティーとも早めに接触したい。


嵐たちには、しばらく滞在するので、昼間は自由に過ごすように伝えた。

俺の顔を一舐めしたので、伝わったのだろう。

まぁ涼風がしっかりしているから大丈夫か。



冒険者ギルド。

昨日と同じ部屋に通された俺たちは、ネイマー支部長を待っている。

ソファとテーブルだけの部屋だが、壁には2枚の地図が掛けられていた。

イオタ国全図と西の街周辺図だ。

これは押さえておきたい情報だ。


まずはイオタ国全図だ。

主な街道は単純だ。

国の周囲をぐるりと巡る街道と、中央を東西に横断する中央街道と、南北に縦断する南北街道。

西の山脈には西の街があり、西の北村と西の南村がある。

北の山脈には北の街があり、北の東村と北の西村がある。

中央街道と南北街道の交差点には畑の街があり、周辺には畑の北村、南村、東村、西村がある。

南の海岸線には海の街があり、海の東村と海の西村がある。

東の海岸線には、東の都がある。


次に西の街周辺図。

中央街道の西の端にあるのが西の街だ。

北への街道沿いに西の北村がある。俺たちが居る、この村だ。

街道側に広がる東の丘森。

山脈側の黒蜘蛛の森、スライム沼、トロールの岩棚、地竜の洞窟。

楽しそうな名前が並ぶな。


「すまない、お待たせした。」

ネイマー支部長が部屋に入ってきた。

そして、俺に一枚の紙を突き出した。



「俺がイーオンだ。イーオン=ポート。」

「君が案内人か。俺はファルス=カンだ。今日はよろしく頼む。こちらはクリスとリサだ。」

「クリスじゃ。よろしくな。」

「リサです。よろしくお願いします。」

「ああ、あんたらがAランクパーティーでも、今日は俺が案内人だ。

俺の指示に従ってくれれば、よけいな怪我はしなくてすむからな。

地竜の洞窟にはトロールの岩棚を経由して行く。では、行くぞ。」


ネイマー支部長からの指名依頼は、冒険者パーティーの救出だった。

2日間の予定で地竜討伐を目的に地竜の洞窟に挑んだパーティーが、3日目の昨日も帰ってこない。

他のパーティーからの情報も無く、単独での遭難と判断したギルドは捜索依頼を作成した。

それが、俺たちに廻ってきたという訳だ。

生存の可能性は低く、彼らの冒険者カードか持ち物を持って帰るのが通常の結果だそうだ。

救出任務は時間が鍵だ。

飛行魔法と遠見の窓を使って、素早く行動したいが、ここは現地のやり方に従う。


そして、地理に不案内な俺たちに付けられた案内人役が、イーオンだ。

彼は22歳だが、既にBランクだ。

地竜の討伐ランクはAランクだが、洞窟内の魔獣たち相手ならBランクでも戦えるので、洞窟の案内はできるという。

リサは23歳でSSSランクだな。

見た目はイーオンより年下に見えなくも無い。

イーオンの視線がリサに止まったのは、そういった事か?

思い出したが、この第四惑星の住民の22歳が過ごした時間は、俺たちレギウス星人換算だと約1.9倍の42歳相当になる。

いや、これを考えると混乱するな。


イーオンは大きな背嚢と腰には短剣を2本挿している。剣は持っていないようだ。

革の鎧に厚手の灰色マント姿は一見すると俺たちと同じに見える。

「イーオン、洞窟までは歩きか?時間はどれ程掛かるんだ?」

「歩きで3時間ってところだ。森の道を抜けて、トロールの岩棚まで2時間。トロールの巣を迂回して1時間で地竜の洞窟に着く。そこで一度休憩してから洞窟に潜る。」

「トロールは何匹おるのじゃ。迂回しなければならぬのか?イーオン。」

「奴らは2、3匹のグループで行動している。それが全部で40匹ぐらい居るな。」

「クリス、今日は冒険者の救出が優先任務だ。トロールの相手は、帰りだな。」

「了解。」

「ははっ、さすがAランク。トロール相手も余裕ってか。」

「いや、トロール相手は、まだ経験がなくてな。どんな奴か楽しみじゃ、な、ファルス。」

「そうだな。」

「へ~、余裕見せてくれるじゃん。岩棚には火トカゲや角蛇、幻惑コウモリなんてやっかいな奴らもいるからな。油断は怪我の元だぜ。」

「気をつけるよ。」


俺たちは個人ランクはSSとSSSだが、Sランクパーティーを名乗ることは出来ないそうなので、Aランクパーティーとして活動する。

なのでイーオンにも、俺たちをAランクパーティーとしてギルドはクエスト依頼している。



村を離れて、西側の森の中を進む。

周辺を検知してみるが、検知範囲は20m程度のままだ。

リサが言うには、周辺ナノマシンにイオタ国ルールが適用されているらしい。

この国を覆う結界内で適用されるルールだ。

ルールの内容は非公開なので詳細不明。注意が必要だな。

それより、それを知ることのできるリサだが、SSSなので、と言っていた。

冒険者ランクより、この管理者レベル5と6の違いだろう。

リサは答えをはぐらかすし、頼れるメティスとは音信不通だ。


森の中だが、人の往来がある道の周辺には魔獣が寄ってこないようだ。

一匹だけ、イノ豚に似た奴が走り抜ける姿を目撃した。

2時間後、森が切れた先に灰色の岩棚が現れた。

ここを登れば、地竜の洞窟の入口に辿り着く。



「この先が通称トロールの岩棚だ。この先は地面が硬いから、あ~、何だ。すますなら、休憩するぞ。」

「すます?」

「あ~、ほら、わかるだろう?」

「すまん、何の事だ?」

「くっ、トイレだよ!言わすなよ!」

「ああ、すまなかった。俺たちは大丈夫だ。」

「そうかよ。じゃあ、行くぞ。」


「パメラとレイチェルに、結婚するなら慣れないといけないと言われたな。」

「クリス、今は駄目だよ。」

後ろは何の話をしてるんだ。



「気付け草を出してくれ。この先は痺れ花の群生地を通っていくからな。」

「すまん、イーオン。気付け草は持っていない。」

「あ?3人ともかよ。なんでだよ、気付け草に毒消し丸薬と血止めの塗り薬は冒険者の必須薬だぞ。」

「すまん。」

「ちっ、しかたねぇ。俺のを分けてやるが、銅貨1枚だぞ。」

「あっ、大丈夫です。私たち3人は気付け草無しでも行けますよ。」

「えっ!大丈夫なのかよ。」

「はい。」

「じゃあ、行くぜ。」


リサが言うなら大丈夫だな。

そうか、健康チェックが働いて体内の毒素は分解してくれるからな。



「この先は毒茨が生えている。茨の棘に触れると夜には腫れ上がって熱が出るから、注意しろよ。」

「わかった。気をつけるよ。」


首から下はボディスーツを着けている。大丈夫だな。



「臭ってきたな。この先は腐った泉だ。臭いもきついが、あの黄色いもやは目を傷めるし、吸いこむとぶっ倒れる。

ここは姿勢を低くして、風上になる左手の岩壁を伝っていく。前の奴の背中を見失うなよ。」


ここはさすがに厳しそうだ。

煙吹き山も臭かったが、あれ以上だな。

リサは背嚢からクリスと自分の分のヘルメットを出し、二人はそれを装着した。

ああ、俺は持ってこなかったな。


よし、行くか。



「見えたぜ。アレが地竜の洞窟の入口だ。」

「他にも冒険者がいるな。」

「そりゃあ、いるさ。ここは鉱石が掘れるし、魔獣も多い。素材集めにも魔石集めにも良い場所なんだ。」

「そうか。」

「フコルのチームは冬の間に地竜討伐用の罠や武器を用意していた。

この時期は獣と同じように腹を減らして攻撃的になっているから危険なんだが、痺れ薬を仕込んだ肉に食い付き易いってフコルの奴。

手間掛けさせやがって。

それでっと、少し休んでから俺たちも洞窟に潜ろう。

腹いっぱい食うと動きが鈍るからな、干し肉は食べ過ぎるなよ。」


ここで、肉を焼き出したら、さすがに駄目な気がしたので、久し振りに携行食を食べることにした。

旨みは少ないが、これは食べ慣れた味だ。

イーオンが変な目で見てきているが、無視しよう。


「フコルのチームは5人だったな。」

「そう。剣士のフコルがリーダーで、もう一人の剣士が弟のフーゴ。

後は、罠抜けのデニムと弓のシズーとミーシャだ。」

「そうか。地竜の住処まではどれぐらい掛かりそうだ。」

「途中の魔獣にも拠るけど、6時間は掛かるかな。」

「かなり深いのか。」

「深いし、遠いな。しばらく潜ると大洞窟にでる。これを辿って、地下を流れる川沿いに地底湖まで行くんだ。奴のねぐらはその先だ。」

「大洞窟か。」

「ああ、ここが厄介で、魔獣どもがうろうろしている。」



大洞窟。

洞窟の壁にはヒカリゴケがびっしりと張り付き、緑色の世界が広がっている。

地底湖と川の所為で、空気はしっとりとして、かなり涼しい。

高さは10m以上ありそうだ。

横幅は、岩が入り組んでいて、良く分からないが、中央部は5mぐらいの空間が奥まで通っているな。


冒険者たちは、ここに長居をせずに素早く通り抜けて、目的の素材採取場所に行くそうだ。

ぱっと検知したが、いも虫、蛇、蜘蛛、蝙蝠、ねずみ、といった魔獣が目に付く。

いずれも、体長は人間以上あるような奴らだが、単体なら、Bランクのイーオンでも相手はできる。

だが、1匹に構っていると、すぐに囲まれてしまうのが、この大洞窟に棲む連中の特性の一つだ。


「さて、足元は滑る、周囲に気を付けて行くぞ。岩で手を切らない様にしろよ。」

イーオンは洞窟の壁寄りの岩の間を通り抜けて行く。

俺たちもその後に従った。


(むー、ファルス。これでは時間が掛かり過ぎるぞ。)

(そうだな。)

(地下ですし、イーオン君に口止めすれば、良いですよね。)

(リサもそう思うのか。そうだな、俺も少し、もどかしかった。よし、飛ぶぞ。)

「うむ。それでこそ、ファルスじゃ。」

「な、なんだよ。いきなり大きな声をだして。」

イーオンが足を止めて振り返る。

「イーオン。俺たちは飛行の魔法が使える。なので、この大洞窟の中央を飛んで行く。」

「と、飛んで行く??」

「そうだ。すまないが、君の背嚢を降ろして貰えないか。」

「背嚢。どうすんだよ、これは俺の荷物だぜ。」

「君の背嚢は大きいからな。俺の背嚢にしまう。」

「えっ!?その背嚢って、もしかして、魔道具なのか?あの、どんなに大きな荷物でも入れられて、重くもならないっていう。」

「そうだ。」

「すげぇ。話には聞いていたが、本当にあるんだな。」


イーオンが降ろした背嚢を俺の背嚢に入れる。

「すげぇ。本当に入った。しかも、元の背嚢は膨れもしないなんて。」

「よし、ではイーオン。少し失礼するぞ。」

「あっ、待ってください。」

リサから待ったの声があがる。

「どうした?」

「えーと、ファルスさんは敵と相対した時には、剣を抜きますよね。」

「そうだな。」

「イーオンさんを抱えて飛ぶと、初動が遅れますよね。」

「そうだな。まず、イーオンを降ろさないといけないな。」

「それは、クリスも一緒ですよね。」

「そうじゃな。」

「そうなると、イーオンさんを抱えるのは、わたしかなぁ、と。」


そうだな。ここはリサに任せるか。

「では、リサに任せる。」

「はい。」

「えっ、俺と、リサさん、ですか。」

「ええと、すみません、イーオンさん。後ろから腕を廻して、ベルトを掴みますね。」

「ああ、分かった。」


俺たちは大洞窟の中央部を飛び、地底の川に合流し、地底湖のほとりまで辿り着いた。


次回119話「5匹の子竜」

地竜の巣、はたして生存者はいるのでしょうか。


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