表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
第四惑星  作者: ブルーベリージャム
最終章 イの国
118/142

116話 西の北村

「ふん、匂いに釣られて来おったな。ほれっ。」

クリスが陸亀の前に焼けた鶏肉を一切れ放り投げる。

陸亀は首を伸ばして、それを口に入れた。


身体の動きは遅いが、今の首の動きは素早いし、1mぐらい伸びたぞ!


陸亀は鶏肉をすぐに飲み込み、クリスを見た。

「ははは、美味いか。よし、もっと食べるが良い。リサ、どんどん焼いてくれ。」

「了解でーす。」

クリスが焼きあがっていた肉を次々と放り投げる。

陸亀は、パクパクと焼肉を食べ始めた。


「おい、クリス。こいつが霧の発生源のようだが。」

「そのようじゃな。しかし、こいつからは殺気が感じられん。食い気だけなら、満足すれば結界が解けるかもしれんぞ、ファルス。」

「だと良いが。」

「クリス~。鳥が無くなるけど、この子、オーク肉は食べるかなぁ。」

「む、では試してみよ、リサ。」

「はーい。オーク肉はたっぷりあるからね。太もも肉を捌いて、ちょっと強火で炙ろうかな。待っててよぉ、亀ちゃん。」

ガフッ


「お、こやつ返事をしおったぞ。」

「ふふふ、餌付け成功ですね。」

「餌付けって。おいおい、仲良くなってもこいつは連れて行けないぞ。」

グルルルル


威嚇された。

陸亀はオーク肉の焼き上がりをその場で大人しく待った。

オーク肉はお気に召した様で、8足分ものオークの太もも肉を次々と平らげた。


ガフガフ

ご馳走様、とでも言っているのか、陸亀は頭を上下に振ると、ゆっくりと身体を反転し、元の場所へ戻る様に動き始めた。


「ついて来い、って、言いましたね。あの子。」

「うむ、そう言った様な気がした。何じゃ、いつの間にか亀の言葉が分かる様になったな、リサ。」

「ははは、餌付けの成果ですかね。」

「俺には聞こえなかったぞ。」

「ファルスは、肉を与えておらんからな。さて、ここを片付けてあ奴の後を追うか。」

「了解。」



食事の後片付けをして、陸亀の後を追う。

道から池までは陸亀の通り道が出来ており、俺たちが後を追った時には、道の半分、6m付近まで進んでいた。

その後もゆっくりと進んだ陸亀は、池の水辺にまで来ると、水を飲み始めた。

ギクギクギク

ギクギクギク


のどを鳴らし、たっぷりと水を飲んだ陸亀は、首と脚を甲羅に引っ込め、寝始めた。


「寝た、な。」

「寝ましたね。」

「うむ。」


池は周囲300mぐらいの楕円形をしている。

所々に水草の群生が見られるが、静かな池だ。

池の周囲には水辺まで木々が迫っている。

俺たちがいるこの水辺だけが、草地の開けた場所になっている。


「ついて来い、って言ったんだな。」

「そうです。」

「そうじゃ。」

「では、この場所に何かあるのか。」

俺は周囲を見渡すが、目ぼしいものは見当たらない。もしかして、池の中か。


「周辺には、獣がいませんね。」

「鳥もおらん様じゃな。リサ、木剣を出すのじゃ。食後の運動じゃ。」

「ええ~。私にクリスの相手は務まらないよ~。」


リサは、そう言いつつも木剣を取り出し、クリスの相手をする。

相手の剣をいなしたり、剣先をかわして相手の横に回りこむ動きは見事だ。

まともに組むと、吹き飛ばされるからな。

俺と交代しつつ1時間ほど身体を動かした頃、陸亀の甲羅が発光しだした。



俺たちは練習を止めて、陸亀に注目する。

パキン

小気味良い音が響くと、光が収まる。


陸亀は再び、脚と首を甲羅から出す。

すると、甲羅を形成していた五角形の鱗が地面に滑り落ちた。

どうやら脱皮、いや、甲羅の鱗の生え変わり?をした様だ。


ガフガフ

と、声をあげた陸亀は、ゆっくりと池の中へと潜って行く。


「ありがとう、亀ちゃん。またねー。」

「元気でな。亀よ。」

「えーと、あの亀はなんて言ったんだ?」

「これやる、さよなら。って感じです。」

「感謝の気持ちと別れのあいさつだぞ、ファルス。」

「では、この鱗がお礼の品か。」


地面に落ちた鱗は五角形と六角形のものが大小合わせて24枚。

厚みがあり、硬さもあるが、軽いのが特徴だろう。

クリスの緋色の篭手は火吹き亀の甲羅で作られたという。

この陸亀の青緑色の甲羅も盾や鎧に使えそうだな。


鱗を回収し、街道の嵐たちの元へ戻ると、霧が晴れていた。


俺たちは北側の分岐点まで進み、結界が失われた事を確認した後、再び南方へ進んだ。



陽が落ち、暗くなる頃に小さな村を見つけた。

驚いた事に、建物のほとんどが宿屋、食堂、飲み屋だ。

人も多い。

彼らは冒険者だ。

そして、冒険者ギルドがあった。


俺たちは規模は小さいが、多くの人が行き交う村を見て、村の入口から広場へ入るのを躊躇った。

「すごいな。300人ぐらいいるんじゃないか。」

「あの看板は冒険者ギルドですね。冒険者がいるのも当然ですか。」

「どうするのじゃ、ファルス。あちらの森で野営しても良いぞ。」


「あら、お兄さん達、北の街からのお客さんかしら?どうしたの、そんな所で突っ立って。」

馬上にいた俺たちに女性の2人連れが声を掛けてきた。

二人とも白いエプロンを着けて、手には水桶を持っていた。

「お客さんなら、宿はそこの”女神の癒しの宿”にどうぞ。お風呂もありますよ~。」

「今日の夕食は岩トカゲの照り焼きに火吹き亀のスープです。旅の疲れも探索の疲れも吹き飛ぶ絶品ですよ。」


「ほぉ、美味いのか?」

「もちろんですよ。」

「うむ、美味い夕食に風呂付きか。ファルス、ここに泊まろう。」

「あー、馬の世話はできるのか?」

「もちろんです。馬の世話係りの者がちゃんといますから、餌やり水やりは当然、身体も拭いてあげますよ。長期逗留の場合は、昼の散歩はお願いしますけど。」

「分かった、では、案内してくれ。」

「ありがとうございます!」


宿の受付には2人の女性がいて、1人は先客の案内をしていた。

「では、こちらで受付お願いします。私たちはこれで失礼しますね。」

「いらっしゃいませ。女神の癒しの宿にようこそ。お客様の人数とお部屋の希望と宿泊日数をお知らせください。」

「3人だ。男1人に女2人、部屋は2部屋、日数は1日、それと馬が3頭いるので、そちらの世話も頼みたい。」

「畏まりました。お部屋ですが、当宿には、多人数の皆様がお休みになられます大部屋がございます。その他は4人部屋となっておりますが、いかがいたしましょうか。」

「では、4人部屋1部屋を頼む。」

ま、俺が野営すれば良いな。

「では、4人部屋一泊で銅貨20枚です。馬は1頭1泊銅貨4枚ですので、3頭で銅貨12枚。しめて銅貨32枚となります。」

「風呂が使えると聞いたが。」

「はい。1階の廊下を進んだ先に男性用と女性用のお風呂がございます。こちらは使用時に料金をいただいております。料金は銅貨4枚となっております。」

「わかった。」

俺は受付カウンターに銀貨4枚を置いた。


「ええと。すみませんお客様、当宿ではこちらのお金は使えません。イオタ国のお金はお持ちでないですか?」

「そうなのか。イオタ国?ここはイの国ではないのか?」

「いいえ、ここはイオタ国です。イオタ国西の北村がこの村の名前です。」

「そうか、イオタ国のお金だが、冒険者ギルドで素材の買い取りをしてもらえば、手に入るかな。」

「ええ、大丈夫ですよ。」

「そうか。では、素材交換に行ってくるが、その間、馬を預かってもらえないか。」

「いいですよ。では、この木札を馬係りに渡してください。」

「わかった。」


俺は宿を出て、外で馬と共に待っていたクリスとリサに事情を説明し、馬を預けて、冒険者ギルドに向かった。



冒険者ギルドの正面入口を通り過ぎて、横手の道を進むと素材買取所があった。

既に3台の荷車が並んで順番待ちをしているので、その後ろに続く。

「クリス、リサ、適当な素材はあるか?」

「うちは無いぞ。リサはどうじゃ。」

「熊と鹿が3頭いますね。あとは大量のオークの足ですよ。魔石は全部レギウス村に置いてきましたから、無しです。」

「冬は狩りをサボっていたからなぁ。」

「食事用の肉ならいくつかありますが、食べかけは売れませんからねぇ。」

「そうだ、あの亀の鱗はどうだ。」

「ああ、そうですね。」


「しかし、お金が使えないのは不便だな。」

「そうですね。このお金はベア族も使っていますから、大陸が違っても共通ですよ。これが使えないということは、」

「と、いう事は?」

「とても大変です。」

「なんじゃ、リサ。理由がわからないのか。」

「え~、じゃあ、クリスはわかるのかなぁ?」

「わからん。」

「だと思いました。」


通貨を手に入れるには、神の館で魔石と交換すれば良い。

神の館がないのか?

交換される通貨が、他所と違うのか?

どうやら、このイオタ国は、外の世界と社会のルールが少し違うらしいな。



「お、見ない顔だな。」

素材受付カウンターは50代と思われる男性だが、身体はがっしりしている。元冒険者か。

「そうだ。今日オの国から来たんだ。」

「オの国?外の国か。じゃあ、受付カウンターで申請手続きは済ませたかい?」

「何か手続きが必要なのか?」

「ああ、ここで活動するなら、ギルドに登録してもらわないとな。悪いが素材の引き取りはその後だ。」

「そうか。ありがとう。」


俺たちは冒険者ギルド正面入口に廻った。

これは、長くなりそうな予感がするな。


次回117話「冒険者ランク」

王都ミラルダではSランク判定でしたね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ