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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
最終章 イの国
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115話 霧の結界

翌日の昼前に、山脈の麓に辿り着いた。

まばらになった木々と岩が多い地を辿る道は、巨大なトンネルへと続いている。


「自然の洞窟には見えませんね。入口には装飾があって、壁も天井も綺麗ですよ。」

「ここを抜けるとイの国に出るのじゃな。ファルス。」

「そうだな。」


トンネルの奥は暗く、先の様子は分からない。

俺は背嚢から光の魔石を取り出した。


「あっ、待ってください。ファルスさん。」

「どうした、何か見つけたか?」

「そうですね、見つけました。ですので、光の魔石を仕舞ってください。暗闇の中に入って行きますよ。」

「そうなのか?」

「そうです。そして、おしゃべり禁止ですよ。いいですね。」

「了解。」


俺は光の魔石を仕舞い、リサと涼風が先行しトンネルの中に入って行く。

俺とクリスも続くが、トンネル内はすぐに陽の光が陰り、闇に包まれる。


馬の足音がトンネル内に響く。

音の反響の影響もあり、方向感覚が怪しくなってきた。


すると、トンネルの先に半円状の光のリングが現れた。

トンネルの壁面に沿った光の帯だ。

それが急速に接近する。

その光に包まれた次の瞬間。

トンネルの出口に、俺たちは居た。


その先には、出入国検査場と書かれた看板と小屋と男が二人。


リサは俺とクリスの顔を見ると、ウィンクして馬を進める。

俺とクリスは、そのままリサの後について、検査場に歩み寄って行く。



「ようこそ、いらっしゃいませ。」

「こちらに、お名前をご記入願います。冒険者の方は登録証をお出しください。」


小屋の前に置かれたテーブルの上に台帳が置かれている。

どうやら出入国管理帳のようだ。

レギウス館でも出入りする商人たちに記帳してもらっている。


名前を記入し、出身国の欄にはオの国、職業は冒険者、ランクはD、目的は冒険、滞在予定期間は1年、と。

俺は受付の男に冒険者登録証を見せ、彼は台帳の記入内容と登録証を確認した。


クリスとリサも記入し、俺たちは出入国検査場を離れ、道を進んだ。



クルックゥ、クルックゥ

クルックゥ、クックルゥルゥ


「あっ、ごめんなさい。おしゃべり禁止解除です。」

「遅い~。リサ、なんじゃ、あのトンネルは、転移の魔法陣なのか、あの光は?

ファルス、あの台帳を見たか。うちらの前に書かれた名前にジャミルとテレーザの名前があったぞ。」

「あはは、そうです。トンネルのあれは、魔法陣です。それも発動制約付きの特別製ですね。」

「発動制約?」

「はい。光と話し声が条件になっていました。この条件を知らない者はトンネルを抜けられないみたいですね。」

「なるほど。限られた者しか入国できないのだな。」

「それでじゃな。ジャミル達が入国した後は誰も入国しておらんのは。」

「冬だった事も理由だろうが、少ないな。」

「うん。うん?どうしたのじゃ、リサ。」


リサが馬を止めて立ち止まった。

辺りをきょろきょろと見廻し、空を見て、頭を落とし、馬を降りて、なにやらしている。

こちらを見た。

その表情は、泣きそうだ。

「大変です~。」

「どうした、リサ。」

俺とクリスも馬を降りた。

3頭は道を外れ、下草を食べ始めた。


「鳥の鳴き声は聞こえるのに検知ができません。メティスと連絡が取れません。ナノ通信が不通です。遠見の窓も開きません。」

「何?」

(ホーク、聞こえるか?)

応答が無い。

(リサ、聞こえるか?)

(はい、聞こえます。)

(これはカルーの城と同じ結界か。外部と内部を遮断しているな。)


俺は近くの枝に狙いを定めた。

「風切!」

一陣の風が枝を切り落とす。

「魔法も問題なく使えるな。」


「リサ、先ほどの検査場はどうじゃ。遠見の窓が開くのではないか?」

「あっ、そうか。やった!開きました。」

「では、なにか問題が起こった場合には、あの検査場には行けるな。ファルス。」

「ああ、そうだな。」


俺は左袖を開けて、情報パネルを確認した。

こちらも不通だ。

カルーの城では使えていたが、ここでは駄目らしい。

こちらが本物の結界で、カルーの城は模倣した結界なのか?

そうだ、ミリア中尉の偽装に対しては、カルーは仮面を使った偽装、認識障害をしていた。

そうすると、カルーの催眠術も、ミリア中尉が本物を扱うのか?


「ファルス、どうした?」

「ああ、いや、大丈夫だ。多少不便だが、問題ないだろう。」

「そうじゃな。」

「え~、大変ですよぉ。」

俺とクリスがリサが見る。

「情報パネルが不通という事はメティスがすぐに気付きますから、私達、消息不明扱いですよ。

ホークさんやレイチェルさんもナノ通信できなくて、きっと困ってませんか?」

「あ~。」

「どうする、ファルス。」

「いや、イの国に入ったことは知っている。あいつらを信用してるからな、問題ない。」

「そうじゃな。」

「そうですね。」


「あとは、検知か。」

「検知できないのではなく、範囲が狭まりました。周囲20mぐらいですね。」

「それは、狩りが不便になるのぉ。リサ。」



しばらく進むと街道の分岐点があった。

イの国の出入り口は国の北西部にある。

北には東西に走る山脈があり、西には南北に走る山脈がある。

東と南は海に面している、やや東西に広い長方形型の土地だ。


南に進むか、東に進むか。

どちらも道は細く、人通りは少ないようだ。


「さて、どちらに向うか。俺は南に行こうと思うが。」

「うむ、任せるぞ。ファルス。」

「はい。行きましょう。」



しばらく進むと、霧が出てきた。

気温が下がり、冷たい風が吹きつける。

「まいった。先が見えないな。」

「近くに池か沼があるのじゃろう。暖かくなれば晴れると聞いているぞ、ファルス。」

「そうなのか。」



1時間後、俺たちは休憩の為に立ち止まった。

霧に包まれたまま、街道を、まっすぐ北上してきた。

そう、途中で引き返してきたのだ。

だが、どこまで進んでも分岐点に辿り着かない。

「ファルス~。」

「まいったな。これも結界か?」

「遠見の窓も駄目ですぅ。出入国検査場も駄目ですぅ。」


俺たちは、霧の中、街道を南下していたが、10分ほどで違和感に気付いた。

道があまりにまっすぐで、起伏もカーブもない。

街に近い整備された街道ならそうだが、ここは山道だ。

均しはしていても、地面の起伏に沿ってうねっているものだ。

霧の所為で視界が悪いので、風魔法で吹き飛ばしたが、道が続いていることは分かったが、それ以上の情報がない。

それに、すぐに霧に包まれる。

空も駄目だ。

5mぐらい上昇した所で壁にぶつかる。

道を戻り、分岐点を目指したが、これだけ戻っても辿り着けないということは、道の途中で結界に入り込んだのだろう。


「池じゃ、池を探そう。ファルス。」

「池?この霧の発生源か。」

「そうじゃ、このうっとおしい霧が結界であろう。ならば、発生源の池を探せば解決するはずじゃ。」

「池は、東側にありますね。10mぐらい先です。」

「よし、肉を食べたら、池に行くぞ。ファルス。」



道の脇に陣取り、遅くなったが昼食だ。

大きな鶏肉を串刺しにして焚き火に掛ける。

焼き上がりに香草を巻いて、しばらく置くと、いい香りが立ち上る。

肉も表面の荒熱が内部まで行きわたり柔らかくなって食べ易い。


30分ほど食事をしていると、池の方向から何者かが接近してくる気配がした。

が、動きが遅い。

警戒しているのか。


(クリス、リサ、何かが接近してくる。)

(ですねー。)

(殺気は感じん。ほら、この串はもう食べても良いぞ。ファルス。)


クリスから串を受け取り、3本目を口にする。

そうか、検知に関しては、俺が一番未熟だったな。

検知だけか?

ああ、狩りに関してはこの二人に敵わないか。


バキキ、ミシ、メリリリ、ガサガサ

枝を折り、低木をなぎ倒し、下草を踏みながら接近してくる。

音に関しては無関心な奴だ。


10分後、姿を現したそいつは、巨大な陸亀だった。

青緑色の甲羅の下側から伸びる頭部には、4つの赤い瞳と巨大な口と無数の鋭い牙が並び、盛大によだれを垂らしている。

直径3m甲羅高2mはあるそいつは4本の太い脚を支えに、ゆっくりと近付いてくる。

そして、甲羅には多くの水滴が滴り、上部からもやを噴出している。

どうやら、こいつが霧の発生源のようだ。


次回116話「西の北村」

ファルス達は霧の結界を抜け出せるのでしょうか?


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