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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
最終章 イの国
116/142

114話 イの国へ

ミリア中尉の所在については不明だった。

そうだな、心の問題解決が専門の天使セリーヌには答えられない質問だった。

「問題が明らかになりました。その問題に向き合うことが、あなたの次の試練です。」

その通りだ、天使セリーヌ。

だが、そう単純じゃないから、面倒なんだよ。

「一方からの視点では困難な問題も、他方からでは容易な場合もあります。

これまでと違うアプローチ、他人の協力、更なる情報の収集と分析、手段は一つではありませんよ。」

なるほど、その通りだ。


俺が医療ポッドを出ると夕方を過ぎる頃だった。

起きたのが昼前だったので、当然か。


クリスに連絡し、リベッタ村の村長宅に行くことを伝えると、同行する、との返事だった。

クリスはレイチェルの家に居たそうだ。

外政官の館で落ち合い、連絡艇2号機に移動する。



西の森からリベッタ村に移動する。

今回は徒歩だ。

こちらは、日暮れ前の時間。

村の家から夕食の支度の香りが漂う。


村の中に入ると、「村長が戻った。あんたらを待っているぞ。」と声を掛けられた。

村長に知らせに行った者もいる。

雰囲気が悪いな。

村人たちからの視線を感じる。


(クリス、少し警戒しておいてくれ。)

(了解だ、ファルス。しっかり警戒しておくぞ。)


広場に入ると、反対側から4人の男女と槍と剣を持った数人の男達がやってきた。

広場周辺の村人たちはこちらに注目している。


「止まれ。貴様らが月の人とかいう連中だな。」

4人の男女の中の一人から声が掛かる。

「そうだ。」

「捕えよ!」

そいつの指示で周囲の武器を持った男達がこちらに迫る。


「風よ、吹き飛ばせ!」

クリスの一声で、俺とクリスを中心とした暴風が外側に向って吹き荒れる。

一瞬の事だが、男どもを3m程吹き飛ばすには十分だった。


4人の男女も吹き飛んでいる。

指示を出した男が地面から立ち上がろうとしている。


「俺たちを捕えることはできない。しかし、なぜ、捕えようとする?」

「ひ、人さらいが!何を言うか!」

なるほど。

「誤解があるようだ。我々は、昨年の内戦の際に、エの国に避難してきた村人達を我々のレギウス村に受け入れた。

先日、こちらの村を訪れた時に内戦を生き延びた村人が家族に会いたいというので、レギウス村に案内したのだ。

連れ去った訳では無い。」

「そ、それでは、村人たちは帰って来るのだな。」

「それは分からない。家族と共にレギウス村に住みたい者がいれば、我々は受け入れる。

もちろん、こちらに戻りたい者は、こちらに戻ってくるし、避難していた家族も共に戻るだろう。」

「それでは、戻ってくるか、こないのか、わからんではないか。」

それもそうだな。

「少し待ってくれ。確認する。」


(ホーク、聞こえるか。)

(はい、カン外政官。)

(今、ベレッタ村に来ている。レギウス村から元の村に戻りたいと希望している者は、何人ぐらいいそうだ。)

(村人代表との正式な確認は明日の午前中に行いますが、おそらくいないでしょう。)

(そうなのか。)

(はい。先日村に来た男達数人と話しましたが、村の復興は難しく、各地から寄せ集まった入植者達の間にも問題があるようです。)

(そうか、分かった。ありがとう。)


ホークとの通話を終え、俺は男に向き直った。

風に吹き飛ばされた周囲の男達も立ち上がり、こちらに槍先を向けているが、動く様子は無いようだ。


「待たせた。今のところ、こちらの村に戻ることを希望している者はいないようだ。」

「そ、それでは、やはり、人さらいではないか。」

「それについては、先程説明した通りだ。我々は、こちらに戻る家族がいた時の受け入れをお願いに来たのだが、それについては問題ないか?」

「戻ってくるなら、こちらは受け入れる。戻ってくるのか?」

「今の時点では、いない。」

「で、では、何をしに来たのだ。」

「村長と話をしたかったのだが、そうだな、もう話は済んだか。」

俺はクリスの顔を確認し、手で上を指し示すと、男に向き直った。

「話は以上だ。失礼する。」


俺とクリスは広場の上空に飛び上がり、連絡艇に戻った。



西の森。

連絡艇の外で焚き火の用意をし、オークの肉を焼いている。

イノ豚のような脂の乗った少し固めの肉だが、焼くと美味い。


「クリス、オの都はどうだ、忙しいのか?」

「うーん?王城の方は、貴族達が領地に戻るからパーティーは減ったな。」

「商売の方は?」

「そっちは、担当外。もっとも最近はリサも手を離してカーラが仕切っておるな。

スプリングクッションの貴族への引渡しも一区切りしたし、今後は商業ギルドを通じて都の人々への販売が始まるはずじゃ。」

「順調そうだな。」

「うん。王都ミラルダはどうなのじゃ。」

「こちらは静かなもんだ。商人は出入りしているが、この時期は準備期間だそうだ。

もうしばらくすれば、野菜や麦の動きが活発になるそうだ。

転送の間も完成したし、王都も問題なさそうだし、こちらも順調だな。」

「そういえば、レギウス村の麦の備蓄は十分であったとマクレガー村長が言っておったぞ。」

「ああ、レギウス湖の漁の準備もしていたし、レギウス村も動き出すな。」

「そうじゃな。」


パチパチ

焚き火の爆ぜる音が響く。


「ファルス、何か考えがあるのか?」

「ああ、ミリア中尉を探しに、イの国に行ってみようと考えている。」

「イの国?そこにミリア中尉がいると。」

「ああ。ジャミル、前にウの国王をやっていた奴の言葉だが、彼はイの国で勇者パーティーに所属していたそうだ。

勇者を名乗る者がいるなら、彼のそばにミリア中尉がいるような気がしてな。」

「そうか。いつ行くのじゃ。」

「すぐにでも行きたいところだが。」

「では、そうしよう。」

「クリス、いいのか?」

「もちろんじゃ。」

「ありがとう。」



その夜の間に連絡艇を南東へ飛ばし、ウの国王都スーザの南の街道沿いの森に隠した。

翌朝、レギウス村でいつもの冒険者風の服装と装備の準備を済ませ、嵐と早風、涼風を連れて街道に降り立った。

連絡艇はメティスに任せて、レギウス村へと帰還する。


「リサは、来ても大丈夫なのか?」

「大丈夫ですよ。何かあれば戻れますし、レギウス邸の業務はカーラさんとアンナちゃん、魔道具の作成はサイモン君とナンドゥールにお任せです。

イの国は別名、魔法国ですからね。興味ありますよ。」

「そうか。ミリア中尉には会いたくないだろうと思っていたんだがな。」

「あ~、できれば避けたい相手です、ね。」

「どうして、そんなに嫌がるのじゃ、リサ。」

「うーん、見ていただける事が出来れば早いのですけど、ミリア中尉からのメッセージ映像には細工がされています。

というか、ミリア中尉の存在が細工されています。

ですので、ファルスさんが見れば金髪碧眼の女性ですし、クリスが見れば白髪金瞳の女性なのよ。

で、私が見たのは、うー、思い出しただけで気持ち悪いけど、蠢くものだったのよ。真っ黒い虫の群体みたいな気持ち悪いもの。」


俺とクリスは顔を見合わせた。

そして、共に左腕の情報パネルに視線を落とす。

呼び出すのはミリア中尉からのメッセージ映像だ。

かつて、カルーの城の留守居役エルナンデスから受けとったもの。


「レギウス軍の皆さん、こんにちわ。」

椅子に腰掛け、笑顔で話をする女性。

金髪碧眼の綺麗な女性。

だが、俺はその表情を集中して見る。

リサは、細工されれていると言った。

ならば、細工されているのだ。


ジジッ

瞬間、彼女の殻が失われ、白髪金瞳の白い顔が見えた。

そして、周辺にまとわりつく黒いもや。


この感じは知っている。

戦闘艇パイロットとしての最後のミッション。

親友を、仲間を失った、あの時。

これは、敵駆逐艦が使っていた、偽装フィールドだ。


そう看破してみれば、白髪金瞳の女性の顔も失われ、そこには黒いもやが蠢く、人の顔を模した塊があった。



「むー、悔しいが、うちには其処までは見えなかったな。肌は白いままじゃ。」

「えっ、それって、目と口は黒いの?」

「そうじゃ。」

「そ、それも、気持ち悪いね。」

「俺は偽装フィールドの事を知っていたからな。それに気付けば、すぐだった。

リサの言うとおりだ。彼女は何者なんだろうな。」

「おそらくですが、ナノマシンの集合体です。」

「ナノマシンの集合体!?それでは、もう人間ではないのか。」

「生物的には、そうですね。」

「ま、1万2千年も生きているのじゃ。そうもなろう。

で、どうする、ファルス。行くのを止めるか?」

「いや、行く。たとえ、肉体がナノマシンの集合体だとしても、彼女がミリア中尉であるならば、会って確かめないといかんからな。」

「ふぅ、ジャンプゲートの事故、じゃな。」

「そうだ。」

「ファルスさん、まだ気にしてたんですかぁ!?」

「まだ、気にしておるのじゃ、この男は。」

「なっ!?2番艦の爆発の原因は、気にならないのか。」

「ん~、何かが爆発したんですよ。きっと。」

「そうじゃ。」

「お前ら・・・。」



街道を南の山脈を目指し進んで行く。

山地の麓を通り、森の境を進む。

俺たちの他に道を行く者はいない。


「あ、あの岩。」

リサが左手の奥、森の木々の中にある岩の塊を指差す。

普通より少し大きめの岩塊。

だが、今なら判る。

「偽装されているな。」

「うむ、後ろの木が透けて見えているし、下草を見れば、踏まれた跡があるぞ。ファルス。」

「魔法国の入口っぽくて良いですね。行きますか?」

「ああ、行くのは良いが・・・。」

俺は嵐の首を撫でた。

乗り手の俺たちは大丈夫だが、嵐たちにとっては岩に向かって進む事になる。

降りて行くか。


「ああ、そうですね。涼風は大丈夫ですから、私が先行しますね。」

「大丈夫なのか。」

「はい、お任せください。」


リサと涼風は街道をはずれ、岩塊へと進む。

その後を俺と嵐、クリスと早風が続く。


涼風は躊躇せずに岩塊へと埋まって行く。

嵐と早風も、それに続いた。


その先には、森の中を山脈へ向けて道が伸びている。



次回115話「霧の結界」

魔法国イの国はどんな所なんでしょう?


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