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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
最終章 イの国
115/142

113話 心の問題

最終章スタートです。

「ん・・・」

目が覚めたが、頭が重い。

窓から差し込む日差しが強く感じる。

クリスは、どうやら先に起きているようだ。


もう少し、寝よう。



「ファルスー。寝すぎだぞ!」

「おはよう、クリス。」

「おはよう、ファルス。ほら、コーヒーを持って来たぞ。これで目を覚ますがよい。」

「ああ、ありがとう。」


クリスから受け取ったコーヒーカップに口をつける。

いい香りだ。


「だいぶお疲れのようじゃな。」

「そうだな。まだ少し、頭が重く感じるな。」

「ふむ。医療ポッドに入った方が良いな。疲れが溜まっておったのじゃろう。」

「ふー、そうするか。」



カッシーニ81の医療センター内の医療ポッド。

主な用途は怪我の治療だが、疲労回復などの目的で利用することもある。

俺は使ったことがなかったが。


ボディスーツを脱ぎ、ポッド内に入り込み、シートに腰掛ける。


俺の意識はそこで、途切れた。



俺は密閉型コクピットに着座している。

全長16m、機体中央幅3m、最大翼幅18m。

三角翼型の単座式戦闘艇は小型重力子機関を積み、星域内を最大速度6SS(恒星系内運航速度)で飛行する。


--レッドワンより各機、会敵予想ポイントまで30秒。機体チェック。

--レッドツー、オールグリーン。

--レッドスリー、オールグリーン。

俺は腕の接続ケーブルを操作パネルに挿し込む。

接続ケーブルを通じて機体情報が体内ナノマシンに流れる。

思考が加速する独特の感覚。

「レッドフォー、オールグリーン。」


戦闘準備を終え、レーダースクリーンを見つめる。

赤い三角のマーキングが灯る。敵は2機だ。


--各機、追尾ミサイル用意。2秒差で発射する。・・・レッドワン、発射。

--レッドツー、発射。

--レッドスリー、発射。

俺の割り当ては右の敵機だ。

トリガーに指を添える。

「レッドフォー、発射。」

左翼下の追尾ミサイル一発が敵機に向けて飛んで行く。

こいつは6SSで飛行し、30秒間相手を狙い続ける。

その30秒の間に、こちらは距離を詰めて相手の後ろを取る。


いつもの、敵の偵察機を追い払う任務だ。


26秒後。

敵機はランダム回避行動をとりつつ、小惑星に接近していた。

普通の浮遊小惑星、岩石の塊だ。

そこから、2条の光線が放たれる。

--追尾ミサイル、消失。

--なに?

さらに光線が放たれた。

--追尾ミサイル、全滅しました。

--敵機ではないな。どこだ。

レッドワンは光線を感知していないのか?

「レッドフォーより、光線射出ポイントは浮遊小惑星。注意されたし。」


偵察機2機が反転して、こちらの右翼に回り込もうとしている。

このままだと浮遊小惑星と挟み撃ちだ。

こちらには数の利がある。

だが、この小惑星はなんだ?


--レッドスリー、レッドフォー、小惑星を破壊しろ。レッドツーは俺のサポートだ。偵察機を叩く。

--了解。

「了解。」


--レッドスリーよりレッドフォー、岩石破壊弾を打ち込む。周辺警戒頼む。

「レッドフォー、了解。」

機体周辺には小惑星からの光線が飛び交い、機体シールドに触れた光がちらつく。

戦闘艇は2SSの速度でランダム回避飛行をしつつ小惑星に接近している。

レッドスリーが打ち込む岩石破壊弾は、その名の通りの効果を持つ。

相手が浮遊小惑星なら一撃で粉砕する。

敵が小惑星上に設置されたレーザー発射装置なら、これで無効化できるだろう。


だが、これは本当に浮遊小惑星か?

だとしても、敵はどうしてこんなところにレーザー発射装置を設置するのか?

なんのために?


俺はカメラ映像の小惑星に気を取られた。

レーダースクリーンから視線を外した。

周辺警戒を怠った。


--岩石破壊弾、発射。離脱する。

「了解。」


レッドスリーと俺の機体は小惑星からの離脱コースに移る。

俺の意識はまだ、小惑星に向いていた。

岩石破壊弾が小惑星に命中する直前に、電磁シールドによって破壊された。

しかし、その衝撃波は敵の偽装効果を遮断した。

小惑星の殻の下には、敵の駆逐艦が潜んでいた。


1秒後には、小惑星の姿を取り戻す。


これは、敵の新型だ。


ビィーーー

アラームが鳴る。

反射的に、ランダム回避行動をとる。

敵に捕捉された!?

レッドスリーは?

クリスはどこだ。

レーダースクリーンに反応が無い。

追尾ミサイル2発が接近中。

敵機の反応は2機。

レッドワンとレッドツーの反応も無い。


全滅、したのか。

なぜ。


敵機の軌道予測は、俺を小惑星側に追い込む様に回り込んでいる。

つまり、駆逐艦の射程内だ。


俺の脳内は加速された思考の中で、さらに加速した。


重力子機関の制御パネルを開き、出力値を80%から最大値の140%まで上げる。

ランダム回避行動を停止し、フル加速を命じる。

直線軌道に移った戦闘艇は追尾ミサイルの良い的だ。

だが、この加速なら、逃げ切れる。


基地に辿り着いた俺は、敵の新型偽装データを届けたことで勲章を貰った。

だが、大切な仲間を失った。

親友だったクリスを失った。


中尉となった俺は戦闘艇を降り、大型船航宙士となった。



俺は白い空間に浮かんでいる。

俺の周囲は淡い光で満ちている。

暖かく、気持ちが休まる。


これが、天使セリーヌの癒しか。


かつて、マクレガー艦長の壊れかけた心を癒したのが天使セリーヌだ。

どうやら、俺も招待されたらしい。


「こんにちわ。ファルス=カン。」

「こんにちわ。天使セリーヌ。」

俺の正面に柔らかい笑顔の女性が現れた。

彼女の背中には白い羽がついている。

白い布の服をまとった、金髪の女性。

ああ、これは天使だな。


彼女は笑顔を向けてくる。

良い笑顔だ。

どことなく、クリスに似ているか。

飛竜の肉にかじりついて、美味い、という時の彼女の笑顔。

前回の旅は冬の始まりの時期で、ベア族の街道に沿っての行程だったので、大きな獲物を狩ることはなかった。

今年の夏も旅に出掛けよう。

そうだ、コピィの実について調査しなければ。


ふと気付くと天使セリーヌは笑顔を向けていた。先ほどと同じように。

「すまない、天使セリーヌ。考え込んでいた。」

「いいえ、ファルス=カン、大丈夫ですよ。

私は問い掛けられた問題に対してお答えや、解決に至るであろう方策をお教えいたします。

ですので、何か問題があれば、相談してくださいね。」

「問題か。」

「ええ、心の問題、疑問、心配ごと、気懸かりなこと、大きな問題、小さな問題、貴方の心の平穏を乱す、小さな棘。」


天使セリーヌの声が俺の心に届くと、ふつふつと色々な事柄が湧き上がってくる。


レギウス村のこと。

リベッタ村の村長との話し合い。

岩の下のオークの言葉。

準備中のゴブリン共。

その影響範囲は。

この大陸のオーク共もそうなのか。

勇者のこと。

勇者の称号。

誰が勇者だ。

誰が知っている。

カルー。

カルーの死。

俺に責任がある。


俺に責任がある。

また、仲間を失う。

俺に責任がある。

恒星系外縁部、ジャンプゲート。

あの時、最大加速での退避行動をとった。

その結果が、これだ。

あの行動は正しかったのか?

他に選択肢があったのではないのか?

マニュアル通りに星域内に退避していたら、俺たちは無事に退避できていたのではないのか?


「いいえ、あなたの選択は正しかったですよ。ファルス=カン。」

「えっ。」

突然、天使セリーヌの声が割り込んできた。

「ごめんなさい。驚かせてしまったわね。あなたの疑問の声が聞こえましたので、お答えさせていただきました。

ファルス=カン。あなたの選択は正しかったのですよ。」

「そうか。」

「はい。あの時、カッシーニ81は星域内に向けて回頭中でした。

重力子機関の出力を変更せずに留まっていれば、28秒後に重力波に巻き込まれていたでしょう。」

「だが、逃げても捉まってしまった。」

「そうですね。ですが、全員無事でした。」

「だが、1万2千年もの時間が経過している。」

「そうですね。それは仕方のないことです。誰にも想像できないことです。あなたに責任はありません。」

「だが、俺たちはもう、宇宙へは戻れない。カッシーニ81は、もう飛べない。」

「そうですね。残念ですが、仕方ありません。あの時点でカッシーニ81は惑星地表への墜落を避けることができませんでした。

仮に全ての乗員が脱出したとしても、月面基地の現環境では皆さんの生存確率は低いものでした。

また、あの時点での墜落を避け、衛星軌道上に留まることができたとしても、いずれ地表に降りることになったでしょう。

ですので、カッシーニ81を見事に直陸させたことは、誇ってよろしいですよ。ファルス=カン。」

「そうなのか。」

「はい。」

「そうか。」


彼女に肯定されることで、俺は自分の選択が間違っていなかったと確信できた。

これが天使セリーヌの力か。


「ありがとう、天使セリーヌ。少し心が軽くなったよ。」

「それは良かったです。ですが、他にも問題がありそうですね。」

「そうだな。」

過去の問題は、一区切りついた。

次は現在の問題だ。


「天使セリーヌ。ミリア=エッシェンバッハ中尉はどこに居る。」


■■■


天使セリーヌはファルス=カンの問いに答える事が出来なかった。

メティスのデータバンクには、所在不明、生死不明、と記載されていたので、それを伝えた。

それは、ファルス=カンの望んだ答えではなかった。


ファルス=カンが去った後、天使セリーヌはミリア=エッシェンバッハ中尉の資料を再確認した。

そして、困惑した。

なぜ、再確認が必要なのだろう。

だが、必要なのだ。


資料の内容はレギウス軍の軍歴資料。

問題ない。

惑星開発部隊としての活動記録。

問題ない。

彼女の発行したナノマシンへの命令コマンド。

そのほとんどは参照不可のセキュリティが掛かっている。

これも問題ない。

なぜなら、彼女は中級管理者なのだから。


彼女の資料は以上だ。

だが、天使セリーヌは困惑した。

これらの資料は彼女が求める資料ではない。

天使セリーヌが求める資料。


ミリア=エッシェンバッハ。

その名は、行方不明の転生者。

それを裏付ける資料、情報、事実、本人確認が欲しい。


天使セリーヌは困惑した。

この要求は、どこから?


次回114話「イの国へ」

ミリア中尉を探しに行きます。

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