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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第五章 ウの国
114/142

112話 まだ準備中だ

第5章最終話です。

俺はクリス、サイモンと共に大広間出入口を塞いでいる土壁前にいるリサに合流した。

だが、その土壁の向こうには行進を止めて戻ってきたオーク共がひしめいていた。

「外のオーク共も放置してはおけん。中はアレク達に任せて、外の連中を叩く。

サイモン、アーマーブレイカーは残っているか。」

「はい、3発あります。」

「では、土壁を解除して手前の奴らを下げよう。その後にサイモンにアーマーブレイカーを射出してもらう。」

「お、それならば、うちの腕輪が役に立ちそうじゃな。」

「じゃあ、サイモン、これも続けてばらまいてね。」

「リサさん、これは。了解です。」

「では。」

クリスが土壁に向けて、左腕の腕輪を構える。


「我が紅き腕輪よ、炎の壁を生成せよ!ファイヤーウォール!そして!」

クリスは次に右手を突き出した。

「風よ吹け!炎をはらみ、全てを焼き尽くせ!ファイヤーストーム!」

土壁の向こうからオーク共の悲鳴と、肉の焼ける匂いと、熱が伝わってくる。


「派手ですねぇ。」

リサが土壁の一部を解除し、幅1mほどの通路を作る。

その先の地面には、黒こげのオーク共が折り重なっている。

炎の壁は風によって前方へ進んでいく。


「アーマーブレイカー射出!」

バシュ、バシュ、バシュ

サイモンが、左方、中央、右方へ順に射出してゆく。

「次はこれです。」

バシュ、バシュ、バシュ、バシュ、バシュ

「リサ、あれは何の魔道具なんだ。」

「土の巨人、ゴーレムです。工作機のようなものですよ。」

「ほう。」


「クリスティン=サワーが命ずる! 炎よ熾れ! 風よ吹け! 炎を纏いし暴風となりて全てを焼き尽くせ! ファイヤーストーム!」

「クリスはすっかり炎使いですね。」

「ふふふ、赤色は良い、気分が高揚するしな。ファルスは電撃使いだな。」

「まぁ、得意ではある。土壁!」

炎壁が前方に進んだ分、前方に土壁を作成する。


「アーマーブレイカー発動します。」

「あ、ゴーレムも起動しますよ。見えなくなりましたけど。」

リサが右手を振ると、飛来した幾本もの矢が軌道を変えて落ちて行く。

「ファルスは安全第一だからな。それよりオーク共がまた寄ってきたぞ、ファルス。」

「土魔法!」

俺は土壁の向こう側、オーク共の足元に幅2m深さ3mの堀を作る。これで、直接攻撃は届かないだろう。

いや、オーク共の事だ、穴に落ちた味方を踏んで、土壁を登ってくるか。あり得るな。


「うーん、飛んでくる矢が多いですね。空気の流れを変えて、向かい風を起こしますね。」

「リサさん、ゴーレムは無事に起動しています。オーク共を叩き潰してますよ。」

「炎が治まったら少し突撃するか。ファルス、カバーを。」


俺は背嚢からバッテリを取り出す。

バッテリは残り8個。

「ファルス=カンが命ずる。我が敵勢力に雷撃の嵐を!サンダーボルトー!」

8個のバッテリから光が伸び、天井近くに光の球体を生成する。

次の瞬間!

光の球体から無数の光が溢れ、岩の下の空洞を埋め尽くす。

バッシィィィィィ

バリバリバリバリ

目の前に白い光が溢れ、激しい雷鳴が轟く!

やり過ぎたか。

空気の灼ける独特な匂いが周囲に漂った。


(ファルスか!?やり過ぎだぞ!)

(すまんアレク。全員無事か。)

(こっちは無事だ。ブライアン?)

(こちらも無事です。)


「ファルス~。」

「今のは凄かったですねぇ。ファルスさんの魔法も相当な威力ですね。」

「すまん。俺もこれほどの威力になるとは、予想外だった。オーク共の様子はどうだ。」

「まだまだ反応はあるようじゃが、息がある、だけかな?」

周囲は静まり、オーク共の勇ましい吼え声も、威嚇するような叫び声も聞こえない。

静かな空間に、複数のうめき声が漂う。

「ナノマシン濃度が低いと思ったのだが、加減を間違えたな。」

「あっ、しまった。」

「ん、どうしたのじゃ、リサ。」

「いやぁ、さっきこの出入口を塞いだ時に、ナノマシンが少ないなぁ、と思って、」

「思って?」

「天井の穴を広げて、周辺のナノマシンに集合命令を飛ばしました。」

「そうか、そんな事もできるようになっていたのじゃな。リサ。」

「てへへ。」


土壁を解除すれば、広い洞窟にオークやゴブリンが積み重なるように倒れている。

魔道具によって生成された5体のゴーレムが、その大きな拳でまだ息のあるオークとゴブリンを叩き潰している。

土製ゴーレムの姿は工作機のようでもある。

足は太く短く、胴体も寸胴だ。その胴体には魔法陣が描かれている。

頭は小さな塊がちょこんと乗っているだけで、ここは工作機と違うところだ。

特徴的な長い腕は、その先の胴体ほどもある大きな拳を振り上げ、振り下ろし、オークの身体を潰していく。

数少ない生き残りは、逃走を試みるように周囲の穴に向かって逃げていく。


だが、周辺に漂う血の匂い。肉の焼ける匂い。

それらに引き寄せられた地底に棲む者ども。

いも虫の集団、大きな顎を持つ多足虫、蜘蛛、蛇、トカゲ、などが襲い掛かってくる。

いずれも巨体であり、1対1では相手をしたくない連中だ。

そいつらがオーク共に襲い掛かり、倒れた連中を飲み込んでいく。


俺は捕えていたリーダーの所へ向かった。



両手足と口をロープで縛り上げたリーダーは穴の中に座り込んでいた。

幸いな事に雷撃の対象にはならなかったようだ。

「ウグゥ」

俺とクリスの姿を見て唸るが、それだけだ。

俺は背中のロープを掴み、穴から持ち上げ、そのまま空中へと飛び上がる。

リーダーに今の状況を見せてやるのだ。


大広間の地面は土壁によって区切られ、まるで穴だらけの様相だ。

その穴の中には、オークの死体、ゴブリンの死体、数匹の生き残りの連中、蜘蛛の糸で巻かれて白い繭になっている者、今まさに岩トカゲに食べられている者。

壁面の境目から広間の外にでれば、広大な地面に数千のオークの死体が積み重なっている。


一回りして、通路に戻ってきた。


俺はリーダーの猿轡を外した。

「ナ、ナニモノダ。キサマラ。」

「ファルス=カン。月の人だ。」

「ツ、ツキノヒト。デハ、ヤミノカミ カルー ノ シモベ・・・」

「貴様に名はあるのか。」

「オレ ハ ヒガシノオウ ゴギングバラ。」

「なぜ、地上に出ようとした。」

「グ、ニンゲン ドモ ヲ タオス タメ。」

「月の神カルーの声を聞いたな。何と言っていた。」

「グ、ウゥゥ。ユウシャ ガ アラワレタ、ヒト ヲ カル トキ セマリ、ジュンビ セヨ。」

「そう、準備せよ、だ。まだ地上に出てはならん。」

「デモ、ジュンビ デキタ。ヒッ!」

オレは抜刀し、剣先をゴギングバラの眼前に突きつける。


「準備せよ、だ。地上に出てはならん。いいな。」

「グ・・・。」

スパッ

クリスの剣がゴギングバラの右腕を刎ねる。

「グゥオオゥゥ、ワカッタ。チジョウ ニハ デナイ。」


「東の王、ゴギングバラ。他に西の王でもいるのか?」

「イ、イル。」

「どこにいる。」

「グゥ、ニシノ ヤマノシタ ダ。」

「この洞窟とは繋がっているのか。」

「イヤ ツナガッテ ナイ。」

「そうか。」


これ以上聞くこともないな。

俺は突きつけた剣に意識を向けた、ところで、思い止まる。

こいつにはメッセンジャーとしての役割がある。

殺しては駄目だ。


俺はクリスに合図し、ゴギングバラを残し、アレクと合流した。



「終わったか。」

「ああ、話は終わった。状況は?」

「リサさんとサイモンが魔道具の回収をしている。他はオークの魔石の回収をしているが、ゴブリンは放置だ。

それと、オークの軍団が向った広い通路の先には偵察機2機を飛ばした。これで出口がわかるだろう。」

「分かった。戻れるなら上に戻ろう。」

「魔石の回収はいいのか。」

「100個もあれば、十分だ。ここは空気が悪い。」

「了解。」


俺たちは魔道具を回収し、リサが広げた天井の穴を抜けて地上に戻った。



地下への階段前の森の空地。

俺たちはそこに降り立った。


「皆、ありがとう。リサの班とブライアンの班はカッシーニ81に戻ってくれ。アレク達3人には、もうしばらく付き合って欲しいが、良いか?」

「大丈夫だ。」

「はい、では、戻りますよー。」

リサが遠見の窓を開けて、皆がカッシーニ81へ戻って行く。


「アレク達には後片付けを手伝って欲しい。」

「もちろんだ。出入り口は潰しておくべきだからな。」


地下への階段はアレクとマルビンが潜り、岩塊破砕装置を使って塞いだ。


30分ほどすると、通信機からの応答がベンソンに届いた。

洞穴の出口は東側に5000m程の距離にある。


そちらに向かい、森に隠れた洞穴の天井を破壊し、これも塞いでおく。

この森を抜けた先にはノビス川があり、ブラウン村があった。


これで、雪解けが始まればブラウン村とベルナル村に村人が戻れる。



後片付けを終えて、俺たちは連絡艇2号機の転送門を経由してレギウス村に戻ってきた。

こちらは既に夕食の時間を過ぎている。

俺たちはカッシーニ81の食堂で夕食を摂ることにした。


「それで、明日からはどうするんだ。」

「レギウス村からあちらへの転居希望者の申し込みは2日後だ。それまでにリベッタ村の村長なりに会って話をしないとな。」

「では、明日以降はあちらで村長の帰りを待つのか。」

「そうなるな。いや、昼と夕方に転送門経由で確認に行く。向こうに張り付く必要はないだろう。」

「では、レギウス村で過ごすのか、ファルス。」

「そうだな。いや、」

オークは勇者の話を聞いて準備をしていたと言う。

闇の神カルーのお告げだ。

それを聞いたのは、あのオークだけではない。

おそらく、オークの西の王も聞いているだろう。

他にもいるはずだ。

第四大陸のオークは皆、聞いているのか?

オーク以外はどうだ。ゴブリンやオーガも聞いているのか?

他の大陸はどうだ。

この第三大陸のオーク共は聞いているのか。

そもそも、このお告げがあったのは何時だったのか。

くそ、オーク相手の尋問は冷静さを欠いていた。

聞くべき情報はまだあったか。

出入り口を塞いだのは早かったか。

いや、大丈夫だ。天井穴は開いている。


「ファルス。考え込んでおるな。」

「あ、ああ。悪い。」

「食事が冷めるぞ。」

「俺たちは、そろそろ休むよ。じゃあな、二人とも。」

「お疲れ様でした。」

「失礼します。」

「ああ、お疲れ。」

「どれ、コーヒーを持ってくるか。それとも、果実酒にするか。」

「いや、今日は疲れたようだ。これを食べて俺も休むよ。」

「そうか。」


カッシーニ81を出て外政官の館へ向う。

夜の風はまだ冷える。

「なぁ、クリス。」

「なんじゃ。」

「俺たちも家を持つか。」

「・・・うん。」

「じゃあ、色々と準備しないとな。」

「そうじゃな。・・・何を準備するんじゃ?」

「あ~、コーヒー、かな。」

「船から持ち出すのか。あっ、煙吹き山のコピィの実じゃな。」

「・・・そうだ。」

「そうか。あそこには温泉もあったな。うん、いつでも付き合うから、行く時は誘ってくれ。ファルス。」

「もちろんだ、クリス。」


次回113話「心の問題」

最終章スタートです。


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