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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第五章 ウの国
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106話 魔道具の試射

村の現地視察は中断し、視察のための代表者8名は生還者達とレギウス村に転移した。

まぁ、村の状況は生還者の彼らから聞けるだろう。


他所からこの村に流れてきた者達は、俺たちの動きを遠巻きに見ているだけだ。

レオンの話では、数日前から村長達が領主の代行者と名乗る者に呼び出されて、領主の村に出掛けているそうだ。

呼び出しの理由は今後の領地の運営に関わる話し合い、だそうだ。


これは、フルヒム=ビクター執政官の政策によるものだろうか。


ホークも生還者達を受け入れるためにレギウス村に転移している。

俺とクリスは連絡艇に乗り、リベッタ村を後にした。



連絡艇は上空100mで滞空している。

「いるいる、100匹以上は反応があるぞ。ファルス。」

「多いな。オークの集落なのか。」

カメラ映像で地上を確認しているが、集落のような雑多な感じとは異なる様子だ。

雪が多く残っているが、建物らしき物が見当たらない。

山際の森の中。

洞穴周辺は開けた空き地になっている。

樹を伐採したようだ。


「ここに見えるのが洞窟への入口であろう。奴らは洞窟内で生活しておるのではないか。ファルス。」

「そうだな。冬の間は洞窟内に篭って過ごしていたのが、暖かくなって外に出てきたようだな。」

「おっ、こちらに気付いたようじゃぞ。」

クリスの見ているスクリーンには、数匹のオークがこちら、上空を指差している様子が写っている。

あまり長居しない方が良いか。

そいつらに数匹が合流した。

「弓か。」

弓矢を上空に向けて放つが、さすがにこちらまでは届かない。


「さすがに好戦的というか。」

「装備も揃っておるようじゃぞ。ほら、盾を持った連中も出てきたぞ。」


洞穴からは盾、剣、弓、槍などを持った集団が這い出てきた。

先に外に出ていた連中とは違う。

この連中は統率されている。


「まるで、子供と大人だな。」

「間違ってはいないかも。それに、一体何匹出てくるのじゃ。」


装備を持った連中は10匹10列の集団を形成し、それが3つになった。

300匹だ。

周囲に散開していたオーク達は洞穴に戻ったらしい。

集団の最後に5人のオークが出てきた。

集団の前に立つ。

こいつらも同様の装備をしているが、赤いマント風の布を身に纏っている。

中央の一匹がリーダーだろう。

手に持った剣を振りかざし、何やら煽動しているようだ。


「クリス、これだけの集団が出てきた洞窟は、どれだけ広いと思う。」

「冒険しがいがありそうじゃな。しかし、これほどの練度の連中、一体どこから来たのじゃ。

ベルナル村はすぐ其処。昨年まではオークの姿なぞなかったと言っておったのに。」


俺はザーリ領の西の鉱山跡を思い出していた。

あそこも多くのゴブリンの住処となっていた。

レギウス村の北のゴブリン共も穴を掘っていた。

もしかすると、ゴブリンやオークは山中に穴を掘り、その中に多く潜んでいるのか。

そうだとすれば、現在の検知魔法では、その存在の確認は難しい。

地下の存在の検知はほぼ出来ないからだ。


「お、どうやら動き出すようじゃぞ。」

下の連中は10匹づつのグループに別れ、洞穴周辺を広範囲に広がっていく。

これは、周辺探索だ。

東方にはベルナル村跡地、その先にはブラウン村跡地。

南東の森の先にはリベッタ村がある。


「リベッタ村に戻る。」



オークの洞穴とリベッタ村は直線距離で4000mしか離れていない。

奴らの探索範囲がどの程度か分からないが、リベッタ村の人たちにはオクターヌ村に避難してもらったほうが良いだろう。


俺とクリスはリベッタ村に戻り、出会った村人に避難を指示した。

リベッタ村を壊滅させたオーク共が300匹も来る。

村人たちはパニックになる寸前の状態で、急ぎ、荷物を纏めてオクターヌ村へ移動していく。


その間に、こちらは撃退準備だ。

今、レギウス村は生還者の受け入れで大忙しだ。

ただ、俺たち月の人だけではなく、村人も手伝ってくれているので、アレク達生産部員の手は空きそうだ。

俺はアレクに連絡した。

(アレク、聞こえるか。)

(ファルス。いきなり男達がやってきて驚いたぞ。)

(俺もだ。だが、そっちはマーカス村長代理とホークたちに任せよう。こっちを手伝わないか。)

(まだ何かあるのか。)

(武装したオークが300匹。)

(すぐ行く。待ってろ。)

(連絡艇2号機だ。)

(了解。)


連絡艇には転送門が備えられている。備えておいて良かった。


しかし、今の生産部員は半減している。

春訪祭。

結婚の儀の後、マクレガー村長とリンダは連絡艇で10日間の予定で旅に出ている。

ホーキンス生産部管理官とレイチェルは村に居るが、村内の新居での生活に慣れるためといって休暇中。

そして、10名の外出組。

バベル、ルーク、トニーの男3人とロッテ、シャーリー、ステフ、ダニエルの4人組はオの国へ。

メラニー、キキ、レベッカの3人はカッツェ族のいる第五大陸へと渡った。

一年間の冒険者生活をスタートさせたばかりだ。


なので居残り組は。

リサと魔道具作りを主導しているサイモン。

魔道具作りを主任務としているジェリー、サラ、ノエル。

スプリングコイルや馬車製作のブライアン、マルクス、パトリック、ラザロス。

その他の雑多を引き受けるアレク、マルビン、ベンソン。


リサ達魔道具製作班はオの都のレギウス邸と王都ミラルダのレギウスの館に転送の間を作成中だ。

幌馬車一台が入れるだけの建屋の建築を地元職人に依頼し、監督している。

ブライアン達は村の職人達に技術指導しつつ馬車用のスプリング製作に取り組んでいる。

暇なのはアレク達3人だな。



30分後、村人の避難が終わる頃に、連絡艇にアレク達が現れた。

アレク、マルビン、ベンソンの3人は予想通りだが、ノエルが付いてきている。

「おっ、ノエルも来てくれたのか。」

「はっ。」

「こいつ、サイモンからいろいろお願いされてきたんだ。その申し渡し待ちで遅くなってしまった。」

「アレク班長、協力お願いしますよ。とても一人でこなせません。」

「何を頼まれたのじゃ。」

「これです。」

ノエルが連絡艇の床に背嚢から取り出した魔道具を並べる。

腕輪と長さ50cmほどの杖だ。

「これは魔道具か。」

「そうです。ファルス外政官。これの実戦での使用レポートを頼まれました。」

「ほう、面白そうではないか。この腕輪は何じゃ。」

「それは氷魔法の腕輪です。氷矢と氷壁の攻防それぞれの魔法が使えます。

腕輪は火、土、風もあります。それぞれ矢と壁が使えます。

杖は火弾、氷矢、風切、石弾、雷撃となっています。

腕輪も杖もこのように前方に向けて、それぞれの魔法を唱えることで発動します。」

「ふむ。ではちょっと外で試してみよう。」


「あっ、クリス外政官は、その紅い腕輪を外していただかないと。」

「ん、これか。なぜじゃ。」

「その腕輪にも魔法陣が描かれてますから、発動しちゃいますよ。」

「なに! そうなのか。」

「ええ、ナンドゥールの作成レポートがありました。

クリス外政官が身に付ける腕輪ということで魔石が省略されていますが、これらの腕輪の元となったものです。」

「ブライアンめ、そんな細工を。聞いておらんぞ。」

「じゃあ、クリス。一緒に試すか。」

「そうしよう。」


オーク共はまだ3000m圏内には侵入していない。

昼食と魔道具の試射の時間はあるな。

俺たちは村の空き地から森に向かって、それぞれの腕輪と杖の試射を行った。

最初は失敗して、腕輪ではなく、自分の魔法が出てしまった。

しっかりと腕輪に意識を向け、腕輪の魔法を発動するように唱える。


「火弾!」

ボッ!シューーーー


直径2cm程の火弾1発が正面に向けて飛んでいく。

速度はかなり速い。


「火弾、10連射!」

ボッシューボッシューボッシューボッシューボッシューボッシューボッシューボッシューボッシューボッシューーーー


「火の壁!」

ボゥワァァ


5m程前に幅2m高さ1m程の火壁が現れる。持続時間は3秒だ。


「火弾は良いが、火壁は使い所が難しくないか。」

「村人向けの販売予定ですからね。用途はイノ豚の突進避けとか、虫の駆除、雑草駆除などの要望に応えた物です。」

「なるほど、戦闘用ではないのか。では、水の腕輪とペアで売ったほうが良いな。」

「同意です。」

俺とノエルの視線の先では、クリスの腕輪から放たれた巨大な火弾が森の樹に命中して燃え上がり、その消火作業にあたっているマルビンとベンソンの姿があった。


「火の壁の試しは、止めておくのが良いようじゃな。」

「そうだな。加減はできないのか。」

「むー。じゃったら自分で撃った方が良い。」

「それもそうか。なぁノエル。俺たちは試験官としては不適格じゃないのか?」

「そう、かも、ですね。」

「そうか、近衛の連中にやらせるのはどうじゃろ。サイモンに言って、アビー姫経由で、いや、フニオル王子に売り込むか。」

「よし、それはクリスに任せた。」

「今日の試験はどうしましょう。」

「実戦での使用感だからな。アレク達は、自分が不得手の魔法があれば、腕輪と杖を使ってみるのはどうだ。」

「そうだな。しかし、戦闘に使うなら腕輪は使いづらいな。」

「左腕に付けて、こう、盾を構えるイメージで。」

ノエルが剣を抜き、左腕を正面に構える。


「発動の意識付けが普段と違うからな、使いにくいんだ。

その格好で魔法が不発だと、左腕を持っていかれるぞ。」

「そうですね。」

「杖ならば、相手に向けることで意識が向け易いからな、俺は雷撃の杖を試そう。」

「私は氷矢の杖を。」

「私は石弾の杖にします。」

「お、消火は終わったか。すまんな、ありがとう。」


次回107話「オーク肉」

オークとの戦闘開始。倒した獲物は、食べてみる?


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