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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第五章 ウの国
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105話 山村の様子

村人たちは冬の間は家の中で仕事をする。

春の畑作に向けての準備の為でもあるが、縄を編み、道具を作り、布を織り、服を作り、と結構忙しい。

さらに、今年からは月の人からの仕事が増えた。

工房エリアの一角に大きな建物が建てられ、そこでクッションの生産が始まったのだ。

男性も女性も一緒にスプリングを組み込み、綿を巻き、布袋に入れて形を整える。

子供達も荷運びを手伝い、レギウス村の特産品の準備が整って行く。



毎年61日には"春訪祭"が行われる。

2の鐘、0900、の後に神の館にて春の訪れを祝う言葉が捧げられ、畑に鍬を入れて雪の下の土を起こす。

実際の鍬入れ、畑起こしの作業は雪解け次第になるが、それも10日も経てば行えるだろう。


そして、収穫祭と同じく結婚の儀も行われる。

マクレガー村長とリンダ。

ホーキンス生産部管理官とレイチェル。

彼らが式を挙げる。

先に結婚をしているホークとパメラには朗報があった。

パメラが妊娠したのだ。


そして生産部では、1年交代制のルールを取り決め、離艦権を賭けた争いが密かに行われていたようだ。

春訪祭の後、10人が離艦し、冒険者として旅立つ。



レギウス村をはじめ、各所で行われる春訪祭だが、今年のエの国では事情が違う。

貴族制廃止の準備が進められる王都では、この日、貴族への職務任命状が配布されるのだ。


王都や地方の町で役所仕事に従事している貴族にとっては、職務や勤務地の変更として受け取れるが、領主である者達は事情が違う。

自分達が今後どうなるのか。

運命が決まる任命状だ。



俺は収穫祭同様に王都ミラルダの春訪祭に招かれ、ルーカスとリリアナを伴い、神の館に赴いた。

今日は王宮で任命状の授与があるためだろう、国王陛下の臨席は無い。

収穫祭は王子だったから参加したのだろうか?

王子といえば、ユーリ2世は未婚だったな。

貴族を廃止し、世襲を取りやめた。

次の国王の選出はどうするのだろうか。


神官長の言葉の後、畑に見立てた箱庭の土に鍬を入れ、国内の豊穣を祈って式は終わった。

今回は4列目の席だった俺は、背後の席に座っていた冒険者ギルドのギルドマスター、ヴィクターからの誘いを断り、神の館を出た。



レギウスの館で待っていると、ザーリ辺境伯の使いの者が俺を迎えに来た。

事前の手紙での約束通り、ザーリ辺境伯邸に行き、与えられた任命状の内容についての検討会に参加する。


ザーリ辺境伯邸には、ザーリ辺境伯、アラン子爵、ブリント辺境伯の三人が俺を迎えてくれた。

早くにユーリ国王支持を表明した3人は王都を離れず、冬の社交を控えて過ごしたそうだ。

そんな彼らが出席した穏健派の会合でも、何人かの貴族が国王への不満を言い合う声が聞こえてきたという。

発言者は年老いた者ばかりでなく、将来の見通しが分からなくなった若い貴族も多くいたそうだ。

だが、俺を迎えた3人の表情は明るかった。


「ファルス=カン殿、これを見てくだされ。」

ザーリ辺境伯が俺に書状を差し出した。それは辺境伯が受け取った任命状、ならぬ解任状だった。

「解任状、ですか。」

「そうです。年寄りは去れ、という事ですよ。」

はっ、はっ、はっ、と笑う辺境伯。

「辺境伯が解任、という事は後任は?」

「私です。カン様。」

アラン子爵が見せてくれた任命状には"ザーリ領領地管理人、フィリップ=ザーリ"とあった。

「では、今日からはザーリ辺境伯ですね。」

「いいえ、ザーリです。貴族ではなくなりますので。」

「ああ、そうでした。では、ザーリ辺境伯も。」

「ええ、私もアントニオ=ザーリですよ。」

「ブリント辺境伯は?」

「私は、ブリント領領地管理人に任じられました。あと数年は働け、という事ですな。」


自分達の希望通りの任命状を受け取った3人は、数日のうちに王都を離れ領地へと向かう。


「ファルス=カン殿。いずれ、そう、春が終わり夏の風が吹き始める頃にでも、ぜひ我が領地へお越しください。マクレガー村長殿とレイチェル殿にも、ぜひ、私どもの畑の青々とした様を見ていただきたいのです。」

「ぜひ、伺わせていただきますよ。」

「御義父様、天使セリーヌ様を奉る祠も是非見ていただきましょう。」

「えっ!?」

「ああ、フィルよ。その事は内密であったのに。

いや、お恥ずかしい話ですが、我々の悪夢を終わらせていただいた守護天使様がおられましてな。

大神ゴメス、女神アドニス、オイゲン神。いずれかの神にお仕えする天の御使い様でしょう。

神殿に奉られていない御方ですので、小さなものですが、私どもの領地に祠を建てさせていただいたのですよ。」

「そ、そうですか。」


別れ際の言葉だが、問題はないよな。



カッシーニ81、中央司令室。

俺とクリスは、村人達が以前暮らしていたウの国の山村地区の上空からの映像を確認していた。

「では、辺境伯達は問題なし、なのじゃな。」

「ああ、希望通りだ。ユーリ国王支持の効果があったのだろうな。」

「しかし?」

「ああ、しかし、だ。皆が皆、希望通りの任命状を受け取った訳では無いだろう。不満はくすぶるだろうな。」

「その割りに、あまり心配はしてないようじゃな。」

「ああ。大規模な反乱を起こすには、もう遅い。この先に起こすとなると、任命状への不満が原因であり単なるわがまま、と周囲からは見られるだろう。

賛同者は集まらず、単独で騒乱を起こすぐらいだ。」

「じゃが、地方反乱が長引けば、各地の不満分子が同調する可能性はあるぞ。」

「可能性はあるが、どうだろう。中心となる有力貴族が黒鉄騎士団によって抑えられているようだからな。大丈夫だろう。」

「ウの国のようにはならんか。」

「そうだな、ユーリ国王は上手くやってるよ。お、映像がきたな。ありがとう、メティス。」


「前に見たのは収穫祭の前じゃったか。」

「雪が降る前に入植させ、冬の間に準備をさせる。山の雪解けは遅いから、畑起こしはしばらく先だという話だが。」

「見事に白いの。この区画が畑じゃな。村人はどこじゃ、ファルス。」

「赤外線モードでの検知は有効に設定されているな。メティス?」

『はい、カン外政官。』

「村人の居住地らしき熱源は感知していないか?」

『はい、現在の映像範囲内では感知しておりません。』

「人が居ないな。」

「入植に失敗したのか。もしくは、全滅、したのであろうか?」

「流行病か、獣の群れにでも襲われたか。撤退していてくれれば、良いが。」

「人が居なければ居ないで、困るぞ。ファルス。」

「ああ、元住民とはいえ、誰もいないから、と勝手に住む訳にはいかないからな。交渉相手が必要だ。

メティス、画像を引いてくれ。周囲の村を探そう。」


レギウス村の住民の4つの出身村の内、国境の山脈に近いベルナル村とブラウン村の跡地には人が居ないようだ。

リベッタ村とオクターヌ村の跡地にはそれぞれ200名を超える人が居た。


4日後。

視察団メンバーは以下の通り。


ファルス=カン外政官。

クリスティン=サワー外政官。

ホーク建設管理官。

各村の出身者2名づつ、8名の村人代表の男女。


連絡艇で現地視察へと飛び立った。



海上を南下し、エの国との国境となっている山脈の上空を西へ、内陸へと進む。


やがて、ノビス川沿いのブラウン村、その先のベルナル村の様子を上空から確認した。

人が住んでいない為か、村内の雪解けは遅いようだ。

それでも壊れた家屋や馬小屋、作業小屋などの跡は分かる。

そして、ベルナル村のさらに奥地、山すそ周辺に多数の反応があった。

オークだ。


俺たちは連絡艇を南に向け、リベッタ村に連絡艇を降ろした。



現地時刻は1128。

静かに降りたとはいえ、村の中心にある広場に空から得体の知れない物体が降り立ったのだ、村はちょっとした騒ぎになってしまった。

「ファルス。これは、まずかったのではないのか。」

「しかし、村はずれに降ろすと、雪の中を歩くことになる。10人でぞろぞろと歩くのもなぁ。」

「すでに降りてしまいました。ほら、剣や槍を持った連中が集まってきています。早めに出て交渉を始めましょう。」


ホークは席についている8人の村人代表に、俺たちが先に降りて説明をするので呼ぶまでは待機するように説明をする。


俺、クリス、ホークの3人が降りる。

ちなみに俺たちの格好はいつものボディスーツに灰色マント姿だ。


連絡艇を囲んでいる村人達から注目されつつ、武器を構えてる男達に向かって声を掛ける。

「我々は月の人だ。この村の村長、代表者に話がある。」

「月の人!?」

周囲からざわざわとした声が聞こえる。


「月の人よ、なぜ此処に来た?」

マント姿の男が集団から歩み出て、俺に問い掛けてきた。

マントで右半身を隠すようにしている。

若い男だが、眼光は鋭い。

その顔立ちに、俺は見覚えがあった。


「俺は月の人ファルス=カンだ。我々はレギウス村という村で生活をしている。

その村の村人の多くは、昨年の春から夏にかけてこの地を脱出した人々だ。

今日はその人たちの代表者8名をここに連れてきている。

彼らに村の現状と内戦後に何があったのか話を聞かせてほしい。」

俺の話の途中から、周囲のざわめきが大きくなっている。

「この村からの脱出者!?」

「そんな、」

「母は、母はいるのか?」

「月の人! 脱出者は何人だ! 俺の両親は無事なのか?」


どうやら、ここの入植者の中には内戦のために村から領主に連れ出された者が多くいるようだ。

連絡艇から降りてきた8人と顔見知りであったり、親戚だったりする者がいた。


俺は、マント姿の男に近付き、声を掛けた。

「改めて、俺はファルス=カンだ。君の名は?」

「レオン=ホワイトだ。」

「やはり。お父さんに似ていると思ったよ。目の色はお母さんと同じだが。」

「なっ! 父さん、父と母は無事なのか。」

「ああ、ルーカスとリリアナには仕事を手伝って貰っている。」

「そうですか。元気でいてくれたんですね。」

「レオン、ご兄弟は?」

「兄は、死にました。」

「そうか。」

「私も右手を失い、戦いに負け、この様です。」


レオンの話によると、内戦が始まると、領主はこの周辺の村から若い男達を集め王都に向かった。

だが、その途中、立ち寄った村で野営中のところを、武装した集団に襲われたそうだ。

今、村に居るのは、元々の村人の生き残りと、貴族の味方をしたとして住処を追われた人々だ。


そして、冬の始まりにベルナル村はオークの襲撃を受けた。

この近辺ではオークどころか、ゴブリンの姿も長年見ないというのに、だ。

ベルナル村は壊滅し、近くのブラウン村の者もリベッタ村とオクターヌ村に避難した。



内戦から生還した者達は家族との再会を望んだ。

ホークがマクレガー村長に連絡し、受け入れ準備を始めた。


オクターヌ村にも連絡が伝わった様で、32人がレギウス村に転移する。

レオンも転移した。

その隣には右手の傷の手当てをしてくれた、という女性が寄り添っている。


俺はルーカスに連絡し、今日と明日はレギウスの館を休みとした。

家族と再会し、レギウス村に住むか、元の村に帰るか。

後は、彼らの選択だ。


一方で、再会が叶わぬ、と改めて思い知らされる者もいる。

レギウス村への転移者の中に、ワーニャの夫は含まれていなかった。


次回106話「魔道具の試射」

リサとサイモン君はいろいろと魔道具を作り出しています。

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