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第四惑星  作者: ブルーベリージャム
第五章 ウの国
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101話 街道を南へ

屋敷にサイモンを呼び出し、ステフとダニエルも協力して、床の魔法陣をスキャンし、ナンドゥールに解析を依頼した。

その結果、転送先の3箇所がわかった。

地下室、ビクター家の広間、王城地下。


リサが最初に選んでいた魔法陣はビクター家の広間だ。

これは南の領地のことだろう。



「地下室はこの屋敷の地下室だろうな。貯蔵庫とは別の。」

「王城地下が気になりますね。王城と行き来していたのかな。」

「川を渡らず便利ではあるのじゃが、これは合法の物なのか?違法であれば、ビクター伯爵とは何者なのじゃ?」

「川を挟んでいるとはいえ、王城裏に屋敷があります。もしかしたら有力貴族の一人なのでしょうか。」


「まずは地下室から見てみるか。」

「そうですね。魔法陣の内側が転送範囲になりますから、こちらは4人が一緒に転送できますよ。」


ビクター家と王城地下への魔法陣は地下室行きより大きな魔法陣だ。10人ぐらいが一度に転送できそうだな。

「つまり、馬車を転送するにはこれ以上の大きさの魔法陣が必要なんだな。」

「そうですね。馬を外してあげれば、少し小さくできますけど、手間が増えますからね。

それに、これは出発地と到着地が固定なんですよ。ほら、魔法陣のこの部分に描かれているんです。」

「僕とリサさんが苦労しているのは、そこなんですよ、カン外政官。

村に置く魔法陣はいろいろな場所と繋がりますから、行き先を可変にする必要があるんです。」

「毎回書き換える訳にはいかないからねぇ。」

「つまり、行き先がパラメータ値となるのか。」

「リサもサイモンも、そんな事で悩んでおるのか。通信の魔道具では出来ておるだろうに。」

「それだど、行き先を毎回言うことになるんだよね。村の商人さんとか初めて使う人には難しいのよ。」

「む、そうじゃな。面倒か。」

「それなら、行き先選択板を作ったらどうですか。選択フォームみたいに行き先の一覧を用意しておいて、行きたい場所に魔石を置く、とか。」

「ステフ!! あなた冴えてるわ! それ採用! 忘れないうちに詳細を詰めましょう。

あっ、はい、鍵の杖です。サイモン、ステフ、ダニエル、食堂にいくわよ。」


俺の手には鍵の杖が残された。

「行くか。」

俺とクリス、ロッテとシャーリーが地下室に転移した。



「暗いな。光の魔石を取り出すから、待っててくれ。」

俺は背嚢から4つの光の魔石を取り出し、クリス達に手渡す。

「ずいぶんと広い部屋だな。」

「位置確認しました。ここは屋敷の地下です。」

ロッテが左腕の情報パネルで確認する。


俺はもうひとつ光の魔石を取り出し、足元の魔法陣に置いておく。これで暗闇でも見失うことはないだろう。

鍵の杖も置いて、周囲を確認しに散開する。

この地下室はどうやら屋敷の左翼部分の地下だ。

中央が貯蔵庫なら、右翼にもあるのか。次は食堂の絨毯をはがすか。


「ここにテーブルと木箱があります。」

シャーリーが何か見つけた。

「壁にあるのは、ランプですね。ここに光の魔石を置けばいいのかな。」

シャーリーがそのランプに魔石を置くと、壁に掛けられた他のランプに次々と明かりが灯り、部屋全体が明るくなった。


魔法陣は部屋の中央にある。

ほかにはテーブル一つと椅子が一脚。木箱が二つ。

床の足跡は俺たちの物以外は不鮮明だが、魔法陣とテーブル周辺以外には歩いた形跡は無さそうだ。

最初の木箱の中は一振りの剣が収められていた。

魔石が嵌められているので魔剣のようだ。

もう一つの木箱には複数の布袋。中には金貨、銀貨、宝石をあしらった装飾具が複数。

どうやら、金貨500枚の内、いくらかは取り戻せたようだ。



残念ながら屋敷の右翼には地下室は無かった。

魔剣はサイモンに預けて調べてもらう事にする。

書斎の本棚を片付け、大広間の絨毯も戻しておいた。

ビクター邸も王城も、行くならば夜中の方が都合が良いだろう。


陽も傾き、早めに夕食の準備を始める。


(ファルス、聞こえるか。アレクだ。)

(アレク、ファルスだ。聞こえるぞ。)

(商隊が村に着いて、護衛任務は終わりだ。今、護衛チームのリーダーが手続きしている。)

(護衛チーム?そんなに大掛かりだったのか。)

(ああ、荷馬車が6台で、護衛が7人だ。俺たちより先に4人組みのパーティーが契約していたんだ。)

(そうか、これから戻ってくるのか?)

(その予定だったが、少し寄り道して行く。商人から聞いた話を確かめたくてな。)

(どんな話だ?)

(今回の護衛任務の理由だよ。街道からは外れているが、途中にある貴族の屋敷に盗賊団のような武装した奴らが入るのを村人が目撃したそうだ。

これは確認して、排除すべき案件だろう。)

(そうだが、ギルドを通さなくても良いのか。)

(ああ、同行したパーティーのリーダーに確認したら、盗賊退治は別口らしい。捕まえて王都に連れて帰れば報奨金が貰えるそうだ。)

(わかった。無理するなよ。)

(了解。)



早めの食事を終え、シャーリーとロッテを屋敷に残して、一度レギウス村に戻った。

リサ達は生産司令室へ、俺とクリスは食堂に行き、ジャミルとテレーザに会う。


レギウス平原の西側の山脈。

レイチェルがホーキンス生産部管理官と鉱山の確認という名目での調査旅行中に見つけた温泉峡。

立ち上る湯煙。

ほのかに漂う硫黄の香り。

山の中腹にあるので、眼下にレギウス平原が一望できる。

二人はホーク達とそちらで寛いできたそうだ。


「すばらしい眺望でした。身体だけでなく心まで休まりましたよ。」

「昼食を食べた後に昼寝をしてしまいました。」

「しばらく休む暇もなかったでしょうからね。喜んでいただけてなによりです。」

「しかし、休みも終わりですね。そろそろドミニク達との合流地点に向かわなければ。」

「王都スーザは先程5の鐘が鳴ったところです。まだしばらく休めますよ。」

「えっ、ずいぶん前に6の鐘が鳴ってましたけど。」

「それが時差というものです。」

「時差、ですか。」


俺は食堂の壁面モニターを使って惑星図にレギウス村の位置と王都スーザの位置をポイントし、簡単に時差の説明をした。


「さて、この後の行動ですが、私とクリスが付き人さんとの合流地点に行き、お二人を転送させる準備をします。準備が終わり次第、私からレイチェルに連絡するので、お二人は外政官の館から現地へ来てください。」

「わかりました。」

「合流地点は南西の丘の麓、街道の交差点に24時頃の予定でしたね。」

「そうです。私達は小船で川を下り、町外れの最初の橋で街道に出て、南西に向かう予定でした。」



王都スーザの屋敷に戻った。

シャーリーとロッテに引き続き留守を頼み、屋敷の転送門を背嚢に仕舞う。

この転送門を使って、ジャミル達二人には待ち合わせ場所に来てもらう。

屋敷の裏口から出た俺とクリスは、暗くなった空に飛び上がった。


川沿いに東進し、街を出て最初の橋の街道を辿り南へ。

街道はやがて西側へ方向を変え、南方への岐路を経て、丘陵地帯に差し掛かる。

ここに南北に通る街道との大きな交差点があった。

時刻は2310、約束の時間までは、まだ少し時間がある。


周囲1000mを検知すると、人と動物の反応が結構あった。

「家が多いな。人が多いぞ、ファルス。」

「主要な街道の交差点だからな。宿屋や飯屋もあるだろう。待ち合わせするなら目立たないかもな。」

「下に降りて、時間まで待つか?」

「うーん、俺たちのこの格好は下手に目立つからな。着替えるべきだったか。」

「それならば冒険用装備が背嚢に入っているぞ。着替えるか?」

「そうしよう。」


俺たちは森の中の空き地に降りて、ボディスーツの上に布の服と皮鎧などの装備を着けた。

北の大山脈に行った時の服装だ。

街道に出て、交差点を目指して歩いていく。

2350。

街道脇の木立ちに転送門を立て掛け、レイチェルに連絡した。

ジャミルとテレーザが門から出てくる。


「お待たせしました。大丈夫ですか?」

「ええ、大丈夫です。時間があったので、少し仮眠させていただきました。これから朝まで移動ですからね。」

「ドミニク達は大丈夫かしら。」

「あそこが交差点です。街道の南側に3人いますね。行きますか?」

「はい。」


俺が先導してジャミルとテレーザが続く。クリスは後衛だ。

交差点に着く頃には南側から3人のマント姿が現れた。

「テレーザ様!」

「ドミニク、ジェーン、キャサリン。3人とも無事でしたか。」

「テレーザ様、彼らは?」

「私達の脱出を手助けしていただいています。月の人ファルス=カン様と月の人クリスティン=サワー様です。」

「月の人。」

3人がテレーザの前に進み出る。

「これまでのご助力に感謝する。ここより先は我らがお二人をお守りする。」

「わかった。」

「ファルス=カン様、クリス様、お世話になりました。ありがとう。」

「縁があれば、また逢うこともあるでしょう。お気を付けて。」


5人は街道を南へと進んでいく。

その先に5頭の馬がいる。

道はイの国の国境となっている山脈へと続いている。


「行ったな。」

「ああ。」

「この先、この国はどうなるのかな。ファルス。」

「混乱して、争いがあって、いつか落ち着くのだろうな。」


次回102話「謎の転移者たち」

一方そのころ・・・。


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