14話 殺さず倒す
俺は闘技場の控え室で自分の順番が来るまで戦い方を考えたり、他の参加者の名前やらを見て時間をつぶしていると、一つ嫌な名前があった。
「ルスカ...。アイツ参加するのか、普通に戦ったら間違いなく勝てないな。まあ、なんとかするしかないか。」
ルスカはいわゆる古い知人の友人で理由は知らないが世界各地で戦いまくってるのであり得ないくらい強い。闘技場ルールで縛られずに戦ったら間違いなく殺される。
...まぁ、本気で殺し合ったら勝てないが、ルールを利用すればどうにもならないわけではない。
「ルーク選手、出番です。」
そうこうしていると、俺の番がまわってきた。ちなみに名前は正直自分の名前が気に入らないので偽名の「ルーク」で登録している。
「両者、入場。」
司会の合図と共に会場に入っていく、そして俺とは反対の方から対戦相手であろう身軽そうな鎧を着た女性が入ってきた。
(相手の獲物は...剣、そして魔法を使うための杖か。)
「それでは...始め!!!」
審判の声と同時に相手は魔法を使って氷塊を7つ程飛ばしてきた。俺はそれを距離を詰めながら避けて殴りかかった。
相手もそれに反応し剣で斬りかかってきた。
(ん!?反応した。)
...が、剣が俺に届くより先に素早く足を払い相手は大きくバランスを崩した。
「なっ!?」
(よし。)
そして俺はバランスを崩した相手の頭を掴みそのまま地面に思い切り叩き付け...ようとして途中で手を止める。
ルールを思い出した、「殺してはいけない」という。
(ヤバイ、このままいくと殺してしまう。)
その止まった一瞬を相手は見逃さなかった。
(っ!?この間合いは!)
「はぁ!!」
相手は剣に氷を附与し斬撃を放ってきた。俺はおもわず距離を取って避ける。
「ちっ。」
(殺していいなら楽なんだが...。)
俺は、正直殺しに慣れたせいか殺せるタイミングや相手に重症を負わせる隙があれば反射的に狙ってしまう。
相手は何故か怒った様子で、氷を附与した剣を構えて複数の氷塊と一緒に突っ込んで来る。
俺は相手の剣による連撃を避け、それと同時に飛んでくる氷塊を拳や蹴りで砕いた。そして俺はさっきより素早く距離を詰め相手の額を「殺さないように」殴り、ふらつかせたところで腹に蹴りを食らわせた。
「がっ...あ。」
相手は腹を押さえて倒れた。
「勝負あり!!!」
審判の声と共に倒れた相手の体が魔法で転送される。
「勝者、ルーク選手!」
(終わったか。)
俺は会場をあとにした。
(今回の戦いは酷かった。ルールを忘れて殺しかけたし、あれが格下だからよかったが、同格以上ならあの一瞬でやられていた。)
そんな反省をしながら控え室に帰る途中。
「貴様!!!」
「ん?」
さっき戦った女性が突然怒鳴ってきた。
「さっきの戦い、手を抜いていたな!!」
「...?だからなんだ?」
「なぜ... あの時そのまま地面に叩き付けなかった!?あれを食らえば勝負はついていたはずだ!!」
「あのまま叩き付ければ殺してしまうかも知れなかったからだ。それともあのまま食らわせて殺してしまってよかったのか?それで俺が反則負けになってもお前は死んでるから優勝できないだろう。」
「っ!!貴様...!私を嘗めているのか!!」
「まぁ格下だからな。そもそもお前の敗北と俺が嘗めていることは関係あるのか?」
「貴様は私の目的が優勝による栄光だと思っているのか!?」
(さっぱりわからない。賞金が目当てでないにしても勝つことに意味があるんじゃないのか?)
「私は貴様の予選での戦いぶりを見ていた!」
「そうか。」
「私はあの時の本気の貴様と戦いたかったんだ!!」
「なぜだ?」
「わからないか?私は強者と戦いたかったんだ!」
「いや、お前が強者と本気で戦いたいというのはなんとなく話を聞いてわかった。俺が知りたいのはその理由だ。お前は死にたいのか?」
「それは...っ。」
「そもそも、あれが本気だと思っている奴に本気は出せない。」
「...は?」
「あと...うるさい。」
面倒くさくなった俺は、女性の側頭部を軽く小突きもう一回気絶させ医務室まで運んでいった。
「...わからんな。」
俺はそのまま今度こそ控え室に戻っていった




