王都へ
「あの、さっきの狼はどうやって倒したんですか?」
王都へ向かう道中俺はシルヴィアに尋ねた。
「あー、あれですか。あれはいわゆる魔法ってやつですよ。」
この世界には魔法なんてものもあるのか、ますます漫画やゲームの世界っぽいな。
「私がさっき使ったのはありったけの魔力を地面に流し込んで、地面に接している生き物を絶命させる魔法です。」
何だか物騒な魔法だな…
だから俺を空中にぶん投げたのか…
「その魔法ってやつは、俺にも使えるものなんですか?」
ただやはり魔法というワードを耳にすると少しワクワクしてくる。
前居た世界ではこんなにワクワクする様なことはそう無かったからなあ。
「そうですね。魔法が使えるかどうかは本人の才能によるところがかなり重要になってくるので…そうだ!一ノ瀬様のステータスを確認してみましょう!」
「ステータス?」
「一ノ瀬様の能力を数値化して、目に見えるようにしたものです。」
よくゲームとかで目にするあれか…
「魔法ってそんなこともできるんですか!?」
「はい。さっきの戦いでかなり魔力を消費していますが、ステータスの表示くらいならギリギリできそうですし。」
そう言って彼女は俺に手をかざす。
「じゃあ行きますよー」
彼女がかざした手から強い光が漏れだす。
眩しくて目を開け続けることができない。
「はい。できました…よ…ってええええ!?」
シルヴィアが何やら驚いている。
俺も目を開けてみる。
自分の眼前に何やらスクリーンのようなものが出てきている。
きっとここに俺のステータスが映し出されているのだろう。
「どれどれ…………!?」
スクリーンに映し出された俺のステータスは見渡す限りの9で埋まっていた。
ステータスには色々な項目があるが、そのどれもが999なのだ。
「あー、これってもしかして…」
「全ステータスがカンストしてますね…こんなの初めて見ました…さすがは選ばれし勇者様です!これならどんな属性の魔法もある程度勉強すればすぐに使えるようになりますよ!」
「マジかよ…」
信じられない…自分にそんな大きな力が宿っているなんて正直実感がわかない。
というかやっぱり魔法を使うためには勉強も必要なんだな。
「なあもっとこの世界の魔法について教えてくれないか?」
この先きっと使う機会もあるだろうし。
「いいですよ。でも細かいところまで話してしまうと日が暮れてしまうので、王都に着くまでの間にざっくり解説できる範囲でお話ししますね。」
そしてまた王都に向けて歩みを進める。
「基本的に私たちの世界の魔法は魔力というエネルギーがもとになっています。魔力は生き物の体の中で生成されるエネルギーで、私たちが生きていくためにも必要になってきます。」
「人間以外にも魔力があるってことは、動物にも魔法が使えるってことなんですか?」
「いえ、動物やモンスターのように知能の低い生き物に魔法は使えません。魔法は人間が体内の魔力を色々な事に利用するために独自に開発してきたものですから。まあある程度知能のあるモンスターであれば人間の魔法を模倣して使ってくることもありますが。」
つまり魔力が電気だとすると魔法は電球だったりテレビのような家電に当たるわけか。
「魔法というものはとても便利で、戦いから日常生活まで広く使えるんです!ただし、いくら便利だからと言って魔法を使いすぎてしまうと体内の魔力が尽きて最悪死んでしまうので注意が必要です。」
「え!?さっきの攻撃魔法って結構魔力消費してそうでしたけど、大丈夫なんですか!?」
「正直あのレベルの敵にあんな大魔法使わなくてもよかったんですけど…やっぱり…ちょっとは良いところ見せたいなって…思って…」
シルヴィアは少し恥ずかしそうに言う
「でも、命に関わるんですよね!?助けてくれたことはありがたいですけど…次からはあんまり無理はしないでください。」
「はい。ありがとうございます!一ノ瀬様はお優しい人なのですね。」
「そ、そうかな?」
別に褒めてもらうために言ったわけじゃないがちょっと嬉しい。
「あ!王都が見えてきましたよ!」
シルヴィアが指さしたほうを見ると確かに街らしきものが見える。
「一ノ瀬様早く行きましょう!」
「あ、ああ」
そう返事をして先に駆け足で行ってしまったシルヴィアを追いかける。