こんなスキルに負けて悔しくないの?
気が付けば、俺はツルハシを握っていた。体はへとへとでもうツルハシを持ち上げることすらできない。
「休憩にしようや、監視もこの時間には来やしねえ。それに何もとれりゃしねえよ、こんな洞窟じゃ」
自分を加えて三人。そこで作業をしていたようだった。ドワーフが一人、ゴブリンが一人。
目をこすってもう一度見てみる。そこにいた。120cmの人間くらいなら見かけたことはある。でも目の前には緑の肌で歯がとがっていて、鼻が長くて、髪がなくてーー。
俺はそこで意識をなくした。
夢に出てきたのはいつかの記憶。あの日はキャッチボールをしていた。学校が終わって受験勉強に嫌気がさした連中で、集まってた。
みんなグれた顔しててだらだらしてた。そんな中、俺はマンガで見た変化球を試したくて、いつもと違う握りで投げてた。
その投球がどんなに飛んで行ったのか誰も見ていなかった。とりあえずボールを探すこととなって、茂みに入ったがそこから先はよく覚えていない。
意識が急にはっきりした。水をかけられたのだ。
「おめえ、なにぐったりしてんだよお」
今度は豚が二足歩行だ。オークってやつか。ピンクっぽい肌に肥満体系、おまけに股間が盛り上がって、酸っぱい汗の匂いをさせている。
意識がはっきりして状況がわかってきた。
俺は洞窟を掘るように命じられていて、どうやらここを仕切っている豚に叱られているようだ。
「なんとかいでよお、ふうっぐ」
周囲にある者は、ふるびたツルハシに、石ころばかりの箱、掘ってきた洞窟も石の壁にぶちあたったらしい。何もでる気配はなさそうだ。
「どこみてんだよお、ふっぐ」
空気がうすくて、じめじめしている。これは変なものが見えていなくても意識が飛びそうなものだ。ホコリもすごい。ここまで労働環境が悪いなら他の仕事をしたいものである。
「水ぶっかけるブラックぶりだもんな」
「はなしぃ、ぎげってんだよお」
《脳なしパンチLv1 発動》
次の瞬間、俺の体は土と石でできた壁に吹き飛ばされた。
「かっは」
ふらふらと体を起こす。何が起こったのかよくわからない。
そこに親切か、スマホの画面みたいな、説明書きが区中に表示された。
「《脳なしパンチ》頭の悪さからくりだす迷いないパンチ。初動C、威力D」
…いや、そんな説明されてもわかんねえし。いてえし。オークの顔なんか目がぱっちりしてて、やたらきめえし。
「チッ殺す」
そこに転がっているツルハシを豚に振り下ろにいく。
しかし、豚は距離を詰めてきた。俺の振り下ろしたツルハシの木の部分を腕で受け止める。
俺は届かないツルハシの先を見て、何が起こったのかポカーンとしていた矢先、下から衝撃が走った。
豚のアッパーだった。機敏なフットワーク。
《重心歩》体重があれば習得可。短距離移動術D。《脳なしパンチ》。
「このやろう」
頭にきたが、これをどうにかできそうもない。
ツルハシは折れてしまった。うでっぷしにも自信がないし、体も細い。
「クソが」
石ころの入った箱にひっかかってさらにこけた。
もう石を投げるくらいしか方法はないのか。
「ふっげえ、おまえ、おでのいうごとぎがねえから、さげげ」
豚が洞窟の奥まで吹き飛ばされた、俺のところまで近寄ってくる。
俺が口から血が垂れて、肩と背中ジンジンと痛い。
ただ、どうせやるならと俺は姿勢を正した。
俺、高校球児だったし。高校ではエースだったし。地区大会初戦敗退ですけど。
《重心歩》発動。
カウンター《手投擲石:ストレート》。
「ふげえぇ、ふげえぇ!!」
石は豚の頭をかすって飛んで行った。豚は噴出した血にあわてている。
「ケンカもしたことねえのかこいつは、よ」
続けて何度も石を投げ続ける。脂肪が多いからか、なかなか大きなダメージを与えられてはいないものの、豚は泣き声を続けてのたうち回る。
「ふぴぎい、おぼえでろよお」
泣きわめきながら豚が走っていく。俺はそこに崩れ落ちてまた眠った。
処女作になります。投稿ペースは不定期です。小説書くリハビリみたいなものなので、構想とかも甘くて、、、。ちょっとでもおもしろいって思ってもらえたらうれしいです。