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新章のアウトレイジ  作者: ぶい
3/3

怒りの拳

「あれっ?覇道(ヘッド)のアニキ!随分と早いお帰りで」

 クラッシュ覇道は顔を伏せていて、ノイジーには表情がわからない。

 早い帰還から、きっと失敗したのだと、ノイジーはそう思っていた。そして、ノイジーは始めからできるとは思っていなかった。

「予想より早い帰還なんで驚きましたよ。随分と早く音を上げたんすね」

 そこでようやくノイジーは気付く。クラッシュ覇道は小さく震えていた。そしてそれは、武者震いの類のものだと。

「へ、覇道(ヘッド)のアニキ……?」

 顔を上げたクラッシュ覇道は楽しいものを見るように、満面の笑みを浮かべていた。

「俺は、眠れる獅子を呼び覚ましたのかもしれねえ」

 そう言ったクラッシュ覇道に、ノイジーは背筋が凍った。それもそのはず、クラッシュ覇道の身につけた龍の化石は、かつて世界を救った希望の少年のもの。その力の一部を使えるのだ。そんなクラッシュ覇道が()()()()()のだ。

「こんな短期間で身につけたってのか……ッ⁈そいつはマジでバッドじゃんよ!」


 テスタは地獄の特訓を終えて、疲れを癒すため温泉に浸かる。

 二週間ほどの日数で身につけたが、その苦難はたしかにテスタの身体を激しく痛めつけた。しかし、その甲斐あって強力な力を得られたのだ。テスタはその力を確かめるように拳を固く握り締める。

 アウトレイジの力に目覚めてからかなりの時間が経った。

 時間が記憶の混濁を治した。すでにテスタはその準備を始めていた。自分が誰にやられたのか、仲間が誰にやられたのか、テスタは思い出していたのだ。

 煮えたぎる熱き思いがテスタの力を更に増幅させる。

 テスタが闘志を燃やす中、火文明ではレースが行われようとしている。そのレースのタイムを縮めようと足掻いているものたちが、練習を終えて温泉に浸かりにくる。

 そこでテスタは、他者の話に耳を傾ける。

 修行の間は火文明で何があったのか、そういった情報を入手する手段がなかった。

 そうして聴き始めたがめぼしいものは特になく、誰もがレースのことばかり。仕方ないとテスタは温泉を上がり、風呂上がりのバッドドッグを食べる。

 その日をテスタは休息に当てた。


 テスタの身体にはテスタの予想以上にダメージがあったようで、テスタは痛みに目を覚ます。体を起こしてようやくその力の対価を理解した。

 特訓の日々。そうして得た力、B(バッド)A(アクション)D(ダイナマイト)は、確かに強力な力だ。しかし、その代償は自分の体なのだ。

 ふらふらと歩いて建物の外へ出る。

 右腕が動けばテスタは戦える。右腕の動作確認も含めて体の点検をする。

 本格的な使用はまだしていないので、テスタはどれほどの反動が来るのか正確には知らない。しかし、その予想が例え正確でなくとも、それで倒し切れなかった場合の算段は立てておく必要がある。

 そういったデータでもあればと思ったが、火文明は賢いとはとても言い難い文明だ。戦車だって歯車で動いているのだ。そんなデータはないと断定する。

 そしてテスタは、かつての仲間を思い出して苦笑い。親友共々散々辛口叩かれていた、そんな記憶だ。

 テスタは算段を立てると、冷静な頭で敵がどこにいるかを考える。いや、これは再確認と言うべきだ。

 何度も考え、その度にそこだろうとその場所に辿り着く。

 テスタは元々そこまで頭は良くない。それはアウトレイジであっても変わらない。

 テスタが目覚めた時の姿には重大な役割があった。その姿はアウトレイジとして目覚める前の姿。オラクル教団にいた頃の姿だった。それはテスタにない冷静さを与えた。

 テスタはその熱き拳を武器へと作り変える。

 かつての仲間はここにはいない。

 テスタは今の仲間のために戦うことを誓う。


 完全復活したテスタ。そしてテスタは文明の端へと駆ける。

 それが何による影響なのかはわかっているが、目的まではわからない。しかしテスタには、そんなことはどうでもいいのだ。

 友の仇、そして火文明を守るため、そのためにテスタは熱き大地を駆け抜ける。

 テスタは体を炎に包み、体の一部を武器へと変える。そうして肩が変じたジェットパックで更に加速し、世界の端に迫る闇文明へと一直線に飛行する。

 途中で何度か休憩を挟み、そうしてテスタは端に着く。しかしそこには誰もいない。

 それもテスタは見越していた。

 誰もいない。あの時の敵も火文明の仲間も、何もいない。しかしテスタは、そんなことは御構いなしにその先へと足を進める。

 そこは各文明を覆う闇文明の領域。それはテスタも百も承知だ。それでもテスタはその先へと足を踏み入れた。

 宣戦布告にも等しい行為だ。しかし、先に攻め込んできたのは闇文明だ。戦争はもう始まっている。

 そうして姿を見せる闇文明の凶鬼たちは、テスタを遠巻きに眺めるだけで、何かを仕掛けはしない。

「出て来い!このムカデヤロー!!!」

 そう叫ぶテスタ。

 仲間を苦しませている闇文明に来て、怒りが爆発してしまったのだ。

 そしてそれは姿を現す。

 巨大で強大なムカデ。一度見たら誰も忘れられないであろう、狂気溢れる容姿のムカデ。

 それは六本の特徴的な腕を持つムカデ。

 阿修羅ムカデ。

「速攻でケリをつけてやる!」

「おまえには倒せないゲジ」

「そんなことは、やってみないとわからないだろ!」

 挑発的な態度で向き合うムカデに、テスタはさらに怒りを増幅させる。

「おまえも、あのネズミたちと同じ目に合わせてやるゲジよ!」

 ゲジゲジと笑うムカデに対し闘志を剥き出しにするテスタ。

 テスタの腕は炎に包まれその形を剣のような形状へと変化させる。

「怒りっぽいやつゲジねぇ」

「うるさい!仲間の仇!とらせてもらうぞ!」

「弱い犬ほどよく吠えるでゲジー」

 テスタはそんな態度のムカデに、とうとう怒りを理性で抑えられなくなり、それは形となってテスタの周りに表れる。

「ダッダッダッダッダッダッダッダッ!」

 そのテスタの言葉のリズムに合わせて、炎が踊り荒れ狂う。

「行くぞ!B(バッド)A(アクション)D(ダイナマイト)!!!」

 テスタは加速しその刃でムカデの体を斬り裂く。

 速さと火力を兼ね備えた一撃。

 その一撃はムカデの体を深く削り、その身に生やした数多の足の多くを削ぎ落とす。しかし、ムカデの生命力を舐めてはいけない。

 ムカデは、今何かしたか?と言うかのような表情でその身を再生させてしまった。

 そして、テスタの攻撃時にムカデが仕掛けた毒が、テスタを蝕み体の自由を奪う。

「どうしたゲジ?さっきまでの威勢はどこいったゲジか〜?」

 テスタの表情が苦痛に歪む。それもそのはず、その毒は体から力を奪うと同時に、痛みももたらす強力な毒だ。

 テスタは抜けていく力を闘志で補いなんとか立ち続けるが、とても戦えるような状態ではない。しかし、休んだところでその毒は抜けない。

 阿修羅ムカデを倒す他に、テスタに道は存在しない。

「おまえもあのネズミたち同様、無様に殺してやるゲジよ〜」

 テスタは再度仲間を愚弄され、ついにその力を解放する。

「この炎は、仲間を思う熱き心……!俺は……」

「くっさいセリフゲジね〜。おまえは無様に命乞いでもしてるのがちょうどいいゲジよ〜」

「俺は……負けねえ!!!」

 どこまでも愚弄するムカデに、テスタは怒りの拳を放つ。

「ザ・ヒート!!!」

 テスタは燃える拳をムカデに叩きつける。しかしムカデもただやられるだけではない。

 左右の腕のいくつかが、テスタの攻撃を受け止めようとする。そして残りはテスタに向かう。

 しかし、テスタの拳はその程度の壁では止まらない。その怒りはそんなものでは阻めない。

 ムカデの武器は炎に阻まれ、テスタの拳はムカデの守りを打ち砕き、まだテスタがチュリスだった時に入れた場所に刺さる。

 そこにはテスタがチュリスの時に残した怒りが込められている。

 テスタの拳にさらに怒りが乗り、その怒りが無限にも等しい力を与える。

 そしてムカデはテスタの炎によって焼かれ、そこには残骸と勝者が残った。

今回登場オリカ

無法装者 テスタ・ロッサ

アウトレイジ/ビートジョッキー

5マナ

パワー5000

B・A・D2(このクリーチャーを、コストを2少なくして召喚してもよい。そうしたら、このターンの終わりにこのクリーチャーを破壊する)

スピードアタッカー(このクリーチャーは召喚酔いしない)

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