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勉強、対図書館


「ここで良いんだよな?」


 既に少しだけ辟易している。調べものするのには便利なのは上っ面だけだ。

 次は、この分類された中から当たりを探し当てないといけない。


 ―ここは図書館。本の海。


 より専門的なのはその道のプロしかないが、それは最後の手段だ。

 ……何故なら、そういう人達って、大概は頼りにはなるかもしれないけど、()()揃いが定番ってやつだ。


 …なんで定番って言えるか、記憶がないクセにそう思ってしまった。不思議だ。

 さておき、呪いに関して調べようと来ては見たけど、どう手をつけて良いんだろう?

 とりあえず、目の前の棚の一冊を手にとってパラパラとページを捲る。


 「これで手にする素敵な恋の(まじな)い100選」


 ……(のろ)い、じゃなくてお(まじな)い。

 少し慌てて棚に戻して、離れた別の棚からまた一冊手にする。


 「世界暗黒史―この世に残る凄絶呪殺―」


 ……当たりのようで、なんかコレも外れだろう。って言うか、いきなり物騒なサブタイトルな挙げ句に、実際にあるやつかよ?!怖っ!


 微妙に馬鹿っぽい、ざっくりとここらに集めましたって感じなのか。これじゃあ調べるにしても骨が折れるな…。


 そもそも、これが呪いかも知れないって聞いて思い付きで来たわけだけど、確証もなければ正解があるのかもわからない。


 自分の左手を見やり、得体の知れない傷痕を観察する。

 ……まるで、焼きごてか何かを押し付けられた跡みたいな、火傷のような形。


 でもそれは、どこか足りないように見えてきた。今の今まで気にしてなかったけど、不完全な…そう、半分かそれくらいしかないような気がする。


「じゃあ、これって何かの刻印か紋章みたいなのかなぁ…?」


 うーん、だとして、印呪(サイン)系のか?


 言葉だけしか知らないそれを、アタリハズレごちゃ混ぜの籤箱から引かなければならない。

 だけど、さっきの手探りな感じと違って、今度は十分に的を絞れた。


 そんなこんなで、何処から何を取ってきたかをまずメモしながら、どんどんとそれっぽいのを集めてく。


 …あくまでも、それっぽいってだけでも十数冊。厚さも違えば年季も違って、読めるのかも(使われてる文字的に)わからない。


 最初に選ぶのは、その中でも意外性のあるやつを選んだ。


 「印呪の仕方~入門編~」


 ……もし、最初から悪用を考えてたらヤバくないか?!

 そう思える類いの、絶対に制限は掛けられていそうな本があることに驚いた。

 さておき今更、『閲覧制限の為に身元確認を…』なんてされても困るぞ。本当に。


 周囲の人の気配、視線を気にしながらペラペラとページを捲る。読む、いや見る。

 こんなものが役に立つとは、到底は思えぬ代物だった。…そして納得。これはハズレ。そりゃ普通に置いてある訳だ、これも(まじな)い系のだった。


 ただ、途中の一文だけが気になった。


 ―不完全だからこそのお(まじな)い、完全は代償無くしては成り立たず、それ即ち(のろ)いなり―


 意味深な言葉は良く心に残る。


 …まあまあ気に留めておいて、次の本を手に取る。


 「世界『呪い』体系化の考察」


 ヤバい。見るからに激ムズなやつだった。

 試しに冒頭を流し読む。……触りは思ったよりも読めた。部分的には専門の言葉が多くて、よくわからんけど、なんとなくは意味を理解出来た。


 でも欲しい情報には遠く、ペラペラとページを捲るだけ。

 それでも途中で何か不思議な図形が出て来て、不意に目と手が止まる。細かな差がわからないが、これは紋章、どちらかと言うと家系にまつわるもの…らしい。


 記憶喪失の俺はどこでどうしてたか知らないけど、この項目で示された話は『末代まで~』な呪いの事だった。

 ともすれば、代を跨いだり、いきなり現れたりと不可思議なもの過ぎるのでそろそろ(2冊目にして)脳が限界を迎えそうになってきた。


 この系統は身近な者(本家・分家)が多用した、一族血みどろな話が例として載っていた。


 外見に害するモノではなく、結局は血を呪う。本当に怖いのは呪う事よりも、それをしてしまう当事者なんだって締められていた。


 ……何か安心した。絶対この系統じゃないし。思い当たるのは何もないってわかってホッとした。


 真面目にお勉強はここまでしかもたなかった。

 十数冊も有りながら、小難しい書き方はしてあっても実用するのに届かない、安全なものばかりしか見つからなかった。


 まぁ当然って言えば当然の扱いだろうけど、基本の基本の基本くらいの知識にはなったかな?

 すっかりと重さを感じる本を棚に返して、フラフラしながら表に出た。


「う~~ん!空気が上手い!」


 暗いお部屋で閉じ籠るのは性に合わないな、やっぱり。

 グイグイと拳を背中に捻り込み、背中を無理やり解す。短時間なのに、このツラさ。こんなの専門にして研究なり何なりする人って偉大だな、と感心しか出来ない。


「しかし、まだ大した時間も経って無いのか~」


 なんかこのままだと、1日で行きたいところ回れそう……。


 これが何であれ、記憶に関係してたら嬉しいんだけど、そうは成らなそうです。

 

別の執筆の方が捗って困ってます。

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