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夢は…

合間の投稿。

 ……。


 とりあえず、転がっていたスマホを回収しに部屋の隅にもそもそと移動する。


 ―画面はアラームの時間が表示されてる― 


…まずは、夜中に全力で投げたことで壊れてないことが確認出来てホッとしていた。

 身体に纏わりついた毛布を引き離しながら、布団の上に座り直してスマホの画面を元に戻す。


 ―「豪華世界旅行に当選しました!」―


 背筋に寒気を感じた。

夢とは思えない夢みたいなこと。スマホに表示されてる画面は、昨日のことが()()だと証明している。


「ハァッ?!」


 思わず、大声を上げてしまう。お隣さんが()()なら、大迷惑なことになっただろう。


 ……自分の上げた声が消えて、静けさが部屋を満たす。


 再起動をしてもなお消えてくれない、非常識な表示。知る限りの方法で、画面を消そうとするのに、全く言うことを聞いてくれなかった。

 ……何度目かの操作で、諦めかけた時、突然画面が切り替わる。


『アナタ、ノ、オナマエ、ヲ、カクニン、イタシ、マス』


 ………?


『《アマネ シズル》、ト、カクニン、シマシタ』


 何の操作さえも受け付けないスマホが、()()()その画面を変えていく。

 それも、人工の音声まで出しながら。


『オメデトウ、ゴザイマス!ゴウカ、イ、セカイ、リョコウ、ニ、トウセン、シマシタ!』


 …豪快世界旅行?


 などと、ボケてもみたくなる。自分でどんなだよと突っ込み、そしてため息1つ。

 そんな風に呆れながら、あまりにも()()()な文章が次々と画面を先に進めて行く。


 自分でも止めることの出来ない現象に全てを委ねて、画面を見続ける。


 …カタカナと人工音声の拙い言葉に頭が追い付いてこない。

 要は、見るのも面倒くさいし、聞き取り辛いんだ。


 聞こえてくる単語は『ラグジュアリー』『アクティビティ』『〇つ星』だの、確かサイトで紹介文に書いてあったものだってことはわかる。

 …だからどうした。

 興味のないことなんか知るつもりはない。どうせ役には立たないし。


 自分の意思とは関係なく、ただ自動で動く画面の遅さにイライラし始める。


「あぁどうしよ…。携帯ないと何も出来ない…」


 実生活では暇な限りはスマホを片手に生活をするくらいに依存している。してしまっている。

 だから、それが使えないと禁断症状というか、とにかく時間の使い方さえわからなくなる。本当にどうしたら良いだろう?


「ソレデハ、テツヅキヲ、カイシ、シマス」


 すっかりと意識から外してたスマホの音声が、ようやく新しい事を読み上げる。


「早く終われよ…」


 そうボヤいた瞬間、自分の身体に異変が起きた。


「熱っ!えっ?何だこれっ!……いっ!……ハァ……!何だっ……!なぁ………!」


 ……初め、スマホを持った左手に高熱と激痛がはしった。

 次に、いきなり胸が苦しくなり出して、上手く呼吸も、言葉も出す事も出来なくなった。


 左手の激痛が次から次に、身体の色々な場所に移っていくような感覚。その度に、その場所が高熱に曝されていく。まるで自分が燃やされているんじゃないかと錯覚する。


 …まだ夢から覚めて、ほんの少しの時間。

 こんな事になるなんて考えてなかった。必死に歯を食いしばって、痛みと熱に耐え続ける。


「……ハァっ!……くぅっ…!……ハァ…ハァっ!……痛ぁ……苦し………」


 体感でどれだけの時間が流れているのかわからなくなる。いっそ意識から何から無くなるなら助かるのに、気を失いそうになるタイミングで激痛がやってくる。


 ……何度も、何度も繰り返して、段々と恐怖が込み上げてきた。

 俺、死ぬんじゃないよな?……『死』をすぐ側に感じ始める。


「神…様ぁ……、仏ぇさ……まっ……!なんで……お

…れぇっ………?!…いっ…たぁっ!……たす、けてぇ……くれ……ハァっハァ……ぁぁああっ!」


 ……俺はまだ独り身だ。人並みの幸せを手に入れてないのに死にたくない。


 なんでだろう?

 俺は一体、何をしたんだろう?

 …確かに欲張って怪しいサイトに手を出してしまったけれど、そんなのでこんな結末があるなんて俺の人生って意味ないじゃないか!


 ……こんな終わりも、こんな酷い時間も何も欲しくはない。


「……生きて、……いたい……」


 ―死にたくない! 生きていたい! 生きたいだけだ!


 心の底から出た言葉も、静かな部屋の中に消えていった。自分の身体を包む、異常な熱と痛みは尚も増していくのを感じる。指1つ、動かすことも出来ない。


 やがて、手を離れないスマホから返事が聞こえる。

 ……そんな風に感じた。それは機械的な音声じゃない、本物の人の声だ。


「契約は結ばれました。今から貴方は()()()()()()()()


 ……あっち、でも、こっち、でも構わない。誰か助けてくれ!


 ―悪い夢なら、早く覚めてくれ………―


 目も眩む激しい閃光が静流の部屋を、身体を、全てを包み込んでいく。


「お待たせしました。それでは――――」

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