ダメ、絶対。
文を短く、話は長くが目標。
もし、明日で世界が終わると知ったら、何がしたい?
―いや違う。
もし、明日で世界が終わると知ってたら、今日は何をしたかった?
………。
そうだよな。困るよな? そんな話しをされたってさ。
俺だって困るよ。困ってるよ。当たり前だろう。
ついさっきまでが昨日で、今はもう今日なんだ。
…これは間違いだな。
ほんの少し前が、今日で、今はその明日なんだ。
…世界が終わったんだよ。
でも、それは俺の世界。
…あぁ、これも間違いだ。
世界の中で、ただ1人の世界が終わったんだ。…その1人が自分だった。
―事の起こりは昨日…それがまだ今日だった時間に遡る―
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
俺は、言ってしまえばその世界のモブキャラの1人だ。
何も代わり映えしない、社会の歯車生活をするだけだった。
…今日だって、何か特別な日だって訳でもないし、普通だった。
寝る前の時間潰しに、布団の中で横になりながら片手でスマホを弄ってただけ。
そんな毎日の中で、今日だけは特別なことをしていた。
よくある、個人ブログに引っ付いてる、広告バナーを集中攻撃(ローラー作戦)していた。
よくある、懸賞サイトのバナーが目的地。
「スピードくじに挑戦して、当たりが出たら」
ってヤツ。
友達がやって、本当に当選したと聞けば、試したい気持ちにもなる訳で、探し当てるまでは寝れないと、頑張ってた。
教えてやろうか?なんてドヤ顔した挙げ句に『やっぱり教えない』という悪魔の所業にイライラしてたってのもあったかも知れない。
…とにかく、画面をポチポチ、バックバック、を何度繰り返しただろうか?
結局行き着くサイトをかわしては、別のサイト、違うって感じ。
イラつきさえも眠気に負け始めた時、その謎のサイトはやって来た。
見ただけでガセサイトとわかる懸賞サイトだった。
「特賞チャレンジ、現金〇〇万円か、豪華世界旅行」
なんて書いてあって、笑えた。
別にやる気なんてないから、話しのネタにするつもりでそこのサイトを見た。
『豪華世界旅行』…極上のアクティビティに、隠れた穴場、現地の〇星料理、頼りになる現地ガイドもお付けして、最高の時間を貴方に!
もう見るからにおかしな文句で、煽っていた。
正直、こんなの馬鹿でも引っ掛からないと思うだろうけど、最後まで行き着かないならば問題なしだ。アドレスコピーしてブロックすれば良いし。
もう時間も天辺近くだし、目を見開いても直ぐに目蓋が落ちてきてた。眠気で思考能力が低下していた俺は、チャレンジしてしまう、
結果は……、
「おめでとうございます!」
―だよね。
「豪華世界旅行に当選しました!」
だった。そうして画面を下にスライドして見ればカウントダウンの表示。
あまりによくある展開に辟易してしまう。
もう一度だけ画面を見ると、カウントダウンは続いてた。
『じゃあ、おやすみ』と思って、画面をオフしようとして異変に気付く。
……スマホが反応しない?
それもおかしいけど、自動調節の明かりが周囲の暗さに合わせず、怖い位に明るくなっていく。
そして、妙にハッキリと、カウントダウンの数字が浮き上がる。
…2倍速、3倍速、4倍速?、更にスピードを上げて、残りの時間が減っていく。
23:56:25、
22:45:57、
20:22:33、
・
・
・
08:01:36、
00:04:11、
00:00:50…
あっという間に残り10秒まで減ってる。
すると、画面に大きく『9』と表示が出る。
いきなり通常速度に戻って、謎のカウントダウンを進める。
……残りはもう無い。
明るい画面の一桁の数字を消すため、何回もバックを連打。ON/OFFも連打。ホームも連打。
…連打、……連打、………連打!
そして、残り2秒の時、思わずスマホを部屋の隅に投げて、布団の中に隠れた…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
それが事の発端となった事。
自分で言うのも何だけど、ヤバそうなモノって、触っちゃイケない。
…こんなことになっちゃうからね。
と、言う訳で、俺はメデタク豪華な『世界旅行』が当たりました!
……って、意味不明なことになってたみたい。
目を覚ましたら、布団の中で丸まってたし、部屋自体は変わる事無くあったから、一瞬で、さっきの事は全部夢だと思った。
―ヤバい夢見たな…。焦って損した~。
そんな感じで、とりあえず、いつものようにスマホを探す。探して気付いた。
―あれ今、何時?アラームは…?
いつもの場所にはスマホがない。
……思い出すのは昨日の事。寝る前に悪夢を見たこと。
聞こえる、いつものアラーム音。
……あぁ、部屋の隅からおはようございます。
俺が見たのは夢じゃない。
―さて、一体何がどうなったのでしょうか?
自分しか居ない部屋で独り言…。