表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/8

到達

7話目

 雄大に、空を召喚したモンスターに乗って飛行する。


 アイツらの乗ってる特別報酬のバード達は、アイテム扱いで、レベル依存しないので、めちゃくちゃ狡いと思う。


 まあ、特別報酬なのに、レベルが足りないので保有出来ません、召喚できませんとか泣くしな。


「敵のレベルが上がる、システム的な境界線は、大体どの辺なんだ」

「このゲーム、明確な線引きが無いから、遥か昔のゲームみたいに、西に一歩でも入ると敵が急に強くなる。みたいな感じなんだよな。いや、確かに自然界に明確な境界線とかないけどさ」

「要らんとこまでリアルだよな。まあ、それでも、天災があって、住む場所が奪われた。みたいな理由が無い限り、出てこないしな。強いモンスターが発生して、逃げて来たとかな」


 野生動物には、野生動物らしい、動きが要求される。それは過ごし方もだ。「モンスターも含め、動物の観察ならゲームの中でいい」生物学者がそういう程には、リアルなのだ。


 あらゆる知識に於いて賢者達は優れていたが、一見ゲームに関係無さそうな野生動物まで、生態を完全に再現しているのだから、畏れ入る。


「あ、あそこだ。左右対称に三本ずつ並んでる、シシカ杉。そこより奥が俺達の未到達マップだ」

「シシカ杉か。確か、樹液と葉が、回復薬になったな。少し取ってくか」

「流石参謀お詳しいこって」


 茶化すなよ忍者。『良質な葉』や『良質な樹液』が採れれば、ちょっと高く売れるんだがな。

 採取スキルが低いと、高い品質のは採れづらくなる。これは、現実でもゲームでも、一緒だな。技術が無ければ、いいものは作れないし採れない。ただ、運良く良いのが採れる時もある。


 劣悪な品質のものが採れてしまった場合には、自分のポーション作成スキルのレベル上げに使う。


 ただ、これが全くといっていい程上がらない。


 ゲームなんだから、もう少し手加減してくれてもいいんじゃないの。と、多分皆思ってる。


「あーあー。このまま、ビューっと飛んで、未到達領域の探索終わらせたいわ」

「それができたら苦労しないって」


 重鎧の愚痴に、忍者が答える。重鎧の着てる鎧は、ゲーム的なアシストで軽くなってはいるし、現実と同等の重みは無い。それでも、素早く動いたり、長時間活動するには辛い重さだ。

 正しくいうなら「脳が重いと錯覚している」が一番近いだろう。十数キロのダンボールは重いけど、十数キロの子供は軽いと、錯覚するのと同じだ。なので、肉体的負担は殆どない。


「空飛んで探索したら、一瞬で終わるやんけ!」なんて、子供的発想を、俺ら以外の人間が最初に思い付かない訳がないわけで、失敗した実績があるゆえに、誰もしない。


 理由は極限まで単純だ。


 こちらが飛行系モンスターを所有しているという事は、敵にも飛行系モンスターがいるということ。

 フィールド上のモンスターは、力や体力にパラメーターが割り振られている。しかし、移動用の召喚モンスターは、機動力や移動速度に割り振られている。なので、移動用の召喚モンスターの方がレベル的に高くても、多少のレベル差なら、殆ど戦えずに空中でやられ消滅する。

 そうなれば、当然乗ってる人間は空中に放り出されるわけで、後は地面と愛し合うだけだ。


 機動力が高ければ逃げられそうな気はするが、問題は相手が一体とは限らないことだな。高レベルの移動用モンスターでも、複数に囲まれたらおしまいだ。

 だから、飛行系モンスターの出ない、若しくは比較的少ないポイントを記載されたマップは、高く売れる。


 皆で地上に降りて、未到達領域の少し手前から歩く。


「忍者、いつも通り先頭よろしく」

「あいよー」

「索敵で見つけ次第、数と方向を言って、すぐに俺の後ろに下がれよ」

「シシカ杉採取中は警戒よろしく。今スキル初期だから、ちょっと時間かかるけど」

「へいほー」


 忍者の索敵スキルと、集団隠密スキルのお陰で、敵に遭遇すること無く、目的地入口のシシカ杉まで着く。


 俺らのパーティは、クレリック系がいないので、回復はアイテム以外の手段が基本的にない。余分なHPを、目的地前に消費する余裕はないのだ。


「じゃあ、ちょっと採取してるから、周辺警戒よろしく」

「あいさー」

「さんきゅさー」

「サーは止せ」


 奴らとくだらないやり取りをしながらも、採取キットを使い、スキルを発動させる。

 このビンの上に出てきたゲージが、いっぱいなれば、採取完了だ。

 こういうところは、ゲーム的で助かる。薬草や植物に合わせた採取方を一々覚えなきゃいけないのは、流石に面倒過ぎる。


 ただ、このゲームの面白いところは、スキルに頼らず正確な手順で採取すると、品質が高くなる可能性がグッと上がるところだ。


 面倒な手順を踏めば、しっかり結果としてついてくる。それが、このゲームのいいところ。

 キャラロスト以外では、どんな努力も無駄にならないし、知識は復活後もすぐに使える武器だ。人は()()()死なないし、努力は必ず実る。


「今のうちにアイテム欄整理しとくか」

「忍者もやっとけよ」

「へいへい。やりますよっと」

「やっぱ回復アイテムは、すぐに使えるようにしとかないとな」

「前にそれで、全滅したもんな」

「あれは、唯一の壁役が、麻痺るのが悪い」

「仕方ねぇだろ!無効化できないんだから!」

「重鎧の装備で、13レベルも下のモンスターから、麻痺もらう確率とか、1パーセント切ってるだろ」

「いやいや、俺から言わせてもらえば、参謀と忍者が、麻痺の解毒ポーション持ってなかったのが悪い」

「だって」

「なー」

「「高かったんだもん」」

「ハモるな!嫌がらせか!」


 あー回復役欲しい。いつもいってる気がするけど、美少女に癒されたい。ゲーム的な意味で。


 大体、男三人旅とか、むさくるしいでしょ。もう、圧倒的、常識的に考えて、何か臭いわ。男臭がする気がする。

 ゲームの中で、汗や体臭がするわけがないのだが、イメージって大事。


 そんな、たわいない事を考えていると、ゲージが満タンになった。


「警戒解除!」

「あー」

「おー」


 やる気が有るんだか、無いんだか分からない、返事とともに、少し弛緩した空気が漂ってくる。


「上がったか」

「重鎧。たった1本で上がるわけないだろ」


 重鎧の軽口にそう返すと、今度は左側から、声がかかる。


 そんなに簡単に上がったら、そこら中スキルレベル上限に、達してる奴らばっかりになっちゃうってーの。


「じゃあ、残り5本全部やるか」

「んなわけ」


 忍者の冗談に、スっと返す。


 このレベル帯で、三人しかいないパーティメンバーの一人が、動けない状態を押し付け続けるのは、流石に忍びない。


 しかも、わざわざ未到達領域まで来て、採取中に全滅しましたでは、あまりに辛い。


 シシカ杉は、特別レアでもないアイテムだしな。これで全滅したら、泣くに泣けない。


「じゃあ、行きますか!未到達領域」

「おうよ!気合い入れ直しとこうぜ!」

「さんせー」


 まあ、俺は採取で手にしてないしな。


 俺が立ち上がると同時に、二人は装備を解除する。


「叫び、魔力を解放し、敵を断つ裁魔の鉄を創造せよ!サモン!『ディネテレート・スペルド』」

「放て、穿て、無二の力を今ここに!サモン!『ニルヴァーナ・シュタイン』」

「崩壊せよ、終滅せよ、魔を壊せ!サモン!『アンチ・ギルガディア』」


 魔法陣に包まれ、電子の煌めきが空間を走る。


 やはりこの瞬間はゾクゾクするな。


 手を伸ばし、空間を掴み取る。俺だけの特別な重みは、どこまでも俺を強くしてくれる。


 どんな未知の化け物にだって、今なら勝てる。


 さぁ、世界を始めよう。

まさか、中に入らないとは……進まなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ