秘薬の条件
6話目
『神都市アルカナム』
神の秘薬が有るとされている、神の創造せし白亜の街。
まあ、都市名が『アルカナム』ってんだから、無かったら詐欺臭いよなぁ。
神の街は非常に入り組んでおり、常に地図を表示しながらじゃないと歩けない。
一見無秩序に、乱雑に建っているだけの街並みは、遥か上空から一望すると、その様を変容させる。自然と淡い光を放つ街の壁は、夜に地上の星と化す。
嘘か本当か分からないが、本物の星空を街にしたそうだ。
ゲームのフレーバーテキスト上の話だが、その美しさはリアルの星群に引けを取らない。天上の星々をそのまま地に落とし様な絶景は、正しく神の所業と言っていい。
世界を世界たらしめている所以は、こういう所だろう。
現実よりも、強く生きていると感じられる。
この世界には、未だ多くの未到達領域が存在する。一生を賭しても、まだ足りないであろう広大なマップは、不老不死を求めるに足るほどの壮大さだ。
凍てつく青い炎。灼熱の雪原。天空の城。海の砂漠。常夜の街。止まぬ雨の島。雷鳴の塔。黒い吹雪。魔力の砂塵。
その全てがここにある。
まだ見ぬ世界へ、思いを馳せずにはいられない。
「忍者、未到達領域の情報は」
「敵性モブのレベルは23から28がメインで、1種類だけレベル32のモンスターがいる」
重鎧は立ち回り的に、およそ30前半のレベル帯。
忍者はもうすぐ30って言ってたから28か29。
俺が20丁度。
敵の方が若干強いけど、まあ大丈夫だろう。
「重鎧報告は」
「その32のモンスターは吟遊詩人系のモンスターで、そいつ自体に戦闘力は無い。ただ、連続の集団バフと、『魔物への戦闘歌』には要注意だ」
「戦闘歌の効果は?」
「戦闘歌はバフとデバフが同時に発生する厄介な代物で、使われるとキツい。特に俺が守備に専念する戦闘スタイルだと、決定打に欠けるこのパーティに攻撃力Downと移動速度Downは厳しい。因みにバフは防御力UP」
こちらの攻撃力が下がった状態で、敵の守備力が上がるか。
これは地味に辛いな。こいつのいる集団とは、戦闘しない方がいいかも知れん。
「一応見た目と種族も欲しい」
「ちょっと高かったので、後で俺に金回せよ」
「おう」
「外見は鳥系モンスター。キツい赤がメインの体色で『ひょろろろー』って鳴き声らしい。索敵範囲が広く、先制されやすい。仮面を付けたような顔らしい。種族は『妖歌鳥面獣マスラマ・バード』」
マスラマって何だろうな。発見者の名前とかだったりする場合は警戒するだけ無駄だが、名は体をあらわしてたりするので、語学に堪能な奴が居ると便利なんだが。
「んで、自称参謀は」
「楽しみだな忍者」
「分かるわ重鎧」
忍者め誰が自称参謀か。つか、一度も自称した覚えのない称号何だけど。俺は頭より、体動かす方が得意なはずだ。多分。
「期待してるところ悪いが、いつも通りで行く」
「つまんな」
「ショックだわー」
お前らの俺の扱いマジなんなんだよ。取り敢えず、嫌では無いけど面倒臭い。
「俺が得た情報はレベル27の壁モンスターが厄介って話だ。因みに、見た目は青い体色の巨人種。種族は『アルフレア・オーロラ・ギガント』」
「うわぁ。バードクラスの敵に壁モンスターとか、何そのえげつない構成」
「大丈夫だ。俺の情報だと、幸いに遠距離系は居ない。敵前衛が体力が低くなると隠れられて、壁モンスターの後からチクチク攻撃して来るのが厄介だが、壁モンスターさえ倒せば一気に崩せる。だけど、マスラマ・バードと同時に出現した時は、即逃げで」
「お前がそういうってことは」
「あぁ。重鎧が思った通りだ。ターゲットのスキル持ちで、コイツを倒さないと後に攻撃が一切通らない」
「このゲームマジで嫌がらせみたいな敵構成多いよな」
俺もそう思う。
バードクラスと壁モンスターとの同時戦闘は、先ず速攻でバードクラスのモンスターを倒すのが定石。
このゲーム特にデバフのステータス減少量に比べて、バフのステータス上昇量大きい傾向にあるので、尚更だ。
まあ、対人戦が有れば、バフ掛けまくったもん勝ちになるからクレーム必死だけど、対人とか有り得ないからな。
このゲームで推奨されている、五人パーティなら問題無く進めるんだけどな。俺ら友達少ないから……。
前衛盾職。中衛弓職。中衛補助魔法職。後衛攻撃魔法職。後衛回復職。
又は
前衛火力職。前衛盾職。中衛補助魔法職。後衛攻撃魔法職。後衛回復職。
これが基本パーティ。というか、推奨パーティだ。
一方俺らのパーティはというと、俺が前衛火力型のソードマン。重鎧が前衛盾型でナイト。忍者が中衛中火力補助型でアサシンだ。
本来は超攻撃型パーティなんだが、俺のレベルが今は低いから、かなり残念なパーティになっている。
「打ち合わせは、こんなもんでいいだろう」
「そうだ。分かってるだろうけど、一応索敵範囲が広い忍者に言っとく、極棲地には入るなよ」
極棲地。
その名の通り、究極の生物が棲う地。八の方角に対応した地域にある、人が踏み込んではいけない世界。最も弱いモンスターでレベル85。確認されてる最高レベルは180。
流石に天災の領域250レベルに届く事は無いけれど、故に届かんとするモンスター達の楽園。
極棲地をギリギリ探索出来るのなんて、帝を含めた上位五人ぐらいだろう。それでも、逃げながら、隠れながらだが。
まあ、極棲地に気を付けるって言っても、俺らには基本関係ないけどな。極の名の通り最も東とか、ここアルカナムなら最も南東に有るとされている。
「いやいや、重鎧先生。極棲地は無いって。辿り着く前に何回死んだらいいんだよ。寧ろ行けるなら行ってみたいレベルだわ」
「だよな」
忍者と重鎧が笑い合っているが、別に見ていたくは無いな。
「さて、空から行くか」
「だな」
「鎧も重いしな」
本当は俺が初期化して無ければ、三人ともちょっとだけレアな飛行系モンスターで揃えてたんだけど、俺だけ見事に災害に巻き込まれたからな。全くショックだよ。
「サモン!『アイス・バード』」
「サモン!『ファイア・バード』」
「サモン!『フィーブル・ヒポグリフ』」
本当は俺の召喚獣も『サンダー・バード』だったのにな。
三体ともレベルは32で、大して強くも無いし、特殊能力も無いが、ギルドランキング7億7777万7777位の特別報酬だ。
因みに計測期間も、参加方法も、何を基準に順位が決まってるかも不明だ。しかも、俺らはパーティは組んでるが、ギルドを結成した覚えは無い。三人でギルドは無理があるだろ。
少数でギルドが組めない人にも、考慮をした結果多分こうなったんだろうな。おかげで凄く微妙だ。
まあ、ランキング参加には報酬のメリットは有るけど、デメリットは一切無いので、文句はないけどね。
「秘薬のクエスト解放条件が、アルカナムにおける複数クエストの達成って本当かよ」
「噂にしか過ぎないけど、やるしかないだろ。他に手掛かりが無いんだからよ。賢者1人探すだけでこんなに大変とは」
「仕方ないだろ。何せ達成報酬は不老不死だからな」
例え人類が滅びようとも、地球が崩壊しようとも、生き続けられる、不滅の存在不老不死。
全てが終わった後の世界で一人、神になれなかった憐れな存在は、何を思うのだろうか。
大分遅くなったけど、ゆるりと続けていきますよ!




