表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

5/8

サモン・モンスター

5話目

 今はレベル上げの作業中だが、相手が弱く暇なので、雑談しながら狩りに興じている。


「なぁ〜忍者。お前いくつになったよ」

「闘技場ランキングか?」


 闘技場。

 それは、この対人システムの無い世界で、唯一優劣を示す事の出来る場所。

 勿論、相手はモンスターで、どのレベルのモンスターをどれだけ倒せたかで、ランキングが決まる。


 闘技場といえば、世界ランク一位の帝が、全世界のプレイヤーに喧嘩を売った動画が有名だ。


 推定レベルは120前後。


 帝が倒した闘技場のモンスターのレベルが97で、それに対する立ち回りや、切り付けた回数から、導き出した予想だ。

 ありとあらゆる手段を用いても、チートが不可能なこの世界で、このレベルははっきり異常と言っていい。


 前にも言った通り、全プレイヤーの平均がレベル50前後。天災級のドランゴのランダムな出現や、高難易度ダンジョンの理不尽なトラップを掻い潜り、生存してる事になる。

 攻略情報等が出回り罠に掛からないとか、天災級のドランゴの出現時間を把握出来てるとかならまだしも、未来AIによる情報統制と完全ランダムを、人間に予測しろってのは無理だ。


 電卓を渡されて、今から10秒以内に落ちてくる隕石の被害範囲を割り出せ、出来なければ極刑。とか、そんな領域の話になる。


 120まで生きる事が出来るとしたら、たった12人だけだろう。なので、帝は賢者の1人が姿を変えたものなのではないかと、専ら噂だったりする。

 勿論本人も否定はしていたし、未来AIからの返答もNOだった。未来AIが嘘をついてしまえば、ゲームとしての公平性が瞬く間に失われるので、それだけは無いと断言出来る。

 まあ、未来AIに本物と言えるだけの証拠を揃えてからでないと、開示されない可能性は有るけどな。要するに、イベントの発生条件を満たして無い故にって事だ。如何にもその辺はゲームらしい。



「レベル聞くわけねーべ」


 レベルを聞くのはマナー違反だからな。聞いても罰せられたりはしないけど、相手の詮索はNG。銀はAg。.....うん。


「そだなー。まだ、億から抜けてないぐらい」

「だよなー。人類ほぼ全員やってるもんな。やって無いのは、物心つく前の幼児ぐらいだよな」

「最近は現実との齟齬の無さと、安全性の高さから、物心つく前から、やらせてる親もいるらしいぜ」

「重鎧、なんでそんな事知ってんの」

「街で良く見ると、子供抱いてるプレイヤー居るぞ?」

「マジか〜全然興味なかった。子供とか無縁過ぎだし」

「俺ら日本の法律だと、まだ子供だぜ」

「いや、そういうのいらないから。求めてないから」

「子供どころか女と無縁だしな」

「いや、そういうのもいらないから。つーかそんなの、俺らの年で結婚とか中世の貴族ぐらいだろ」

「中世の貴族だと行き遅れてないか?なぁ、忍者」

「俺!?知らんけど、そーなんじゃね?急に振ってくんじゃねーよ、焦るだろ。焦り過ぎて、ニルヴァーナ落としたじゃねーか」

「武器手から落ちないから、大丈夫だから。変な嘘つくんじゃねーよ」


 慌てたり、驚いたりする度に、武器取り落としてたら、ゲームになんないしな。


「わーってるよ。それぐらい驚いたって意味だよ」

「驚き方微妙過ぎない?」

「じゃあ、お前驚いてみろよ!」

「えっ何その無茶振り!?」

「めっちゃ驚いてる」


 笑い過ぎだろ、マジギルティ。重鎧め、人を指差すんじゃありません。


「とりゃ!っと、おっレベルあっぷっぷ〜」

「20になった?」

「なったなった!」

「じゃあ、召喚用のモンスター契約に行こうぜ!」


 二十になると、モンスターを召喚できるようになる。召喚士達の宴ってだけあって、ほぼ全てのモンスターを、召喚することが出来る。

 要求レベルに応じて、召喚出来るモンスターの数、モンスターのレベルが変わってくるのだ。


 例えば、自分のレベルが100だとしよう。そうすると、要求レベル100のモンスターなら一体。要求レベル1の最低ランクのモンスターなら、百体使役する事が可能である。まあ、要求レベル9以下のモンスターとか、愛玩用以外何の役にも立たないけどな。

 それに百体も同時に召喚すれば、邪魔過ぎて確実に顰蹙(ひんしゅく)を買う。狩場なら、最悪妨害行為で、ペナルティだろうな。


 場合にもよるが、モンスター召喚のペナルティは、召喚したモンスターの帰還と、一定時間召喚禁止だ。

 割と軽いが、あからさま嫌がらせで、同一プレイヤーが何度もって場合は、召喚契約が無効化される。

 モンスター契約は、一体ずつしか出来ないので、百体で取り消されたら普通に泣くな。契約自体、安いって訳じゃないし。


 夢物語だし、有り得ないが、要求レベルさえ満たせば、天災級のドラゴンも使役出来るらしい。それが、このゲームの面白いところだと思う。

 限りなくゼロに近いがゼロではない。ちゃんと、どんな不可能に近い事に対しても、夢が有るのだ。


「誰んとこで契約するよ?やっぱ亜人系?天使系、悪魔系もいいよな!」

「それ、重鎧が見た目可愛い女の子モンスターが、好きなだけじゃん」

「うるせぇぞ忍者。いいだろ、どうせモテないんだから」

「いや、だからモテないんだよ」

「俺ら全員モテないから、その理論は違うな。顔が悪い顔が」

「知ってる?真実は、人を傷つけるんですのことよ」

「帝は別にイケメンじゃないけどモテるだろ!」

「世界ランク一位と比べるとか、お前言ってて悲しくないの?」

「心は豪雨」

「「だよな〜」」


 しょうもないところで、忍者とハモってしまった。


 閑話休題


 契約師によって得意な系統が違うので、契約したいモンスターによって、色んな人の所を回らないと行けないこともある。

 このゲーム職業システムは無いので、契約のスキルを上げれば誰でも成れるんだけどな。前にも言った通り、スキル上げが馬鹿みたいに面倒臭いんだよね。


 スキルレベル10が最大で、レベル10になれば、どんなモンスターとでも契約させることが出来ると噂だ。

 ゲームが開始された年から、一度も死なずに契約のスキルをあげている、一番有名な契約師の人のスキルレベルが、現在6と言えばスキルレベルを上げるのがどれだけ大変か分かるだろう。

 こういう点に於いては、やっぱり世界を支配してるゲームじゃなきゃ、絶対やってないと言われる所以だ。

 あの帝ですら、たったのひとつも、スキルレベル10は無いらしい。


「取り敢えず、移動速度が現在ゴミなので、騎獣と偵察役の鳥系かな」


 悪かったな、移動速度がゴミで。


「レベル上がってくると、色々組み合わせられるけど、序盤はテンプレっつーか定番だよな〜」

「基本は大事だよな。騎獣は無難に馬?」

「うわ〜忍者つまんな」

「おい、表出ろ重鎧」

「なんで俺の召喚モンスターを、お前らが決めてんだよ落ち着け」


 無難に、安価なモンスターを、二体にしよう。




 という訳で、一度街に戻った俺らは、契約師の所に来ている。


「私は鳥系の契約師だ。スキルレベルは3。お兄さんご希望は?」

「レベル19の『フィーブル・ヒポグリフ』とレベル1の『スモールファング・レッサーバット』をお願いします」

「成程ね、丁度ってわけね!」

「えぇ、そうなんです。天災龍にやられちゃって」

「あ〜そいつはご愁傷様。そいじゃ、手を出してくれるかい」

「はい」


 そっと差し出した手の甲に、契約師が特殊なインクで魔法陣を描いていく。風が巻き起こり、壮大なエフェクト撒き散らされる。


「汝、その魂を盟約に従って、理を解せ!」


 契約師が呪文を唱えた途端、魔力が魔法陣を通して流れ込んでくる。


「さぁ、出来たよ。一度店の横の空き地で召喚して見てね!後で注文と違うって言われても、またお金もらうことになっちゃうから」

「分かりました」


 店の横の空き地って言っても、本当に空き地な訳じゃなくて、店と繋がってる別空間って感じだけどな。

 ジャイアン・ゴーレムとか店の中で召喚出来ないから、そういう為の処置だ。


「よし、いくぜ!サモン!『フィーブル・ヒポグリフ』サモン!『スモールファング・レッサーバット』」


 ちっこいコウモリと、馬っぽい鳥みたいなモンスターが出てきたので成功だ。問題無かったと言っておこう。


「これでようやく、歩いて移動せずに済むな!」

「ポータル無限に設置できればいいのにな」


 分かる。超分かるよ忍者。


「そしたら、モンスター召喚要らんだろ」

「確かに」


 契約師にお礼をいって店を出た。


「さて、不老不死なんざ本当にあるか知らんが、賢者様達を探しに行きますかね」

「重鎧次の目的地は?」

「南東の未到達マップだ。まあ、俺らのって頭に付くけどな」

「最寄りの街は『神都市アルカナム』だ」

「神の秘薬が有るとされてる街か」

「そうだ。多分、神の秘薬が、賢者の手掛かりなんだと思う」

「ただの回復アイテムとか、伝説の蘇生アイテムって話もあって、真偽は不明だけどな」

「いっちょ冒険と行きますか!」

「「おう!」」


 いざ、アルカナムへ!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ