表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/8

暗黙の了解

4話目

 忍者が敵のステータスを看破。パーティメンバーが誰か一人でも、看破に成功すると全員に表示される。


『神機魔獣二クラム』羊型の機械獣で、データ的にはスライム相当。前に倒したべリスと同じだ。それが二体。当然レベル1。


 次に『地獄公べリス』前にも言ったが、このゲームじゃなければ、最強クラスの悪魔なのだが、ここではちっこいチンチクリンな悪魔だ。しかし、ちゃんとちっこい馬に乗っている。残念ながら全く怖くない。こちらもスライム相当。数は一体。


 最後にレベル3『樹人族リミテッドトレント』この場合のリミテッドは"限定された"ではなく"能力が劣る"って意味の方だな。要するに生まれたばかりの、若いトレントだ。名前的には一番弱そうなのに、このモンスター達の中で最もレベルが高い。


 老木のトレントでは無いので、火も効きにくく、属性耐性面で特に弱点は無く、攻撃範囲が広い。序盤で一番面倒なモンスターだ。


 但し、HPは低いし防御力もそこそこである。しかも、若いトレントなので、MPが足りず魔法を発動出来ない設定、面倒なだけで強くは無い。こちらの間合いに入れば直ぐに削りきれる。まあ、今回は肉盾基重鎧が居るので、相手の攻撃はこっちに一切届かないんだけどね。


「行くぞ重鎧!」

「おうさ!忍者!」

「……え、俺も戦いたいんだけど」

「「お前はそこで見てろ!」」


 ふっざけんな!キャラメイク後のちゃんとした初戦闘だぞ。そりゃパーティ組んでるから経験値やシル、ドロップアイテムは入るけど、そう言う問題じゃないんだよ。戦いたんだよ。


 忍者が一瞬で、リミテッドトレントとの間合いを詰め投剣のダメージ範囲に入った瞬間剣をぶん投げて、リミテッドトレントが消滅した。そして、その勢いのまま走り抜け、振り向きざまに投げようとしたところを、重鎧が鉄槌の横薙で残り三体を瞬く間に全滅させ、戦闘は終了した。


 あれ、俺の出番は?俺主人公なんだけど、おかしくね?おかしいよね!?



 お、レベルアップの音だ。3まで上がってんな。ステ振りはどうしよっかな。取り敢えず、敏捷で良いか。どうせレベル10まではこの辺で雑魚狩るし。レベル10ぐらいまでなら、間違ったらまた、キャラメイクからすればいいし。


 当然の如くレベルが1上昇する毎に、必要経験値量は増えるんだが、10から11とか20から21に上がる時の必要経験値量がアホみたいに多いからな。やり直しは10まで。これは暗黙の了解。



 暗黙の了解と言えば


 この世界を支配したゲーム。『サモン・オンライン』


 ゲーム内労働、第一次産業の自動化等がなされた現在。それ以外の理由で皆がこぞって強くなりたい、唯一の共通項がある。それが、ワールドクエスト『12人の天人』だ。


 もしクリア出来れば、「不老不死」すらも叶うとまことしやかに囁かれている。それが、個人も企業も、金持ちもこぞって強くなりたがる理由だ。


 しかし、どれだけ金を積んでも、スキル熟練度は金で買えないし、武器は金で買えるが、例え一音節で召喚出来る剣でも、強さはキャラクター依存なので、キャラが弱ければ意味が無い。


 権力者も金持ちも、貧乏人も弱者も、現実では存在したが、ゲーム内では、どんな人間でもほぼアドバンテージも無いし、死ねばゼロからやり直しだ。圧倒的に絶対的に平等を強いられる。遥か昔の苛烈な共産主義者が居たら、狂喜乱舞していることだろう。


 賢者が創造した未来AI様の元では、全人類が平等だ。


 "機械仕掛けの楽園アルカトラズ"監獄の名を冠した楽園。ディストピアであると同時にユートピアであるアルカトラズ。


 今日も世界は不自然な程に完璧で、一つの綻びもない。最も完成された、最も歪な世界。未来AI様に殺されるまで我々は生き続けなければならない。


 未来AIに生殺与奪を握られ、努力すれば全てが数値に反映され、諦めなければ必ず夢が叶う世界で不老不死は魅力的過ぎる。誰もが、血眼になって探すさそりゃ。


 そして、やはりこのゲームを創った天才達は悪魔だ。噂では、先着12人だけが、願いを叶えられると言う。天才達の数が12だからだ。そしてここで効いてくるのが、フレンドリーファイアの禁止。悪意を持って騙したり、強い言葉で妨害すれば奴隷落ちだ。


 なら、誰かが抜け駆けしないように、互いを互いに監視するしかない。暴力でも、権力でも、金でも、誰もが誰もを縛り付けることが出来ないのだから。


 悪意を持って相手の行動を禁じれない故に、善意のみに寄って互いを監視する。と言う、最高に最強に最低に最悪に気持ち悪い世界が完成する。世界の悪意が透けて見えるようだ。


 賢者達の情報が見付かれば教え合うと、皆口約束はするが、見つけたら絶対に誰にも言わずに抜け駆けするだろう。このゲームでは、口約束だけは契約行為として認められていないのだ。


 理由は簡単で、友達との約束の時間に遅れたからと言って、一々奴隷落ちや処罰されていたら堪らないからだろう。


 そして、賢者達に続く手掛かりは12人中誰1人見つかっていない。次の賢者達の手掛かりが見つかる前に寿命が来てしまうかも知れない。抜け駆けしない訳がないのだ。



 未来AIにはどんな事でも確認して良いとされている。うむ。やはり今日もゲーム内制裁での死者、未来AIに攻撃した者は"報告"されていない。世界は今日も平和だ。

主人公だからって活躍できるわけじゃ無いんですよ。甘えんな主人公。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ