召喚
3話目
「なあ、何処でレベリングする?」
決めとけよ忍者。言い出しっぺだろうが。
「サヴァ・テオで良くね」
おい、重鎧。またキャラメイクからさせるつもりか。あそこレベルは低いけど、バッドステータス満載のクソ地帯じゃねーか。
サルヴァジーニャ・テオカトーレ通称サヴァ・テオ
このサモン・オンラインでは、どれだけレベルを上げても、バッドステータスは確率で罹るので、非常に忌諱されている。
例えばレベルをめちゃくちゃ上げ、状態異状耐性を限界まで上げたとしても、0.1%は弱毒ですらもらう。治すにはアイテムか、街の治療所、プレイヤーの僧侶や坊主に治してもらう必要があり、地味に手間なので、サヴァ・テオは非常に不人気だ。善意のプレイヤーが、入り口に看板を立てるぐらいはやっかまれている。
しかも敵レベルは低いので、バッドステータスをもらわない様に慎重に時間をかけ、やっとの思いで倒しても、シルも経験値も少ない。間違えなく作ったヤツは性格が悪い。更には『始まりの街グランド・オルバニス』の近くの森で、キャラメイク直後に間違って入ると確実に死に至ると言う始末。是が非でも、この森だけは賢者達に抗議したい。
「サヴァ・テオは舐め過ぎだろ」
「あ、やっぱ?」
よし、重鎧。後で覚えてろよ。攻撃は出来ないので、擽りの刑に処す。男の擽りシーンとか誰も得しないので、やりたくないけどな。
「無難に横の森でいいんでないの」
「え~あそこ人多くね!」
なんだよ。やっぱ見た目が忍者だから忍んで無いといけないの。見つかると死んじゃうのかよ。キャラメイク終わったから戦いたいんだよ。せめて、小遣い分ぐらい。
「忍者妥協しようぜ!」
「マジか~重鎧もそっちか!この裏切り者!」
「アホやってないで早く行こうぜ本当」
「じゃあ、俺ら先行ってるは!」と二人に言われ置いていかれたが、やっと横の森に着いた。アイツら置いてくとかマジなんなの。そりゃあまあ、キャラメイク直後で敏捷値ゴミだからしょうがないけどさ。友情が感じられない。無情。
「お!やっときたか!早かったじゃん!」
「忍者お前、俺置いてくとか酷くね?」
「だって、お前初期ステあれじゃん」
「仕方ねぇだろ。見ての通り、貧弱もやしのオリーブ和えなんだよ」
「なんでオリーブで和えちゃったんだよ」
重鎧からの鋭いツッコミだ。角度的に85度くらい。ほぼ直角だな。切れなさそう。
横の森。グランド・オルニバスのスグ西に有るから、横の森。安直過ぎるけど、それが一番覚えやすいんだよな。因みに少し東に行くと似たような森があってそこが、皆大嫌いサヴァ・テオだ。
「つーかお前ら置いてった罰として、マップデータ寄越せ。死んだせいでマッピングほぼ白紙なんだよ。初期マップしか入ってねー」
「初期マップヤベェよな。今まで調べた危険地帯の書き込みとか、全部消えてんもんな。俺が行った特殊地形地帯のもいるか?」
「いくらだ忍者」
「3000シル」
「折れろ」
キャラメイク直後の、ひのきのぼう、ぬののふくの勇者に3000は無いだろ3000は。現在所持金は1シルだけどな。50くれる某有名な王様優しい。
マップデータは売買のアイテムに指定されて無いので、自由に値段が付けられる。ま要らなきゃ買わなければいいだけだし、必要最低限は初期マップに書き込まれてるからな。
マップデータで稼ごうとしても、ニセ情報だったり、話と全く違うと買ったヤツから未来AI様にメッセージが飛ぶからな。悪質だと判断されれば奴隷落ちだ。なので、このゲームで人をだまくらかして儲けてやろう、なんて気概のあるヤツはまず居ない。
「重鎧マップくれ」
「あいよ!ても、仕様上タダには出来んから、キャラメイクのオマケのテンポーションくれ」
「テンポなぁ……10しか回復しないアイテムとか、本当要らんよな」
「ソロの時はやり直しの後だと、意外に活躍するけどな」
これで、危険地帯の書き込みとかも戻ってきた。これが無いと直ぐロストするからな。マップに免じて擽りは許してやるぞ重鎧。
「お、敵さんのお出ましだぜ!」
さて、こっからはちゃんと装備してかないとな。サモン・オンラインの真髄だ。魔法陣を浮かび上げろ。
「よし、お前ら行くぞ!」
「「おう!」」
「叫び、魔力を解放し、敵を断つ裁魔の鉄を創造せよ!サモン!『ディネテレート・スペルド』」
「崩壊せよ、終滅せよ、魔を壊せ!サモン!『アンチ・ギルガディア』」
「放て、穿て、無二の力を今ここに!サモン!『ニルヴァーナ・シュタイン』」
やっぱサモン・オンラインはこれが楽しい。何度やっても楽しい。魔法陣に囲まれ、時間がスローで流れ、望んだ武器が電子の煌めきと共に、創造されていく。
俺は両手を前に突き出し、右手を軽く握る。柄の部分から刀身まで、雅な輝きと共にゆっくりと形成されていく。さあ、我が剣をここに。
ポーズは人それぞれだ。重鎧は両手を天に掲げ、忍者は腕を顔の前で交差させている。現実でやれば馬鹿っぽい仕草でも、魔法陣に囲まれ、武器創造のエフェクトが発生してる最中だと非常に様になるし、妙にカッコイイから困る。ちょっとカッコイイポーズとかだと真似したくなる。何も無い宙から剣が創造されるのは何度やっても飽きない。
これが俺の片手長剣『ディネテレート・スペルド』
片手剣なのに長剣ってのはおかしい気もするが、重さも長さも自由自在だからな。勿論攻撃範囲は武器種類に依存してるので、長く作りすぎると、自分で何処が攻撃範囲だか、分からんなくなるけどな。後、攻撃力はどんな派手な見た目でも、デカい武器でも、プレイヤー依存なので要注意だ。
重鎧は鉄槌『アンチ・ギルガディア』
忍者は両手投剣『ニルヴァーナ・シュタイン』
だ。
武器名は自分で決めたり、未来AIまかせてランダムで付けられたりする。武器召喚の際の呪文は、三音節以上ならなんでもいい。
「悪を、即ち、斬る!『悪・即・斬』」とか言う侍も前に見かけたしな。
厨二病見たいなカッコイイ詠唱程様になるが、長過ぎると詠唱中に敵にやられるので、悪即斬は効率的だと思った。いくらスローになるったって、時間が止まってる訳じゃないからね。現実的なのは五音節まで。それ以外長いと敵よりも、仲間がイラつくからね。
動画の日本のトッププレイヤーが使ってた、一音節で召喚できる、特殊武器が欲しいが売ってないし、売ってても軽く億はする。若しくは億じゃ足りない。
「さんざめけ!『アルトリオ・アルテリア』」
あの神々しいまでの輝きは忘れられない。見た目はそっくりに創れるが、オーラのエフェクトは出せないからな。似せれば似せるほど、オーラや斬撃時の特殊エフェクトが無くて、ダサくなる。
プレイヤーランク全世界一位。日本人プレイヤーで、キャラクターの見た目は帝。超級レアアイテムのオンパレードだった。竜級の装飾品もちらほら。皆は帝王と呼んでいる。
神話帝剣『アルトリオ・アルテリア』は勿論竜級レアアイテムだ。
アイテムのレアリティはコモンから始まって
コモン<アンコモン<レア<超級レア<竜級レア<龍級レア
となっている。竜級と龍級の区別を付けるために、呼ぶ時は竜級は竜レア、龍級はドラゴニックレアと呼ばれている。
全世界一位ですら動画では、龍級レアアイテムは身に着けて居なかったので、龍級レアアイテムは誰かが流したデマなんじゃ無いか、と言う噂まで流れるレベルだ。
ワールドクエスト『12人の天人』をクリアすれば、龍級レアアイテムを手に入れられると言う噂だが、ワールドクエストなのに取っ掛かりすら世界の誰も掴めていない。
果たして十二賢者達は何処へ隠れたのだろうか。
3話目にしてやっとサモンした。このまま50話ぐらいまでサモンしなかったらどうしようかと思った。