今日のノルマはキャラメイク
1話目
『日出処の天子、この世界に君臨す』
2228年世界時刻16:38
某有名動画サイトに投稿され、投稿されたその日に、多分世界で一番有名で、世界で一番荒れた動画だ。
日本のトッププレイヤーが、冒頭にこの台詞を入れ、世界中に喧嘩を売った。
2222年に開発された、世界最大級のオンラインゲーム。『サモン・オンライン』
ユーザーは全世界で数億人とも言われる、常識に照らし合わせて考えれば、有り得ないと言っていいゲームだ。
「クッソ死んだ……また、初めっからだよ……」
俺はしがない、高校二年生、男。インフェルノ・ツイン・マキシム・ドラゴンにキャラクターを、文字通り惨殺され、絶賛キャラメイク中だ。
日常のありとあらゆる事がこのゲームの中で出来るが、死ぬとアイテムも、所持金も全部ロストするのが、最高に辛い仕様だ。マジ俺の小遣い……
そりゃあ、いくらモンスターが跋扈する世界たって限度がある。地震や、台風なんかと同じ頻度で、ドラゴンが街に襲来し、手当り次第プレイヤーキャラクターも、NPCも、街並みも破壊していく。理不尽過ぎる。
因みに先程の、インフェルノ・ツイン・マキシム・ドラゴンは、天災と同じ扱いなので、基本倒せない。一応HPゲージが設定されてるので、絶対に倒せない事は無いらしいのだが、全世界のプレイヤーの平均レベルが50前後。天災級のドラゴンのレベルは250だ。
昔、世界最大のトップランカーだけ集めた、ドリームパーティで挑んだらしいが、一人残らず、例外無く消し飛んだらしい。
不満をぶつけようにも、相手が、完全に日常に食い込み、数百年後に開発されるで有ろう、ウイルスにも完璧に対処出来るように作られているゲームでは、どうしようもない。
創り上げた、かの天才達は、完全自律型のAIにゲーム管理を任せ、行方知れずだ。
世界中の警察機関、軍、特殊部隊を総動員して探したが、12人の手掛かりは塵一つ見つからなかったそうな。
「このキャラメイク、身長、年齢、性別、体重、運動能力から、顔まで、全部自動識別で、鏡を見てるみたいで気持ち悪いんだよなぁ……せめて、自分が美少女か、イケメンなら、キャラメイク終わるまで、見てても飽きないんだろうが、如何せん俺の顔は辛い。イジメか!」
そうそう。キャラメイクは全部自動なので、割とどうでも良いんだが、このゲームの凄いところは、開発されてから数年、数億人のプレイヤーが遊んでいるのに、今まで1度もバグや誤字が発見されていないんだ。
翻訳も完璧で、相手が全部英語で喋ってても、しっかり違和感の無い日本語に聞こえるレベルだ。故に12人の天才たちは、宇宙人なんじゃ無いかと、まことしやかに囁かれている。
まあ、そりゃ、こんだけ壮大なもの作っといて、世界中の人間が探しても、姿形、影すら見つかりませんじゃ、宇宙人扱いでも仕方ないのかもな。
このゲームが出来る前であれば、宇宙人なんて、鼻で笑い飛ばしたんだがなぁ……
さて、キャラメイク終了っと。アイツらもう、集まってるだろうな……
なんか、壮大な設定にしたのはいいけど続くんかなこれ?