5軒目:誰か正しい服の買い方を教えてくれ。
短めです。服……買ったのか?
H29.6.26:本文を加筆修正させて頂きました。
某年六月二日
「数百億円、数百億……そんなにあったら奨学金返して、家賃払って、電気代、水道代、光熱費、通信費……ああ! タクシーが使える!?」
「落ち着け零人! …………随分と夢が小せぇな!?」
誰かがそう言いながら僕の肩を揺さぶってくる。なんだただのきょうやか。
「そうか、おちつかなきゃら。きょうやありがとお。」
「呂律が回ってねぇぞ!? 深呼吸しろ!」
シンコキュウ? あ、深呼吸か。 深呼吸ってどうするんだっけ? えっと確か『システマ式呼吸法』ってのがあった気がする。えっとまず「口を閉じて四つ数えながら鼻から息を吸い込む」って、これは『四-七-八呼吸法』じゃないか。あれ? これにも精神安定効果があったんだっけ? 待て、落ち着け。落ち着いてバンコクの正式名称を暗唱するんだ!
「クルンテープ・プラマハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・ マハーディロックホップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリローム・ラドムウーチャンウェートマハーサターン・ アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット」
「怖えよ! 何言ってんのかわかんねえよ!」
ヤバイ、これだけ言ってもまだ落ち着かないぞ!? いや、さっきよりはマシだからもう少しだ!
「意味は、天使の都 雄大なる都城 帝釈天の不壊の宝玉 帝釈天の戦争なき平和な 偉大にして最高の土地 九種の宝玉の如き 心楽しき都 数々の大王宮に富み 神が権化して住みたもう 帝釈天が建築神ヴィシュカルマをして造り終えられし都……ふう。」
「落ち着いた!? 今の変な呪文みたいなので!?」
京也が此方を見て、わけがわからないといった感じで何か言っている。
「変な呪文なんて言ったら失礼だろ。タイ人に謝ってきなよ。」
「知らねぇよ! まず今のがタイに関係する何かだってことすらわかんねぇわ!」
……え? 小学一年生になったら皆これくらい暗唱するだろ?
僕がコテンと首を傾げると京也は頭を抱えた。何故だ。
まあ、これ以上こんな茶番をしてたら話が進まないからさっさと買い物を済ませるか。
「このスーツの欠点は?」
「切り替え早えな……欠点は大きく分けて三つだ。」
そう言って京也が右の親指、人差し指、中指立てる。……普通に人差し指、中指、薬指じゃダメなのだろうか。
「一つ、背中から出てるファスナーが目立つ。」
「服着れば首裏からチラチラ見える位だから問題無い。ていうかそもそも服着てない方が目立つ。」
そういって当のロボを見ると鏡で自分の姿を確認して自分の美しさは罪だとか言って神に懺悔をしていた。何をやってるんだアレは。
「……二つ、耐久性が低い。具体的に言うと人間の皮膚並。乱暴にすれば直ぐに破ける。」
「……破けない様に善処するよ。修理費も馬鹿にならないだろうからね。」
そもそもロボと二人(?)暮らしするだけで家計が火の車なのである。無駄遣いは出来ない。
そんな事を考えていると京也が疑問を口にする。
「そういや金はあるのか? いくら友人の緊急事態とはいえ流石にアレを無償で提供することは出来ねえぞ? ……そりゃまあ値引きはするが。」
京也の言葉に鏡の前のロボがピクリと反応する。……オイ、コッソリ脅しの準備をするんじゃない。それで脅すのは僕か京也かどっちだ?
「……大丈夫だよ。そもそも僕はお金を払わないしね。」
「どういうことだ? 代金は払ってもらわねぇと困るんだが。」
京也が怪訝そうな顔をして此方を見てくる。
「いや、だってさ。こういうのは持ち主が払うべきだろ?」
そもそも僕はこのロボの同居人というだけで費用を割く理由は全くない。寧ろ貰っても良いと思う。
「マスター? ああ、姉ちゃんのことか……て、待て。そのパターンだと……」
「そうだねーお金が無くて親父さんに頼むんじゃないかなー。幸い親父さんは先輩を溺愛してるから快く払ってくれるだろうなー。」
「白々し!? 語尾に(棒)って付きそうなぐらい白々しいな!? 最初からそれ目当てで此処に来ただろ!」
そう言って京也が「ズビシィッ!」と、此方を指差してくる。
「失礼な。ちゃんと服は自腹を切るつもりだったよ。」
想定外の良品(超高額)があっただけだ。無論、買わないという選択肢は無い。どうせ同居するのだったら殺人兵器より少しばかり暴力的な只の美少女の方が良い。
そんなことを考えながらシロの方を見ていたら本ロボと目が合ってしまった。
「どうしました変態さん。私に見惚れてでもいたんですか?」
「……まあ、あながち間違ってない。」
「そうですか。」
返ってきたのは意外にも淡白な反応だった。
あれ? もうちょっと穢らわしいとかなんとか言われるかと思ったんだけどな……
「なら見物料としてこちらのハーフパンツとTシャツも買って下さい。」
「図々しいね!?」
ある意味彼女らしい返しがきて安心した。
「ああ、そういえばスーツの欠点の三つ目って何なんだい?」
Tシャツとハーフパンツを籠に入れながら京也にそう尋ねる。
話が逸れてすっかり忘れていたが欠点といえるものは三つだった筈だ。
「ん? あー、これはロボには関係ない欠点だと思うんだがな……」
京也がボリボリと頭を掻きながらそれを言う。
「そのスーツ。ものすんごく通気性が悪いんだ。」
「そぉれを早く言えええええ!!」
僕が叫んだ瞬間、今まで平静を装っていたのであろうシロが倒れた。
「ぐっ、不覚。この程度の熱にやられるとは……」
顔を青くしてシロがそう言った。
「言えよ! 暑いなら暑いって言えよ!」
「オシャレは……我慢です。ガクッ」
「自分を大切にしろおおおお!!」
結局、スーツの連続使用は猛暑日の場合は十分。平温の場合でも四十分が限界という残念な結果になった。
やっとお買い物終了です。だいぶ疲れた残機1LIFE0です。
感想、苦情、暴言、この小説を読んだら友人がバンコクの正式名称暗唱してた!等の報告は感想欄までお願い致します。今なら抽選で先輩の親父さんのお宝、先輩アルバム2016をプレゼント! 欲しい!!
そういえば御報告が遅れましたがツッタカタッタッターを始めたみたいです。私のユーザーページにリンクをポイしておきました。
ふーかの次回☆予告
楓花「今回も次回☆予告やっていくよ!」
零人「そうは言っても次話は次の日の話になるんでしょ? いくら先輩でも未来は……」
楓花「センくん!! それは違うよ!」
零人「え?」
楓花「一日の疲れはお風呂に行って癒やさなきゃだよ!」
零人「あーなるほど。逆に疲れそうな気がしないでもないですけどね。」
楓花「というわけで次回の誰銭は『誰か銭湯の男湯に美少女(ロボ)が居た時の正しい対処法を教えてくれ。』でお送りするよー!」
零人「最終回かな?」
次回予告を信じちゃいけない。




