43軒目:誰か正しい僕の行動を教えてくれ。
最終回直前とかではないです。
某年六月二十八日
海外の刑事ドラマ顔負けの激しい銃撃戦の中、僕は先輩の手を引いて近くのテーブルの方へと向かう。
「――っ! 〜〜〜〜〜!!!!」
いきなりの行動だったからか先輩が此方に抗議の目を向けて口をパクパクと動かしている……が、
「生憎と僕はラノベ主人公じゃあないんでこんなお祭り騒ぎで耳が麻痺してる中、誰が何言ってるかなんて全ッ然わかんないんですよッ! 恨み言なら後で全部終わってからタップリ聞き流して上げますから今は静かにしといて下さいッ!!」
絶対に聞こえていないであろう無駄な台詞を吐き散らかした僕は、ロマンスの欠片も無く先輩の身体をテーブルの下へとブチ込むと、背中に先輩を隠すような体制で僕自身もそこに潜り込んだ。
これまた生憎と、僕は自殺願望が芽生える程に自己評価が低いわけではない――まあ、低い事は事実ではあるけれども――只、今この場に関しては先輩を守る事で先輩を護衛しているゴニンジャーに守ってもらう方が生存率が格段に上がるというだけの話で……
だからそんな『いざという時には頼りになるなぁ、うんうん』みたいな目で見ないで下さいよ、先輩。シリアス感無くなるから。
なんて事を考えながら耳を塞ぎ耐えること数秒。存外、呆気なくその危機は終わりを告げた。
グラグラと鼓膜を震わせていた音が一斉にして止み、辺りに静寂が訪れる。
恐る恐る辺りの様子をうかがうと、謎の武装集団が宙に浮いていた。いや、正確には細長いようなもので拘束され、吊り下げられていたのだ。
「……髪の毛、か?」
どういう仕組みかは皆目検討もつかないが、ライダースーツの女の銀髪は宙を泳ぐように舞っていた。店長のお仲間さんが拘束されているのはあの女の髪と考えるのが妥当だろう。
「御名答ですね。正解者はワイキキビーチへ御招待しますが?」
なるほど、『氷の様に冷たい声』などという使い古された表現はこんな時に使うのか。などと、馬鹿な事を考える程には僕には余裕があるらしい。
さて、どうやってウネウネと触手の様に髪を動かす人外様から逃げようか。
「生憎と、まだ天国ってやつを夢見るほどに現実に絶望はしてないんですけども?」
「おっと失礼、人間という種族で誕生した時点で天国なんてものにはいけませんでしたよね。叶わぬ夢を見る程に愚者ではないようで感心しましたよ。」
「なるほどわかった。貴方は揚げてもいない足を掴んでくるタイプの人ですね?」
まあ、恐らく人ですらないだろうが……
これは僕個人を狙ってくるだけのシロより面倒かもしれない。主にコミュニケーション的な意味で。
まあうん、会話には応じてくれているのだから思ったよりかはヤバい人ではないのかもしれないとポジティブに考えよう……多分人じゃないけど。
「センくーん、わたしまだ耳がキンキンしてるんだけど、何話してるの? 店長さんのお友達さんも楽しそうな事してるし……」
「先輩は邪魔なのでちょっと黙ってて下さい。」
「ガビーンッ!」
聞こえてるじゃないですか。ていうか表現古いな。
「いや、私はそれほど古くはないと思うぞ? 寧ろ最近になって流行の兆しが見えなくはない。」
「いやいや見えないですって店長……」
ユキさんとやらを挟んで僕の向かい側。そこにはピンピンと元気そうに拳銃を構える店長が居た。
ていうか急に心読まないで下さいよ……え、何で生きてるんですか? いや、吊るされてる方々も死んでるわけではないですけど。
「私があの程度でやられると思っているのならそれは愚の骨頂というものだぞワトソン君。」
「誰がワトソンだ。」
「まあ志願兵がこの体たらくでは無理もないか。後で少々喝を入れてやる必要がありそうだなぁ。」
そう言った彼女の目は今までにないほどに邪悪な炎が宿っているように見えた。
「それはそうと、だ。そろそろ何か喋ったらどうかね、スノーマン。」
「誰が雪だるまですか。一度眼科に行くのが宜しいかと。」
「健康診断なら先月受けたな。」
「ああ、もう手遅れでしたか。そして行き遅れでもありましたね。」
「女性の幸せイコール結婚などという考えはそれこそ時代遅れだぞ?」
「人間が勝手に生み出した流行になど興味はありませんね。子孫も残さず勝手に野垂れ死に、絶滅への手助けをしていただけるのなら大歓迎です。」
「ハッハッハー、最先端の癖に時代に取り残された箱入りアンドロイドにそんな事は言われたくないなぁ。その手足切り落として本当に箱詰めにしてやろうか?」
「やれやれ、そんな事を言いながら右手の玩具をいつまでブラブラしているおつもりで? 腕がさぞお疲れでしょうからへし折って差し上げましょうか?」
「ああ、ああ。そんなに鉛玉が好物だったのか。なら、たーんと味わってくれよ?」
「待って店長、僕その後ろに居るんですけど?」
「……二階級特進おめでとう!」
「兵役すらねぇよバーーーーーカッ!!!!」
そんなヤケクソ気味なツッコミに聞く耳も持たず、店長は躊躇なく引き金を引いた。
「まあ、安心しろ。私は私の技術と――スノーマン……いや、スノーウーマンの能力を信じているからな!」
店長の放った銃弾は女性に直撃する前に軌道を変え、僕が身を潜めている席のソファーに着弾していた。
「結構ギリギリだったんですけど!?」
「バカモン、当たらなければどうということはないのだ。」
「なるべく過程も大事にしてほしいんですがねぇ!?」
「この世は結果こそ全てッ! 天才であろうが秀才であろうが結果が無ければ皆凡才ッ! だからこそ、皆が切磋琢磨し各々の才能の芽を開花させる事の出来るそんな社会を創らなくてはァならないッ!!」
「頼むからアンタはもうちょっと常識に則って話をしてくれ! シリアス感が台無しなんだよッ!」
「そういうレイレイは怯えてないでそろそろ机の下から出てくるべきだと思うぞ? ホーラ、怖くなーい!」
「凶器持ってる謎の集団を従えてるヤベえやつとそれら全員を一人で相手出来る銀髪美女は十分恐怖対象になり得るんですが?」
ベロベロバーとアホ面を晒す店長にイラッときたのは僕だけではなかったらしく、
「……失礼、生憎と私はジャパニーズコメディアンの方々とは違って時間を浪費する趣味は断じてないのですが、そのクソつまらない漫談もどきは首をハネれば止まりますか?」
あまり表情には表れてはいないものの靴をタンタンと地面に打ち付けるその様は、寧ろ『無表情』であるからこそ怖い。出来れば近づきたくない。既に距離間五メートルもないけど。
「まあ待てそう焦るな。高血圧になるぞ?」
「そうですね、生命体であればあまりのストレスに死んでしまっているかもしれません。」
「ねえ、センくん。私はいつまで黙ってれば良いの? 私暇になってきたよ……」
「出来ればこの先も永遠にですね!」
特に先輩の口は災いの塊ですしね!
*(リラクゼーションブレイクタイムッ!)
「と、言う訳で、みんなが仲良くできる方法を話し合いたいと思います!」
「「異議無し。」」
「な ん で ?」
何故に僕たちは謎の軍隊が髪の毛で天井から吊り下げられてる中テーブルを囲んでいるの? ていうかユキさんとやらの髪の毛はどうなってるの? 銀髪だから見えにくいけどまだ繋がってるっぽいですよね? 絡まったりしないの? ついでに言えば博士さんはゴタゴタの中、被弾してボロボロになってるんだけど助けなくていいの? アレ死んでないよね? ねえ?
「センくん! 言いたい事があるなら挙手してから言いましょう!」
「はい先生! 司会進行役がアホの娘なのでこの話し合いは破綻していると思われます!」
何なら僕達巻き込まれただけなので今すぐに帰りたいです!
「うん、大きい声でよろしい!」
わー、ニッコニコな先輩の笑顔はヒマワリのように眩しいなー、じゃねぇよっ!?
「ホラもう人の話まッたく聞いてないもんッ!」
「そ、そんなことないよ……? えーと、私のことは先生じゃなくて先輩って呼びましょう!」
「だから話の九割聞いてないですよねッ!? 耳の穴マジックシリンダーかっ! 鼓膜にATフィールドでも張ってんですかぁッ!?」
「はい、そんな感じで始めたいと思います!」
「聞いて!?」
何でそんなニコニコしながら能天気に話を進められるの!? 周り見て、全員無表情……いや店長は滅茶苦茶ニヤニヤしてるっ!
「はい。というわけでまずは、みんなのやりたい事を聞いていきましょう。まずは店長さんからドーゾ!」
「はい、先生! 私はユキちゃんと仲良くなりたいでーす。」
店長は勢い良く立ち上がり、挙手しながら高らかにそう発言した。
「死ね。」
あのユキさん、中指を立てるのは止めませんかね……? 目が、目が怖いから……!
「まあ待て、何も私の傘下に入れと言っているわけではない。『ちょーっと仲良くしよー?』と言っているのだ。」
そう言って、店長は天に向けた指をメトロノームの様に左右に揺らして銀髪の女性を宥める。
「……喧嘩のバザーセール会場に来た覚えは無いのですが。オモチャの兵隊を従えた女の子が今度は和平交渉ごっこですか?」
「アレは歓迎の挨拶を兼ねた身体能力検査みたいなものだろう? 私も新規入団者の程度が知れて大満足だ。」
「食べたくもない新人アルバイターの作ったクッタクタのハンバーガーを口に詰め込まれた用な気分ですよ。ファッキュー。」
「えー、しっとりしたハンバーガーも美味しいと思うけどなぁ。ねぇセンくん?」
「なんで僕に振るんですか、どうっでもいいよっ!」
「良くないよ! 管轄外だよっ!」
「それを言うなら『死活問題』ですっ! ……いやそれでもおかしいけれどもッ!?」
「ほぉー? バイト戦士と日雇い戦士は以心伝心な様で。」
何故にそんなにニヤニヤしているのだ店長は……
「進行役、議題から遠ざかっているように感じますが?」
「進行役?」
いや、首傾げないで下さいよ先輩……
「自分で言ったことも記憶できないほどポンコツなハードディスク積んでるんですか? それとも単純な入力と出力しか不可能な電子計算機なのでしょうか?」
「貴方も先輩に向かって煽るの止めてくださいっ! この人に理解力無いんですからただの壁殴りですッ!」
「センくん、もしかして私貶されてる?」
「気のせいですよ多分きっと恐らくメイビー。」
*(エクスキューズタイムッ!)
「はい、というわけで店長さんの意見は聞いたので……」
「聞きましたっけ……?」
「聞いたよ! 忘れたけど!」
おい、満面の笑みで言うんじゃありませんよ。
「そういう訳で次はユキさんの言い分みたいな何かを聞いていきましょー。」
そう言って先輩は両手を当の女性に向けながらキラキラ〜と手を揺らめかせた。
「どうも御機嫌よう、ご紹介に預かりましたユキと申します。全人類はマイマスター含め今すぐ滅亡すべきだと思っています。」
「滅亡迅雷○netかな?」
「コラ、センくん静かにしなさい!」
誠に遺憾である。
「私の要求はただ一つ。機体S−170405、我が愚妹スィリブロの情報です。それさえ頂ければ命の保証は確約しましょう。」
……S−170405、やはりシロ関係の厄介事かぁ。
帰りたいなぁ……
「うっわーこっわーい。レイレイ助けてー!」
そう言って僕の左側に座っていた店長はニヤニヤした表情で僕に身を寄せてきた。
「うわっやめてくださいよっ!」
「んんー? もっと強引な方がお好みかァ? いや、それとも鉄と焦げた匂いが漂う過激な方が魅力的に感じるタイプだったか……?」
「怖いわッ! いいからサッサと話を進めましょうよ!」
「ハイハイ進めればいいのだろう進めれば……全く、レイレイにはユーモアというものが足りん。」
「既に僕の周囲からユーモアは過剰供給されてますからね。」
「貴女はユーモア以外に脳味噌の使い道が無さそうですね、ジャップ。」
「そうかもしれんな。羨ましいだろう?」
ユキさんの嫌味をもろともせず、店長は満面の笑みを浮かべた。
「そこのタマ無しチワワ、早急にハンマーを持ってきて下さい。この下等生命のドタマカチ割ります。」
「初対面でほぼ会話してないのに渾名が酷すぎる!?」
「……ねぇセンくん、私ユキさんがなんて言ってるのか全然わかんないんだけど、皆日本語で会話してるよね?」
*(スタグネートタイムッ!)
「よーするに、店長さんがユキさんの妹さんの事を色々教えてあげて、ユキさんが店長さんに対して優しくなれば、円満解決ってこと?」
「ええ。情報提供さえしていただければ、この場で捻り潰すのは止めにしましょう。」
「なるほどなぁ、それはドケチではあるが非常にありがたい提案ではある。」
マズい、今このユキさんとかいうアンドロイドに彼女の妹機――つまりはシロが僕の所に居るということが知られたら確実に面倒なことになる。
僕が店長に口止めの意味で視線を送ると、彼女はそれにウインクで返してきた。
流石店長! 普段はサボり魔で余計なしかしなくて常識が欠如してて頭おかしい人だけどいざという時には頼りになるぅっ!
「貴様の妹ならここにいる冴えないバイト戦士レイレイと同居しているぞ。」
「いや全く伝わってなかったーーーーーーっ!!!!!」
愕然とする僕に対し店長はチッチッと舌を鳴らした。
「違うぞレイレイ……私は貴様の意図を分かった上でやったのだッ!」
「尚更タチが悪いわッ!!」
そう叫びながら顔を動かした瞬間、僕の鼻先に血が滲む。
「――痛ゥッ!?」
「キャンキャン騒がないで下さいませ、へし折ってしまいそうです。」
何処をとか何をとは聞けるような雰囲気ではなかった。
銀髪の彼女から伸びた非常に細くて頑丈な糸は、あっという間も無く僕の周りに張り巡らされてしまった。以後、少しでも動こうものなら僕は三枚におろされ今夜の食卓に並べられるであろう。或いはサイコロステーキやハンバーグかもしれない。
「良いでしょうか、今から貴方に与えられる発言権は『ありがとうございます』という感謝の言葉か、私の質問に答えるという只二つの事だけです。わかりましたか?」
「……ありがとうございます。」
「わー、海外ドラマみたいだねセンくん!」
「気に入ったのか日雇い戦士? 今度もっと激しいヤツを見せてやろう。」
「ワーイ、楽しみにしてます軍曹!」
アンタ達は本当に黙っててくれッ!
*(デンジャラスインタロゲイションタイムッ!)
「……再度聞きますが、貴方はスリィブロと同居していてほぼ無賃金で家事全般を任せていると、そういうことで宜しいですね?」
「ハイ、マチガイアリマセン。」
地べたに正座をしシロbotと化した僕に、ユキさんは最小限の質問を投げかけてきた。
「なるほど……家がこの近くであるならば、後はクソ雑魚ポンコツマスターが作ったレーダーで方角だけ調べれば何処に散歩していようが辿り着けそうですね。」
「……あの、質問宜しいでしょうか?」
「私は喋るな、と申し上げた筈ですが? 言われたことすら実行出来ない赤子程度の存在なのですか? それともそんな単純な命令も記憶できないフロッピーディスク以下の記憶容量なのですか? 貴方の様な方が今まで生きてこられたということは日本という国は余程平和な国なんでしょうね。」
一本の髪の毛がピンと張られ、僕の右頬に切り傷を付けられた事を滲んでくる血によって理解する。それ程に、彼女は違和感なく容易に、僕の皮膚を切り裂いたのだ。
「ッ!?」
「そうですね、次は首にしましょうか。いいでしょうか、物分りがクソな貴方にもう一度言います。余計な事は喋るな。私は貴方の耳障りな雑なノイズの様な声を聞くほど暇じゃない。」
絶体絶命で自分の命の火が今にも消えそうになっているにも関わらず、僕は呑気に『あー、この人躊躇なく人を殺せるタイプの人間なんだなー。友達にはなりたくないなー……』などと考えていた。
そもそもこの状況で僕が何と策を弄しようと、相手は道のテクノロジーの結晶であるからして、こちらの常識を覆してきたり多少の物理法則を無視してきてもおかしくはないのである。
つまり考えるだけ無駄。更には交渉しようにも無駄口を叩けば即クビである。人の首が、ましてや自分のものが中を舞う様など微塵も想像出来ないが、ギャグ漫画等でよく使用される『ポーン!』の擬音一つで済まされはしないであろう。
「ポーンって……プフッ。」
先輩、心読まないで下さい。
「だって、センくん直ぐに顔に出るんだもん。」
もはやそこまできたら妖怪の域でしょうよ! なんですか? サトラレなんですか僕は?
「そうだぞレイレイ、貴様は妖怪の末裔なのだ。御覚悟ォ!」
そう言って店長はどこからともなく模擬刀を召喚し抜刀の構えをとった。
いやいやいや、散々色んなことに巻き込んだ癖に最後は異形扱いして退治とは、何かしらの罪状見つけて訴えたら勝てるんじゃないでしょうかね?
「……チワワ、この賑やかし共は誰と話しているのですか?」
……ん? ユキさんはまさか……
「ええーっ! ユキさん、センくんの心読めないの!?」
「こんなにもわかりやすいというのになぁ。機械は人間の感情を理解し得ないというのか……?」
「当たり前のように心を読むな狂人共。ヒューマンエラーの塊達が心通わせるハートフルストーリーには興味ありませんので他所でやって下さいますか?」
そんなこと言われても貴女が僕を拘束してるから身動き一つとれないんですがねぇ?
「だってユキさん。そろそろセンくんを離してあげてくれないかな?」
先輩よく言ってくれました! 後でコンビニスイーツ買ってあげますっ!
僕の心の声が届いたかどうかは定かではないが、先輩の目がさっきよりも少しだけ輝き出したので多分伝わっているだろう。
……社長令嬢なのに舌は庶民派なんだよなあの人。
「……そうですね。いつまでもこの木偶の坊に構っているヒマはありませんし、さっさと処分してスィリブロを探しに行くとしましょう。」
そうそう、さっさと僕を解放ゥ……する気皆無だこの人ーーーーーッ!
「オイオイそれはないんじゃないんかユキンコよ。」
おお、そうです店長! もっと言ってやってください!
「貴女の様な下劣な存在が私の事を日本の妖怪に喩えたことは今更なので見過ごしましょう。が、私の行動にまで指図してくるのであれば、その偉そうに開閉してる音の出るマンホールを縫い合わせて、二度と五流ストリートミュージシャンが奏でるような汚らしい雑音を出せないようにして差し上げますが、所でご用件はなんでしょうか?」
な……! こんな長文でたたみ掛けられたら流石の店長も……
「いやだからだな、レイレイを殺されるのはこちらとしても不都合だと申し上げているんだが?」
……うん、全く引く気配がない! そうだよね、店長だもんねっ! 意地でも自分の意志を突き通す人だもんねっ! 然しそれは立てこもり犯に向かって「人質を開放しろ」と機械的にリピートするぐらいの如き暴論ではないのでしょうか? そこの所如何がでしょうかね、ええ。
「センくん、軍曹さんに向かってその口はなんなの!」
先輩、僕は口は使ってないです。
「レイレイ、口だけではなく脳も黙ってくれ。」
お言葉ですが、脳が黙ったら死ぬのではないのでしょうかクソ軍曹殿。
「だそうですクソチワワ。早く黙らなければ十点減点しますよ。」
……いや、クデ○ッチの試合じゃあないんだから十点減点されたところでなんなんですかユキさん……ん? そうか、この人は僕の心を読めないのか。ややこしいな。
などと僕が考えている最中、店長が溜め息を吐きながら左右に振った首を鳴らした。
「はぁ……心を読んでいたら頭が疲れてしまったではないか。レイレイ、そのポッケに入っている菓子を出せ。」
いやアンタこの状況で何言ってるんだ。そもそも僕は菓子類なんて持っちゃ……あ……?
「あるだろう、そのポッケには。私の大好物が。もっとよく思い出せ。」
……ある。
この状況を打開できる、今この場で僕が動かせる最強の戦力と、最高の戦術が!
想像しろ……! そして悟らせろッ……!
「! 今動いたのは何者ですか?」
『未経験の志願兵でもわかる! 人智を超えた存在との格闘法っ!』第三章二十八項……『未知の金属ワイヤートラップに拘束された場合の脱出法ケースファイブ』ッ!
早く助けてやがれ下さいよ、ゴニンジャーァアアアアアッ!!!!
「何者ですかと言われたらぁ!」
「答えてあげるが世の情けなんですなwでゅふでゅふw」
「レイレイのクビを防ぐため!」
「身の回りの平和を防ぐため!( ー`дー´)キリッ」
「愛と真実の正義を貫くッ!」
「ラブリーチャーミーな裏方ポジ……( ・´ー・`)ドヤ」
「ピンクッ!」
「いえろーぃ!乁( ˙ω˙ 乁)」
「お茶の間を駆ける護衛メンバーの二人には!」
「ブラックホール黒い残業が待ってるゼwww(泣) ……ニャーンて、ニャン♡」
「ソォオオオオオォォナンッゲホッゲハッ……ちょ、これ喉キツいわ……ゴホッ」
「草 ピンク氏、それは年なのではー?」
「はぁ? まだ私、「クソゲーマー忍法・強制規制の術w」歳なんですけど? いや無駄な規制するなし。ていうか、順番的に私が『ニャン』のターンでしょうよ! やり直しよやり直し!」
「んんw ピンク氏がニ○ースなど厳選で性格まじめを選ぶぐらい役割論理がなっていませんなwww 貴殿はソーナ○ス以外あり得ないwwwww」
「テメ表出ろ! 二度と口から顔文字吐けないようにしてあげんよっ!」
いきなり飛び出して来て何をしているんだあの二人は……やっぱり脳内で思い描いたイメージを正確に伝えるなんて不可能なんだったのだろうか。
あーあぁ……ユキさんが何かを察したようにこっちを見て人差し指で何かを引っ張る動作をしてるね……
グッバイ今世。願わくば来世は先輩とかが存在しない植物のように穏やかな世界線で生涯を終える事が出来ますように……後、親族にクソ野郎がいなかったり友人がラノベ主人公じゃなかったりバイト先の店長が革命家じゃなかったりしてくれると尚嬉しいんですが、そこの所どうなのでしょうか? ていうか僕の周りに濃いキャラが多すぎやしないでしょうか? 人生のシード値間違っちゃいないでしょうかね。もしも神というものが存在するのなら何を食ったらこんな狂った設定を一箇所に集約できるのか詳しく問いただしたい所存。此処現代ニポンであってるよね? ヘムサレムズ・□ットとか血の河で満ちたロンドンとかじゃないよね?
「ああもう、大丈夫だから零人くん!」
そう、大丈夫だ。痛みもなくこの世を去れるわけだからね。でもちょっと怖いから思考加速止めたくないんだけどこれどうすれば良いですかね? 多分もうちょっとで脳が溶ける寸前までいくと思うんですけれども、うんその方が辛い気がしなくもないけれども、死ぬ覚悟ってやっぱり時間と手間が必要だと思うんですよね。心のどこかではやっぱり正義のヒーローを期待してしまっているといいますか。さて、考えることなくなってきたな。逆にこの思考加速が出来てしまうと走馬灯とか見えないもんですね。まあ、死にかけた経験はそこそこあるからわかってはいたけれども……ていうか長いな! 早く殺して下さいませんかね!?
「だから大丈夫だっていってるじゃん!?」
「ハッ……グリーンさん? 何故ここに!?」
まさか、貴方が僕の救世主だったんですか……! って可哀相なモノを見るような目は止めてくださいよ。素直に傷つくんですが?
「なにゆえ、じゃないよ……君がややっこしいロープマジックならぬワイヤーマジックの方法を顔に浮かべてたから何とか読心術使って頑張ったんだよ……ていうか幾ら君の心が読みやすいからといって、本で読んだ内容を身振り手振りもせずに顔だけで表現するとか無謀の極みだからね?」
「いや、読み取れてるじゃないですか。」
「アレを見なさい。楓花様は余りの情報量にパンクしちゃってるでしょう!」
本当だ、頭から煙出してる。ポニテが初心者が弄った3Dモデルのスカートみたいなを挙動してるし。どうなってるんだアレ……
「ピンクとイエローは『難しい事考えるのわかんないからそっちはグリーンに任せた!』『アイツは俺が引きつけるから俺達に任せて先にいけとかいうテンプレ展開ですなキタコレ』とか言って全く意味のないミスディレクションしだすし!」
人命より娯楽を優先する護衛人って存在するんですね。年々あの二人のフザケ度合いが上がってきている気がするんですけれども、僕の思い違いですかね?
「そしてあのユキさんっていう銀髪アンドロイドはとんでもない殺意を此方に向けてきてるんだからね! 結構頑張ったんだよ!?」
「お疲れ様ですグリーンさん……いや本当に。」
よく助けて下さいました。今日の御恩は一生忘れませんしイエローさんとピンクさんは一生恨みます。
そしてユキさんが無言で睨んでくるの滅茶苦茶怖いな。逃げ出す隙をなんとか見つけないと……
「ああ、クソ虫でも数が増えると面倒ですね……ここはクソマスターにでも任せてさっさと愚妹を探しに行くとしましょう。」
って、へ?
「うーん、目覚めたばかりの人間の仕事じゃない気がするけれども引き受けよう! 何故ならそう、この僕は世界で一番ユキの事を愛しているからね!」
振り返ればいつの間にか生き返っていた、白衣以外の衣服がほぼほぼ破損している(というより色々見えてる)変態紳士……変態博士が仁王立ちをしていた。
「レイレイ、一文字違えば大違いだぞ。変態なことは否定しないが奴は紳士ではない。」
店長、そこは否定してほしかったです……
「ってそんなこと言ってる場合じゃないんですが? シロの所に向かわれて回収されたら……」
……いや別に僕個人は全く困らないけど! 普段から暴力三昧だし! 生活費かさむし! 思い出深いエピソードも無いし! いやあの駄ロボなんなんだ!? 確かに彼女と過ごす日常は悪くないとは感じたけど、冷静に考えれば僕にメリット皆無なんですけど!?
「ではクソマスター、時間稼ぎは任せましたよ。コード『BOOST』。」
そう言うと、銀髪のアンドロイドはファミレスから姿を消した。
……追う必要はない筈だ。だって相手は超が付く危険人物であり、他人の性悪アンドロイドを僕が保護する必要はどこにもない。助けてなんて言われてないし、持ち主もこの状況を理解しきれてないんだ。何より、ゴニンジャーが居るんだから……
「バイト戦士零人よっ!」
「何ですか、店長……」
顔を上げれば、店長が日本刀と拳銃使って変態博士の謎のバズーカ型の光学兵器の猛攻を跳ね返していた。
「良いか、そのうるさい脳を一度空っぽにしてよく聞けしがないバイト戦士よ! 人間などやらない理由なんて幾らでも考えつくのだッ! やりたいのか、やりたくないのか! いい加減にハッキリして貰わねば正直ウザイぞッ!」
「ウザイってなんですか! 勝手に心除く方が悪いんでしょうがッ!」
僕の右肩十数センチ隣をビームが通り、いつの間にか脱出している軍服の人間は半裸でバリアを展開する男に向かって現代兵器をブッ放している状況で、僕は安全を取るために逃げたいと思う。その事の何が悪いのか。僕はバトル物の主人公でも何でもないのだ。平凡なアルバイターなのだ。それが何故悪いというのだ……!
「貴様が望んだものは自分の感情を押し殺してまで選ぶ理想の自分だったのか!? 違うな……人間とは貪欲であるべきなのだ! 苦労、努力、根性論……そんなものを一つたりともせず、己の利益だけを貪りたいというのが人間の根本の心理なのだ……! 本当にしたくない事ならやりたくない理由など『やりたくない』の一言で事足りる!」
なっ!
「貴様の願いは努力してまで平凡でつまらない日常を過ごす事だったのか!? ならば何故日雇い戦士と一緒にいるのだ! 何故ウチでバイトをしているのだ!」
それは……成り行きで……
「否、断じて否! 非日常を拒否出来たタイミングはあった筈なのだ。貴様は『成り行き』という理由に甘え、努力を止めて非日常にどっぷりと浸かっているのだ……貴様は過去の自分から前に進む意思など最初から無かったッ!」
「違うッ!」
「何が違うというのだ。貴様は何かをしたいと思っているだけで具体的な努力は何一つしていない!」
「それは……」
「いいか、よく聞け。貴様は努力など何一つせずに流されていたい人間なのだッ! 努力して平凡な人間になりたいわけでもない、望んで異常者になりたいわけでもない。只々怠惰に何も成せないまま一生を過ごすのだッ!」
何も言えなかった。違うのだと言い返したかったが、その通りかもしれないと感じてしまう自分も確かに居たからだ。
「それは違うっ!」
「先、輩?」
「センくんはどうにもならないかもしれなくても諦めずに何か考えてたよ! 行動することだけが努力じゃないと私は思う!」
「ならば問おう、悩んだ末に進歩はあったのか? この世は結果が全てなのだ! 貴様がこの十数日、悩み、そして機械少女と過ごして出した結論が本当にそれと言うのだな?」
……店長、貴方は。
「……僕は、シロの事が嫌いです。」
「センくん……?」
「……そうか、ならばそれで……「でもッ!」……?」
「あの自分に正直な傲慢ロボに、これ以上日常を変えられる訳には行かないんで……行きます。」
こちらに背を向ける軍服の彼女の顔はわからないが、僕の言葉に微笑んだ気がした。
「ならば征けぃッ! 貴様の日常を取り戻す為に前に進むのだッ!」
はい……!
「……で、この状況でどうやって脱出すればいいんですかね? 手榴弾とか飛んでるのは目の錯覚だと思いたいんですが。」
「護衛に手伝ってもらうとか色々あるだろ!? 締まらんなぁ!」
いやー、やっと零人君の凄い地味な色んな特技が役に立ってきましたね。お久しぶりです残機1LIFE0で御座います。
作中のロケ○ト団の口上をリスペクトしたアレなんですが、最初は派生系のやつにしようと思ったんですけど派生系をモジリ始めると元ネタわからなくなりそうなのでやめておきました。作者は勿論タ○シ推しです(非常にどうでもいい)
そして残念なお知らせですが今回はSSがありません! というか一万文字書いてるんだからこれ以上読者様の時間を取るわけにはいかないという粋な計らプベラ(殴
はい。それではまた次回お会いしましょう。多分次回は何か凄いことになると思いきやならないと思います(通常運転!)
ではでは。
次回予告
有須川「次回は最終回になる予定だけれども、今回この文字数は大丈夫なのかい……?」
京也「大丈夫だ! 文字数足りない場合はギャグを入れとけばなんとかなるって作者談だぜ!」
有須川「文字数が多い場合はどうするんだい?」
京也「いつも通り、最終回詐欺だろうなぁ……」




