38軒目:誰か正しいPDTの使い方を教えてやってくれ。
38話です。ギャグとヒロインと真面目要素……まあ、そんな感じです。嘘です。
某年六月二十八日
いつも通り働いて、クタクタになって家に帰って、シロに詰られて、先輩にとんでもない事件を押し付けられて……そんな日常が続けばそれでいいと思ってしまう自分がいるのは確かなんだ。
それでも、日が必ず沈む様に、人がいつか死ぬ様に、終わりはやってくる。それは、僕も彼女も望んでいることで……
それでも、その前に彼女と少しでも触れ合えたなら、僕は胸を張って変われたと言えるのだろうか。
昼前のスタッフルームの中で、暫しの休息を楽しみながらそんなことを考えていると、店長がハンドスピナーを回しながら近づいてくる。
「随分とシケた面構えをしているな。まるで今にも遅刻しそうなガキの咥えていたピーナツバターがたっぷりのトーストを買ったばかりのアディ○スのスニーカーで踏んづけてしまった様な顔だ。」
「どんな顔ですか……」
いや本当にどんな顔だ。というか今時トーストを咥えて走る遅刻寸前の学生なんて見ないだろう。
「いやいやお約束だろう。まさか、バァナァナァ派だったか?」
「どっちでもいいですよ……」
ていうかその発音、鼻につくからやめてほしいです。
「だったら口に出して直接言うんだなぁ、アルバイター零人よ。」
「だから何で心読めるんですかっ!」
「センくんは分かりやすいからねー!」
「そうだぞ、レイレイはわかりやす……んん?」
「え?」
「ほえ?」
いや、『ほえ?』じゃあないんですよ。アンタだア・ン・タッ!
「何で此処に居るんですか先輩ッ!!」
「えーっと、呼ばれて飛び出てラララら~ん?」
「それを言うならジャジャジャジャーン……じゃなくてっ! 此処スタッフルームなんですが!? どうやって入ったんですかっ!」
「えっと、田中って人に『センくんの先輩なので入れますかー?』って聞いたらオッケーして貰えたよ?」
「ちょっと田中クゥーンッ!?」
叫んだ僕の方を店長が掴む。
「よすんだレイレイ、狂気のゲーマーこと田中も止むにやまれぬ事情……は、多分無かったと思うが、何なら九割方興味本位プラス下心だと思うが、ここは残りの一割を信じてやろうッ!」
「全くフォローをしていないのに信用を強要してきたこの人っ!?」
「面白ければ全て許されるとだと思わないか?」
「赦されねぇし僕にとっては何一つ面白くないんですがっ!?」
「コラッ、センくん。店長さんを困らせちゃ駄目でしょ!」
「何なんだアンタはっ、理不尽が服着て不条理背負って逆立ちしながら猛ダッシュしてきたみたいな存在だなっ!? そして現在進行形で困らせてる原因はアンタだよォッ!!」
「いいぞ、レイレイっ! いい感じに敬語が崩れている。というより最早相手を敬う気持ちが欠片も無いッ! その調子なら我が軍が本社を乗っ取る日も近いぞッ!!」
「駄目だ此処には馬鹿しか居ねェエッ!!!!」
*(フールフェスティバルタイムッ!)
「で、センくん。『理不尽が服着て不条理背負って逆立ちしながら猛ダッシュしてきたみたいな存在』って何?」
「その話まだ引っ張るんですか!?」
「センくんはムシンケーに人を傷つける言葉を言う事があるので指摘しないとね!」
「えぇ……いや、うん。ごめんなさい……じゃないですよ!? そもそも先輩が勝手に入ってきたから悪いんじゃないですかっ!」
「田中さんは入れてくれたよ?」
「なるほど、田中は後で処刑しておくから問題はないな。」
そう言ってウンウンと頷く店長。
「確かにそれなら問題は……あるよ!? 大アリだよッ!?」
「うるさいぞアルバイター零人、此処で重要なのは『此処に居る事』ではなく『何故ここに居るか』だ。つまり、生きるという事とは真逆だな。」
「何上手いこと言ったみたいな顔してるんですか。」
その渾身のドヤ顔止めてください。
「そう、センくんがしっかり働いているか確認に来ちゃいましたー! 抜き打ち検査ってヤツですッ!」
……ホワァット?
「なるほど面白い。ならば貴様にも働いてもらおうかッ!!!」
「…………はぁあああああああああっ!?」
*(エキサイトパートタイムッ!)
「こ……これは、センくんと同じ制服だー!」
目を輝かせながら無邪気にスタッフルームを走り回る先輩は、どう考えても子供にしか見えない……容姿は兎も角。
「本当に大丈夫なんですか……?」
「貴様も、あの小娘が持つ『力』の正体はわかっているのだろう?」
「強キャラ風に言わなくていいです。」
先輩の持つ力……ねぇ。アレはそんな格好の良いものではないと思うけど。
というか、なんでそんなに胸を張って自信満々で鼻を鳴らせるんだこの人は……
「じゃあ、私はフロアに行って参ります!」
「フロアって言葉を知っていたのかという感動と、この人にお客様対応を任せていいのかという不安が僕の心の中で暴れまわっている……」
「よし行け、日雇い戦士九条 楓花よッ! 五番テーブルのクソ野郎がオーダーをしたいとお待ちだッ、貴様の力で残滅してこいッ!!」
「いえす、まーむ!」
「いや残滅はしちゃ駄目ですよ!?」
走ってお客様の元へ向かう先輩を僕は柱の影から見守る。
この際僕の体裁とかはどうでもいい。先輩とお客様が無事なのであれば……!
よし、取り敢えず転ばずにテーブルにはたどり着けた様だ。相手の機嫌を損ねる様な行動は……していないらしいな。スーツを着た年配の男性と楽しく談笑していらっしゃる……いや、それもどうなんだ? あっ、座った!? ガッツリ対面に座ってお喋りしている! いや、然しハンディー弄ってるし、一応ちゃんと仕事はしているのか……? うーん……あ、戻ってきた。
「オーダー入りまーす! ……センくん、注文覚えてる?」
「何の為のハンディーだァッ!!?」
「ハンディー?」
「先輩が手に持ってるソレですよ! ハンディー・ターミナル!」
「おおー、これハンディーくんって言うんだー!」
宜しくね、と何故か機械に挨拶をしながら、オーダーを読み上げる先輩。
「ええっと、ペペロンチーノとチョコレートパフェ、そして私にアイスを下さいな!」
「何でしれっと奢ってもらってるんですか!?」
「え、駄目なの?」
目を点にしながらしれっとそう言ってくる先輩。
「知らない人から物を恵んでもらっちゃいけません!」
「貴様はこの阿呆の子のオカンか。」
店長が横で何か言っているがこの際気にしないことにする。
「知らない人じゃありません。ペンガリヲンを愛する同士です!」
ビシッ、と先輩は自信満々に人差し指を向けてくるが、それはただ単に子供向けアニメが好きなだけの他人なのではないのか。
「お気持ちだけ貰っておいて下さいっ!」
「気持ちは言葉とか形にしないと相手に伝わらないんだよっ!」
「なるほど、小娘の言うことにも一理ある。」
「無いですよ。」
顎に手を当て思索に耽る店長に冷静なツッコミを入れると、先輩は頬を膨らませて僕を睨んでくる。
が、先輩には威厳というものが微塵も存在しないので全く怖くはない。寧ろ微笑ましい。
「センくんのいじわる。竹中さんはお爺ちゃんの銭湯にも来てくれて『いつも頑張ってるね』って言ってくれる人なのに……」
口を尖らせて伏し目になる先輩。
「……いや、本当に知り合いだったんですか!?」
「そうだよっ! なのにセンくんは私の話を聞いてくれないしっ!」
「それはその……すいませんでした。」
これは話をちゃんと聞かなかった僕が悪い……が、先輩の日頃の行いもそれと同じぐらい悪いと理解していただきたい。今回は完全に僕が悪いが。
「そうだな、完全に仙台レイが悪い。」
「だから心を読まないで下さいよっ!」
というかそこまで言うんだったら『人』まで言ってくださいよっ! 渾名に名字を付けたらもはや別人ですから!
「でも、私の事をしっかり見守っていた事は先輩として誇らしく思いますっ! やっとセンくんも他人に気を使って人間になったんだねぇ……」
……どの口が言うんだか。というか、もしかして先輩それを言うためだけに此処に……?
いや、それは有り得ない。先輩は考えないからこそそういうことができる人なんだ。だから、これは純度百パーセントの先輩の言葉。
だからこそ、それが僕の胸に響く訳で。やっぱり先輩は狡いなぁ……と、僕は思う訳で。
「先輩はもう少し他人に気を使ってください。」
「気は使うけど空気は読みませんっ! それが先輩のしんじょーですっ!」
「おっ、名言だな。」
「名言……なんですかね?」
指を天井へ向けドヤる先輩と、それに軽快な拍手を贈る店長に、僕は眉をしかめた。
「皆が、ふとした時に笑える世界であればそれでいいと思いますっ!」
「急に壮大になったな……」
「皆が笑える世界、ねぇ……」
……それが『今回の先輩の我が侭』であるとするならば、『九条 真城を僕に預けた裏の理由』であるとするならば、僕は本当に苦労することになりそうだ。
「……そろそろピーク時間ですし、持ち場に付きますよ。ホラ、店長もゲーム機仕舞って。」
「私に死ねと言うのかっ!?」
「働けよっ!」
「センくーん、アイス食べていーい?」
「竹中さんに今度お菓子持ってお礼言いに行くんですよ! そして食べるなら早めにして下さい。」
「はーい!」
「……やっぱりオカンじゃないか。」
聞こえない聞こえない。
どうも、二週間ぶりの更新となりました。残機1LIFE0ですっ!
シロさんが前話であんなに悩んでいたのに先輩は楽観的過ぎやで! なーんて思った方もいらっしゃるかもしれません。
その通りですっ!(オイ)
先輩は基本的に何も考えていないので、他者とのコミュニケーションに齟齬が生まれがちな性格をしております。それでも、彼女はその天真爛漫な心で周りの人を引きずり回して引っ張っていくというキャラクターとして書きたい……と、個人的には考えているのですが……
どうやら今回の物語では彼女も京也達と同じ様に、大きく動く事は無いようです。なんでやっ!
という設定もまた追々……追々が続いてオイオ(殴
はい、お後は宜しくありません。ではでは。
・先輩と後輩
楓花「センくんは人から色んな渾名で呼ばれてるよね」
零人「そうですか……?」
楓花「センくんとか、レイレイとか……変態さんとか!」
零人「最後のは渾名じゃなくて侮蔑的呼称でしょう……」
楓花「分別的故障?」
零人「いや、そうではなくて、はぁ……で、渾名がどうしたんですか?」
楓花「私も渾名で呼ばれてみたいっ! というわけでセンくん、カモーン?」
零人「えぇ……!? いきなり言われましても……」
楓花「はーやーくー!」
零人「そう言われても、先輩は先輩としか……」
楓花「そんなに私から溢れ出る先輩感に影響されちゃった?」
零人「先輩感、とは……?」
楓花「はぁ、渾名欲しいなー……そうだ! 自分で考えれば良いんじゃない?」
零人「小学校の自己紹介で〇〇って読んでくださいって自分から言う奴は大体ヤバイやつだった気がします。」
楓花「よし、これから先輩の事は『フウちゃん』って呼ぶ事!」
零人「聞いちゃいねぇ……」
楓花「エビバディセイ、『フウちゃん』!」
零人「エビバディって僕以外の誰が……」
ゴニンジャー「「「「フウちゃん!」」」」「楓花様ー!」
零人「なんか出た。そして何か混じってた。」
楓花「『フウちゃん』っ!」
京也&有須川&伊月「「フウちゃんっ!」」
零人「増えるな増えるな。」
楓花「『フウちゃん』ッ!」
氏神&田頃家&綾崎「「フウちゃんッ!」」
零人「え、これ言わなくちゃ終わらない感じのヤツですか?」
楓花「センくんっ、リピートアフターミーッ! 『フウちゃん』ッ!!」
零人「えぇ……ふ、フウちゃん?」
楓花「えへへぇ……照れるなぁ。でも、センくんに渾名呼ばれるのは何か違う気がする。」
零人「自分で言わせておいて!?」
楓花「……これからも私の後輩でいてね、センくんっ!」
零人「…………まあ、この関係はそうそう終わらないんじゃないですか?」
シロ「ラブコメ以下友達以上を検知しました。直ちに変態さんの駆除を開始します。」
零人「落ちが雑で強引な上に理不尽ッ!!!!」
次回予告
有須川「次回こそ彼らに登場してほしいものだねぇ。」
京也「彼ら?」
有須川「君もなんとなくは察しているんだろう? 登場すれば物語が加速する彼ら、さ。」
京也「ああ、なるほどな! 次回、誰銭バイト編セカンドッ!」
有須川「火薬と爆音の飲食店。次回も見てくれれば光栄だね。」
内容は予告なく変更される恐れがァッ!?




