36軒目:何方か脳内天使の黙らせ方を教えて下さい。
本日、二話更新です。コチラは一話目となります。
R1.9.23:本文を修正させて頂きました。
某年六月二十八日
今日の朝食は冷凍御飯を温めてライスバーガーの筈が、目を離した隙に小倉トーストになっていました。死んで下さい、いや寧ろ○んで下さい。
ホカホカのお米にタレがベストマッチという展開を期待していた私の膨らんだ胸を返してください。まあ、胸はスーツ着ればきょぬーなんですけどね!
「大体何で料理するだけで質量が変わったり違う物質が生成されるんですか。量子力学舐めてんですか?」
「ここに来てもうすぐ一ヶ月になるのにまだ言うのか……」
食器を洗っている変態さんは此方を見もせず、溜め息を吐いてそう呟く。
「ええ、ええ、言いますとも、言わせていただきますよ。」
私はビシッと変態さんに指を向け、言葉を続ける。
「そもそもですねぇ、変態さんの謎な思考能力とポンコツ料理スキルは共通点皆無じゃないですかっ! 一貫性が無いんですよっ! ゲームキャラがバグによって得た新たな使用法を公式にネタにされたみたいな感じで、ちょっと羨まし……いや、よくよく考えたら変態さんは全生命の中でも底辺でしたね。こんなアレでアレなアレを羨ましがるなんて私どうかしてました。ああ、タイムスリップして今の発言をやり直したい……」
「唐突な辛辣ッ!? ……いや、よくよく考えたら全部ディスってるな。」
「そりゃそうですよ変態さんの褒める所なんて皆無なんですから。それが理解出来たのなら、さっさと鏡以外何もない部屋で鏡に向かって『お前は誰だ』って言い続けて下さい。」
「精神崩壊を助長しないでくれるかな!?」
「ハイハイ、まだ存命したいなんて戯言は止めて下さい。見苦しいを通り越して、その現実に目を背けたくなります。」
「僕を現実逃避する言い訳に使わないでくれ。」
……別に、言い訳にしてるわけじゃありませんよ。
『そうでしょうか?』
そうですよ。
……ていうか勝手に出て来ないでいただけますか脳内天使様。一週間前に現れてきてから時折姿見せますけど……なんなら最近頻度増してる気がしますけど、自分の頭の中で謎の声が聞こえていいのはファミチキの注文だけですよこの野郎さん。プライバシーもへったくれも無いですし、いよいよ何者か後でじっくりと聞かせてもらいましょうか。
『ファミチキ……まあ、私としてもあなたとコミュニケーションがとれるのは本意ですから、宜しくお願いしますね?』
うわ腹立つぅ……なんかイラッときたから変態さんイジメましょう。
『えぇ……』
右手を右肩の後ろに回し――フフン、ロボですのでこんな無理な動きも可能ですよキリッ――そのままコード、『G−HND−五』。
すると、ほぉら皆大好きハンドガンです。どうでもいいですけど、ピストルのスライド引く動作滅茶苦茶カッコ良くないですか?
『わからないでもない……ような?』
「というわけでこの格好いい動作をした私に殺られろオラァンッ!!」
破裂音と共に放たれたゴム弾は変態さんの脇腹にクリーンヒット。
「くあぁっ!? 〜〜〜〜〜っぅ。」
女性のようなかん高い声を上げてへたり込む変態さん。洗剤がついている手で患部に手を当てるわけにもいかず、手術前の医師の様に手を上に掲げ悶絶する姿はなんともシュールです。
「うわぁ……思った七倍は気持ち悪い。」
「暴力を振るった側の言葉じゃないっ!」
「暴力? 冗談は存在だけにしてくださいよ変態さん。これは人類……いや、生きとし生けるものの為にも必要な行為です。」
『私達は生きてませんけどね!』
「落とした食器がセラミックじゃなかったらそこそこ怒っていた。」
……そういう、『自分の怒りを無理に押し込めている所が嫌い、なんですよね?』……ッ!
貴方のそれも大ッ嫌いですよ。
『……わかってましたよ。』
*
「じゃあ、僕は仕事に行くから。」
そう言って綺麗に使われているクタクタのスニーカーの靴紐を締める変態さん。イアンノットで結んでる所がイケてる感出してて地味なイラッとポイントですっ!
「ハイハイ。もうすぐ七夕なので笹でも買って来てください、八メートルぐらいの。」
「無茶言うなぁ……って、そういえばもうそんな季節か。」
苦笑いの後、変態さんはハッとした顔でこちらを見つめてくる変態さん。
なんですか。生理的に無理なんでその顔を見せないでください。
『理不尽……』
うるさいです。
「シロは、願い事とかあるの?」
「はぁ……?」
何を言っているんですかこの男は。
ずっっっっっと私達は、お互いに干渉してこなかったじゃないですか。
お互いの関係を、只の同居人……いえ、それ以下の関係で保とうと。それを、貴方はッ……!
「あ、いや……聞かなかった事に……」
「そうですね、強いて言えばですが早く変態さんから離れたいです、ソァバーカ。」
「誰がロクデナシだ。ちゃんと働いてるしギリギリロボ一体を養えるぐらいには余裕がある。」
いつもの罵倒に、いつもの笑顔。
「そういう事は正規雇用されてから言ってください。」
「自分がそれなりに幸せならそれでいいんだよ……っと、行ってきます。」
全てが虚像であるこの空間が只々大ッ嫌いで喉を掻きむしりたくなる。
「逝ってらっしゃいませ。」
「うるさいな、ちゃんと帰ってくるよ。」
「ハイハイ、ちゃんと還ってくださいね。」
「辛辣ゥッ!?」
*
『……そんなに嫌だったら、やめてしまえばいいんじゃないですか……?』
「うるさいですよプログラムの羅列の分際で。」
『人工知能であろうが人格を否定されれば傷つくんですよ? それは貴方も同じ筈で……』
「私の思考プログラムの奥底に、ブラックボックス化されたファイルがありました。しかも、今も容量が拡大中。」
『…………』
「私が干渉出来ない謎に強固なセキュリティ……一体貴方は何者なんですか?」
『……まず、最初に貴方に言わなければならない事があります。』
光の粒子が集まりそれの姿を形作っていく様子は、私のメインカメラにのみ映し出された映像だとわかっていても幻想的であった。
目の前に現れたのは、ツインテール姿の私。
『御機嫌ようシロ。私は……いえ、そんなことよりも重要な事が沢山ありますね。』
「いやいやいやいや。オイコラポンコツ脳内天使(仮)野郎様、何大規模な戦争が起こる前に記録されていた人類を救う為の唯一の手段について語りだす博士みたいな語り出ししてやがるんですかコンチクショウめ。」
『最終的にその作戦は失敗するけど気合とゴリ押しで何とかするヤツ……ってそうじゃなくてですね!? もう、時間が無いんだから真面目に聞いてくださいっ! ていうか呼び名酷くないですか!?』
「おおぅ、想定道理のツッコミ……」
『それはそうですよ、ほぼ同一存在なんですから……って、あ。』
「自らカミングアウトするドジっ子属性。媚びていくぅ〜!」
『茶化さないで下さいよ。内心は私が何者かわからなくてヒヤヒヤしてる癖に……』
「いーえ、今ので大体わかりましたよ。ズバァリ、貴女は私の思考プログラムに何かあった時のサブプログラムでしょう!」
『違いますけど。』
即答ッ!?
「ま、まあ……『全然違う』とは言われませんでしたし、正解には近づいてますよ。」
『貴女のその突き抜けたポジティブ思考、私は嫌いじゃないですよ。』
「うるさいです。」
次回予告
京也「必要ないだろ続きを読めっ!」
有須川「何故ここまでして後書きを書く必要があるんだ……」




