26軒目.売店:誰か正しいカフェインの摂取法を教えてくれ。
26話、解説編です。毎度の如く読まなくていいです。後書きにお知らせがあるので読みたい方はどうぞ?
読む場合は前回(26件目:裏)を読んでからにしようっ! ペンガリヲンとの約束だぞ☆
H30.5.6:本文を修正させて頂きました。
H30.11.13:本文を修正させて頂きました。
おはよう、人類諸君。『私』の名前は……駄目だね。寝起きというのは頭が働かない。
うん、手洗い場にでも行って顔を洗うとしようかな。
そうと決まれば善は急げ。何、急がば回れって? 確かに言うとおりかもしれないね。でも『私』は一刻も早くこの状況を改善しなくてはならないの。
他人に、こんな寝ぼけた『有須川 恵』を見られる訳にはいかないからね。
いつもなら四時半には起きる楓花さんも、マジメモードと夜遅くまで起きていた反動で六時現在もぐっすりだから、皆を起こさないようにしなきゃね。
「おっ、恵。おはよう。」
ドアを開けるとバッタリエンカウント。ニカッと笑うハンサムボーイ京也さんの登場だ。本当に、何故こんな優良物件が『私』に惚れているのかわからない。何処の乙女ゲーですか。
「……おはよう。」
無駄な事を脳内でベラベラと話し纏まらない思考の中、『私』はなんとか一言帰す事が出来た。が、『私』の様子を不審に思ったのか京也はクシャリと顔をしかめる。
「……寝ぼけてるだろ、お前。」
「……流石京也、よく見てる。」
目を擦る『私』に対し、頭をボリボリと掻く京也。
「あんまりその状態、他人に見られたくないんだろ? 早く顔洗ってこい。」
「助かる。」
一言だけそう口に出して、おぼつかない足運びで『私』は洗面所に向かった。
*(フラッシュニングスプラッシュタイムッ!!)
顔を洗い頭が冴えてきた僕は椅子に座り京也と向かい合い、そして溜め息を吐いた。
「いや、すまない。実に見苦しい醜態をさらしたね。」
「え、いや……そんな事も無いと思う……ぞ?」
少し狼狽え気味になる京也を、僕はいつもの調子でケラケラと笑う。
「フォローになっていないよ京也。……『アレ』は僕の弱みそのものだからね、あんまり人に見せるものじゃあないんだよ。」
と、言いつつニヤリと笑う僕。
「……そう言いながらお前、あんまり取り乱してないよな……?」
今のその京也の言葉、僕は好機と捉えたよ。
「実は京也にその弱みを利用されないかと、今も胸がドキドキしているんだよ。確かめてみるかい?」
そう京也の耳元で囁き、彼の手を軽く握る。すると、面白い程に京也は慌て始めた。
「おおおおおおおおま、お前何言っちゃってんのッ!? もっと身体を大切にしろというか童貞男子にそんなこと言ったら勘違いするぞ草食系舐めんなすっげぇ簡単にコロッと落ちるんだからなってああもう何言ってんだ俺ッ!!?」
その様子を見て僕はケラケラと……いや、ゲラゲラと笑った。
「冗談だ、そこら辺は君の事を信用してるからね。」
「お、おう。信用されてるのは素直にありがたいわ……」
フッ、そうやって顔を赤らめる京也、僕は嫌いじゃあないねぇ。まあ、わざわざ言う事でもないから口には出さないがねぇ。
「……それにしても、お腹が空いたな。」
「オイオイ、子供達が起きてくるまで待てよ……」
京也の無慈悲な台詞に僕は溜め息を吐きつつ、ずり落ちたメガネのブリッジを軽く中指で押し上げる。
「そうは言ったってね、僕は普段ならこの時間には既に温かいスープと茹で卵付きサラダとバタールを机に広げているんだよねぇ……」
「それはそれは優雅なブレックファーストな事で。」
「ちなみにスープは大体自家製だよ。勿論作り置きだがね。ついこの間はコーンポタージュを作ってみた。中々悪くない出来だったが、一人で消費するには作り過ぎてしまってねぇ……」
「……因みにそれ、まだ余ってたり?」
「楓花さんが美味しく頂きました。」
「思わぬ伏兵ッ!! いやもう何かわかってたけどっ! わかってたけどぉッ!!」
机に突っ伏して『ガッデムッ!』と叫ぶ京也。何でコレで僕に恋愛感情がバレていないと思ってるんだろうねぇ。僕はラブコメの主人公じゃあないんだが……まあ、面白いから良いんだけどねぇ。
「そんなに飲みたかったのかい? 料理なら君も上手いじゃあないか。」
「たった数カ月で弁当屋の幕の内弁当を任されるお前に言われたくないわぁ……あれだよ、女子の手料理は男のロマンなんだよっ!」
そう言って京也は机をバンバンと叩いた。
「ふむ、そんなに良いものなのかい?」
「それがわからないからこそ魅力的なのだよ……」
「いや、君は弁当食べたじゃあないか。」
「思いっきり弁当屋の味がしたよね! THE・レシピ通りって感じのッ!! そうじゃなくてな、こう……何ていうかなぁッ!!」
うん、まあ言いたいことはぁ、わからないでもない。共感はしないがね。
だが、そこまで落ち込まれると……同情しないでもない。
「ハァ……そこまで食べたいのなら、今度作ってあげようじゃあないか。」
「マジでッ!!!? アレだよな!? 前回の弁当トラップ的なヤツじゃないよな!? まさかインスタント食品トラップとかじゃ……!?」
「僕はどこまで信用ないんだい……ちゃんと作ってあげるさ、激辛ラーメン。」
「献立チョイスが随分と変則的ッ! 知ってるっ! それ唐辛子すっげぇ入ってて『十辛』とか言って頼むヤツだッ!! 辛いんじゃなく痛いヤツだッ!!!」
京也が半泣きなのを見て僕はイヤらしい笑みを浮かべる。
「なんだい、嫌なのかい?」
「大体の人間は嫌だわッ!! そうじゃなくてもっと家庭的な料理とかさぁ!!」
僕は溜め息を吐きつつ何処からともなくタブレット端末を取り出してグー○ル検索をかける。
「京也、ラーメンが家庭的じゃないという発想は捨て給え。実際に『家庭的 ラーメン』で検索をかけるとそのようなコンセプトの店が何件かヒットする。」
そう言って僕は実際の検索結果を京也に見せる。
「いや店じゃんッ!! 店って言っちゃってるじゃんッ!!!!」
何だよ京也、手をバタバタさせて文句ばかり言うじゃあないか。駄々っ子か君は。
「ハァ……そう文句ばかり言われるとこっちだって作る気が無くなるよ。」
「イヤイヤイヤイヤイヤ!! 幼馴染の手料理と聞いて期待を込めるのは悪い事なんだろうかッ!?」
「全国のお母さんが折角作った料理を美味しくないと言われて作る気無くす原理と一緒だよ。過ぎた正直は身を滅ぼすというやつだね。」
「そんな言葉はねぇよッ!! ていうかアレじゃんっ、お前は俺を弄んでるだけじゃん!?」
「あーあー、君はそういう事を言ってしまうんだねぇ……決めたよ、未来英語君には手料理を振る舞わない事にした。」
「スイマセン恵様弱小存在であり手料理を貴方様から授けられる側の身分でありながらゴチャゴチャ言って申し訳ありませんでした。何卒……何卒ッ……!!」
「そうやって即座に土下座出来る君の事、僕は嫌いじゃあないねぇ……」
ま、いつもの如く好きとは言わないがね。
そこまで言うなら考え直さない事も無い。だがね、僕は京也を弄ぶ事は自重しないよ。これは僕の人生であり、これが僕の今の生き甲斐だからねぇ。
「ハァ……顔を上げ給えよ、そうして僕の為にコーヒーを淹れてくれないか? 実はまだ少し眠くてねぇ……」
「へい喜んでぇ!!」
そう言うと京也は楓花さんの護衛の如きスピードで僕にコーヒーを出してきた……って、これエスプレッソじゃないか。流石にカップはエスプレッソカップじゃなくデミタスカップだが。
「京也特製ブレンドとはいかないが『煎りたて』コーヒーだ。召し上がれ?」
「挽きたてじゃあなくてかい? 本格的過ぎるねぇ……ていうか、僕はブラックコーヒーが飲みたかったんだけどねぇ……」
挽きたてとは文字通り焙煎済みのコーヒー豆を今、粉にしましたよという意味。対して煎りたてとは焙煎したての事だ。
……因みに、コーヒーは煎りたてや挽きたてが良いと言われるが、それは酸化が進むのを避ける為であって、本来は焙煎してから二、三日置くのが味が落ち着いて良いと言われている。だから京也、それ手厳しい『詳しい人』にやったらムッとされるやつだよ……
そして、エスプレッソをストレートにして飲むのはまず日本人の、それもごく一般人だけと言っていい。本場イタリアでは砂糖をシュガースプーン山盛り一杯を入れ、グイッと飲み干すのが基本である。
まあ、『コーヒーはやっぱりブラックだよねー』等とコーヒー好きを自称するニワカな輩を見破るにはいい方法ではある。そんな事をして何の利になるのか僕はわからないがねぇ……
ブラックが一番だなんだというのは好みの問題だから、僕は否定はしない。只、価値観の押し付けと知ったかだけは止めておこうとだけ言っておこう。そうだろう、諸君?
「あーと……悪い。朝からストレートはちょっとハードかなーと……」
「君ねぇ……覚醒作用の元であるカフェインは確かにコーヒーに含まれてはいるが、カフェインは『胃から吸収され、その血中濃度が高まった時からしか効果がない』んだよ? コーヒーを飲んで直ぐに脳が冴えるのはその殆どがプラシーボ効果とコーヒーの苦味によるものだ。まあ、それでも後々効いてくると思えばアレなんだが……当のカフェイン様はエスプレッソにすれば、一杯で摂取出来る効率は落ちるんだよねぇ……」
ま、容量の効率で言えば通常のドリップコーヒーより多いんだが、エスプレッソは一杯あたりの量自体が少ないからねぇ……
「やめて! もう京也のライフはゼロよッ!!」
「残念ながら遊○王は効果を処理してから勝敗を決めるからオーバーキルは基本だよ。」
「無慈悲ッ!!」
まあいい、手順がどうであれ美味しければ良いんだ……頂くとしよう。エスプレッソの飲み時は淹れて直ぐだから、もうその時間は過ぎてしまったがそれは仕方ないね。
僕は机に備え付けの『僕用』のシュガースティックを二本程取り出し、ゆっくりとそれをデミタスカップに流し込んだ。
かき混ぜる事はしない。数口でグッと一気に飲み干すのだ。
「…………ど、どうでしょうか。」
「これ、正直に言ったほうが良いやつかい?」
京也はコクコクと頷いた。対して僕は大きく溜め息を吐く。
「四十五点。まあ僕も大分ニワカだけども、その手の事に詳しい人には出さない事。十五点は対して詳しくもないのにこのクオリティを数秒で出した努力点にしとくよ。」
「ぐぉおお……もっとコーヒーを学んでおくんだった……」
「因みに缶コーヒーを持ってきてた場合は七十点だ。安易に焙煎から何からしたのが君の間違いだね。」
「はい……サーセンした……」
*(ビートパーカッションカフェインタイムッ!!)
さて、カフェイン摂取までに色々あったものだが、子供達がまだ起きてくる気配が無いので麦茶でも飲んで落ち込んでいる京也と雑談することにしようか。
「……で、昨夜はどうだったんだい?」
グラスに入った氷をカラカラと鳴らしつつ京也に僕はそう尋ねる。
「どう、とは?」
はぐらかすねぇ……もしくは本当に察せてないのかな?
「勿論シロくんの事だよ。追っかけた後、何を話したんだい?」
グラスを揺らす手を早め、麦茶で渦をつくる。我ながら行儀が悪い。いや、麦茶を飲むのに作法を求めるかと言われれば大半の人は否であろうが。
「あー……それなぁ……」
京也はボリボリと頭を掻いて背もたれに深く体重をかけた。
聞こうじゃあないか、我らが主人公君の行動を。一言一句違わずにね。
*(某年六月十日――)
『アリス』を飛び出したシロちゃんを追う。
本ッ当に自慢にならないが、姉ちゃんが巻き起こす奇想天外魑魅魍魎が跳梁跋扈な日常の所為で人を追うのには慣れてる。まー、シロちゃんは人じゃないけどな。
『アリス』を出る前に窓からシロちゃんの姿を確認。方向から大体の行き先を探す。
恐らく、彼女は此処に来たばかりだから、姉ちゃんや零人、恵以上に何かを愚痴れる友人はいないだろう。そして零人が彼女に山のような小遣いを渡せているとも思えない。と、なれば行き先は近くの公園等の休める公共スペースに限られてくる。
「と、なると、ここら辺にある公園は一つ何だよなぁ……」
宇佐美川公園。別段大きい公園な訳でもないし、遊具といってもブランコ、滑り台、鉄棒、シーソーぐらいしかない砂場もオマケ程度の公園である。因みに、この公園と真反対の方角に広い公園がある為、少年少女はそちらで遊ぶのがこの地域の定番だ。
……チカチカの光る照明に照らされ、銀髪の少女は苦しげな表情でベンチに座っていた。
近くの自販機でホットドリンクを適当に見繕い、俺の存在にちっとも気付いていないシロちゃんにそれを差し出す。
「浮かない顔してたら美少女が台無しだぜ? とか言ってみたり?」
ハッとした様にシロちゃんはこちらを見ると、苦々しい表情で哂いながら缶を受け取った。
「浮かない顔してても美少女ですからいーんですよ。私を追いかけてくるなんてどうしたんですか京也さん、有須川さんから私に鞍替えします?」
「そいつァ笑えないジョークだ、折角考えたプロポーズの言葉を推敲し直さないといけなくなる。って、アレ? シロちゃんに恵が好きなの話したっけ……?」
「……変態さんから聞きました。」
「アイツ……!!」
クッソ零人ッ!! 何で人に喋るんだよ!? いや人じゃないけどッ!!
「安心して下さい、口が軽そうで堅い人にしか言いませんから。」
「いや出来るなら誰にも言わない方向でお願い出来る!?」
そう強くツッコミを入れるも、シロちゃんは乾いた笑いで手元にある缶飲料を弄くるばかりだ。見るからに精神的に参ってるな……
「……雨降った後だけど、ベンチ濡れてない?」
「濡れてますね、ですが美少女とロボは風邪を引かないので二つ合わせてプリ○ュア的なアレです。」
「ネタに全然キレがないね……ホラ、今からでもコレ使ってくれよ。」
そう言って俺はスーツのポケットからハンカチを出す。
「良いんですか?」
「仮にも俺は衣料品店の店長だしさ、折角の衣装を駄目にしちまうのはちょっとな。それに、俺はいざと言うとき泣いている女の子にハンカチを差し出す為、二十枚程いつも持ち歩いてるから大丈夫だぜ!」
「何又狙いなんですか……ていうか何処にそんなに収納スペースが……?」
うん、それはぁ……恵から少しだけ収納術を教えてもらったよね。でもアイツは二・五メートルのスタンドライトをポケットから出せるからなー。恵えもんだろあんなの。いや寧ろバケェモンだバケェモン。
俺とシロちゃんはハンカチを座布団代わりにベンチに座った。
「でーぇ、何か悩み事かい? 俺で良ければ話でも愚痴でも何でも聞くぜ?」
シロちゃんは数秒間の無言の後、缶を右手に持ち替え左手からロボットアームの様なもので接続されているスマホを生やした。シロちゃんが最初に『アリス』に来た時、コスプレ用スーツの左手首に隙間を作ってくれと言ってきた事があったが……その為の穴か……!
彼女はそのスマホを操作するわけでもなく、ジッと見つめて一言。
「……実に機械的です。」
そう呟いた。
「そりゃまあ――」
機械だからな、と言おうとして止めた。ここでそんな発言をするのは実にデリカシーが無いと思ったからだ。だが俺が言葉を切ったにも関わらず、彼女は自身の左腕を只見つめるだけだった。
「私、此処に来る前の記憶が無いんですよ。」
唐突の話題転換に一瞬、彼女が何を言っているかわからなかった。が、そんな俺の理解を置いていくかのように、彼女の言葉は足早に紡がれていく。
「世界を救うという使命も、誰かの友人になる等という約束も、何の為に生まれたのかという理由すら知らないし解らない……実に、『人間的』です。」
そう吐き出された言葉はどこか憎々しげで、まるで特定の人物への怒りでも籠められているかの様に見えた。
「まー、そりゃあいきなり真っ白なキャンバス手渡されて、絵を描けって言われても困るわなぁ……」
俺は空を仰ぎつつ、自分の分の缶飲料のプルタブを引いて軽快な音を鳴らす。
「でもま、幸い周りには色んな絵を描いてる奴らがいるじゃん? 取り敢えずそいつらを観察して、自分の紙を触るのは後でいいんじゃねぇ? 人生まだまだ長いんだし。」
「私は、人じゃあありませんよ……」
「あんまり変わんないでしょ、ロボも人も。だからアンドロイドって言うんだろ?」
「そう、私はアンドロイドなんですよ……どこまでも……」
その言葉にどんな意味が込められていたのだろう。
俺は少し居心地が悪くなって、ポリポリと頬を掻きながら缶飲料に口を付けた……あれ? そういえば俺何を買ったんだっk――
「マッズゥッ!!?」
俺は盛大に『泥水ジュース 〜夏場アスファルトで温められた味☆〜』を吹き出した。
「いや何でこんなモン売ってんのッ!? 少なくとも人間が摂取する物じゃねぇよッ!!」
「じゃあ何で買ったんですか。」
「いやごもっともだわッ!何で買ったんだろうね!? あの時の俺をブン殴りたいっ!!」
「ていうか私のもおんなじヤツじゃないですか。責任持って二本とも飲んで下さいよ。」
「いやゴメン本当に無理ッ!! 美少女のお願いは断らない俺でも流石に無理ッ!!」
「尚更そんな物を人に押し付けないで下さいっ!! いい加減にしないとブン殴りますよッ!!?」
そう言いつつシロちゃんは俺の頬に泥水ジュース缶を押し当ててくる。
「イヤイヤイヤイヤイヤ無理だって無理無理っ! ちょっと待って、飲み口近づけないでちょっ、待っ――
*(自主規制)
フム、京也から聞いた会話内容に適当に地の文を付ければこんな感じかな? 自分で考えたがバケェモンは少しイラッときたな。
「で、その後君はどうしたんだい?」
「どうもこうも……そのまま泥水ジュース飲まされて此処に戻って来たけど? ていうかさ、一々その時の心情とか情景聞いてくんの止めねぇ?」
……いやいやいや、本当にこれだけなのかい……?
「……君、人から話を聞き出すのがヘタって言われた事無いかい?」
「今のを含めてお前に五回程。」
「それはそれは、過去の僕も実に優秀だったようだ。じゃ、なくてね、もう少しシロくんと喋らなかったのかい?」
「いやだってさぁ! あんなガチのシリアス俺知らないもんっ! もうちょっとこう……日常系の悩みでお願いしますよっ!!」
「君はそんなラクラクお悩み相談室みたいな立ち位置じゃないだろ!? もっとラノベ主人公しろよっ!!」
「残念ながらこれはリアルでノンフィクションだよっ! 事件をパパッと解決なハードボイルドというより俺は等身大の煮え切らない半熟卵なのッ!! 完璧ヒーロー様だったら今頃零人の悩みも解決してるし恵のご高説に耳を傾けたりしてないわっ!!」
「もはや開き直ったね君ィ……じゃあ、シロくんの悩みに関しては理解してるのかい?」
「そっちの方は大体アタリは付けてる。おおよそ零人絡みじゃねぇのかなー。」
と、チラッとこちらを見てくる京也。僕は赤ペン先生じゃあないんだがねぇ……
「まあ間違っちゃあいない。只、要因は外的なものじゃあない。それもわかってるんだろう?」
「まーなぁー、零人が原因にちゃあ二人の距離は遠すぎる。多分、自分の『コンプレックス』についてか『何者かへの苛立ち』。もしくはその両方ってとこだろうな。」
「ふむ、じゃあ仙台 零人に対して抱いてる感情については?」
「……『侮蔑』と『妬み』かねぇ……嫌いなのは本当だけどそれは軽度なもので、あそこまでのドSなのは零人はそのコンプレックスを抱えていないかなんかじゃねーの?」
「……そこまでわかっていてなんで動かないんだい?」
僕は眉をひそめて京也を見つめる。対する京也はやる気の無さそうな顔で麦茶の入ったグラスを人差し指の上で回転させる。
「これ、俺が動く必要ある?」
「はァ?」
おっと、思わず僕らしからぬ声を出してしまった。いやでも、え? 何を言ってるんだ君は。
「いやぁーさ、これから成長していく零人とかの事とか考えてたら……もうアイツらだけで解決出来るくねぇ? これ俺が無駄な手出ししてもアレじゃねぇ?」
「なーにを言い出すんだ我らがヒーロー。チャチャッと事件を解決してくれよスーパ○マン。」
「それだよ。」
回転するグラスを頭に乗せ、ビシッと京也が僕を指差してくる。
「フム。それ、とは?」
「お前、俺らを利用して二人の悩みをサッサッと解消させようとしてるだろ。」
「……ククッ、フフフ……ハハハッ!! 君の様な察しの良い主人公は嫌いじゃあないねぇ。」
いやぁ、本当に何でこの男は僕に惚れているんだろうねぇ。君が嫌う行為を僕は好んでにするというのに。
「うっせぇ。で、何か目的なんだ?」
「暇潰しさ。悪いかい?」
ケロッとした、まるで悪びれもしない表情で僕は返す。
「暇潰し、ねぇ……」
あぁ暇潰しさ、『有須川 恵』としてのね。
「……お前、本当に零人の事つまんねぇとか言えねぇよな。」
ヘディングで打ち上げたグラスを右手でキャッチすると、京也は麦茶で喉を潤した。因みに水滴は溢れていない。お見事だね。
「僕が彼の事を『つまらない』と評しているのは『考え方』や『生き様』の事であって、『演技』をする人生の事ではないさ。役割を完璧に演じられるならそれも自分の一面と捉える事が出来るし、そうでないなら演じきれない自分が実像さ。結局は実像も虚像も同じ自分自身でしかない。」
ま、『暇潰し』発言が演技な事を肯定したわけじゃあないがねぇ。
「お前のそういう開き直り精神、嫌いじゃあないわ。個人的には寝起きモードの方が好きだけどな。」
「残念、あれは朝一限定だ。同じベッドで寝ればワンチャンあるかもしれないがね。」
「マジで嫁入り前の女子がそういう事言わないでくれ……」
「なんだい、期待でもしたのかい?」
「ヤメロヤメロッ! そういう稀に来る幼馴染っぽい発言ッ!!」
シッシッ、と京也は手でこちらを扇ぐ素振りをする。
「少なくとも君がその立ち位置にくることは無いから安心しなよ。」
なので、こちらもそれなりの対応を使用じゃあないか。
「畜生ッ!! テンプレートな返しだけど地味に傷付くぞコレッ!!?」
……勿論テンプレートに『今の』君はってね。
「……まあ兎に角、俺がするのはアイツらの最低限のサポートだけだ。人が自分で歩こうとしてんのにスポーツカーで迎えに行くのは俺の趣味じゃあねぇ。」
「自分がスポーツカー並のスピードが出ると思ってたのかい?」
「止めろそういう地味に刺してくるのッ! 何なの君!? もしかしてシロちゃんに影響されてSになってきた!?」
「そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。」
ケラケラ笑いつつ僕は京也をおちょくる。
「勘弁してくれ……」
そうして頭を抱えた京也に僕は言葉の弾丸を撃ち込んでみる。
「そういえば、君が昨日の話をしてくれていた間に僕はグラスをすり替えておいたんだが気づいたかい?」
「え、いや……マジでッ!!?!?」
「勿論嘘だ。」
「くっそ、わかってたけどっ! わかってたけどぉぉおおおッ!!」
……まあ、グラスをすり替えてはいないが、京也のグラスに僕の使っているリップクリームを塗っておいた。グラスを片付ける時に気付かせて赤面させるという二重トラップ何だが、いやぁ反応が楽しみだ。
「さ、そろそろ子供達が起こさなきゃいけない時間だ。君は朝食の支度でもしてるといいよ。」
「お、おう……わかった。」
僕は、子供達の所に向かう……と、見せかけて京也の様子を伺う。
「はぁー……さっきの会話、何かアイツが嫁っぽく見えてきたな……イヤイヤイヤイヤイヤ、まだ早いし。告白すらしてないしっ! 落ち着け俺、落ち着いてコスプレの種類を暗唱するんだ。ナース、婦警、制服、スク水、バイオスーツ……って落ち着けるかぁッ!! あーもう、さっさとグラス片付けて朝飯をだな……ん? これって……ッッッ!?!!!?」
うむ。スタートは少し躓いたものの、今日も良い朝だね。
実に清々しい。
どうも、缶コーヒーはカフェオレ派っ! コーヒー知識は有須川さんより浅い残機1LIFE0ですッ!
初めてエスプレッソを焙煎から秒で行って有須川さんから30点貰える京也さんって実は凄くね?
やっと……やっと三章が終わってくれましたね! いやー、長かった。今回9000字以上書いたんですって。アホですね。
執筆のお供になってくれたじゃが○こさんに感謝です! ありがとうカル○ー!
さてさて、前回誰銭が一周年とか特別編やるとか誰得な事をほざいた訳ですが……(少なくとも作者的には楽しいから良いんだよぉっ!)
誰銭、ツイッターにて人気投票しますっ!!(ていうかもうしてるよ☆)
参加キャラクターはメインキャラは勿論サブキャラやモブキャラ、飲食物までご用意っ!!(誰が得をするんだ本当に)
因みに休憩所枠という物を作ったものの投票時間を間違えて新しく出したのは秘密だぞ☆(新しい方も間違えてるんだよなぁ……)
投票時間は残り四日ぐらいっ!(アバウトッ!)
一人何票でもOKなので複垢投票したりも出来るね☆(誰がやるんだこの作品で)
さて、報告は異常(誤字ではない)でSSです! とある方にネタを提供して頂きました☆
・有須川主催小試食会
有須川「御機嫌よう京也。」
京也「おう、どうした。俺に用事か?」
有須川「あぁ、以前君に幕の内弁当をご馳走しただろう?」
京也「あの嫌がらせ満々のヤツな。(一章解説編参照)」
有須川「実は本社から腕を認められてねぇ。」
京也「待って、お前は只のアルバイトから何処まで成り上がるの? と金並の出世コースだろそれ。」
有須川「ウチの地域のオリジナルメニューを頼まれたんだ。それで今日は君に試食を頼もうと思ってねぇ……」
京也「待て待て待て待て、いや待って。理解が追いつかないわ。俺の脳のスペックに合わせてプリーズ。」
有須川「つまりは取り敢えず君は差し出された物を食べて感想を言えば良いんだよ。」
京也「オーケー。お前に話が通じない事と、これが強制労働パターンだって事は理解した。」
有須川「と言う訳で色々作ってきたから頼む。」
京也「了解。」
〜一時間後〜
有須川「ブラボー。まさか三十七品目全て食べきるとは思わなかったよ。」
京也「最後の里芋の煮っころがし殺意高すぎだろ……うっぷ。」
有須川「ありがとう、コレは礼だよ。」
京也「ん……何これ。」
有須川「君への愛情タップリの弁当だ。」
京也「やったぜースッゲー嬉しいっ! ……って、言っただろうなぁ普段ならッ!! タイミングッ!!」
有須川「食べないのかい?」
京也「お前の愛が籠もった弁当なら別腹に決まってんだろコンチクショウッ!!」
有須川「欲望に忠実な君のそんな所、僕は嫌いじゃあないねぇ。」ケラケラ
-HAPPY END-(何だこれ)
次回予告
楓花「次回は遂に四章だねセンくんっ!」
零人「その前に休憩所とか特別編とか挟まれると思いますけどね……」
楓花「ふぇ? でも作者の人が三章は終わったって……ハッ、これが『大人の事情』!?」
零人「先輩幕間って言葉知ってます?」
次回予告って何なのだろうか(哲学)




