12軒目:誰か正しい客(ゾンビ)への対応を教えてくれ。
わかると思いますが店員呼び出し鈴はあのテーブルに置いてあるピンポーンとか鳴るボタンです。コメディ(?)回です。短いです。十二話です。
H29.8.20:本文を修正させて頂きました。
H29.8.26:本文を修正させて頂きました。
H30.4.27:サブタイを修正させて頂きました。
某年六月三日
現在、僕が居る場所はバイト先の大手ファミレスチェーン店、『マスト』の店内である。
「――で、一体全体何の用ですか? 店長。」
僕と向かい合うは見た目二十代半ばに見えるスレンダーな女性、「氏神 冥(29)」。この店の店長であり謎多き女性である。
「まあまあ、落ち着き給え。座ってドリンクバーのジュースでも飲もうじゃないか。」
「飲みませんよ。ていうか外にゾンビみたいな顔したお客さんが屯ってましたけど、何でまだ店開けてないんですか。もう八時ですよ?」
店長は「ふむ」と呟き、顎に手を添えながら椅子に深く腰掛け、紅茶がなみなみと注がれたティーカップを持つ。
「確かにこの店の開店時間は六時だな。だが――」
カップに口をつけた彼女はこちらを見つめて嘲笑いながらこう言った。
「――私がこの店を何時開けようと、私の自由というものだろう?」
「…………いや違いますよ!? 開店時間は守りましょう!?」
「ふむ、確かに開店時間を守らないと客は逃げるし本社から怒られるしで散々だろう。」
「でしょう!?」
「『――だが断る。』」
「こぉとわるなよおおおおおっ!!」
何でこの人は利益を求めて動かないんだよっ! てか足を組みながらキリッとした顔をこちらに向けるんじゃないよぉ!!
「私が何かに屈するなど面白くないではないか。という本音はさておきだな。」
本音!?
「呼び出した理由は君がさっき言った店の前に集る客の事だ。」
「言い方酷くないですか!?」
「実はだな、一昨日君が早引けしただろう? クレ○ん風に言うとハヤビーケしただろう?」
「……しましたね。」
なんでク○しん風に言ったのかはさておき……
一身上の都合により誠に遺憾ながら早退させてもらった。ていうか帰らされた。何か君が居たら他の人の出番が無いとかいう理由で。それじゃあ一身上じゃあないんじゃないかと思うけど突っ込んではいけない。
……因みにその所為で一番風呂に浸かる羽目になり、ロボとの同居生活が始まったりして現在に至る。こうして考えると中々凄い一日だなぁ……
「そして、君は昨日休んだ。」
「そうですね。」
色々ゴタゴタしてましたしね。
「するとな、」
店長は立ち上がり窓の外を見た。そこにはお腹を空かせたお客さまが窓に張り付いて……張り付いて!? ちょっ!? 怖い怖い怖い!!
「圧倒的に人手が足りなくなった。」
「それが外の惨状ですか!?」
「そうだ。捌ききれない客が押し寄せて来て、今や何処ぞの夢の国のアトラクションと同レベルの待ち時間だ。」
「いやわけわかんねぇよ!?」
何で客はここのファミレスから何処かに行かないの!? 一昨日から何も食ってない奴居るの!? 馬鹿だろもう!! てか僕が居ないと捌けないとか、この店のキャパどうなってんだよ!?
「こんな事になるとは思わなかった。私も頑張ってソシャゲに勤しんでいたのだがな……」
「働けよぉっっ!!」
何残念だ……みたいな雰囲気出してんの!? 働けよ! 店の危機だろ!?
「と、いうわけだ。君には夜までここで働いてもらう。」
「いや、僕他のバイトありますからね? 店長が深刻そうだったから来ちゃいましたけど、もう朝のバイトの時間ですからね?」
腕時計を見ると八時半を過ぎている。あぁ、遅刻……
絶望した顔で店長をチラ見すると、にこやかな顔でこちらに親指が上に立った右手を向けてきた。
「安心しろ、君の全てのバイト先には連絡済みだ。君は『客足が止めば』夜の十時までここで働けるぞ?」
「労働基準法って知ってます?」
「『この店では私が法だ!』」
「狂ってやがるっ!!」
「ちゃんと給料は払うぞ?」
「当たり前ですよっ!!」
「休憩時間は『客足が止むまで』だ。」
「客の数が異様な速さで増えてて休む暇が無さそうなのは僕の気のせいですよねぇっ!?」
「仙台 零人、」
店長が僕の両肩に手を置いてにこやかに微笑み――
「気のせいじゃない。」
「この悪魔ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ッ!!」
クソがっ! コイツ休ませる気も帰らせる気もねぇっ!! あぁ、何が心配かって家に置いてきたシロが一番心配だよ。何か仕出かしてないといいけれども……まさか、帰ったらアパートが消えてるとかは、無いよね。まさかね。…………無いよね?
そんな事を僕が考えていると、店長は実に愉しそうな口調で軽快に話を進めていく。
「さて、仕事を始めようか仙台 零人。ルールは簡単、君は腹を空かせたこの大勢の客を仲間と共に捌き切ればいい。」
ルビッ!?
オイコラ待てや、店の奥にゲーム機持ちながら引っ込もうとするんじゃないよ。と、思ったのも束の間。クルリと店長の身体が半回転し、こちらを向く。
「ああ、言い忘れていたよ。」
「……何ですか。」
うっわ嫌な予感しかしないよ。聞きたくないけど、聞かなきゃもっと酷い事になりそうだから一応聞いておこう。そんな事を思いながら僕は店長の言葉に耳を傾ける。
「五番テーブルの店員呼び出し鈴。爆弾の起爆装置に替えといたから。」
…………は?
「威力はTNT火薬一トン分。」
ハァ?
「あぁ、起爆装置を机から一メートル以上離しても作動するから。」
「……流石に冗談ですよね? 一般人も居ますし、そんなもの隠せる場所はこの店の何処にも……」
僕の不安を煽るかのように、彼女はこちらにウインクを飛ばして――
「信じるか信じないかは、貴女次第。」
「アンタが言うと冗談に聞こえねぇんだよおおおおおおおおおっっ!!!」
こうして、僕の長い一日が幕を開けた。
遂に干支の数に追いついた『【連載版】誰か銭湯の男湯に美少女が居た時の正しい対処法を教えてくれ。』の話数。
そしてタイトルが相変わらず長いぞ作者! という輩は直ぐ様感想欄に気持ちをブチかましましょう!
次回予告(飛ばすよな? なあアンタ、飛ばすよな?)
京也「俺だ! 京也dブルワッagpJadt!?」
氏神「私だ。店長だ。今日も次回予告をやっていくぞ? 異論はあるまい。」
有須川「有るよ。僕が京也を弄るスペースが無くなる。」
氏神「ふうむ、なるほど。『だが譲らぬ』」
有須川「次回もバイト編だよ駄作だけど良かったらまた見てくれ。」
京也&氏神「ハイスピードで次回予告を終わらせた、だと!?」
零人「仲良いね、君達……」




