ヤンデレの魔の手(1)
4月11日 午後07:30 自宅(仮)自室
「ってことがあったんだよー」
只今、現実世界の親友2人と電話中。
優梨の姉が大学行く前にハマってたゲームらしいから
状況を話して今後の方針を決めているところだ。
「はぁ。何してんだか。
1日で事件起き過ぎ。
でも瑠璃が苛められたとこなんてみなかったよ?
お姉ちゃんに確認もしてみたけど、そんなのないって」
やはり。少しどころかストーリー超変わってんじゃーん。
一応、私がトリップしたってのは3人だけの秘密。
言っても信じてもらえ無さそう。
続けて優梨が言った。
「それよりも理事長もといリジチョね。何者?
そいつを調べてみるのが手っ取り早そう」
確かにそうだ。悪役感は漂ってこないけど、危険だから調べよう。
考えているとなっちゃんから声がした。
「まず、会わない事には話にならないよね。
リジチョの甥が居るから、そういう近い人から接していけばいいんじゃないかな。
あと、リジチョじゃないけどアドバイス。
メモとか、あ!日記とか書いてみるのもいいと思う」
理事長の甥?
いましたっけ?そんなキャラ。優梨から聞いてないよぉ。
なんてね。覚えているよ。
忘れたのではなく、忘れようとしていたのだ。
私が関わりたくないキャラランキングぶっちぎり一位の
「ヤンデレキャラ」に。
でもぉ、ヤンデレになるのってヒロインの前だけでしょー
なら私関係ないじゃーん。
正直悪寒がした。・・・っ早く帰るためだ!
自分を騙してその意見を実行することにした。
いつもならあまり続かないはずのメモや日記もね♥
11月18日 午後00:45 中庭
その作戦を実行してから早一週間が過ぎた。
色々集めましたよ~、情報。
つか、ファンクラブの子達に聞いたら勝手に熱く語ってくれた。
~数日前~
「金城先輩についてですって?
わたくし達が教えて差し上げますわ!」
「金城ルイ先輩!聖宮学園高等部2年O型天秤座、生徒会副会長!」
「『惑生会』の一員。聖宮学園理事長の甥!」
「好きな物は紅茶と読書と静かな時間!!」
「美しい琥珀色の髪で、それまた美しい非の打ち所の無いお顔を
額縁として讃え、
誰に対しても誠実で平等で、どのような時も心穏やかで、それはもう・・・」
「王子様・・・みたい?」
遠く、おとぎ話を聞いている少女のような目の女子生徒達に
合いの手を入れると・・・
『そうなんですの~♥』
口を揃えて返ってきた。
他にも、調べに調べ尽くした。
余った時間を全てそれに費やした。
私自身のために。
~現在~
彼女達から聞き取ったメモを見ながら歩いていた。
あの子達、ある意味病気だな。
と、思う私は冷たいですか?薄情ですか?愛が無いですか?
「平等・・・ねぇ。」
彼女達の、一人の王子様を想い、綴った言葉。
私は、その一欠を口から零した。
那由多嬢がいたらそうでもなかったと思うよ。
どうしても、那由多嬢がいたら・・・
と、思ってしまう。
私が今、「星宮玲」だから自然と親友になるはずだった
彼女のことを求めるのかな。
もし、那由多嬢がいたら私はここにいなかったのかな。
何故、彼女だけでなく本当の「星宮玲」も消えてしまったのかな。
何故、私はここに・・・。
悲観的な事ばかり考えた。
「おや、メモを取る程私が好きになりましたか?
最近、私について熱心に調べてますよね。大した情熱です。
編入して間もない『星宮玲』さん?」
音楽のように流れながらも、一つ一つしっかりと残る声。
しかし、それは今の私にとって焦りと恐怖でしかなかった。
やっと、まともに話が進んで行きそうです!(ただの妄想)
次話もよろしく!!